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Drug Atlas · A16 Hypnotics / 睡眠薬

テマゼパム

temazepam

分類
Hypnotics / 睡眠薬
商品名(EU)
Restoril
科目
PharmacologyClinical PharmacologyPsychiatry
トピック
A16: Benzodiazepines11: Sedative-hypnotics, anxiety and insomniaB-07: Sleep Disorders: Diagnostic Criteria and Clinical Management
承認適応
不眠障害・ナルコレプシー
禁忌疾患
重症筋無力症閉塞性睡眠時無呼吸緑内障
副作用
傾眠めまい錯乱前向性健忘
解毒薬
フルマゼニル

🧠 全体像:は、米国と英国でとして使われるのベンゾジアゼピンである。を作らず、を受けて排泄される。・と並ぶ「LOT」の一員で、のの一つでもある。消失のは約9時間で、にも睡眠維持にも使える。日本のPMDAの電子添文検索では、に該当する品目を確認できなかった(2026年11月6日時点)。国によって承認の有無や禁忌欄の書き方が大きく異なる薬の例として押さえる。

薬効群の中での位置づけ

薬 の目安 代謝の特徴
約3時間 CYP3A4で水酸化
3.5〜18.4時間(平均8.8時間)1 なし。
。なし
約16〜48時間
(、)が蓄積

⭐ LOTは、・・の英語名の頭文字(L・O・T)を並べた呼び名である。いずれも肝臓で酸化を受けずにで消えるため、の蓄積が起こらない。ただし、英国のSmPCは重度の肝不全を禁忌にしており、肝臓に問題がある患者で自由に使えるわけではない2。

💡 を飲むと、CYP3A4による水酸化でができる。つまりは、単剤のであると同時に、の代謝経路の途中にあるでもある。

睡眠障害のトピックにあるとおり、米国睡眠医学会の2017年の指針は、をとの両方に対して弱い推奨で挙げている。ただしの第一選択はである。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='temazepam'>テマゼパム</span>がGABA-A受容体の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='benzodiazepine binding site'>ベンゾジアゼピン結合部位</span>に作用"] --> B["GABAの作用が増強"]
    B --> C["中枢神経の鎮静・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anxiolysis'>抗不安</span>・筋弛緩<br>(動物では抗けいれん作用)"]
    C --> D["入眠の促進・睡眠の維持"]

英国のSmPCは、のがやに似ており、中枢神経の鎮静・・筋弛緩を起こすとしている。動物では抗けいれん作用がある。これらはGABAの増強によると考えられるが、他の神経伝達物質も関わる可能性がある2。

薬物動態

項目 内容
吸収 よく吸収され、は小さい(8%)。30 mgカプセルの服用後10〜20分で血漿中に測定でき、最高濃度(666〜982 ng/mL、平均865 ng/mL)には1.2〜1.6時間(平均1.5時間)で達する1
分布 結合率は96%
代謝 は作られない。 血中の主要な代謝物はO-抱合体。完全に抱合されてから排泄される。代謝物が蓄積することはない
消失 。の短い半減期は0.4〜0.6時間、は3.5〜18.4時間(平均8.8時間)で、対象と測定方法で幅がある。代謝物は約10時間の半減期で生成され、約2時間の半減期で排泄される。主要代謝物の生成が、の体内動態のである
排泄 投与量の80〜90%が尿中に出る。主要代謝物はO-抱合体(90%)、N-デスメチルのO-抱合体は少量(7%)
定常状態・誘導 30 mgを就寝1時間前に毎晩飲むと、3回目の投与で定常状態に達する。8週間投与してもは認められない
英国のデータ 夜間投与後のは若年成人で5.3〜11.5時間。朝に飲むと約30%延び、高齢者の平均は約15時間で、高齢女性のほうが長いことがある2
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='temazepam'>テマゼパム</span>を就寝前に服用"] --> B["吸収は速やか<br>約1.5時間で最高<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasma concentration (plasma level)'>血漿中濃度</span>"]
    B --> C["肝臓で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucuronidation'>グルクロン酸抱合</span><br>(O-抱合体)"]
    C --> D["活性のない抱合体として尿中へ<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='active metabolite'>活性代謝物</span>の蓄積なし"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='terminal half-life'>終末半減期</span>は平均8.8時間"]
    E --> F["翌朝の持ち越しは中程度<br>高齢者では半減期が延びる"]

