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Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬

セルメチニブ

selumetinib

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
商品名(日本)
コセルゴ
商品名(EU)
Koselugo
科目
PharmacologyMedical Biochemistry
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)15/1: Molecules of central importance and drug targets of proliferation, differentiation, survival, angiogenesis and metastasis (Part I) — L II
承認適応
神経線維腫症1型
副作用
皮疹下痢嘔吐悪心霧視爪囲炎
監視検査値
左室駆出率クレアチンキナーゼ(CPK)
影響検査値
クレアチンキナーゼ(CPK)
相互作用
イトラコナゾールカルバマゼピンクラリスロマイシンフェニトインフルコナゾールリファンピシンワルファリン
原因となる疾患
MEK阻害薬関連漿液性網膜症

🧠 全体像:は、MEK1/2を阻害して、NF1の欠損で止まらなくなったの下流を遮断するである。などの同系統薬が悪性黒色腫などBRAF変異がんの薬であるのに対し、の主戦場は(NF1)に伴う手術不能なで、承認された初めての薬物療法である。腫瘍を治癒させる薬ではなく、を縮小させて痛み・変形・機能障害を和らげる薬であり、心機能(LVEF)・眼・皮膚・CPKを継続して見張る必要がある点が実地の要点になる1。

薬効群の中での位置づけ

は、使う疾患で2つの顔に分かれる。

区分 薬 主な標的疾患 特徴
NF1の 、 NF1 単剤で使う。NF1のを縮小させる
BRAF変異がん 、、 悪性黒色腫など と併用して耐性・を抑える

⭐ 同じNF1向けでも、は連日投与(1日2回)、は3週間投与・1週間という投与スケジュールの違いがある。

機序

flowchart TD
    A["NF1遺伝子の機能喪失<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurofibromin'>ニューロフィブロミン</span>の欠損)"] --> B["RASを不活性化できず<br>RASが持続的に活性化"]
    B --> C["RAFが活性化"]
    C --> D["MEK1/2がERKをリン酸化"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Schwann cell'>シュワン細胞</span>系の腫瘍細胞が増殖<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plexiform neurofibroma'>叢状神経線維腫</span>)"]
    F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='selumetinib'>セルメチニブ</span>"] -->|"MEK1/2を阻害"| D
    F --> G["ERKリン酸化が低下し<br>腫瘍の増殖が抑えられる"]

NF1ではRASの負の調節因子であるが失われ、RAF-MEK-ERK経路が過剰に動く。はMEK1/2を阻害して基質であるERKのリン酸化を抑える。NF1の遺伝子改変マウスのモデルでは、ERKのリン酸化が低下し、腫瘍の数・体積・増殖が減少した12。

薬物動態

項目 特徴・数値
吸収 62%、Tmaxの中央値は約1.5時間。食事による臨床的に意味のある差は米国では認められず、「食事の有無を問わない」とされる1
分布 98.4%(主にアルブミン)
代謝 主にCYP3A4で代謝され、CYP2C19なども関与する。UGT1A1・UGT1A3によるも寄与する
N-はがの10%未満だが、が3〜5倍での約21〜35%を担う
排泄 体の約59%が糞中(未変化体19%)、約33%が尿中(未変化体1%未満)
半減期 約9時間

肝障害では曝露が増える(中等度・重度で用量補正した総AUCが1.6倍、非結合形のAUCは中等度で1.4倍、重度で3.2倍)。透析を要するでも、曝露に臨床的に意味のある差はなかった。

適応

地域 適応
米国 症候性で手術不能なを有するNF1の成人および1歳以上の小児(カプセルと)1
日本 における。疼痛や外観上の変形などの症状があり、重大な合併症を伴わずには切除できない患者に投与する。3歳未満の有効性・安全性は確立していない2

臨床試験

  • 小児(SPRINT 第2相):症候性で手術不能なを持つ小児50例で、確定が35例(70%)、うち28例が1年以上続いた。痛み・QOL・筋力・可動域も臨床的に意味のある改善を示した3。添付文書では、同試験のは評価者によって異なり、NCI担当者の評価では66%(33/50)、独立では44%と記載されている1。
  • 成人(KOMET 第3相、):145例で、サイクル16までのは群20%対プラセボ群5%(p=0.011)、までの期間の中央値は3.7か月だった。一方、慢性疼痛スコアの改善は有意に至らず、小児の試験ほど劇的な効果ではない点に注意する4。国内では日本人15例を含む国際共同試験として評価され、は19.7%対5.4%だった2。

