免疫学

免疫学 · 7.3

過敏症 II〜IV

Hypersensitivity II–IV

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W12Seminar / 演習
応用トピック
皮膚炎・湿疹群の臨床病型と治療薬疹の病型と主な原因薬皮膚結核の病型・診断・治療疥癬第三期梅毒・神経梅毒・先天梅毒スティーヴンス・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症自己免疫性水疱症薬剤性有害反応:スルホンアミドアレルギーとその特徴薬剤性有害反応:スティーブンス・ジョンソン症候群
疾患
血清病薬剤性免疫性溶血性貧血
症状
白癬疹辺縁角膜浸潤・フリクテン性角結膜炎
検査値
間接クームス試験

🧠 このセミナーの締めくくりは「ペニシリン1剤だけでI〜IV型すべてを再現できる」という一例に集約される。 同じ薬物でも、結合する抗体クラス(IgE・IgG・IgM)と標的(可溶性・細胞表面・免疫複合体・T細胞認識)が違うだけで、アナフィラキシー(I型)・溶血性貧血(II型)・(III型)・接触性皮膚炎(IV型)という全く異なる4つの臨床像を引き起こしうる——過敏反応の分類が「」ではなく「」に基づいていることを、これほど鮮やかに示す例はない。

⚠️ Gell & Coombsの4型は今も教えられるが、「これで全部」ではないという批判がある。 EAACIは2023年の位置づけ文書でこの枠組みを9型へ拡張した——抗体依存性のI〜III、細胞性のIVa〜IVc、障害や代謝性のといった組織由来のV・VI、への直接反応のVIIである1。臨床では複数の型が混ざって現れることも珍しくない。4型分類を捨てるのではなく、限界のある枠組みとして使うのが正しい構えで、試験では従来のI〜IV型で問われる。なお、による病態(下記の)を「V型(刺激型)」として別立てにする教科書があるが、EAACI 2023のV型はそれとは別概念(組織由来・障害)なので、番号だけで対応づけない。

II型過敏反応:細胞傷害型(続き)

抗原の起源による分類

分類 疾患例
薬物誘発性溶血性貧血(薬物分子が赤血球表面に結合し異物化)、(母体抗体がと反応)、(液型)、
=自己抗体 重症筋無力症(抗・)、(抗受容体・)、(・抗受容体・)、(抗α3サブユニット=基底膜抗体)

薬物誘発性II型の機序:薬物分子(例:ペニシリン)が細胞表面タンパクを修飾し、免疫系がそれを異物として認識する。

Coombs試験:直接法 vs 間接法

試験 検体 検出対象
直接Coombs試験 赤血球 赤血球表面に既に結合している抗体
間接Coombs試験 血清 血清中の遊離抗体

💡 陽性は「すでに攻撃を受けている」ことを、は「攻撃する武器を持っている」ことを示す。 直接試験陽性は例えば薬物により修飾された赤血球表面タンパクへの抗体の存在を示す。判定は4+(全赤血球が抗体で覆われている)から陰性(抗体が結合した赤血球なし)までの段階評価で行う。間接試験は妊婦・の血清を用い、に対する抗体の存在を調べる(の予防目的)。

Rh同種免疫感作の機序

flowchart TD
  A["Rh+の父・Rh-の母、第1回妊娠"]
  A --> B["抗Rh抗体の産生(感作)"]
  B --> C["第2回妊娠:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fetal red blood cell'>胎児赤血球</span>への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complement activation'>補体活性化</span>"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythroblastosis fetalis'>胎児赤芽球症</span>"]

⭐ が「Rh感作を防ぐ盾」になるという。 Rh陰性妊婦がRh陽性胎児との場合(例:母親O型、胎児A/B型)、Rh感作率は2%未満に抑えられる——母体の抗A/抗B抗体が、がRhD陽性と認識される前に破壊してしまうため。逆にABO適合の場合、Rh感作率は7〜8%に上昇する。「片方の不適合がもう片方の不適合を防ぐ」という直感に反する関係。

