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Drug Atlas · B27 Uterotonics & tocolytics / 子宮作用薬

リトドリン

ritodrine

分類
Tocolytics / 子宮収縮抑制薬Beta-2 adrenergic agonists / β2アドレナリン受容体作動薬
商品名(日本)
ウテメリン
商品名(EU)
Yutopar
科目
Pharmacology
トピック
B27: Drugs acting on smooth muscles. Drugs influencing uterus contractions
承認適応
早産・早産陣痛
副作用
動悸頻脈振戦呼吸困難悪心嘔吐
影響検査値
カリウム血糖

🧠 全体像:は、のβ2を選択的に刺激して平滑筋を弛緩させる短時間作用型作動薬である。日本では用製剤が緊急に治療を必要とする・におけるの効能を持ち、周産期管理で広く用いられてきた1。しかし、の本質は48時間程度の妊娠延長による投与やへののための時間稼ぎであり、37週未満の早産そのものやを減らすエビデンスはない2。さらに母体の重篤な副作用のリスクから、欧州では経口剤の承認取消と注射剤の48時間以内への制限が行われ3、日本でも肺水腫やなどの重篤な有害事象と長期漫然投与の回避が重視されている。

薬効群の中での位置づけ

を抑える()は、作用標的によって分類される。国や地域によって推奨されるが大きく異なる。

系統 代表薬 作用標的 特徴と位置づけ
β2作動薬 、 平滑筋 日本ではの主力を担ってきた。母体心血管副作用(、頻脈、肺水腫)が多い
子宮オキシトシン受容体 子宮特異性が高く母体心血管副作用が少ない。欧州等で広く使用される
欧米のガイドラインで第一選択とされることが多い。で母体が良好
製剤 カルシウム拮抗・ 日本では無効・不耐時に使用。32週未満の胎児効果も期待される

⭐ の限界をする:系統的レビューにおいて、を含むβ作動薬は投与開始後48時間以内の分娩率を有意に低下させる(RR 0.68)が、37週未満の早産率そのものや、の有意な改善は認められていない2。したがって、の真の意義は「児の生命予後を改善する副腎皮質ステロイドの効果発現(約48時間)を待つ」「を備えたへ母体を安全に搬送する」ための急性期介入にある。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ritodrine'>リトドリン</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydrochloric acid (HCl)'>塩酸</span>塩"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uterine smooth muscle'>子宮平滑筋</span>のβ2<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adrenergic receptor, adrenoceptor'>アドレナリン受容体</span>に結合"]
    B --> C["Gsタンパク質活性化"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adenylyl cyclase, AC'>アデニル酸シクラーゼ</span>(AC)活性化"]
    D --> E["細胞内cAMP濃度が上昇"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='protein kinase A (PKA)'>プロテインキナーゼA</span>(PKA)が活性化"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myosin light chain kinase (MLCK)'>ミオシン軽鎖キナーゼ</span>(MLCK)のリン酸化・不活性化"]
    F --> H["小胞体へのCa2+再取り込み促進<br>および細胞外へのCa2+排出促進"]
    G --> I["アクチン・ミオシン相互作用が減弱"]
    H --> I
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uterine smooth muscle'>子宮平滑筋</span>の収縮が抑制(弛緩)"]

は細胞膜上のβ2に結合し、Gsタンパク質を介してを活性化する。産生されたがを活性化し、以下の2つの経路で平滑筋を弛緩させる:

  1. のリン酸化阻害:リン酸化されたは活性が低下し、のリン酸化が妨げられるため、アクチン・ミオシンが抑制される。
  2. 細胞内遊離カルシウム濃度の低下:細胞膜のカルシウムポンプやへのカルシウム取り込みが促進され、細胞質内のカルシウムイオン濃度が急速に低下する。

薬物動態

項目 特徴・数値
注射(急性期)、(維持療法として用いられてきたが国際的には推奨されない)
半減期 終了後の消失:初期相(分布相)約6〜9分、終末相()約1.5〜2.5時間
代謝 主に肝臓でおよびを受ける
排泄 主に腎臓から未変化体および抱合体として尿中に排泄される(投与後24時間以内に大部分が排泄)
胎盤を通過し、胎児循環へ移行する(胎児頻脈やのリスク要因)

適応

疾患・病態 臨床上の位置づけ
切迫流・早産 緊急に治療を必要とする子宮収縮の抑制。妊娠22週以降37週未満を対象とする1

日本国内では、注射剤が「緊急に治療を必要とする切迫流・早産」に対するとして承認されている。 国際的には、が2013年に重篤な心血管副作用を理由に経口剤・の産科適応を取り消し、注射剤も「妊娠22週から37週の早産管理において最長48時間まで」かつ専門医の厳重な監視下でのみ使用可能と制限した3。

