皮膚科学

皮膚科学 · 3-02

スティーヴンス・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症

Stevens-Johnson Syndrome and Toxic Epidermal Necrolysis

前提:病態
アポトーシス
前提:正常
過敏症 II〜IV
疾患
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群固定薬疹薬疹(SJS・TENを含む)
症状
標的病変表皮剥離
検査値
重炭酸
スコア
SCORTEN

🧠 全体像:スティーヴンス・(Stevens–Johnson syndrome:SJS)とは、広範な死によると重いを来す同一スペクトラムの生命危機的反応である。疑った時点でを中止し、を中心とする多職種集中管理を始める。

定義

急性に生じた紅斑・暗赤色斑・上の水疱と、でし得る表皮ので分類する。

病型 または可能な 併存する病変の形態
10%未満 限局性の典型的または隆起性
SJS 10%未満 広汎な紅斑性・の斑、または扁平な
overlap 10〜30% 広汎な斑または扁平な
TEN(斑を伴う型) 30%超 広汎な斑または扁平な
TEN(斑を伴わない型) 10%超 大きな表皮のシートとしてし、斑もも伴わない

⚠️ 分類軸は面積だけではなく、病変の形態との2本である。 「TENは30%超」と覚えると斑を伴わない型(10%超)を取り落とす。同じ10〜30%でも、斑を伴わなければTENに分類されうる1。

💡 面積が同じでも病型が分かれるのは、水疱性とSJSの区別がが限局性か広汎性かで決まるからである1。

SJSを「粘膜だけの軽症TEN」と捉えるのは不正確である。が小さくても眼・気道・泌尿生殖器の障害は重篤になり得る。

原因と病態

多くは薬剤性で、開始後4〜28日程度に発症するが、再曝露ではより早い。高リスク薬には、カルバマゼピン、フェニトイン、、、、一部のなどがある。感染症が関連する場合や原因不明例もある。

💡 と原因薬の関連には民族差があり、スクリーニング推奨も国で異なる。 カルバマゼピンによるは漢民族で-B15:02保有と強く関連し、台湾で保有者へのカルバマゼピン投与を避けた前向き研究では陰性者にが発生しなかった2。米国/CPICは同型陽性かつ未使用の患者への投与を避けるよう勧告している3。によるは-B58:01と関連し、ACR 2020は東南アジア系(漢民族・韓国系・タイ系)・アフリカ系米国人への投与前スクリーニングを条件付きで推奨する一方、日本人はで欧州系と同じ区分に置かれ約1〜2%と他のアジア集団より低く、推奨の対象になる集団は民族・国によって異なる4。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='culprit (suspected) drug'>被疑薬</span>または感染刺激"] --> B["薬剤特異的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytotoxic T cell'>細胞傷害性T細胞</span>・NK細胞の活性化"]
  B --> C["granulysin・Fas系などの細胞傷害"]
  C --> D["広範な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratinocyte'>角化細胞</span>死"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidermal detachment'>表皮剝離</span>と皮膚バリア喪失"]
  D --> F["眼・口腔・気道・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vulva'>外陰部</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucosal injury'>粘膜障害</span>"]
  E --> G["体液喪失・感染・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thermoregulatory dysfunction'>体温調節障害</span>"]

臨床像

発熱、倦怠感、、眼痛などのに続き、疼痛を伴う紅斑・暗赤色斑・が急速に融合する。、の、を認める。

は通常2か所以上で、口唇の血痂・口腔びらん、結膜炎・、びらん、を来す。咳、低酸素、嗄声は障害を示唆する。

初期評価と診断

  1. 発症前8週の全薬剤を、・・まで化する。
  2. ・可能な、粘膜部位、バイタル、尿量、呼吸状態を反復評価する。
  3. 皮膚生検で表皮壊死と表皮下裂隙を確認し、必要に応じてでを除外する。
  4. 血算、電解質、腎・肝機能、血糖、血液ガス、感染評価を行う。
  5. の有無にかかわらず早期に眼科評価を依頼する。
鑑別 手掛かり
主に乳幼児・腎不全、に乏しく、で
無菌性小膿疱、、より短い
全身性水疱性 過去と同じ部位、境界明瞭な色素沈着を残すことが多い
と病理で鑑別

重症度評価

は入院後24時間以内と第3日を目安に評価する。

1点となる項目 閾値
年齢 40歳超
悪性腫瘍 あり
心拍数 120/分超
初日の 10%超
10 mmol/L超
血糖 14 mmol/L超
20 mmol/L未満

は予後推定を助けるが、治療開始や転棟判断を遅らせるものではない。

⚠️ は過大評価しうる。 シンガポールの17年間のコホートでは、のは概ね良好だったが、高スコア域やが行われた症例、より新しい時代の症例で死亡率を過大評価する傾向が確認された5。

治療

直ちに行うこと

  • をすべて中止し、薬剤名と重症反応を明確に記録する。
  • 、、眼科、必要に応じ熱傷、呼吸器、婦人科・泌尿器科、栄養、のチームで診療する。
  • 重い臓器障害はに関係なくを行う。広範なでは経験ある熱傷・施設への搬送を検討する。

支持療法

室温管理、適切な輸液・、尿量監視、、鎮痛、、非性被覆材による創管理を行う。壊死表皮を機械的に一律除去する方針は施設経験と病変に応じる。感染を厳重に監視するが、予防的は通常行わない。

