薬理学

薬理学 · Core54

薬剤性有害反応:スティーブンス・ジョンソン症候群

Core54: Drug-induced adverse reaction: Stevens-Johnson syndrome

前提:病態
Core49:薬理遺伝学・薬理ゲノム学:定義と例
前提:正常
過敏症 II〜IV抗原提示とMHC
応用トピック
痛風治療薬・頭痛治療薬抗てんかん薬・鎮痛補助薬

🧠 全体像:(SJS)と(TEN)は、まれだが生命を脅かすT細胞介在性のIV型(遅延型)過敏反応で、皮膚と粘膜が同時に剥がれる。両者は別の病気ではなく1本のスペクトラムで、が()の10%未満ならSJS、10〜30%なら重複型、30%超ならTENと、剥離面積で名前が変わるだけである。押さえるべきは3点——①どの薬が起こすか、②誰が起こしやすいか(による素因)、③疑ったら何をおいてもを止めること。は決着しておらず、確立しているのは中止と支持療法だけである。

定義

  • は、まれだが非常に重篤な皮膚・粘膜反応で、通常は薬剤性である。
  • 機序は3層で理解する。
    • 薬物に対する異常な免疫応答。
    • IV型(遅延型)T細胞介在性過敏反応——薬物特異的ながを殺す。
    • その結果としての自己免疫的な組織破壊(表皮の)。
  • 剥離した皮膚は熱傷と同じ意味を持つ。体液が漏れ、感染を防げなくなり、体温を保てなくなる。

SJSとTENの分類

分類は1993年に国際パネルが合意した基準に基づく。⭐ 軸は2本ある——の広がり()と、病変の形態である1。

病型 剥離または剥離可能な表皮の 病変の形態
SJS 10%未満 広汎な紅斑性もしくはの斑、または扁平な
重複型 10〜30% 広汎な斑または扁平な
TEN(斑を伴う型) 30%超 広汎な斑または扁平な

💡 同じ「10%未満」でも病変の形が違えば別の病名になる。 同じ合意は水疱性(10%未満の剥離に限局性の典型的または隆起性を伴うもの)をSJSと区別しており、さらに斑を伴わないTEN——斑もも無く、10%超の表皮が大きなシートとして剥がれる型——を第5の区分として置いている1。「TENは30%超」という覚え方は斑を伴う型についてのもので、斑を伴わない型は10%超で定義される。

⚠️ 測るのは皮疹の広がりではなく、剥離した(またはで剥離しうる)表皮の面積である。 紅斑だけの部位を足し込むと病型を重く見積もることになる。

重症度と予後

重症度は SCORTEN で評価する。これはの死亡を予測する7項目のスコアで、開発コホート165例・検証コホート75例で作られた2。

1点となる項目 閾値
年齢 40歳超
悪性腫瘍 あり
心拍数 120/分超
初回の の10%超
10 mmol/L超
血糖 14 mmol/L超
20 mmol/L未満

💡 1点増えるごとに死亡のは3.45倍(2.26-5.25)になる。82%で、Simplified Acute Physiology Score(72%)や熱傷スコア(75%)よりが高い2。

⚠️ は死亡率を過大評価しうる。 シンガポールの196例・17年間のコホートではは概ね良好だったが、が行われた症例やより新しい時代の症例で死亡率を高く見積もる傾向が確認された3。支持療法が標準化された現在の診療では、スコアが示す数字より予後が良いことがある。

⭐ 死亡率は病型と時代とコホートで大きく動く。

出典 集団 SJS TEN
原著の冒頭2 専門施設に入院したTEN — およそ30%
韓国の全国データベース2011年コホート4 入院中死亡 5.7% 15.1%
同論文が引く従来の報告幅4 — 1〜13% 30〜50%

💡 生き延びても終わりではない。 同じ韓国の調査では、眼のがSJSの43.1%・TENの43.4%に、尿道のがそれぞれ5.7%・9.4%に残った4。急性期から眼科を関与させる理由がここにある。

