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Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬

ビニメチニブ

binimetinib

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
商品名(EU)
Mektovi
科目
Pharmacology
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)
承認適応
悪性黒色腫非小細胞肺癌
副作用
下痢皮疹悪心視力低下疲労
監視検査値
クレアチンキナーゼ(CPK)左室駆出率
原因となる疾患
MEK阻害薬関連漿液性網膜症

🧠 全体像:ビニメチニブはMEK1/2を阻害する経口分子標的薬で、現在承認されている用法はいずれもエンコラフェニブ()との併用に限られる——BRAF V600E/K変異陽性の悪性黒色腫と、BRAF V600E変異陽性の()の2適応で、単剤での承認は無い1。⚠️ この薬はもともとN黒色腫の単剤治療薬として開発され、NEMO試験でに対するのを示したが、の改善が伴わなかったことなどを理由に製薬企業がへの申請を自ら取り下げ、単剤としては承認されなかったという経緯を持つ2。「ビニメチニブ=Nの薬」という理解は開発初期の的であって、現行のではない点を混同しないこと。

薬効群の中での位置づけ

併用 位置づけ 特徴
エンコラフェニブ+ビニメチニブ(COLUMBUS試験) BRAF V600E/K変異陽性悪性黒色腫の標準治療の一つ ・CPK上昇が高頻度
エンコラフェニブ+ビニメチニブ(PHAROS試験) BRAF V600E変異陽性の肢 悪性黒色腫の併用と比べ消化器症状・疲労が目立つ一方、の頻度は低い
+ 同じBRAF+MEK二重阻害の枠組み 相棒のが違う()
同じBRAF+MEK二重阻害の枠組み 発熱が特徴的

⭐ はいずれもとの併用が基本設計。 がと、ビニメチニブがエンコラフェニブと、がと組む——組み合わせを取り違えない(承認された併用ペア以外での代替は想定されていない)。

機序

flowchart TD
    A["BRAF V600E/K変異細胞<br>(MAPK経路が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='constitutive activation'>恒常活性化</span>)"] --> B["エンコラフェニブが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mutant'>変異型</span>BRAFを阻害"]
    B --> C["MAPK経路(RAF→MEK→ERK)の一次遮断"]
    C -.->|"BRAF阻害単独では<br>MEKが別経路から再活性化しうる"| D["耐性・paradoxical activationのリスク"]
    E["ビニメチニブがMEK1/2を直接阻害<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='allosteric site'>アロステリック部位</span>)"] --> F["RAFの活性化状態によらずMEK活性化を阻止"]
    F --> G["MAPK経路を2箇所で遮断"]
    C --> G
    G --> H["腫瘍細胞の増殖抑制が強化される"]

💡 単剤で開発が止まった理由も機序と関係する。 単剤はMAPK経路の下流を止めるが、上流のBRAF・RASが変異したままだと経路の再活性化やフィードバック機構による代償が起きやすく、単剤でのの持続性・への寄与が併用ほど強く出ない。NEMO試験でビニメチニブ単剤が無増悪生存では有意差を示しながらでを示せなかった一因として、この構造が挙げられる2。

薬物動態

項目 値・特徴
経口。食事の有無を問わず服用できる1
中等度〜重度のでは減量する1

適応

領域 使いどころ
皮膚 エンコラフェニブとの併用による、BRAF V600EまたはV600K変異陽性の・転移性悪性黒色腫
呼吸器 エンコラフェニブとの併用による、BRAF V600E変異陽性の転移性()

いずれも承認済みの適応であり1、単剤での適応は存在しない。⚠️ N黒色腫に対する単剤治療は、NEMO試験でに対するの(中央値2.8か月対1.5か月、0.62)を示したにもかかわらず2、承認には至っていない。

用法・用量

エンコラフェニブとの併用で用いる。実際の用量・は適応・施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

⚠️ 禁忌の欄はほとんど空である。 米国添付文書の第4節は逐語で None.1。他のと同様、安全性は禁忌ではなく投与前後のモニタリングと・減量の規定で担保されている。

副作用

頻度 内容(COLUMBUS対PHAROS、いずれもエンコラフェニブ併用群)
高頻度 下痢(36%対52%)、悪心(41%対58%)、疲労(43%対61%)、皮疹(22%対27%)1
注意 ・、CPK上昇、低下
重篤・まれ 、重篤な出血、