用法・用量

25 mg/m2()を1日2回する。国内は1回量の上限が50 mgで、現行の電子添文には空腹時投与の規定はない。米国では食事の有無を問わない。カプセル(10 mg・25 mg)は噛まずに丸ごと服用する。

(m2) 1回量(1日2回)
0.55〜0.69 朝20 mg/夜10 mg
0.70〜0.89 20 mg
0.90〜1.09 25 mg
1.10〜1.29 30 mg
1.30〜1.49 35 mg
1.50〜1.69 40 mg
1.70〜1.89 45 mg
1.90以上 50 mg
  • 中等度の:1回20 mg/m2に減量する。
  • 強い/中等度のCYP3A阻害薬やを併用せざるを得ない場合:20 mg/m2に減量し、副作用が出たら15 mg/m2まで減らす。
  • 副作用による・減量:2段階減量しても耐えられなければ中止する。

禁忌・注意

禁忌

国 禁忌
日本 過敏症の既往/妊婦または妊娠の可能性のある女性/重度の2
米国 なし。ただしのがあり、の用量は未確立1

重要な注意と監視

項目 内容と対応
⚠️ (LVEF)の低下(開始前から10%以上低下)が起こる。開始前と、最初の1年は3か月ごと、以降は6か月ごとなどに心エコーで評価する。無症候で10%以上低下しを下回ればして減量再開、症候性またはGrade 3以上なら中止する
⚠️ (RVO)、(RPED)、(を参照)、。開始前に眼科評価を行い、定期的に再評価する。RVOは中止、RPEDはして減量再開
消化管 下痢が高頻度。最初の軟便から(など)を始め水分を増やす。Grade 3の下痢は、Grade 4や重い大腸炎は中止
皮膚 ・発疹・。重い皮疹はや減量
CPK上昇・ 開始前と定期的にCPKを測る。は中止
ビタミンE(カプセル) カプセルは添加剤としてビタミンEを含む(10 mgカプセル32 mg、25 mgカプセル36 mg)。ビタミンKやの併用で出血リスクが上がりうる。顆粒剤は含まない
肝機能・血液検査 国内では肝機能検査、貧血・好中球減少などのため血液検査を定期的に行う
妊娠・避妊 米国は治療中と最終投与後1週間、国内は妊娠可能な女性で終了後1か月、パートナーが妊娠しうる男性で1週間の避妊を求める。授乳も米国では治療中と最終投与後1週間は避ける
動物での毒性 のでの異形成、マウスで盲腸・結腸の穿孔が認められている

相互作用

併用薬 内容
強い/中等度のCYP3A阻害薬(、など)、、 血中濃度が上がり副作用が増強する。でAUCが1.5倍になった。可能な限り避け、避けられなければ減量1
強い/中等度のCYP3A(リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン)、 血中濃度が下がり効果が減弱する。避ける2
ワルファリン・(アスピリンなど) カプセルのビタミンEにより出血リスクが増える可能性。INRなどを頻回に確認する

副作用

分類 主な症状・所見12
皮膚(最多) (国内で51.1%)、発疹(小児68%、成人85%)、、、脱毛・、そう痒
消化器 下痢(国内31.1%、小児59%、成人42%)、嘔吐、悪心、腹痛、
筋・ (国内40.9%、小児73%、成人70%)、まれに筋痛・、AST・ALT上昇
心血管 減少(国内8.1%)、高血圧、
眼 、、RPED、RVO
血液 貧血(国内13.6%)、好中球減少、、血小板減少
全身 疲労、発熱
重大(頻度不明) 、

まとめ

は、MEK1/2を阻害してNF1で過剰になったを止めることで、NF1の症候性で手術不能なを縮小させるである。25 mg/m2を1日2回連日投与し、小児ではが高く、成人でもに勝るがより緩やかである。LVEF・眼・皮膚・CPK・下痢を継続して管理し、CYP3A阻害薬との併用を避ける。日本では妊婦とが禁忌になっている点も押さえる。