症状

  • 発熱・・倦怠感などのインフルエンザ様のが先行する。
  • 全身の皮疹。
  • 水疱。
  • ——口腔と舌の有痛性炎症、結膜炎。
  • 広範な。

⭐ 粘膜が2か所以上やられているかを必ず見る。 口唇・口腔、眼(・角膜)、が典型で、嗄声・咳・低酸素はの障害を示唆する。が小さくてもは重篤になりうる。

原因薬

例
抗菌薬 ・、ペニシリン、などの、
、フェニトイン、、カルバマゼピン、
・ 、、、

💡 EuroSCAR研究は「新しい薬」と「古い薬」の両方を測った。 1億人以上をカバーする欧州の病院網から能動的に検出した379例と対照1,505例ので、当時新規にされた薬剤のうち(22超)と(同14超)に強い関連が示された。より弱い関連としては(11)・(18)・(20)が記録されている——や抗菌薬以外にも危険な薬があるという点で、覚えておく価値がある。同時に、・・カルバマゼピン・・フェニトイン・という「古い高リスク薬」の強い関連が改めて確認された。広く使われている多くの薬剤では危険が示されなかった5。

⭐ 危険が高いのは飲み始めの数週間だけである。 EuroSCARは危険が服薬開始後の最初の数週間に限られることを示し5、臨床実装コンソーシアム(CPIC)も薬剤性の潜伏期をおよそ4〜28日、通常は投与開始から3か月以内としている6。何年も飲み続けている薬を第一のにしない。

遺伝的素因——HLAによるリスク予測

⭐ は「薬との組み合わせ」で起こる。 薬物が分子に提示されることでT細胞が活性化されるため、どの対立遺伝子が危ないかは薬剤ごとに違い、その対立遺伝子がどれだけ集団に存在するかは祖先ごとに違う。この2重の特異性を崩すと、必要な人に検査をせず、不要な人に検査をすることになる。

対立遺伝子 関連する薬 どのか 頻度の分布
HLA-B*15:02 カルバマゼピン、 に特異的6 香港・タイ・マレーシア・フィリピンの一部で15%超、台湾およそ10%、華北4%、南アジア系2〜4%、日本・韓国は1%未満、アジア系以外ではほぼ存在しない7
HLA-A*31:01 カルバマゼピン も起こすが、()ととの関連のほうが強い7 世界中のほとんどの集団に存在する。北欧系で2〜5%8
HLA-B*58:01 9 保有率は漢民族・韓国系・タイ系7.4%、アフリカ系米国人3.8%、白人・ヒスパニック系各0.7%9

⚠️ -B15:02を「アジア人のカルバマゼピンリスク」と一括りにしない。 台湾の前向き研究では、カルバマゼピン未使用の4,877人を検査して陽性の7.7%に投与を避けた結果、陰性者にはが1例も発生しなかった(歴史的発症率0.23%からはおよそ10例が見込まれていた)10。一方、この対立遺伝子は日本と韓国では1%未満で、欧州系集団ではカルバマゼピン誘発性との関連が示されていない78。日本人で意味を持つのはむしろ-A31:01のほうで、カルバマゼピン誘発性皮膚(SJS・TEN・)患者の60.7%がこれを保有したのに対し、カルバマゼピンにな対照では12.5%にとどまった(10.8)11。

💡 の大きさと、実際にどれだけ危険が動くかは別である。 北欧系集団を対象としたでは、-A*31:01はカルバマゼピン誘発性過敏反応症候群(12.41)・(8.33)・(25.93、95%信頼区間4.93-116.18)のいずれとも関連したが、な危険で言えば保有により5.0%から26.0%へ上がり、非保有では5.0%から3.8%へ下がるという大きさだった8。

⚠️ 自身が「保有率だけで検査対象を決めるな」と釘を刺している。 同じ民族集団の中でも保有率のばらつきが大きく、祖先の確定は難しく、混血の可能性もあるためである7。