症例1:Rh陰性妊婦の管理

31歳、Rh陰性妊婦、流産歴2回。妊娠14週:間接Coombs1:18、18週:1:16。母体抗体は・IgG3サブクラス。22週から羊水中ビリルビン値が上昇。29週・33週に(臍帯静脈経由でRh陰性血75〜80mL、母体またはで価を「希釈」することも)。34.5週で誘発分娩、健康な女児出生。

⭐ 抗D IgG予防投与は「免疫抑制」の代表例。 免疫化ドナー血漿由来の抗D IgGを投与する機序は3通り:①抗D感作B細胞のBCRとFcγRIIbを、赤血球上の+抗Dで架橋しB細胞への負のを誘導、②すべてのが抗Dで覆われることでB細胞(活性化も抑制も起こらない)を誘導、③抗Dで覆われた赤血球がマクロファージのFcγRI・FcγRIIIaと相互作用し貪食・破壊されそのものが母体から消える。流産後にも投与適応がある。

III型過敏反応:免疫複合体型(続き)

可溶性の小型抗原に結合した抗体は、循環中で小〜中型の免疫複合体を形成し(抗原過剰の状況で)組織(主に血管壁・漿膜・糸球体)に沈着する。免疫複合体は・好中球/顆粒球・血小板を活性化し、・を引き起こす。

💡 症状の重症度との「帰結」は、決まる要因が違う。 重症度は免疫複合体のサイズ・抗原抗体比・抗体の親和性・に左右されるが、のエフェクター機序そのものはに依存しない——ただし、その結果として何が起こるかはに強く依存する(に沈着すれば腎炎、肺血管に沈着すれば肺炎、というように)。

分類 例
局所 (皮膚の)、血管壁の()
急性全身性 急性(7〜10日)
慢性 SLE、関節リウマチ

症例2:農夫肺

54歳女性の酪農家。、夕方の発熱、咳嗽。症状は約1か月持続し、牛舎から離れると改善した。診断:=。胸部X線:広範な結節性間質浸潤影、にはにまだら状浸潤影。

⭐ 同じアレルゲンでも「量」がI型かIII型かを決める。 低用量の抗原(例:花粉)はIgE-経路(I型)を、カビの生えた干し草由来ののような大量抗原はIgG-免疫複合体経路(III型)を活性化し肺組織を傷害する——同じ物質でもによって過敏反応の型が変わりうるという好例。治療はで無症状化。診断は血清中のThermoactinomyces vulgarisの検出(・補体結合法・)。

: ワクチン接種のまれな副反応として、破傷風・が抗原となり局所を起こすことがある。

症例3:血清病

1歳男児、ペニシリン療法開始10日後に顔面に赤色斑点、12時間後に全身に拡大、24時間後には活動性低下・尿中膿。診断:薬剤性(急性全身性)。(血漿療法を繰り返した後にも様の有害事象が起こりうる。)

慢性の例: SLE患者の30〜40%で皮膚に免疫複合体が沈着する。抗補体抗体・抗IgG抗体を用いたで、へのが可視化できる。

IV型過敏反応:遅延型(続き)

症候群 抗原 症状
遅延型(型)過敏反応 タンパク質(昆虫タンパク、抗酸菌タンパク=・) 局所皮膚腫脹:紅斑・・細胞浸潤
接触過敏反応 (ペンタデカカテコール=ツルシ、=毛染め剤、・クロムなどの金属イオン) :紅斑・細胞浸潤・水疱・表皮内
過敏性腸症(セリアック病) (穀物タンパク)、小麦粉過敏性 、、

⭐ IV型は1つではない——Pichlerによる a〜d の細分。 遅延型反応は、活性化したT細胞が放出するサイトカイン・がどの細胞を呼び寄せるかで細分される:単球を主に動員するIVa、好酸球を動員するIVb、好中球を動員するIVd。そしてCD4またはCD8による細胞傷害性のIVcは、すべてのIV型反応に関与するとされる2。上の表(型・接触型・セリアック病)は臨床像による整理、a〜dは動員される細胞による整理であり、別の切り口が重なっていると理解する。