適応

  • 米国:の短期治療(通常7〜10日)。効能を裏づけたは2週間のもので、最終評価は治療の終わりに行ったである1。
  • 英国:重度または能力障害を伴う、あるいは強い苦痛を伴う睡眠障害の短期治療。起床後にも薬効が残ることが望ましくない患者や、一過性の睡眠障害に向く。小手術や検査のにも使う(とくに外来患者)2。
  • 日本:の電子添文は確認できない。国内でとして使う場合は、やブロチゾラムなどの承認品目を選ぶことになる。

用法・用量

米国(カプセル7.5 / 15 / 22.5 / 30 mg)1 英国(内用液10 mg/5 mL)2
成人 通常は就寝前に15 mg。7.5 mgで足りる人(一過性の不眠など)も、30 mgが必要な人もいる 就寝前に10〜30 mg。ほとんどの患者は20 mgで足りる。反応が乏しければ30〜40 mgまで増やせる
高齢者・衰弱者 7.5 mgから開始 半量(5〜15 mg)で十分なことが多い
小児 安全性・有効性は不明 には推奨しない
期間 短期(7〜10日)。減量は できるだけ間欠的に。では減量期間を含めて4週間を超えない。長期の慢性使用は推奨しない
米国の適応はの短期治療のみ 手術・検査の30分〜1時間前に20〜40 mg

英国のSmPCは、30 mg以上の量は翌日への持ち越し(宿酔)が起こりやすく、とくにに慣れていない人と高齢者で目立つと注意している。

禁忌・注意

⚠️ 禁忌の書き方が国で大きく異なる。

内容
米国(2026年3月改訂) 添付文書に禁忌の見出しはない。患者向けガイドは、または成分にアレルギーがあれば服用しないとしている1
英国 過敏症(ベンゾジアゼピン全般を含む)、神経筋性の低下(重症筋無力症を含む)、急性肺不全・重度の呼吸抑制・(など)、重度の肝不全、恐怖症・強迫状態・慢性の精神病、軽い不安状態、急性閉塞隅角緑内障、うつ病・不安とうつ病の単独治療、授乳2
  • 米国の:オピオイドとの併用による鎮静・呼吸抑制・昏睡・死亡、乱用・誤用・、継続使用後の急な中止による生命に関わる。依存の危険は使用期間が長く用量が多いほど増す。減量はで行う1。
  • 重篤な:舌・・喉頭のが、初回または以降の投与後に報告されている。症状が出たら再投与しない。
  • 高齢者・衰弱者:・めまい・・失調が大きい量で急に増える。の低下に伴う転倒のリスクが高い。
  • うつ病:重いうつ病や潜在的なうつ病がある患者には慎重に使う。自殺傾向が隠れていることがある。英国では、うつ病や不安とうつ病に対する単独治療としては使わない。
  • :英国のSmPCは、服用の数時間後に起こりやすいとし、7〜8時間途切れずに眠れる状況でのみ服用するよう求めている。睡眠時間が足りないと運転能力などにも影響が残る。
  • 睡眠中の複雑な行動:運転、食事の準備と摂食、電話、性行為、夢遊などで、覚えていない行動が起こりうる。アルコールや他のの併用、最大量を超える使用でリスクが上がる。起きたら中止を強く考える12。
  • 妊娠・授乳:米国の現行の添付文書は、妊婦の観察研究で大きなとの明確な関連は報告されていないとしている一方、分娩前後の服用では新生児の鎮静・呼吸抑制・・や離脱の観察が必要としている。授乳中は乳児の鎮静・・体重増加不良を観察する。英国は授乳を禁忌とする。
  • 併用:アルコールとは併用しない。ナトリウムオキシバートは併用を避ける。他のとはに効く。CYP阻害薬(・・)はベンゾジアゼピンのクリアランスを下げ、リファンピシンなどのは上げる2。