検査結果をどう使うか

flowchart TD
    A["カルバマゼピンの開始を検討<br>(未使用の患者)"] --> B{"HLA-B*15:02"}
    B -->|"陽性"| C["カルバマゼピンを使用しない<br>強い推奨<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='human leukocyte antigen'>HLA</span>-A*31:01の型は問わない"]
    B -->|"陰性"| D{"HLA-A*31:01"}
    D -->|"陽性・代替薬あり"| E["カルバマゼピンを使用しない<br>強い推奨"]
    D -->|"陽性・代替薬なし"| F["監視頻度を上げて使用を考慮<br>皮膚<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adverse effect'>有害反応</span>の最初の徴候で中止<br>選択的推奨"]
    D -->|"陰性"| G["通常用量で使用してよい<br>強い推奨"]
    C --> H["代替薬にも注意<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='aromatic'>芳香族</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Antiepileptics'>抗てんかん薬</span>は<br>交差リスクを否定できない"]
    E --> H
  • ⚠️ 同じ対立遺伝子でも薬が変われば推奨が変わる。 -B*15:02について陰性の価値が100%とされているのはカルバマゼピンとに対してだけで、でも陽性・未使用なら使用しないことが強く推奨される6。
  • ⚠️ 「カルバマゼピンを飲めていたから大丈夫」は他の薬には通用しない。 (カルバマゼピン・・エスリカルバゼピン・・フェニトイン・・)のあいだで性は保証されない6。
  • 💡 3か月を超えて問題なく服用してきた患者では、その薬を慎重に使用することを考慮してよい(選択的推奨)6。

治療

  • である。
  • での管理を要する。広範な剥離では熱傷・の経験がある施設への搬送を検討する。
  • ⭐ を直ちに中止する。 診断が確定する前でよい。確立している介入はこれだけである。
  • 皮膚・粘膜・水分電解質・感染・に対する支持療法を行う。
  • の有無にかかわらず早期に眼科へ——の4割以上が眼だからである4。

⚠️ (全身性ステロイド・・・)は決着しておらず、単一の標準治療は確立していない。 と支持療法を比較した観察研究6件を統合したでは死亡率のプールが1.00(95%信頼区間0.58-1.75)と有意差がなく、高用量に限っても0.63(0.27-1.44)で有意差はなく、有効性を支持する根拠は乏しいとされた12。一方、患者96人を対象とした無作為化試験ではが従来の副腎皮質ステロイドと比較して皮膚治癒までの期間を短縮し(14日 対 19日)、消化管出血の頻度を減らした(2.6% 対 18.2%)13。「どれかが効く」ではなく「決め手が無い」が現状の要約である。

💡 側から見た急性期管理(創管理・眼表面管理・鑑別)は 3-02:スティーヴンス・と、全体の中での位置づけは にまとまっている。

まとめ

  • SJS/TENはT細胞介在性によるで、SJSとTENは1本のスペクトラムである。
  • 分類の軸はの(10%未満/10〜30%/30%超)と病変の形態の2本。「30%超がTEN」は斑を伴う型の定義で、斑を伴わない型は10%超で定義される。
  • 重症度はSCORTEN(40歳超・悪性腫瘍・心拍数120/分超・剥離10%超・尿素10 mmol/L超・血糖14 mmol/L超・20 mmol/L未満)で評価するが、近年のコホートでは死亡率を過大評価しうる。
  • 死亡率は報告により幅があり、韓国の全国データでは入院中死亡がSJS 5.7%・TEN 15.1%。生存例の4割以上に眼のが残る。
  • ・、、、は重要な誘因。EuroSCARは・に加え、・・にも関連を記録している。
  • はゆっくり漸増する——危険が高いのは飲み始めの4〜28日だからである。
  • カルバマゼピンにはがある。 -B15:02はに特異的で東南アジア系に多く日本・韓国では1%未満、-A31:01は世界中に分布しやとの関連が強い。陽性でカルバマゼピン未使用なら使用しないことが強く推奨される。
  • 確立している治療はの即時中止と支持療法だけで、は決着していない。

