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Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬

スンボゼルチニブ

sunvozertinib

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
科目
PharmacologyPulmonology and Thoracic Surgery
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)32: Chemo-, immune- and targeted therapy of lung cancer
承認適応
非小細胞肺癌
副作用
下痢皮疹悪心口内炎爪囲炎
監視検査値
CKトランスアミナーゼ
影響検査値
CKトランスアミナーゼ

🧠 全体像:は、従来の第1〜3世代に抵抗性を示すEGFR exon 20を標的とする経口のである。exon 20はキナーゼ領域のC-helixを活性型配座へ押し込んで薬剤結合ポケットを狭めるため、などの既存TKIでは十分な治療域が得られなかった。は狭小化したポケットに適合して不可逆的に結合し、野生型EGFRよりも低い濃度で多様なexon 20を阻害する12。静注アミバンタマブと並ぶ、EGFR exon 20肺癌の中核的標的薬である。

薬効群の中での位置づけ

EGFR遺伝子変異陽性は、変異形式によって感受性薬剤が明確に分かれる。

変異形式 頻度 代表的変異 主な感受性薬剤 従来の第1〜3世代TKIへの応答
古典的感受性変異 約85〜90% exon 19欠失、L858R 、 極めて良好(一次治療の標準)
exon 20 約1〜2% アミノ酸挿入・重複(D770_N771ins等) 、アミバンタマブ 極めて抵抗性(により不応)
変異 変動 T790M、C797S 第3世代または次世代TKI T790Mにはが有効

⭐ 「なぜexon 20には既存のが効かなかったのか」を押さえることが最大の鍵。 exon 19欠失やL858R変異では薬剤結合ポケットが開放されて既存TKIが野生型よりも強く結合するのに対し、exon 20ではC-helix直後へのアミノ酸挿入によって結合ポケットが立体的に狭小化する。その結果、従来のTKIではを抑える濃度に達する前に野生型EGFR阻害による重度の下痢・皮疹がとなっていた。は系で野生型EGFRの約2〜10分の1の低濃度で多様なexon 20体のリン酸化を阻害し、経口単剤での治療域を確保した12。

機序

flowchart TD
    A["EGFR exon 20<span class='jp-term jp-term-diagram' title='insertional mutation'>挿入変異</span>の発生"] --> B["C-helixが活性型配座へ恒常的に固定"]
    B --> C["ATP結合ポケットが立体的に狭小化"]
    C --> D["従来のTKI(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osimertinib'>オシメルチニブ</span>等)は結合困難"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sunvozertinib'>スンボゼルチニブ</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral'>経口投与</span>"] --> F["狭小化した結合ポケットに柔軟に適合して進入"]
    F --> G["キナーゼ領域の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cysteine residue'>システイン残基</span>と不可逆的な共有結合を形成"]
    G --> H["EGFRリン酸化とチロシンキナーゼ活性を持続的に遮断"]
    H --> I["下流の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='RAS-MAPK pathway'>RAS-MAPK経路</span>・PI3K-AKT経路のシグナル遮断"]
    I --> J["腫瘍細胞の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='growth arrest'>増殖停止</span>および<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apoptosis induction'>アポトーシス誘導</span>"]
    F -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mutant'>変異型</span>を野生型の約2〜10倍低濃度で阻害"| K["治療域を確保しつつ抗腫瘍活性を発揮"]

💡 用量最適化による有効性と安全性の両立。 初期の中国第II相WU-KONG6試験では300 mg 1日1回投与で61%を示した一方、国際共同第II相用量無作為化試験(WU-KONG1B)で200 mgと300 mgを比較したところ、は45.9%対47.2%と同等でありながら、Grade 3以上の下痢(2.2%対18%)やCK上昇(6.6%対12.6%)は200 mg群で大幅に低かった34。これに基づき、米国では200 mg 1日1回食後投与が承認用量として採用されている1。