出典

  1. 1.KOSELUGO (selumetinib) capsule / granule — Prescribing Information(DailyMed (NLM) / AstraZeneca Pharmaceuticals LP・2026)米国添付文書(2026年5月改訂)で、適応が症候性で手術不能な叢状神経線維腫を有するNF1の成人および1歳以上の小児(カプセル・経口顆粒)であること、用量が25 mg/m2を1日2回で体表面積別の表があり食事の有無を問わないこと、中等度肝障害(Child-Pugh B)では20 mg/m2、重度肝障害(Child-Pugh C)では用量未確立であること、禁忌がなく警告が左室機能障害・眼毒性(網膜静脈閉塞、網膜色素上皮剥離、中心性漿液性網膜症)・消化管毒性・皮膚毒性・CPK上昇・ビタミンE増加による出血リスク(カプセル)・胎児毒性であること、小児で下痢59%・発疹68%・CPK上昇73%、成人(KOMET)で発疹85%・下痢42%であること、強い/中等度のCYP3A4阻害薬とフルコナゾールを避け誘導薬も避けること、イトラコナゾールでAUCが1.5倍になること、絶対的バイオアベイラビリティ62%・血漿蛋白結合98.4%・半減期約9時間、活性代謝物N-脱メチル体が薬理活性の約21〜35%を占めること、SPRINTで奏効率66%(33/50)、KOMETで20%対5%(p=0.011)であること、授乳は治療中と最終投与後1週間避けること、動物でラットの成長板異形成があることを確認した閲覧 2026-11-01
  2. 2.コセルゴカプセル10mg/コセルゴカプセル25mg 電子添文(アストラゼネカ(日本の添付文書)・2026)2026年10月改訂(第6版)の電子添文で、効能が「神経線維腫症1型における叢状神経線維腫」で疼痛や外観上の変形等の症状があり重大な合併症のリスクなしに切除できない患者に投与すること、用法が1回25 mg/m2を1日2回で上限1回50 mg・3歳未満の有効性安全性は未確立であること、警告が緊急時に対応できる施設でNF1の治療に習熟した医師のもとでの投与であること、禁忌が過敏症の既往・妊婦または妊娠の可能性のある女性・重度肝機能障害(Child-Pugh C)であること、強い/中程度のCYP3A阻害剤とフルコナゾールの併用を可能な限り避けること、ビタミンE含有製剤・抗凝固剤・抗血小板剤との併用注意、重大な副作用が心機能障害・眼障害・消化管障害・肝機能障害・横紋筋融解症・貧血及び血球減少・間質性肺疾患であること、ざ瘡様皮膚炎51.1%・血中CK増加40.9%・下痢31.1%であること、国際共同第III相KOMETで日本人15例を含む145例の奏効率が本剤群19.7%対プラセボ群5.4%であること、妊娠可能な女性は終了後1か月、パートナーが妊娠しうる男性は1週間避妊することを確認した閲覧 2026-11-01
  3. 3.Selumetinib in Children with Inoperable Plexiform Neurofibromas(The New England Journal of Medicine・2020)症候性で手術不能な叢状神経線維腫を有するNF1の小児50例(年齢中央値10.2歳)に25 mg/m2を1日2回連続投与した第2相試験で、確定部分奏効が35例(70%)、そのうち28例は1年以上続く持続的な奏効であったこと、1年後に腫瘍の痛みの強さが平均2点低下するなど痛み・QOL・筋力・可動域の臨床的に意味のある改善があったこと、主な毒性が悪心・嘔吐・下痢、無症候性のCPK上昇、ざ瘡様発疹、爪囲炎であったことを確認した(抄録)閲覧 2026-11-01
  4. 4.Efficacy and safety of selumetinib in adults with neurofibromatosis type 1 and symptomatic, inoperable plexiform neurofibromas (KOMET): a multicentre, international, randomised, placebo-controlled, parallel, double-blind, phase 3 study(The Lancet・2025)NF1の成人145例を1:1でセルメチニブ25 mg/m2(1日2回)またはプラセボに割り付けた第3相試験で、サイクル16までの奏効率(独立中央判定)が20%(14/71)対5%(4/74)で有意に高く(p=0.011)、奏効までの期間の中央値が3.7か月であったこと、慢性疼痛スコアの低下は有意に至らず(p=0.070)PlexiQoL総スコアの群間差も有意でなかったこと、新たな安全性の懸念はなかったことを確認した(抄録)閲覧 2026-11-01