出典

  1. 1.Clinical classification of cases of toxic epidermal necrolysis, Stevens-Johnson syndrome, and erythema multiforme(Archives of Dermatology(Bastuji-Garin ら、国際専門家パネル)・1993)抄録(PMID 8420497、Arch Dermatol 129巻1号92-96頁)で確認した。専門家群が、多形紅斑様病変の型(典型的標的状病変、隆起性または扁平な非典型的標的状病変、紫斑性斑)と表皮剥離の広がりの2軸で分類を提案した。合意された分類は5区分である。水疱性多形紅斑は体表面積10%未満の剥離に限局性の典型的標的状病変または隆起性非典型的標的状病変を伴うもの、スティーブンス・ジョンソン症候群は10%未満の剥離に広汎な紅斑性もしくは紫斑性の斑または扁平な非典型的標的状病変を伴うもの、重複型は10〜30%の剥離に広汎な紫斑性斑または扁平な非典型的標的状病変を伴うもの、斑を伴う中毒性表皮壊死融解症は30%超の剥離に広汎な紫斑性斑または扁平な非典型的標的状病変を伴うもの、斑を伴わない中毒性表皮壊死融解症は10%超の剥離が大きな表皮のシートとして起こり紫斑性斑も標的状病変も伴わないものと定義された。⚠️ 剥離面積だけでなく病変の形態が分類軸に入っており、30%超という数値が掛かるのは斑を伴う型のほうである閲覧 2026-09-22
  2. 2.SCORTEN: a severity-of-illness score for toxic epidermal necrolysis(Journal of Investigative Dermatology(PubMed抄録)・2000)抄録(PMID 10951229)で確認した。専門施設に入院した中毒性表皮壊死融解症例を対象に、開発コホート165例・検証コホート75例で重症度スコアを作成・検証した。独立した死亡危険因子は7つで、40歳超、悪性腫瘍、心拍数120/分超、初回の表皮剥離が体表面積の10%超、血清尿素10 mmol/L超、血糖14 mmol/L超、重炭酸20 mmol/L未満である。1点あたりのオッズ比は3.45(信頼区間2.26-5.25)、予測死亡率19.6%に対し実測20%と較正は良好で、ROC曲線下面積は82%だった。Simplified Acute Physiology Scoreと熱傷スコアも死亡と関連したが判別能は劣り(それぞれ72%・75%)、Simplified Acute Physiology Scoreは予測9.1%に対し実測26.7%と較正が不良だった。本論文は冒頭で中毒性表皮壊死融解症の死亡率をおよそ30%としている閲覧 2026-09-22
  3. 3.Assessment and Comparison of Performance of ABCD-10 and SCORTEN in Prognostication of Epidermal Necrolysis(JAMA Dermatology・2020)シンガポールの196例・17年間のコホートでSCORTENの較正は概ね良好だったが、免疫調節療法が行われた症例やより新しい時代の症例で死亡率を過大評価する傾向があったこと閲覧 2026-08-27
  4. 4.Incidence of Stevens-Johnson Syndrome and Toxic Epidermal Necrolysis: A Nationwide Population-Based Study Using National Health Insurance Database in Korea(PLOS ONE・2016)全文(PMC5106005)で確認した。国民の約97%を覆う韓国の国民健康保険データベースを用いた全国調査で、年間発症率はSJSが100万人あたり3.96〜5.03、TENが0.94〜1.45で、調査期間を通じて有意な変化は無かった。2011年コホートの入院中死亡割合はSJS 5.7%・TEN 15.1%で、死亡は40歳を超えると年齢とともに増えた。合併症では眼の後遺症が最も多く(SJS 43.1%・TEN 43.4%)、尿道の後遺症が続いた(同5.7%・9.4%)。考察は、SJSとTENの死亡率がこれまで各1〜13%・30〜50%と幅をもって報告されてきたこと、本研究のTENの値が過去の報告より低いことを述べている閲覧 2026-09-22
