検査値ノート一覧へ

Lab values · Published

ADAMTS13活性

ADAMTS13 activity

別名
ADAMTS13von Willebrand因子切断酵素活性
臓器系
血液
科目
Internal MedicineTranslational Medicine and Pathophysiology
トピック
内科学 H-17:血栓性血小板減少性紫斑病と溶血性尿毒症症候群内科学 S-44:血栓性微小血管症(TTP・HUS)病態生理学 1-17:凝固系の低下と亢進が併存する病態(TTP・HIT・DIC)
関連疾患
Heyde症候群移植関連血栓性微小血管症血栓性血小板減少性紫斑病血栓性微小血管症溶血性尿毒症症候群
監視対象薬
遺伝子組換えADAMTS13製剤

🧠 全体像:は、()という広いカテゴリーの中からTTPだけを切り出すための検査であり、重度欠乏(一般に10%未満)がを定義する。ただし結果が判明するまで数時間〜数日を要するため、治療前に検体だけ確保し、結果を待たず臨床予測ツールで治療を始めるのが実務の核心である。HUSなど他のではADAMTS13は正常〜軽度低下にとどまる。

何を測っているか

ADAMTS13はなどで産生されるで、血管内皮から分泌された超()をA2ドメインで切断し、血小板を過剰に絡めとらない大きさへ調整する。活性が失われると超が血中に残存し、のかかる細動脈・毛細血管で血小板を過剰に・凝集させ、を形成する。

活性測定に加えて、()と抗ADAMTS13 IgG抗体を併せて測ることで、自己抗体による後天性()か、ADAMTS13遺伝子変異による先天性()かを鑑別する。

基準値と単位

活性は正常プール血漿を100%とした相対値(%、またはIU/dL)で表す。

区分 目安
正常 おおむね50〜150%
グレーゾーン 10〜20%。臨床像と合わせて判断する
重度欠乏 10%未満。の診断上の1

⚠️ 測定法により感度・特異度が異なり、値が変わりうる。

測定法 特性
FRETS-VWF73(蛍光基質法) 感度94%・特異度99%と最も精度が高く、迅速検査として広く使われる1
・ 感度69%にとどまり、偽陰性に注意する1
・ 特異度は高いが煩雑で、日常診療での使用は限られる
flowchart TD
    A["MAHA+原因不明の血小板減少"] --> B["治療前に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ADAMTS13 activity'>ADAMTS13活性</span>・インヒビター検体を採取"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='PLASMIC score'>PLASMICスコア</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pretest probability'>事前確率</span>を評価"]
    C -->|"高リスク(6〜7点)"| D["結果を待たず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='therapeutic plasma exchange, TPE'>血漿交換</span>を開始"]
    C -->|"低〜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medium risk'>中リスク</span>"| E["結果を待って評価を継続"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ADAMTS13 activity'>ADAMTS13活性</span>が判明"]
    E --> F
    F -->|"10%未満"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombotic thrombocytopenic purpura'>TTP</span>を支持:治療継続"]
    F -->|"10〜20%"| H["グレーゾーン:臨床像で判断"]
    F -->|"20%超"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemolytic uremic syndrome'>HUS</span>/aHUS・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disseminated intravascular coagulation'>DIC</span>など他の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombotic microangiopathy'>TMA</span>を再考"]

低値の意味

程度 背景 解釈
重度欠乏(10%未満) 自己抗体()、ADAMTS13遺伝子変異() TTPを強く支持する1
中等度低下 敗血症、DIC、肝疾患、妊娠、悪性腫瘍、術後、加齢 非特異的。と取り違えない——全身性疾患の随伴所見として起こる
正常〜軽度低下 STEC-、(aHUS) HUSを支持し、を除外する方向に働く

⭐ 実務上の最大の落とし穴は、中等度低下を重度欠乏と取り違えることである。敗血症やでも活性は低下するが10%を大きく割ることは少なく、を跨いだかどうかが診断的な意味を持つ。

