薬理学

薬理学 · Core55

薬剤性有害反応:偽膜性大腸炎

Core55: Drug-induced adverse reaction: pseudomembranous colitis

前提:病態
ボツリヌス菌とクロストリジオイデス・ディフィシル消化管の常在菌叢とその意義Core44:狭域・広域抗菌薬
応用トピック
細菌感染症の経験的抗菌薬療法マクロライド系・プレウロムチリン系クリンダマイシン・ストレプトグラミン・オキサゾリジノン・フシジン酸系グリコペプチド・リポペプチド・バシトラシン・ムピロシンメトロニダゾール・フィダキソマイシン・リファキシミン・ニトロフラントイン・ホスホマイシンセファロスポリン系
疾患
バンコマイシン注入反応

🧠 全体像:は、抗菌薬がという防壁を壊した跡地で Clostridioides difficile が増え、毒素を出してを壊す病態である。つまり「感染症」であると同時に「抗菌薬の副作用」であり、原因も治療も抗菌薬という一見矛盾した構造を持つ。押さえるべきは3点——①どの抗菌薬が壊しやすいか(とクリンダマイシンが最強クラス)、②治療は腸管内で効く薬を選ぶこと(・)、③第一選択が国によって違うこと(米国・欧州ではメトロニダゾールが第一選択から退いてが前に出たが、日本は非重症の初発にメトロニダゾールを残している)。

定義

  • は、で黄白色のを伴う大腸炎である。
  • はで、壊死した粘膜・好中球・粘液からなる。
  • 主な原因は Clostridioides difficile 感染症(CDI) である。

💡 なぜ抗菌薬の後に起こるのか。 C. difficile は芽胞を作る嫌気性菌で、芽胞はアルコール手指消毒に耐えて環境に残る。健常なはこの菌の定着と増殖を抑えているが、抗菌薬がその叢を壊すと空いた生態学的な隙間で増殖し、毒素を産生して大腸上皮を壊す。抗菌薬は「菌を持ち込む」のではなく「抑えていたものを外す」のであり、これが「原因も治療も抗菌薬」という構造の正体である。

症状

⚠️ 劇症型(fulminant、旧称は重症)は、低血圧・ショック、イレウス、で特徴づけられる1。イレウスになると下痢がむしろ止まるため、「下痢が治まった」を改善と読み違えない。

薬剤リスク

薬物 機序・
高リスク クリンダマイシン、(特に第3世代)、 正常を強く破綻させる2
(配合剤を含む)、マクロライド系、、ST合剤 C. difficile を起こしやすくすることがある2
その他 胃酸度の低下 → の低下3

💡 表の3剤は同じ強さではない。 院内発症の症例対照・計15,938例を統合したでは、(3.20)とクリンダマイシン(2.86)が最も強い関連を示し、第2世代セファロスポリン2.23、第4世代セファロスポリン2.14、1.84、ST合剤1.78、1.66、ペニシリン配合剤1.45と続いた2。クリンダマイシンは「過去の原因薬」に格下げされたわけではなく、現在もセファロスポリンと並ぶ最強クラスの危険因子である。 著者らはについて「その重要性を過大評価すべきではない」と注記しているが、これにはの流行株が存在しない状況ではという条件が付いている2。

⚠️ については「関連」と「因果」を混同しない。 観察研究30件・202,965例のはの危険をおよそ2倍(2.15、95%CI 1.81〜2.55)と報告したが、著者ら自身が「解析対象が観察研究であるため、この関連の原因を調べることはできなかった」と明記している3。/も、不要なは常に中止すべきだとしつつ、予防の手段として中止することを支持する根拠は不十分として推奨を出していない1。

⭐ 予防の本体はである。 /は、高リスク抗菌薬の使用頻度・期間・薬剤数を最小限にすることを強く推奨し、対象として・クリンダマイシン・(術前予防投与を除く)の使用制限を考慮すべきとしている1。上の危険度表は、そのまま制限すべき薬の順番になっている。

