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Lab values · Published

メサコリン誘発試験

Methacholine challenge test

別名
メタコリン誘発試験メサコリン負荷試験methacholine challenge test
臓器系
呼吸器
科目
Pulmonology and Thoracic Surgery
トピック
呼吸器内科 05:気管支誘発試験と薬理学的スパイロメトリー
関連疾患
気管支喘息

🧠 全体像:の価値は「陽性を当てる」ことより「陰性で除外する」ことにある。高感度でが強く、症状が現在または直近にあり十分なのもとで陰性なら活動性の喘息の可能性は大きく下がる。一方、陽性はの存在を示すだけで喘息に特異的ではない——COPDやでも陽性になりうる。「除外に強く、確定には弱い」という非対称性がこの検査の読み方の出発点になる1。

適応となる場面

flowchart TD
    A["喘息を疑う症状"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spirometry'>スパイロメトリー</span>施行"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='variable airflow limitation'>変動性気流制限</span>を証明できたか"}
    C -->|"できた"| D["喘息を診断"]
    C -->|"正常または非診断的"| E["症状時再検・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peak expiratory flow'>PEF</span>日誌でも不明確"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methacholine challenge test'>メサコリン誘発試験</span>を検討"]
    F --> G{"禁忌に該当するか"}
    G -->|"該当なし"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methacholine challenge test'>メサコリン誘発試験</span>を施行"]
    G -->|"該当あり"| I["延期または他の誘発法を検討"]

が正常または非診断的でも喘息は否定できない。は無症状の時期には目立たなくなるため、正常なの背後に喘息が隠れていることがある。この検査は、その「隠れた過敏性」を人為的な刺激で顕在化させて確かめる。

診断以外にも、治療反応性の評価、消防士・パイロット・士などが問題となる職業への配置前評価、運動誘発性の症状が疑われるアスリートでの吸入薬使用の確認、喘息の症状評価などにも用いられる2。

何を見ているか

見ているのはの収縮しやすさ、すなわちである。はの(M3)を直接刺激して収縮させる薬で、健常者の気道でも高用量では収縮するが、がある気道はより低用量で反応する(受容体機序の詳細はを参照)。は喘息のだが喘息だけのものではなく、・・嚢胞性線維症・呼吸器感染後などでも認められる。

運動・・アデノシン一リン酸などの間接的刺激(炎症細胞・神経を介して間接的に気道を収縮させる)とは異なり、はを直接収縮させる「」に分類される。

手順

  1. 基礎を測定する。
  2. (希釈液)対照を吸入し、が変化しないことを確認する。2017年の技術基準は、希釈液吸入前後のの増減が10%未満なら第1段階のへ進み、10〜20%なら希釈液の段階をやり直し、20%以上低下したら誘発試験そのものを中止すると定めている3。
  3. を倍加または4倍ずつ増量しながら段階的に吸入し、各段階の吸入後30秒・90秒でを測定する。
  4. 希釈液吸入後のから20%以上低下するか、最高用量(400 µg)に達するまで続ける。20%低下の目標値は、希釈液吸入後の値に0.8を掛けて算出する3。最高用量でも20%低下しなければ、は「最終投与量を超える」と報告し、外挿しない3。

⚠️ 希釈液だけで低下した場合の扱いを取り違えない。技術基準は、希釈液で20%を超えて低下したらを報告せず、「希釈液の吸入後に有意な肺機能低下がみられたため、は投与しなかった」と記載するよう指示している。そして、この反応が臨床的に何を意味するかは不明であると同基準自身が明記している——そのものへの過敏性かもしれないし、の手技そのものによるかもしれず、区別できない。同基準が引用する報告では、希釈液に20%以上反応する患者は約1%、10%以上の変化は5.8%である3。「希釈液で下がった=高度の」と読み替えてはならない。なお中止の閾値は、技術基準の手順の節が20%以上、報告の節とCACPTの資料が20%超と書いており、同じ標準の中で表記が揺れている3 2。

判定指標には()と()の2つがある。2017年の技術基準は、装置・プロトコルが違っても結果を比較できるという理由から、吸入器から実際に送達された有効用量に基づくを標準の報告指標とし、に代わって用いるよう推奨した3 2。💡 を使うと結果が装置の仕様に縛られる——同じ溶液濃度でも特性の違う装置は違う量を届けてしまうからである3。