高値の意味

臨床的な意味はほとんどない。として炎症などで軽度に上昇しうるが、を左右する所見ではない。

⚠️ 測定上の注意

  • 必ず治療前に採血する:・後は正常なADAMTS13が補充され活性が見かけ上上昇し、重度欠乏の判定ができなくなる1。
  • 検体はクエン酸血漿を用いる。溶血によるやは、蛍光基質を用いる測定法(FRETS-VWF73など)の判定を干渉しうる。
  • 結果判明までは数時間〜数日を要することが多い。が高ければ結果を待たず治療を開始し、判断にはが有用である。7項目(、溶血所見、がん/移植歴、、、腎機能など)からなり、高リスク(6〜7点)群では感度90%・特異度92%でADAMTS13重度欠乏を予測する2。
  • ・LDH・などの溶血所見は結果判明前の代用にはなるが、そのものの代わりにはならない。

経時変化とモニタリング

急性期は単回値で重度欠乏の有無を判定するが、寛解後は推移を追う検査に切り替わる。では、後もを定期的に測定し、活性の低下傾向や抗ADAMTS13抗体の再出現は再発の先行指標となる。ISTHガイドラインは、無症状でも活性が低いの症例に対し、妊娠中を除きリツキシマブによる先制的治療を条件付きで推奨している(妊娠中は予防的)3。

⚠️ 投与中はだけで寛解を判断しない。はと血小板の結合を阻害して形成を速やかに抑える薬剤で、正常化までの期間短縮と関連死・再発・血栓塞栓症の複合の有意な減少を示したが4、やADAMTS13欠乏そのものを治療するわけではない。免疫抑制療法によるの回復を並行して確認し、活性が低いままだけを中止すると増悪しうる。

まとめ

  • 10%未満の重度欠乏がを定義し、10〜20%はグレーゾーン、正常〜軽度低下はなど他のを示唆する。
  • 中等度低下は敗血症・・肝疾患・妊娠・悪性腫瘍などで非特異的に起こり、と取り違えないことが実務上の要点である。
  • 結果判明を待たず、など臨床予測ツールでを評価し、治療前に検体を確保したうえでを開始する。
  • 測定はクエン酸血漿で行い、治療開始前に必ず採血する。溶血・はの判定を干渉しうる。
  • 寛解後もモニタリングを継続し、活性低下は再発の先行指標として先制的リツキシマブの検討につながる。投与中は血小板正常化だけでなくの回復を確認する。

出典

  1. 1.ISTH guidelines for the diagnosis of thrombotic thrombocytopenic purpura(International Society on Thrombosis and Haemostasis・2020)ADAMTS13活性10 IU/dL(10%)未満を重度欠乏の診断カットオフとし、10〜20%はグレーゾーンとして臨床判断を要するとした。FRETS-VWF73蛍光基質法は感度94%・特異度99%と他の測定法より高精度で、免疫測定法(ELISA)は感度69%にとどまることを確認した。活性20%超ではHUSなど他のTMAを再考すべきとし、検体は血漿交換・血液製剤投与の開始前に採取するよう推奨した閲覧 2026-08-03
  2. 2.Derivation and external validation of the PLASMIC score for rapid assessment of adults with thrombotic microangiopathies: a cohort study(Lancet Haematology・2017)血小板数・溶血所見・がん/移植歴・MCV・INR・腎機能など7項目からなるPLASMICスコアはADAMTS13重度欠乏の予測に優れ(C統計量0.94〜0.96)、高リスク(6〜7点)群では感度90%・特異度92%で、結果判明前の経験的な血漿交換開始の判断に使えることを確認した閲覧 2026-08-03
  3. 3.ISTH guidelines for treatment of thrombotic thrombocytopenic purpura(International Society on Thrombosis and Haemostasis・2020)無症状だがADAMTS13活性が低い寛解期の免疫性TTPに対し、妊娠中を除きリツキシマブによる先制的治療を条件付きで推奨し(妊娠中は予防的血漿交換)、活性低下を再発の先行指標として扱う方針を確認した閲覧 2026-08-03
  4. 4.Caplacizumab Treatment for Acquired Thrombotic Thrombocytopenic Purpura(New England Journal of Medicine・2019)カプラシズマブ併用群は血小板数正常化までの期間が有意に短く、TTP関連死・再発・血栓塞栓症の複合アウトカムが対照群より74%少なく、TTP再発も67%少なかったことを確認した(HERCULES試験)閲覧 2026-08-03