💡 の重症型はアレルと結びついており、で発症を防げるところまで来ている。 過敏症はHLA-B*57:01と強く関連する。1,956人の無作為化試験(PREDICT-1)では保有率5.6%で、投与前スクリーニングによってで免疫学的に確認された過敏症は対照群2.7%に対しスクリーニング群0%となった(100%、47.9%)3。カルバマゼピンによるは東南アジアでHLA-B*15:02と強く関連し、台湾の4,877人を対象とした前向き研究では保有者(7.7%)にカルバマゼピンを避けた結果、陰性者からは1例も出なかった(歴史的発症率0.23%からは約10例が見込まれていた)4。やはIV型の重症型であり、を「ただの発疹」と扱わない根拠になる。

ツベルクリン反応の機序と臨床的意義

flowchart TD
  A["抗原を皮内に導入"]
  A --> B["局所APCが抗原を提示"]
  B --> C["既往免疫による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Th1 memory cell'>Th1記憶細胞</span>が抗原を認識"]
  C --> D["サイトカイン産生 → 内皮細胞に作用"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phagocyte infiltration'>貪食細胞浸潤</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasma exudation'>血漿滲出</span>(plasma exudation) → 24〜72時間で腫脹"]

⚠️ ()は生物学的製剤開始前の必須スクリーニング。 ・抗抗体療法(例:関節リウマチ治療)を始める前には必ず試験()を行い、in vitroの試験も併用する——のリスクを事前に評価するため。陽性の場合、反復検査でより強い反応を示すようになる。接種者も陽性反応を示すため、既往接種歴の確認が解釈に不可欠。

💡 を併用する理由と、それでも分からないこと。 は株が持たない抗原に対する反応を測るため、接種集団でも特異度が高いことがで示されている——これがの弱点を補う理由である。ただし感度は・のどちらも十分とはいえない5。さらに、両者ともへのという間接的な指標にすぎず、潜在結核とを区別できない・再活性化とを区別できない・免疫抑制状態では感度が落ちる・発病への予測値が低い。潜在結核にはとなる検査がないため、発病リスクの高い人に絞って検査することでを上げるしかない6。

症例:ヘナタトゥーによる接触性皮膚炎

22歳男性、ヘナタトゥー施術6日後に左上腕にタトゥーの模様と完全に一致する形の紅斑が出現。黒色ヘナには黒色を強調するためが含まれる。診断:接触感作物質によるDTH。

診断法: ——アレルゲンを浸潤させたを皮膚に貼付し、48時間後に除去、96時間後(4〜6日目)に判定する。によるスクリーニングでは、接触性皮膚炎の最頻、歯科、薬物・染料・金属イオンをまとめて検査する。

セリアック病の血清学的診断

第一選択のは免疫学的(血清学的)抗原検出:①IgA抗体、②IgA、③IgA/IgG、④IgA/IgG。小腸のはT細胞介在性で、セリアック病患者の90〜95%が-DQ2アレル多型をもつ。

⚠️ ①〜④を並列に覚えないこと——初期検査に使うのは①(+総IgA)である。 ESPGHAN 2020のガイドラインは、疑ったらまず血清総IgAと抗トランス2 IgA抗体(TGA-IgA)を測る組み合わせが他のどれよりも優れるとし、を初期検査に用いないことを推奨している。IgG系の検査は総IgAが低値・検出不能のときに限る。TGA-IgAがの10倍以上で、別検体の(EMA-IgA)も陽性なら、小児ではを省略してよい——このとき-DQ2/DQ8の判定も症状の有無も必須条件ではない7。は「陰性なら除外に使える」検査であって、陽性が診断を意味するわけではない点に注意する。

型の見分け方:代表的な検査のまとめ

検査 過敏反応の型
IV型
I型
ワクチン接種後の III型

ペニシリンという1つの薬物が全4型を引き起こす

⭐ は過敏反応の分類そのものを体現する教材。 同じペニシリン-タンパク複合体が、結合する抗体クラスによってまったく異なる病態を生む。

型 機序 臨床像
I型 ペニシリン-タンパク+IgE→ 全身性アナフィラキシー
II型 ペニシリン-赤血球+IgG→赤血球溶解 薬剤誘発性溶血性貧血
III型 ペニシリン-タンパク+IgG/IgM→沈着・
IV型 ペニシリン-タンパク→マクロファージ・Th1細胞活性化 接触性皮膚炎