  5. 5.Stevens-Johnson syndrome and toxic epidermal necrolysis: assessment of medication risks with emphasis on recently marketed drugs. The EuroSCAR-study(The Journal of Investigative Dermatology・2008)抄録(PMID 17805350)で確認した。1997〜2001年に欧州で行われた多施設症例対照研究で、1億人以上をカバーする病院網から能動的に症例を検出し、年齢・性別・面接日でマッチさせた入院患者3名を1症例あたりの対照とした。曝露状況を伏せた専門家委員会の判定を経て、重症薬疹379例と対照1,505例が組み入れられた。当時新規に市販された薬剤では、ネビラピン(相対危険度22超)とラモトリギン(同14超)に強い関連が、セルトラリン(11、2.7-46)・パントプラゾール(18、3.9-85)・トラマドール(20、4.4-93)により弱い関連が記録された。抗菌性スルホンアミド、アロプリノール、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、オキシカム系NSAIDsについては強い関連が改めて確認された。危険は服薬開始後の最初の数週間に限られ、広く使われている多くの薬剤ではSJS/TENの危険は示されなかった閲覧 2026-09-22
  6. 6.Clinical Pharmacogenetics Implementation Consortium Guideline for HLA Genotype and Use of Carbamazepine and Oxcarbazepine: 2017 Update(Clinical Pharmacology and Therapeutics(CPIC)・2018)全文(PMC5847474)で確認した。抄録は、HLA-B*15:02がカルバマゼピンまたはオキシカルバゼピンで治療された患者のSJS/TENの危険と強く関連し、HLA-A*31:01がカルバマゼピンで治療された患者の斑状丘疹状皮疹・DRESS・SJS/TENの危険と関連すると述べる。表2の推奨は、HLA-B*15:02陰性かつHLA-A*31:01陰性なら通常用量で使用(強い推奨)、HLA-B*15:02陰性でHLA-A*31:01陽性なら患者がカルバマゼピン未使用で代替薬があるとき使用しない(強い推奨)、HLA-B*15:02陽性であればHLA-A*31:01の型にかかわらず未使用患者には使用しない(強い推奨)である。表3はオキシカルバゼピンについても、HLA-B*15:02陽性で未使用の患者には使用しない(強い推奨)としている。芳香族抗てんかん薬としてカルバマゼピン・オキシカルバゼピン・エスリカルバゼピン・ラモトリギン・フェニトイン・ホスフェニトイン・フェノバルビタールが列挙され、薬剤誘発性SJS/TENの潜伏期はおよそ4〜28日で通常は投与開始から3か月以内に起こること、カルバマゼピンへの耐容が他の芳香族抗てんかん薬への耐容を意味しないことが注記されている閲覧 2026-09-22
  7. 7.Carbamazepine Therapy and HLA Genotype(NCBI Medical Genetics Summaries(CPIC/FDA添付文書に基づく)・2025)本文全体を取得して確認した(章末の表示はLast Update 2018年8月1日)。米国FDA添付文書は、HLA-B*1502の頻度が高い集団に祖先を持つ全患者にカルバマゼピン開始前の検査を求め、陽性者には有益性が危険性を明らかに上回る場合を除き使用しないとする。同添付文書が挙げる保有率は香港・タイ・マレーシア・フィリピンの一部で15%超、台湾でおよそ10%、華北で4%、インドを含む南アジア系で平均2〜4%、日本と韓国で1%未満で、アジア系以外(白人・アフリカ系米国人・ヒスパニック系・ネイティブアメリカン)ではほぼ存在しない。⚠️ 同時にFDAは、民族集団内でも保有率のばらつきが大きいこと、祖先の確定が難しいこと、混血の可能性があることを理由に、保有率データだけで検査対象を決めることの限界に留意するよう促している。HLA-A*31:01についてFDAは、陽性と分かっている患者ではカルバマゼピンの有益性と危険性を衡量すべきとするにとどまる。本章は、HLA-A*31:01がSJS/TENの危険因子でもありうるが薬剤性過敏症症候群(DRESS)や斑状丘疹状皮疹との関連のほうが強いこと、この対立遺伝子は世界中のほとんどの集団に存在することも述べている閲覧 2026-09-22
  8. 8.HLA-A*3101 and carbamazepine-induced hypersensitivity reactions in Europeans(The New England Journal of Medicine・2011)抄録(PMID 21428769)で確認した。欧州系の被験者のみを対象としたゲノムワイド関連解析で、カルバマゼピン誘発性過敏反応症候群22例・斑状丘疹状皮疹43例・対照3,987例を解析し、145例の追試集団で関連を再現した。北欧系集団で保有率2〜5%のHLA-A*3101は、過敏反応症候群(オッズ比12.41、95%信頼区間1.27-121.03)、斑状丘疹状皮疹(8.33、3.59-19.36)、SJS/TEN(25.93、4.93-116.18)のいずれとも有意に関連した。保有によりリスクは5.0%から26.0%へ上がり、非保有では5.0%から3.8%へ下がる。⚠️ 本論文は冒頭で、HLA-B*1502がカルバマゼピン誘発性SJS/TENと強く相関するのは漢民族その他のアジア系集団においてであって欧州系集団ではそうではない(but not in European populations)と明記している閲覧 2026-09-22
