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Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬

ミルダメチニブ

mirdametinib

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
科目
PharmacologyMedical Biochemistry
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)15/1: Molecules of central importance and drug targets of proliferation, differentiation, survival, angiogenesis and metastasis (Part I) — L II
承認適応
神経線維腫症1型
副作用
皮疹下痢悪心嘔吐霧視爪囲炎
監視検査値
左室駆出率クレアチンキナーゼ(CPK)
影響検査値
クレアチンキナーゼ(CPK)
原因となる疾患
MEK阻害薬関連漿液性網膜症

🧠 全体像:は、と同じくMEK1/2を阻害してNF1のの過剰な活性を断つで、手術で完全切除できない症候性のに使う。違いは使い方にある。が連日投与で小児から先に承認されたのに対し、は3週間投与・1週間の28日サイクルで、成人と2歳以上の小児の両方を対象に最初から承認された米国初の治療である1。添加剤にビタミンEを含まず、CYP3A4阻害薬・への対応も添付文書に書かれていない点も、との実地での違いになる2。

薬効群の中での位置づけ

NF1のに使えるは2剤あり、使い分けの軸は対象年齢と投与スケジュールになる。

項目
米国の対象年齢 成人と1歳以上の小児 成人と2歳以上の小児
投与スケジュール 連日(25 mg/m2を1日2回) 21日投与・7日(2 mg/m2を1日2回)
剤形 カプセル、 カプセル、水に分散できる
ビタミンE カプセルに含む(出血リスクの注意) 含まない
主な代謝経路 CYP3A4(阻害薬・の併用を避ける) (UGT)とエステラーゼ
日本の状況 コセルゴとして承認済み 本稿作成時点(2026年11月)で国内の電子添文を確認できていない

⭐ BRAF変異がんに使うなどとは、単剤でNF1のを縮小させる目的が異なる。

機序

flowchart TD
    A["NF1の機能喪失<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurofibromin'>ニューロフィブロミン</span>の欠損)"] --> B["RASが持続的に活性化"]
    B --> C["RAF-MEK-ERK経路が過剰に作動"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Schwann cell'>シュワン細胞</span>系の腫瘍が増殖<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plexiform neurofibroma'>叢状神経線維腫</span>)"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mirdametinib'>ミルダメチニブ</span>"] -->|"MEK1/2を阻害"| C
    E --> F["ERKのリン酸化が低下し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor volume'>腫瘍体積</span>と増殖が減る"]

はMEK1とMEK2の酵素活性を阻害し、その下流のERKリン酸化を抑える。NF1のマウスモデルでは、でERKのリン酸化が抑えられ、の体積と増殖が減少した2。

薬物動態

項目 特徴・数値2
吸収 Tmaxの中央値は約0.8時間、カプセル約1.1時間。でCmaxは約57%に下がるがAUCは約93%で、食事の有無を問わず投与できる
分布 は99%超
代謝 主経路は(UGT1A6・UGT2B7)と酸化、エステラーゼ(CES)で、のようにCYP3A4が主体ではない
排泄 の約68%が尿中、約27%が糞中。未変化体は約9%(尿中0.7%)
半減期 約28時間。定常状態には約6日で到達する

臨床的なは実施されておらず、強いCYP3A4(UGTやエステラーゼも誘導)が与える影響は不明とされる。重度の腎障害(30 mL/分未満)や中等度以上の肝障害でのは評価されていない。

適応

  • 症候性で、手術で完全切除できないを有するNF1の、成人および2歳以上の小児(米国)2。2歳未満の安全性と有効性は確立していない。
  • 日本では、本稿作成時点(2026年11月)で国内の電子添文を確認できていない。

臨床成績:ReNeu試験

成人58例と小児56例(2〜17歳)を対象とした単群・多施設の第IIb相試験である。評価はの容積MRIで行い、標的腫瘍の体積が20%以上縮小したものをとした3。

項目 成人(n=58) 小児(n=56)
(95%信頼区間) 41%(24例、29〜55%) 52%(29例、38〜65%)
までの期間の中央値 7.8か月 7.9か月
の持続12か月以上(例中) 88% 90%
の持続24か月以上(例中) 50% 48%

標的の最良変化の中央値は成人−41%、小児−42%で、痛みの強さ、痛みの生活への干渉、も早期から持続的に改善した3。の判定には2〜6か月以内の連続した評価での確認が必要で、効果が出るまで半年前後かかる点は、と同様に説明しておく。

用法・用量

2 mg/m2を1日2回(約12時間おき)、28日サイクルの最初の21日間し、残り7日はする。最大は1回4 mgである。

(m2) 1回量(1日2回)
0.40〜0.69 1 mg
0.70〜1.04 2 mg
1.05〜1.49 3 mg
1.50以上 4 mg
  • 0.40 m2未満の用量は確立していない。
  • 開始前に眼科の包括的評価と心エコーによるの評価を行う。
  • カプセルは噛まず1個ずつ丸ごと飲む。飲み込めない場合は、を5〜10 mLの水に分散して服用する。分散には2〜4分かかり、作ってから30分以内に服用する。
  • 飲み忘れや服用後の嘔吐があっても、追加で服用しない。
  • 減量は1段階のみで、その用量にも耐えられなければ中止する。