治療

⭐ 最初の一手は「原因抗菌薬をやめられるか」である。 /は誘因抗菌薬を可能な限り速やかに中止することを強く推奨し1、は非重症例では誘因抗菌薬を中止して48時間厳重に観察するという運用を示している4。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Clostridioides difficile infection'>CDI</span>と診断"] --> B["可能なら誘因抗菌薬を中止<br>不要な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proton pump inhibitor, PPI'>プロトンポンプ阻害薬</span>も見直す"]
    B --> C{"劇症型か<br>低血圧・ショック・<br>イレウス・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='megacolon'>巨大結腸</span>"}
    C -->|"はい"| D["経口または経管で<br>バンコマイシン500 mg 1日4回<br>+静注メトロニダゾール500 mg 8時間ごと"]
    D --> E["イレウスがあれば<br>直腸内バンコマイシンを併用<br>早期に外科へ相談"]
    C -->|"いいえ"| F["初発エピソード"]
    F --> G["米国・欧州:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fidaxomicin'>フィダキソマイシン</span>200 mg 1日2回 10日間<br>が優先される<br>(日本の非重症例はメトロニダゾールが第一選択)"]
    G --> H["使用できないときは<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral vancomycin'>経口バンコマイシン</span>125 mg 1日4回 10日間"]
    H --> I["どちらも使用できないときに限り<br>経口メトロニダゾール500 mg 1日3回 10日間"]
    F --> J["再発したら"]
    J --> K["初回再発は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fidaxomicin'>フィダキソマイシン</span><br>またはバンコマイシンの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>・パルス法"]
    K --> L["2回目以降の再発は<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='fecal microbiota transplantation'>糞便微生物叢移植</span>または<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='bezlotoxumab'>ベズロトクスマブ</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='add-on (incremental benefit)'>上乗せ</span>"]

使う薬と、その理由

薬剤 なぜこれなのか
経口バンコマイシン 消化管からほとんど吸収されないため、腸管内に高濃度で留まる。全身へは回らない
経口 大環状(マクロサイ)抗菌薬。が最も狭くを壊しにくいため、治癒率は同等でも再発が少ない
メトロニダゾール よく吸収されるため腸管内濃度が上がりにくい。米国・欧州では経口は代替、静注は劇症型でのという位置づけ。日本では非重症の初発に経口(または)で第一選択5

初発エピソード

⚠️ 欧米では第一選択の序列が2021年に動き、日本は欧米と順位が違う。

発行元 初発エピソードの推奨 推奨の強さ
/ 2021焦点改訂 標準的なバンコマイシン投与よりを提案。バンコマイシンは許容できる代替で、実施は利用可能な資源に依存する6 条件付き推奨・中等度の確実性
2021改訂 200 mgを1日2回10日間を推奨。使用できなければ125 mgを1日4回10日間が適切な代替4 強い推奨・中等度のエビデンス
日本化学療法学会・日本感染症学会 2022 非重症は経口メトロニダゾール500 mg 1日3回10日間(または)が第一選択。使えない場合や妊婦・はバンコマイシン125 mg 1日4回、再発リスクを有する場合などは200 mg 1日2回10日間5 いずれも強い推奨・A

💡 同じでも強さが違う。 欧州は強い推奨、米国は条件付き推奨で、米国側は注釈で「この推奨は資源の利用可能性に依存する」と断っている6。が高価であることが、この差の背景にある。

⚠️ 欧米ではメトロニダゾールはもはや初回治療の第一選択ではない。 かつてのIDSA/SHEAとESCMIDは軽症の初回選択薬としてメトロニダゾールを推奨していたが、 2021はこれを「もはや治療のとして推奨されない」と明記して撤回した4。欧米での現在の位置づけは次のとおりである。

  • 経口メトロニダゾール500 mgを1日3回10日間は、バンコマイシン・のいずれも利用できないか実施困難なときに限る(は強い推奨・中等度、/ 2018は初発の非重症例に限り弱い推奨・高い質)41。
  • ⚠️ 反復・長期投与は避ける。 的で不可逆となりうる神経毒性の危険があるためである(強い推奨・中等度の質)1。
  • 静注メトロニダゾールは別の話で、劇症型で経口・直腸バンコマイシンにする用法として残っている(下記)。

⚠️ 日本では非重症の初発に今も第一選択である。 日本のガイドラインは、2018年ので非重症例ではバンコマイシンとに有意差がなく重症例ではバンコマイシンが有意に高かったこと、が安いこと、バンコマイシンの使用量が増えるとが増えうることを挙げて、非重症例ではメトロニダゾールを第一選択とした。高用量・長期投与で神経障害が出やすいため、推奨は非重症の初発例に限っている5。