眼表面は初期から反復診察し、潤滑、局所治療、癒着予防を行う。口腔・粘膜も、清潔、癒着予防を行う。

免疫調節療法

、、、などが用いられることはあるが、比較試験の確実性は限定的で、単一の普遍的標準薬は確立していない。発症時期、禁忌、感染・腎機能、施設プロトコルを踏まえて専門チームが早期に選択する。は標準治療ではない。

⚠️ 「が有効」と単純に言えるわけではない。 観察研究のでは、群と支持療法群で死亡率に有意差はなく(プール1.00)、有効性を支持する根拠は乏しいとされた6。一方、台湾の無作為化試験ではが従来の副腎皮質ステロイドと比較して皮膚治癒までの期間を短縮し、消化管出血の頻度を減らしたと報告されている7。

まとめ

  • は・可能なでSJS、overlap、TENに分類する。
  • 疑った時点でを中止し、多職種による支持療法を開始する。
  • 眼・気道・泌尿生殖器粘膜の評価はにかかわらず重要である。
  • は予後評価に用いるが、治療や搬送を遅らせない。

出典

  1. 1.Clinical classification of cases of toxic epidermal necrolysis, Stevens-Johnson syndrome, and erythema multiforme(Archives of Dermatology(Bastuji-Garin ら、国際専門家パネル)・1993)抄録(PMID 8420497、Arch Dermatol 129巻1号92-96頁)で確認した。専門家群が、多形紅斑様病変の型(典型的標的状病変、隆起性または扁平な非典型的標的状病変、紫斑性斑)と表皮剥離の広がりの2軸で分類を提案した。合意された分類は5区分である。水疱性多形紅斑は体表面積10%未満の剥離に限局性の典型的標的状病変または隆起性非典型的標的状病変を伴うもの、スティーブンス・ジョンソン症候群は10%未満の剥離に広汎な紅斑性もしくは紫斑性の斑または扁平な非典型的標的状病変を伴うもの、重複型は10〜30%の剥離に広汎な紫斑性斑または扁平な非典型的標的状病変を伴うもの、斑を伴う中毒性表皮壊死融解症は30%超の剥離に広汎な紫斑性斑または扁平な非典型的標的状病変を伴うもの、斑を伴わない中毒性表皮壊死融解症は10%超の剥離が大きな表皮のシートとして起こり紫斑性斑も標的状病変も伴わないものと定義された。⚠️ 剥離面積だけでなく病変の形態が分類軸に入っており、30%超という数値が掛かるのは斑を伴う型のほうである閲覧 2026-09-22
  2. 2.Carbamazepine-induced toxic effects and HLA-B*1502 screening in Taiwan(The New England Journal of Medicine・2011)台湾の4,877人を対象とした前向き研究で、HLA-B*1502保有率は7.7%であり、保有者にカルバマゼピンの使用を避けた結果、陰性者にSJS/TENが1例も発生しなかった(歴史的発症率から約10例が見込まれていた)こと閲覧 2026-08-26
  3. 3.Carbamazepine Therapy and HLA Genotype(NCBI Medical Genetics Summaries(CPIC/FDA添付文書に基づく)・2025)HLA-B*15:02陽性でカルバマゼピン未使用の患者には使用を避けるようCPIC・FDAが勧告していること閲覧 2026-08-26
  4. 4.Allopurinol Therapy and HLA-B*58:01 Genotype(NCBI Medical Genetics Summaries(CPIC/ACRガイドラインに基づく)・2020)アロプリノールによる重症薬疹はHLA-B*58:01と関連し、ACR 2020は東南アジア系(漢民族・韓国系・タイ系)・アフリカ系米国人への投与前スクリーニングを条件付きで推奨すること。⚠️ 本文献には尺度の異なる2組の数値がある。ACRガイドラインの節が引く保有率(prevalence)は漢民族・韓国系・タイ系7.4%、アフリカ系米国人3.8%、白人・ヒスパニック系各0.7%。別に本文が示すアレル頻度(allele frequency)は漢民族 約10〜15%、韓国系 約12%、タイ系 約6〜8%で、日本人は欧州系と同じ区分に置かれ約1〜2%である(日本人の保有率そのものは本文献に示されていない)閲覧 2026-09-17
  5. 5.Assessment and Comparison of Performance of ABCD-10 and SCORTEN in Prognostication of Epidermal Necrolysis(JAMA Dermatology・2020)シンガポールの196例・17年間のコホートでSCORTENの較正は概ね良好だったが、免疫調節療法が行われた症例やより新しい時代の症例で死亡率を過大評価する傾向があったこと閲覧 2026-08-26
  6. 6.Efficacy of intravenous immunoglobulin for treatment of toxic epidermal necrolysis: a systematic review and meta-analysis(British Journal of Dermatology・2012)2011年7月末までの文献を対象とした系統的レビュー・メタ解析で、免疫グロブリン静注と支持療法を比較した観察研究6件の統合により死亡率のプールオッズ比は1.00(95%信頼区間0.58-1.75、P=0.99)と有意差がなく、高用量免疫グロブリン静注と支持療法の比較でもプールオッズ比0.63(95%信頼区間0.27-1.44、P=0.27)で有意差はなかったこと。中毒性表皮壊死融解症に対する免疫グロブリン静注の有効性を支持する根拠が乏しいこと閲覧 2026-08-26
  7. 7.Randomized, controlled trial of TNF-α antagonist in CTL-mediated severe cutaneous adverse reactions(The Journal of Clinical Investigation・2018)SJS/TEN患者96人の無作為化試験で、エタネルセプトは従来の副腎皮質ステロイドと比較して皮膚治癒までの期間を短縮し(14日 対 19日)、消化管出血の頻度を減らした(2.6% 対 18.2%)こと閲覧 2026-08-26