判定基準

⭐ を20%低下させる用量()または濃度()から、の有無と程度を判定する。下表はCACPTの総説が「技術基準を改変したもの」と断って掲げている転記表である(技術基準側の該当表は本文外にあり取得できていない)2。

判定
400 µg超 16 mg/mL超 正常
100〜400 µg 4〜16 mg/mL 境界域
25〜100 µg 1〜4 mg/mL 軽度
6〜25 µg 0.25〜1 mg/mL 中等度
6 µg未満 0.25 mg/mL未満 高度

この検査の診断的価値は、検査前の喘息らしさ()がおよそ30〜70%で、かつ症状が喘息と矛盾しない場合に最も高まる2。が極端に低いか高い集団では、結果の解釈的価値はそれだけ下がる。

⚠️ 測定上の注意と禁忌

  • 禁忌:高度の(吸入前が予測値の60%未満、または成人で1.5 L未満。原文は or で、両方満たす必要はない)、受け入れ可能で再現性のあるができない、直近3か月以内の心筋梗塞・脳卒中、コントロール不良の高血圧(収縮期200 mmHg超・拡張期100 mmHg超)、既知の動脈瘤、・頭蓋内圧・・の上昇が有害となる状態(直近の眼科・頭蓋・胸部・腹部手術など)1 2。
  • ⚠️ このうちを「禁忌」として覚えない。 2017年の技術基準は逐語で「低下した肺機能は相対的禁忌である。重度のを伴う喘息患者であっても、重篤な有害事象の全体的なリスクは小さいからである」と述べ、どの肺機能水準で禁忌になるかは議論が分かれると明記したうえで、「従来の推奨に沿えば、吸入前が予測値60%未満または成人で1.5 L未満の患者に段階的誘発試験を行わないのが妥当である」と書いている3。💡 同基準は続けて、実際には低いは安全性よりも解釈の問題を大きくすると述べている——基礎の気道径が細いこと自体が過大な反応を生むためである3。CACPTの資料も禁忌を「禁忌」と「」の2枚のに分けているだけで、英語の absolute という語はこの資料の全文に一度も現れない2。
  • :妊娠・授乳中と、(重症筋無力症治療薬など)使用中——この2つは技術基準が固有のとして名指ししている3。ほかに活動性の上気道・(2〜6週間以内)、β遮断薬使用中(へのがあり、による解除も効きにくくなる)、希釈液の段階でが20%を超えて低下した場合が挙げられている1 2。
  • ⚠️ 偽陰性:・のが不十分だとが隠れて陰性化しうる。の目安は(など)6時間、12時間、長時間作用性(など)36時間、超長時間作用性(・・など)48時間、()168時間=7日、経口12〜24時間である2。症状のない時期の検査、直近の曝露がない喘息、間接刺激にしか反応しないでも偽陰性になりうる1。
  • ⚠️ 偽陽性:、、心不全、嚢胞性線維症、喫煙、呼吸器感染後などでも陽性になりうる。無症候の集団でも最大7%が陽性を示すとされ、「陽性=喘息」ではない1。
  • 安全管理:などの短時間作用性と皮下注用エピネフリンを検査室に常備し、酸素・器・血圧計・を使える状態にして行う。検査が始まったら患者を一人にしない3。が20%以上低下した時点で試験を中止してを投与する1。⚠️ 帰宅させてよいのは、検査後の肺機能が基礎値の10%以内まで回復したことを確認してからである(「基礎値近くまで」という曖昧な言い方をしない)。薬を使わなくても45〜60分で自然に回復するのが通常だが、実際にはを投与して回復させる3。