禁忌・注意

米国の添付文書に禁忌はない2。

項目 内容と対応
⚠️ (RVO)、(RPED)、。と同じクラス毒性の枠で理解する。で25%にが出た(成人28%、成人でRVO 2.7%)。開始前と定期的に眼科評価を行い、RVOは中止、症候性RPEDはして同じ用量で再開
⚠️ LVEFの10%以上20%未満の低下が20%、20%以上の低下が0.9%で、75%は回復した。開始前、最初の1年は3か月ごとに心エコー。LVEFが20%以上低下すれば中止、10%以上低下で未満ならして減量再開
皮膚障害 発疹が84%(成人92%、小児72%)、が65%。12〜17歳で77%と高く、成人では発疹による中止が11%。初期から支持療法を行う
動物で胚・胎児の死亡と。投与前に妊娠を確認。女性は投与中と最終投与後6週間、男性は最終投与後3か月避妊する。女性の妊孕性を損なう可能性がある
授乳 授乳は治療中と最終投与後1週間避ける
成長への影響 でなどのが認められている
腎・肝障害 軽度・中等度の腎障害と軽度の肝障害ではは不要。重度の腎障害や中等度以上の肝障害は未評価

相互作用

臨床的なは実施されていない。の検討では、CYP1A2・2B6・2C8・2C9・2C19・2D6・3A4の阻害作用は認められなかった2。で求められるCYP3A4阻害薬・の回避や、ビタミンEの注意は添付文書に記載されていない。

副作用

ReNeu試験で20%以上に出た有害事象(成人/小児)は次のとおり。

分類 主な症状・所見2
皮膚 発疹(成人90%/小児73%)、が主体。小児で32%(成人1.7%)
消化器 下痢(59%/55%)、悪心(52%/27%)、嘔吐(38%/39%)、腹痛(24%/39%)
筋骨格・全身 (41%/41%)、疲労(29%/13%)、頭痛(14%/34%)
心 (16%/27%)
グレード3〜4の異常はCPK上昇が主(小児では好中球減少も)
眼 RVO、RPED、

まとめ

は、MEK1/2を阻害してNF1のを縮小させるで、2 mg/m2を1日2回、3週間投与・1週間で使い、成人と2歳以上の小児の両方が米国で承認されている。ReNeu試験のは成人41%・小児52%で、痛みとQOLも改善した。と同様に眼科評価・LVEF・皮疹を継続して管理するが、ビタミンEを含まずCYP3A4の回避を求められない点が異なる。日本では本稿作成時点で国内の電子添文を確認できていないため、国内の適応は最新の情報で確認する。

出典

  1. 1.Mirdametinib: First Approval(Drugs・2025)ミルダメチニブがMEK1/2を阻害する経口低分子薬で、米国で成人と小児の双方のNF1関連叢状神経線維腫に対して初めて承認された治療であり、2歳以上の成人・小児のNF1で手術で完全切除できない症候性叢状神経線維腫に適応があること、欧州では販売承認申請が審査中であったことを確認した(抄録)閲覧 2026-11-01
  2. 2.GOMEKLI (mirdametinib) capsule / tablet, for suspension — Prescribing Information(DailyMed (NLM) / SpringWorks Therapeutics, Inc.・2026)米国添付文書(SPL 2026年7月版)で、適応が手術で完全切除できない症候性の叢状神経線維腫を有するNF1の成人および2歳以上の小児であること、用量が2 mg/m2を1日2回、28日サイクルの最初の21日間投与(最大4 mgを1日2回)で食事の有無を問わないこと、禁忌がなく警告が眼毒性・左室機能障害・皮膚障害・胎児毒性であること、ReNeuで確定奏効率が成人41%(24/58)・小児52%(29/56)であること、奏効までの期間の中央値が成人7.8か月・小児7.9か月であること、プール解析で発疹84%(成人92%・小児72%)・眼毒性25%・LVEF低下(10〜20%未満)20%であること、半減期約28時間・血漿蛋白結合99%超・グルクロン酸抱合(UGT1A6・UGT2B7)とCESで代謝されること、臨床的な薬物相互作用試験は実施されていないこと、軽度・中等度の腎障害で用量調整不要、女性は最終投与後6週間・男性は3か月の避妊と授乳は最終投与後1週間避けること、ラットで大腿骨の成長板異形成が認められたことを確認した閲覧 2026-11-01
  3. 3.ReNeu: A Pivotal, Phase IIb Trial of Mirdametinib in Adults and Children With Symptomatic Neurofibromatosis Type 1-Associated Plexiform Neurofibroma(Journal of Clinical Oncology・2025)症候性NF1関連叢状神経線維腫の成人58例と小児56例(2〜17歳)を対象に、ミルダメチニブ2 mg/m2(最大4 mg)を1日2回、3週間投与・1週間休薬の28日サイクルで最大24サイクル投与した第IIb相試験で、盲検独立中央判定で確定した奏効率が成人24例(41%)・小児29例(52%)、標的腫瘍体積の最良変化の中央値が成人−41%・小児−42%であったこと、痛みの強さ・痛みの生活への干渉・健康関連QOLが早期から持続して改善したこと、治療関連有害事象の上位が成人でざ瘡様皮膚炎・下痢・悪心、小児でざ瘡様皮膚炎・下痢・爪囲炎であったことを確認した(抄録)閲覧 2026-11-01