薬物動態

項目 特徴
(、1日1回食後)1
吸収・食事の影響 Tmax中央値は約6時間(範囲3〜10時間)。によるAUC・Cmaxの臨床的に有意な変化はないが、消化器毒性軽減のため食後投与とする1
分布・半減期 は約89〜94%。は50時間であり、15日以内に定常状態へ達してAUCは約3倍に蓄積する1
代謝・排泄 主にCYP3Aにより代謝され(活性代謝物DZ0753はAUCの10%)、投与量の79%が糞中、10%が尿中に排泄される1
薬物相互作用 強いCYP3A阻害薬、強い・中程度のCYP3Aとの併用を避ける。P-gp・BCRP基質薬の血中濃度を上昇させるほか、の効果を減弱させうる1

適応

対象病態 位置づけ
既治療の局所進行・転移性 EGFR exon 20陽性の成人患者に対する(中国で2023年に、米国で2025年7月にWU-KONG1B試験に基づき。日本では未承認)134
一次治療(未治療例) 国際共同第III相WU-KONG28試験(324例)において、+に対しを有意に延長し(10.3か月対7.5か月、HR 0.65、58.9%対31.1%)、初回治療における有効性も実証された5

用法・用量

米国添付文書における推奨用量は、成人に対しとして1回200 mgを1日1回、消化器毒性軽減のため食後にする(中国の初期承認試験では300 mg 1日1回が使用された)14。 副作用発現時、または強いCYP3A阻害薬との併用が避けられない場合は150 mg 1日1回食後へ減量し、150 mgで不能な場合は永続中止する1。なお、承認用量の1.5倍(300 mg)においても臨床的に有意なQTc間隔延長は認められていない1。

禁忌・注意

  • 禁忌:米国添付文書では禁忌の設定はない(日本では未承認)1
  • ⚠️ ・:米国安全性解析集団(200 mg群121例)の1.7%、中国WU-KONG6試験(300 mg群104例)のとして5%に報告されている。呼吸困難・咳嗽・発熱が出現した際は直ちにし、・と確定した場合は永続中止する14
  • ⚠️ 消化器毒性(下痢・悪心・嘔吐):200 mg投与群でも下痢が73%(Grade 3は2.5%)、悪心・嘔吐が43%に発現する。必ず食後に服用させ、等の・・補液を早期に導入する1
  • ⚠️ 皮膚障害・:を含む皮疹(68%)に対してはアルコールを含まないの使用を指導する。角膜炎(0.8%)を含む眼障害(13%)が生じうるため、出現時はコンタクトレンズを中止して速やかに眼科へ紹介し、が確定した場合は永続中止する1
  • ⚠️ 血中CK上昇・:Grade 3以上の血中CK上昇(200 mg群で約7%、300 mg群で13〜17%)や・に注意する。またがありの効果を減弱させうるため、投与中および最終投与後2週間は有効なを指導する134

副作用

頻度 主な症状・異常所見
極めて高頻度(50%以上) 下痢(73%)、皮疹・皮膚障害(68%)1
高頻度(20〜50%未満) 悪心・嘔吐(43%)、、、疲労、、便秘、疼痛、そう痒症、、尿路感染、腹痛、体重減少1
重要な異常・中等度事象 、リパーゼ・上昇、貧血、CK上昇、好中球減少、、AST・ALT上昇、眼障害(13%)1
重篤・重要 ・、、重度の下痢・脱水1

まとめ

  • は、従来のEGFR-TKIがにより無効であったEGFR exon 20陽性に対する経口・不可逆的TKIである。
  • 既治療例を対象としたWU-KONG6試験(300 mg)および国際共同WU-KONG1B試験(200 mgで45.9%・中央値11.1か月)で有効性を示し、さらに一次治療の第III相WU-KONG28試験でもプラチナに対するのを実証した。
  • 米国承認用量は消化器毒性軽減のため1回200 mgの1日1回食後投与(減量時は150 mg)であり、は約50時間と長い。
  • 下痢、皮疹、悪心・嘔吐、血中CK・に加え、確定時に永続中止を要するや角膜炎、非ホルモン避妊を要するに留意して管理する。