次に進むべき検査

まとめ

  • 高感度・強いを持つ検査で、に強く確定診断には弱い。
  • 見ているのはの過敏性であり、喘息に特異的な所見ではない。
  • 2017年の技術基準は、装置間で比較できるをに代わる標準の報告指標とした。
  • 低い基礎は同基準では相対的禁忌であり、「禁忌」ではない。60%予測値・1.5 Lという線は「行わないのが妥当」という目安で、基準自身が議論の分かれる点だと断っている。
  • 希釈液だけでが20%以上低下したら中止してを報告しない。⚠️ この反応の臨床的意味は基準自身が「不明」としており、高度のの証拠として読まない。
  • 検査後は基礎値の10%以内まで回復したことを確認してから帰宅させる。
  • 不足による偽陰性、他疾患による偽陽性を理解しないまま結果だけを見るとにつながる。
  • FeNOとは見ている軸(炎症か過敏性か)が異なり、互いに代替しない。

出典

  1. 1.Methacholine Challenge Test(StatPearls Publishing(Sayeedi I, Goldin J, Widrich J)・2025)検査の高い陰性的中率と除外診断としての位置づけ、PD20/PC20の陽性・陰性カットオフの考え方、禁忌、偽陰性を招く要因、偽陽性を来す疾患群(無症候例での陽性率を含む)、検査後の安全管理手順を確認した。⚠️ 2026年9月21日の実行ではNCBI BookshelfがreCAPTCHAを返し、素のcurl・WebFetch・statpearls.comのいずれからも本文を再取得できなかったため、本ノートの記述をこの出典だけで再照合してはいない。閲覧 2026-08-04
  2. 2.Methacholine Challenge Testing. Review and 2017 ERS Update(Canadian Association of Cardio-Pulmonary Technologists(Kajnar T, Canadian Pulmonary Function Symposium)・2018)発行元PDF(51枚のスライド)の全文で確認した。2017年ERS技術基準(Coates AL, Wanger J, Cockcroft DW, et al. Eur Respir J 2017;49:1601526)の要点として、PD20をPC20に代わる標準報告指標とすること、PD20・PC20による5段階の気道過敏性分類(Modified from ERS technical standard と明記された転記表)、代表的薬剤の休薬期間の表(サルブタモール6時間、イプラトロピウム12時間、サルメテロール等のLABA36時間、インダカテロール等の超長時間作用型LABA48時間、チオトロピウム168時間=7日、経口テオフィリン12〜24時間)、検査前確率30〜70%で診断的価値が最も高いこと、気管支拡張薬投与後のFEV1が基礎値の10%以内へ戻るべきことを確認した。⚠️ 禁忌のスライドは Contraindications to MCT と Relative Contraindications to MCT の2枚に分かれており、Absolute という語はこの資料の全文に一度も現れない。希釈液段階での20%超の低下は後者(相対的禁忌)の側に置かれている。閲覧 2026-08-04
  3. 3.ERS technical standard on bronchial challenge testing: general considerations and performance of methacholine challenge tests(European Respiratory Society・2017)出版社サイトが403のため、同一論文の保存版HTML全文(本文の散文のみ。表1〜6の中身は View this table の内側にあり取得できていない)で確認した。低下した肺機能は相対的禁忌であると明記され(Reduced lung function is a relative contraindication…)、どの水準で禁忌になるかは controversial とされたうえで、気管支拡張薬吸入前FEV1が成人で予測値60%未満または1.5 L未満なら段階的誘発試験を行わないのが妥当とされること、高血圧の数値(収縮期200 mmHg超・拡張期100 mmHg超)、眼科手術後と頭蓋内圧上昇が禁忌であること、妊娠・授乳とコリンエステラーゼ阻害薬使用がメサコリン固有の相対的禁忌として挙げられること、希釈液対照の判定(変化10%未満なら次へ進み、10〜20%なら希釈液段階をやり直し、20%以上低下したら誘発試験を中止)、希釈液で20%を超えて低下した場合はPD20を報告せず所定の文言を記載すること、希釈液に反応する患者は約1%で10%以上の変化は5.8%に起こり、その反応の臨床的意味は不明であると明記していること、各段階で吸入後30秒・90秒に測定し希釈液吸入後のFEV1から20%低下を終点とすること、皮下注用アドレナリンとサルブタモールを検査室に常備し酸素を使える状態にすること、肺機能が基礎値の10%以内に回復するまで帰宅させないこと、無投薬でも45〜60分で自然回復するのが通常であることを確認した。閲覧 2026-09-21