  9. 9.Allopurinol Therapy and HLA-B*58:01 Genotype(NCBI Medical Genetics Summaries(CPIC/ACRガイドラインに基づく)・2020)アロプリノールによる重症薬疹はHLA-B*58:01と関連し、ACR 2020は東南アジア系(漢民族・韓国系・タイ系)・アフリカ系米国人への投与前スクリーニングを条件付きで推奨すること。⚠️ 本文献には尺度の異なる2組の数値がある。ACRガイドラインの節が引く保有率(prevalence)は漢民族・韓国系・タイ系7.4%、アフリカ系米国人3.8%、白人・ヒスパニック系各0.7%。別に本文が示すアレル頻度(allele frequency)は漢民族 約10〜15%、韓国系 約12%、タイ系 約6〜8%で、日本人は欧州系と同じ区分に置かれ約1〜2%である(日本人の保有率そのものは本文献に示されていない)閲覧 2026-09-17
  10. 10.Carbamazepine-induced toxic effects and HLA-B*1502 screening in Taiwan(The New England Journal of Medicine・2011)抄録(PMID 21428768)で確認した。台湾の23施設からカルバマゼピン未使用の候補者4,877人を組み入れ、HLA-B*1502を遺伝子型判定した。陽性は全体の7.7%で、陽性者にはカルバマゼピンを避けるよう助言し代替薬または従来薬の継続を勧め、陰性者(92.3%)にはカルバマゼピンを勧めた。2か月間毎週の電話追跡で、軽度・一過性の皮疹が4.3%、入院を要した広汎な皮疹が0.1%に生じたが、HLA-B*1502陰性でカルバマゼピンを服用した者にSJS/TENは1例も発生しなかった。対照は歴史的発症率(0.23%)で、そこから見込まれる本研究集団での症例数はおよそ10例だった(P<0.001)閲覧 2026-09-22
  11. 11.Genome-wide association study identifies HLA-A*3101 allele as a genetic risk factor for carbamazepine-induced cutaneous adverse drug reactions in Japanese population(Human Molecular Genetics・2011)抄録(PMID 21149285)で確認した。日本人のカルバマゼピン誘発性皮膚有害反応(SJS・TEN・薬剤性過敏症症候群を含む)53例と一般集団882例のゲノムワイド関連解析で有意な12個のSNPが6p21.33のHLA-A領域に集中した。HLA-Aの型判定では、症例61例のうち60.7%(37/61)がHLA-A*3101を保有したのに対し、カルバマゼピンに耐容な対照376例では12.5%(47/376)にとどまった(オッズ比10.8、95%信頼区間5.9-19.6)。この対立遺伝子をリスク予測因子として用いると感度60.7%・特異度87.5%になる。著者らは、薬剤性過敏症症候群は臨床的にSJS・TENと区別されるが、共通の遺伝的因子と病態機序を共有することが示されたと述べている閲覧 2026-09-22
  12. 12.Efficacy of intravenous immunoglobulin for treatment of toxic epidermal necrolysis: a systematic review and meta-analysis(British Journal of Dermatology・2012)2011年7月末までの文献を対象とした系統的レビュー・メタ解析で、免疫グロブリン静注と支持療法を比較した観察研究6件の統合により死亡率のプールオッズ比は1.00(95%信頼区間0.58-1.75、P=0.99)と有意差がなく、高用量免疫グロブリン静注と支持療法の比較でもプールオッズ比0.63(95%信頼区間0.27-1.44、P=0.27)で有意差はなかったこと。中毒性表皮壊死融解症に対する免疫グロブリン静注の有効性を支持する根拠が乏しいこと閲覧 2026-08-27
  13. 13.Randomized, controlled trial of TNF-α antagonist in CTL-mediated severe cutaneous adverse reactions(The Journal of Clinical Investigation・2018)SJS/TEN患者96人の無作為化試験で、エタネルセプトは従来の副腎皮質ステロイドと比較して皮膚治癒までの期間を短縮し(14日 対 19日)、消化管出血の頻度を減らした(2.6% 対 18.2%)こと閲覧 2026-08-27