出典

  1. 1.ZEGFROVY (sunvozertinib) tablets, for oral use — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(Dizal Pharmaceutical、2025年7月改訂版)・2025)米国添付文書(2025年7月迅速承認・初版)全文を取得して確認した。適応はプラチナ製剤ベースの化学療法中または後に増悪したEGFR exon 20挿入変異陽性の局所進行・転移性非小細胞肺癌であり、推奨用量は消化器毒性軽減のため1回200 mgを1日1回食後に経口投与(副作用または強いCYP3A阻害薬併用時の減量は150 mg 1日1回)、禁忌の設定はない。警告・注意事項は間質性肺疾患・肺臓炎(1.7%、確定時は永続中止)、消化器毒性(下痢73%・Grade 3は2.5%、悪心・嘔吐43%)、皮膚障害(68%)、眼毒性(13%、角膜炎0.8%)、胚・胎児毒性(ホルモン避妊薬の効果減弱リスクがあるため非ホルモン避妊法を指導)の5項目であり、承認用量の1.5倍(300 mg)でも臨床的に有意なQTc延長は認められていない。薬物動態ではTmax中央値約6時間、血漿蛋白結合率89〜94%、消失半減期50時間、主にCYP3Aで代謝され、放射能投与量の79%が糞中・10%が尿中に排泄される。閲覧 2026-11-02
  2. 2.Sunvozertinib, a Selective EGFR Inhibitor for Previously Treated Non-Small Cell Lung Cancer with EGFR Exon 20 Insertion Mutations(Cancer Discovery・2022)スンボゼルチニブ(DZD9008)が多様なEGFR exon 20挿入変異サブタイプに対して野生型EGFRよりも選択的な不可逆的阻害活性を示し、細胞株・異種移植モデルおよび初期第I相臨床試験(脳転移例やアミバンタマブ既治療例を含む)で抗腫瘍効果を示したことを抄録で確認した。閲覧 2026-11-02
  3. 3.Phase II Dose-Randomized Study of Sunvozertinib in Platinum-Pretreated Non-Small Cell Lung Cancer With Epidermal Growth Factor Receptor Exon 20 Insertion Mutations (WU-KONG1B)(Journal of Clinical Oncology・2025)プラチナ製剤既治療の進行EGFR exon 20挿入変異陽性非小細胞肺癌を対象とした国際共同第II相用量無作為化試験(WU-KONG1B)の抄録を確認した。盲検下独立中央判定による確定客観的奏効率は200 mg 1日1回無作為化群(85例)で45.9%(奏効期間中央値11.1か月)、300 mg 1日1回無作為化群(89例)で47.2%(奏効期間中央値13.8か月)であり、Grade 3以上の治療関連有害事象は下痢(200 mg群2.2%対300 mg群18%)、血中CK上昇(6.6%対12.6%)、貧血(4.4%対6.3%)と200 mg群で安全性が良好であった。閲覧 2026-11-02
  4. 4.Sunvozertinib for patients in China with platinum-pretreated locally advanced or metastatic non-small-cell lung cancer and EGFR exon 20 insertion mutation (WU-KONG6): single-arm, open-label, multicentre, phase 2 trial(The Lancet Respiratory Medicine・2024)中国のプラチナ製剤既治療進行EGFR exon 20挿入変異陽性非小細胞肺癌104例(有効性評価可能97例)にスンボゼルチニブ300 mg 1日1回を投与した第II相WU-KONG6試験の抄録を確認した。独立中央判定による確定客観的奏効率は61%(59/97例、95% CI 50〜71%)であり、主なGrade 3以上の治療関連有害事象は血中CK上昇17%(18/104例)、下痢8%(8/104例)、貧血6%(6/104例)、重篤な治療関連有害事象として間質性肺疾患が5%(5/104例)であった。閲覧 2026-11-02
  5. 5.First-Line Sunvozertinib in NSCLC with EGFR Exon 20 Insertion Mutations(The New England Journal of Medicine・2026)未治療の進行非扁平上皮EGFR exon 20挿入変異陽性非小細胞肺癌324例をスンボゼルチニブ群(163例)とカルボプラチン+ペメトレキセド群(161例)に1:1で割り付けた国際共同第III相WU-KONG28試験の抄録を確認した。盲検下独立中央判定による無増悪生存期間中央値は10.3か月対7.5か月(HR 0.65、95% CI 0.50〜0.85、P<0.001)、客観的奏効率は58.9%対31.1%(奏効期間中央値11.2か月対7.1か月)と化学療法に対する優越性を示した。閲覧 2026-11-02