まとめ

  • ビニメチニブはMEK1/2を阻害するで、現行のはいずれもエンコラフェニブとの併用に限られる(BRAF V600E/K変異陽性悪性黒色腫、BRAF V600E変異陽性)。単剤のは存在しない。
  • ⚠️ N黒色腫の単剤治療薬としての開発は承認に至らなかった。 NEMO試験でのを示したがの改善が伴わず、企業が申請を取り下げた経緯を持つ。
  • の報告頻度は評価方法で大きく変わる——定期的なを全例に課すと90%、承認された併用療法のでの症候性・無症候性合算は悪性黒色腫20%・ 2%。
  • 低下・出血・CPK上昇()にも注意し、投与前後のモニタリングを組み込む。
  • 同じでも(と併用)、(と併用)とは組み合わせるが異なり、取り違えない。

出典

  1. 1.MEKTOVI (binimetinib) tablet, film coated — full prescribing information(Pfizer (Array BioPharma) / DailyMed (U.S. National Library of Medicine)・2025)取得した版の改訂表示は2025年3月。適応は2項目とも単剤ではなくエンコラフェニブとの併用に限られ、①BRAF V600EまたはV600K変異陽性の切除不能・転移性悪性黒色腫、②BRAF V600E変異陽性の転移性非小細胞肺癌(NSCLC)である。BOXED WARNINGは無く、第4節 CONTRAINDICATIONS は逐語で None。COLUMBUS試験(悪性黒色腫、併用群)ではGrade判定を伴う左室駆出率低下が7%(Grade3が1.6%)、漿液性網膜症が20%(うち網膜剥離8%・黄斑浮腫6%)、出血が19%(Grade3以上3.2%)、CPK上昇が58%(Grade3-4が5%)に発現した。PHAROS試験(NSCLC、併用群)では左室駆出率低下11%(Grade3が1%)、漿液性網膜症2%、出血12%(Grade3-4が4.1%)、CPK上昇41%(Grade3-4が3.3%)であった。有害事象(併用群、COLUMBUS対PHAROS)は下痢36%対52%、皮疹22%対27%、悪心41%対58%、疲労43%対61%。閲覧 2026-09-08
  2. 2.Binimetinib versus dacarbazine in patients with advanced NRAS-mutant melanoma (NEMO): a multicentre, open-label, randomised, phase 3 trial(The Lancet Oncology(Dummer R, et al.)・2017)抄録のみを閲覧しており全文は未取得。NRAS変異陽性の進行悪性黒色腫402例をビニメチニブ45mg 1日2回経口群(269例)とダカルバジン1000mg/m²点滴静注3週毎群(133例)に2:1で無作為割付けした第3相試験で、主要評価項目の無増悪生存期間中央値はビニメチニブ群2.8か月・ダカルバジン群1.5か月(ハザード比0.62、95%信頼区間0.47〜0.80、p<0.001)とビニメチニブ群が上回った。Grade3-4の有害事象はCPK上昇19%対0%、高血圧7%対2%など。結論は「ビニメチニブは免疫療法不応後のNRAS変異黒色腫における新たな治療選択肢となりうる」というものである。閲覧 2026-09-08
  3. 3.Subretinal Fluid Associated With MEK Inhibitor Use in the Treatment of Systemic Cancer(JAMA Ophthalmology・2016)抄録のみを閲覧しており全文は未取得。4件の臨床試験でMEK阻害薬ビニメチニブの投与を受けた局所進行または転移癌の51例について、前向きに収集されたデータをpost hocに解析したものである。眼科評価は基線、2か月間は隔週、以後は毎月という定期スケジュールで行われた。試験期間中に網膜下液を生じたのは46例(90%)で、いずれかの時点で症状を訴えたのは9例(20%、95%信頼区間10〜33%)にとどまった。網膜下液を生じた46例のうち中心窩が侵されたのは37例(80%)。網膜下液を初回受診時に生じた39例では中心網膜厚が基線280(標準偏差26)μmから316(43)μmへ増加した(p<0.001)。ビニメチニブ中止後の最終受診時に網膜下液が残っていたのは2例(4%)のみで、いずれもSnellen視力20/25以上であった。結論は視覚症状が軽度かつ主に一過性であるというもの。⚠️ したがって「90%」という数字はビニメチニブを投与され定期的に光干渉断層計を撮られた集団の値であって、承認された用法(エンコラフェニブ併用)での市販後の頻度ではない。閲覧 2026-09-08