まとめ

  • II型は(薬物・輸血・)と内因性自己抗体(重症筋無力症・・・)に分かれ、Coombs試験(直接=表面結合抗体、間接=)で検出する。Rh感作はの存在でむしろ抑制されるというがあり、抗D IgG予防投与は免疫抑制の代表例。
  • III型は免疫複合体のにより臨床像が決まり(局所=・、急性全身性=、慢性=SLE)、同じ抗原でもがI型かIII型かを左右しうる(の症例)。
  • IV型は型・接触型・セリアック病の3パターンがあり、試験は生物学的製剤開始前の必須スクリーニング、は接触性皮膚炎の標準診断法。
  • ペニシリンは同一薬物でI〜IV型すべてを引き起こしうる教科書的な例で、過敏反応の分類がではなくに基づくことを象徴する。

出典

  1. 1.Nomenclature of allergic diseases and hypersensitivity reactions: Adapted to modern needs: An EAACI position paper(Allergy・2023)EAACIはGell & Coombsの4型を9型へ拡張し、抗体依存性I〜III、細胞性IVa〜c、組織由来V・VI(上皮バリア障害・代謝性の免疫調節異常)、化学物質への直接反応VIIとした。臨床では複数型の混在がありうる閲覧 2026-08-25
  2. 2.Delayed drug hypersensitivity reactions - new concepts(Clinical and Experimental Allergy・2007)遅延型(IV型)はT細胞が動員する細胞の違いで単球主体のIVa、好酸球主体のIVb、好中球主体のIVdに細分され、CD4/CD8による細胞傷害性のIVcはすべてのIV型反応に関与する閲覧 2026-08-25
  3. 3.HLA-B*5701 screening for hypersensitivity to abacavir(The New England Journal of Medicine・2008)1,956人の無作為化試験でHLA-B*5701保有率は5.6%、投与前スクリーニングによりパッチテストで確認された過敏症は対照群2.7%に対しスクリーニング群0%、陰性的中率100%・陽性的中率47.9%閲覧 2026-08-25
  4. 4.Carbamazepine-induced toxic effects and HLA-B*1502 screening in Taiwan(The New England Journal of Medicine・2011)台湾の4,877人の前向き研究でHLA-B*1502保有率は7.7%、保有者にカルバマゼピンを避けた結果、陰性者にSJS/TENは1例も発生せず(歴史的発症率0.23%から約10例が見込まれた)閲覧 2026-08-25
  5. 5.Systematic review: T-cell-based assays for the diagnosis of latent tuberculosis infection: an update(Annals of Internal Medicine・2008)インターフェロンγ遊離試験(IGRA)はBCG接種集団でも特異度が高い。感度はツベルクリン反応とIGRAのいずれも十分ではない閲覧 2026-08-25
  6. 6.Gamma interferon release assays for detection of Mycobacterium tuberculosis infection(Clinical Microbiology Reviews・2014)ツベルクリン反応もIGRAも潜在結核と活動性結核を区別できず、再活性化と再感染も区別できない。免疫抑制患者では感度が下がり、発病への予測値は低い。潜在結核のゴールドスタンダードは存在しない閲覧 2026-08-25
  7. 7.European Society Paediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition Guidelines for Diagnosing Coeliac Disease 2020(European Society for Paediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition / Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition・2020)疑ったらまず血清総IgAと抗トランスグルタミナーゼ2 IgA抗体(TGA-IgA)を測る組み合わせが最良で、脱アミド化グリアジンペプチド抗体は初期検査に推奨しない。TGA-IgAが基準上限の10倍以上かつ別検体のEMA-IgA陽性なら小児は生検を省略でき、HLA-DQ2/DQ8判定と症状は必須条件ではない閲覧 2026-08-25