副作用

米国の対プラセボ対照試験(1,076例、783例)で1%以上みられた副作用は次のとおりである1。

副作用
眠気 9.1% 5.6%
頭痛 8.5% 9.1%
疲労 4.8% 4.7%
4.6% 8.2%
4.5% 3.4%
めまい 4.5% 3.3%
悪心 3.1% 3.8%
宿酔(持ち越し) 2.5% 1.1%
1.5% 0.4%
1.3% 0.5%
  • 治療初期:英国のSmPCは、治療の始めに起こりうるものとして、翌日の眠気、感、と失調(とくに高齢者)、健忘、注意力の低下、めまい、筋力低下、、などを挙げ、これらは継続投与で通常は消えるとしている2。
  • まれ:健忘、、水平性眼振、(落ち着きのなさ・過剰な興奮・)は0.5%未満であった1。
  • 中止時:、不安、頭痛、めまい、振戦、発汗、などが起こりうる。まれに大量使用後の中止で痙攣やが出る2。
  • 過量:眠気、失調、、、眼振が主で、昏睡・低血圧・呼吸抑制はときに起こるが、単独ではまれに重症になる程度である。重いの患者では呼吸抑制が重くなる。重度の中枢抑制ではを考えるが、混合過量や、を下げる薬(など)を飲んでいる場合には使わない2。

まとめ

  • のないベンゾジアゼピン。は平均約9時間(3.5〜18.4時間)。LOT(・・)の一員で、のでもある。
  • 米国ではの短期治療(通常7〜10日)に用い、通常量は就寝前15 mg(高齢者は7.5 mgから)。英国は4週間を超えない。
  • 日本の電子添文は確認できない。禁忌は国によって大きく異なり、米国の添付文書は禁忌の節を持たず、英国は重症筋無力症・睡眠時無呼吸・重度の肝不全・授乳などを禁忌にしている。
  • 、睡眠中の複雑な行動、依存、アルコール・オピオイドとの併用による呼吸抑制に注意する。拮抗薬は。

出典

  1. 1.Restoril (temazepam) capsules USP, CIV — prescribing information (SpecGx LLC)(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)/SpecGx LLC・2026)2026年3月改訂の米国添付文書で、適応が不眠症の短期治療(通常7〜10日)であること、成人の通常量が就寝前15 mg(7.5 mgで足りる人も30 mgが必要な人もいる)で高齢者・衰弱者は7.5 mgから始めること、活性代謝物がなく主要代謝物がO-抱合体であること、消失の終末半減期が3.5〜18.4時間(平均8.8時間)であること、枠組み警告がオピオイド併用・乱用と嗜癖・依存と離脱反応であること、見出しとしての禁忌の節がなく、患者向けガイドが本剤の成分へのアレルギーがあれば服用しないとしていることを確認した。閲覧 2026-11-06
  2. 2.Temazepam 10mg/5ml Oral Solution — Summary of Product Characteristics (SmPC)(Syri Limited(electronic medicines compendium、英国)・2022)emcの最終更新2022年11月10日の英国SmPCで、適応が重度または能力障害を伴う睡眠障害の短期治療と小手術・検査の前投薬であること、成人10〜30 mg・高齢者は半量、不眠症では2〜4週間を超えないこと、禁忌が過敏症・神経筋性の呼吸筋力低下(重症筋無力症を含む)・急性肺不全・重度の呼吸抑制・睡眠時無呼吸症候群・重度の肝不全・急性閉塞隅角緑内障・軽い不安状態・単独でのうつ病などと授乳であること、夜間投与後の消失半減期が5.3〜11.5時間であることを確認した。閲覧 2026-11-06