用法・用量

  • :塩として、通常毎分50 μgからを開始する。
  • :子宮収縮の抑制状態と母体心拍数・血圧を観察しながら、適宜増減する。通常有効用量は毎分50〜150 μgである。
  • 上限:毎分200 μgを超えて投与しない1。
  • 希釈・輸液管理:ブドウ糖注射液などに溶解して投与する。を防ぐため、高濃度溶液を精密ポンプで投与することが推奨される。
  • 投与期間:子宮収縮が消失した後は徐々に減量して中止を試みる。漫然とした長期は避け、急性期の状態安定(ステロイド投与完了・搬送完了)を目標とする。

禁忌・注意

禁忌

  • 本剤の成分に対する重篤な過敏症の既往
  • 重篤な心疾患の合併:、心筋症、重症不整脈など(母体頻脈や心負荷で致命的となる)
  • 妊娠16週未満の妊婦
  • 強度の子宮出血・:緊急帝王切開などの産科的介入を遅らせてはならない
  • を伴う:感染制御と速やかな児の娩出が優先される
  • 重篤な・子癇

重要な警告・注意

  • ⚠️ 肺水腫のリスク:、の合併、副腎皮質ステロイド剤の併用、ならびに過剰な水分輸液負荷がある場合に肺水腫の発症率が著しく跳ね上がる1。、呼吸状態、脈拍数、肺音のを厳重に行う。
  • ⚠️ 母体心血管モニタリング:母体脈拍数が毎分120〜130回を超える場合は減量または中止を検討する。
  • ⚠️ 新生児への影響:母体高血糖に引き続く胎児のインスリン過剰分泌により、出生直後のが引き起こされることがある。また、による胎児頻脈や不整脈に留意する。

副作用

臓器・系統 主な症状 注意すべき病態と機序
、頻脈、不整脈、血圧変動 β1受容体への交差刺激およびによる
呼吸困難、肺水腫 水分、、増大の複合
電解質・代謝 低カリウム血症、高血糖 細胞内へのカリウム取り込み促進、分解促進
筋・骨格系 振戦(手指振戦)、 骨格筋刺激による振戦。CK上昇・筋痛を伴うに注意
血液系 、血小板減少 長期投与例でや血球減少の報告があり定期的な血液検査が必要
悪心、嘔吐、便秘 の弛緩による蠕動抑制

まとめ

  • はのを刺激して子宮収縮を抑制する短時間作用型β2作動薬である。
  • 日本では切迫流・早産の緊急に広く用いられてきたが、の主目的は投与やのための48時間程度の時間稼ぎである。
  • 母体の頻脈・・手指振戦が好発し、やステロイド併用、輸液過多に伴う肺水腫に最大の警戒が必要である。
  • 海外では母体心血管リスクを理由に使用が大幅に制限または中止されており、適応と投与期間を厳格に見極める姿勢が不可欠である。

出典

  1. 1.ウテメリン注50mg 医療用医薬品添付文書(キッセイ薬品工業/医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2022)2022年1月改訂(第3版)の添付文書で、リトドリン塩酸塩注射剤の効能が緊急に治療を必要とする切迫流・早産であり、毎分50μgから点滴静注を開始し有効用量は通常毎分50〜150μg、毎分200μgを超えないこと、肺水腫が心疾患・妊娠高血圧症候群の合併・多胎妊娠・副腎皮質ホルモン剤併用時などに起こりやすく水分の過負荷を避けることを確認した。閲覧 2026-09-29
  2. 2.Betamimetics for inhibiting preterm labour(Cochrane Database of Systematic Reviews・2014)系統的レビュー(20件の無作為化比較試験)で、プラセボと比較してβ作動薬が48時間以内の分娩率を低下させ(RR 0.68, 95% CI 0.53〜0.88)、7日以内の分娩率も低下させた(RR 0.80, 95% CI 0.65〜0.98)ものの、37週未満の早産率や周産期死亡率、新生児呼吸窮迫症候群の有意な改善は示されず、母体の頻脈、動悸、胸痛、振戦、呼吸困難、低カリウム血症、高血糖、悪心・嘔吐を有意に増加させることを確認した。閲覧 2026-11-02
  3. 3.Restrictions on use of short-acting beta-agonists in obstetric indications – CMDh endorses PRAC recommendations(European Medicines Agency・2013)EUはフェノテロール・ヘキソプレナリン・イソクスプリン・リトドリン・サルブタモール・テルブタリンを含む短時間作用型β2作動薬(子宮収縮抑制薬)の産科適応を見直し、母児双方への重篤な心血管有害事象(頻脈・不整脈・肺水腫等)のリスクを理由に、経口・坐剤は産科適応の販売承認を取り消して2013年11月25日までに市場から除去したこと、注射剤は妊娠22〜37週の間で最大48時間まで、専門医の監督下・母児の持続モニタリング下でのみ使用を継続できると制限したことを確認した。閲覧 2026-08-27