⚠️ バンコマイシン500 mgを1日4回は、劇症型でない限り推奨されない(、強い推奨・非常に低いエビデンス)4。

重症例と劇症型

⭐ 「重症」と「劇症」で静注メトロニダゾールの扱いが分かれる。

病型 治療
重症・重症(の区分) バンコマイシン125 mgを1日4回、または200 mgを1日2回10日間。どちらかが優ることを示すデータは無い。⚠️ 重症例に静注メトロニダゾールをにすることは推奨しない(弱い推奨・非常に低いエビデンス)4
重症(日本) バンコマイシン125 mgを1日4回10日間、または200 mgを1日2回10日間(再発リスクがあれば)。両者が使えない場合に限りメトロニダゾール5
ショック・低血圧・・(日本) バンコマイシン500 mgを1日4回、経口・または注腸で投与し、メトロニダゾールの併用を考慮する(弱い推奨)5
劇症型(/の区分) 500 mgを1日4回(強い推奨・中等度の質)。イレウスがあれば約100 mLに溶いた500 mgを6時間ごとにしてよい(弱い推奨・低い質)。とくにイレウスがあるときは静注メトロニダゾール500 mgを8時間ごとに併用する(強い推奨・中等度の質)1
  • 劇症型にを用いる根拠は無い。の試験は劇症例を除外していたためで、/ 2021もこの点で前版の推奨を変更していない6。
  • 経口治療そのものができないときは、的または内視鏡的に腸管内へバンコマイシンまたはを送達し、補助として静注メトロニダゾール500 mgを1日3回、または静注を考慮する(いずれも弱い推奨・非常に低いエビデンス)4。
  • 外科的管理を要するときは直腸を温存したを行う(強い推奨・中等度の質)1。悪化して治療に反応しない時点で早期に外科へ相談する4。

再発例

何回目か 選択肢
初回再発 初発をバンコマイシンまたはメトロニダゾールで治療していたならが望ましい(、強い推奨・低いエビデンス)4。/は標準的なバンコマイシン投与より(標準法または延長パルス法)を提案し、バンコマイシンの・パルス法や標準投与も許容できる代替とする(条件付き推奨・低い確実性)6。初発をで治療していたなら、標準治療へをすることを考慮する4
再発(日本) 200 mgを1日2回10日間、またはバンコマイシン125 mgを1日4回10〜14日間(弱い推奨)。再発が何度も続く場合はバンコマイシンのパルス・療法を考慮する5
2回目以降の再発 標準治療の抗菌薬に続く()、または標準治療への(、弱い推奨)4。/はこれらに加え、バンコマイシンの・パルス法、バンコマイシン後のも挙げる6
  • ⚠️ は誰にでも使えるわけではない。 ()の2024年ガイドラインは免疫正常の成人の再発性で標準治療の抗菌薬終了後に選択的に用いることを提案する一方、高度免疫抑制例には糞便微生物叢由来治療を用いないことを提案している。標準治療の抗菌薬に反応しない重症・劇症で入院中の成人にはの選択的使用を提案する7。
  • 💡 は「治療薬」ではない。 C. difficile の毒素Bに対するモノクローナル抗体で、抗菌薬ではないため必ず抗菌薬治療と併用する。MODIFY I/II(30か国322施設、成人2,655例)で再発率を16.5%対26.6%へ下げた8。IDSA/SHEA 2021は直近6か月以内に再発したエピソードへの併用を提案するが、確実性は非常に低いと格付けしている6。⚠️ 日本では(ジーンプ)は販売中止となり、2024年4月以降は保険請求できない9。
  • ⚠️ の既往があれば、有益性が危険を上回る場合に限る。 既往例では心不全の発現率(12.7%対4.8%)と死亡率(19.5%対12.5%)がより高かった10。
  • ⚠️ 抗菌薬投与中の予防を目的にをに投与することは推奨されない(、強い推奨・低いエビデンス)4。

注意

  • ⭐ 同じバンコマイシンでも、で別の薬になる。 静注バンコマイシンは(感染症など)に用いるが腸管内へはほとんど出ないため、には効かない。では腸管内に留まる経口(または経管・直腸)バンコマイシンを使う。
  • ⚠️ (いわゆる「」)は静注に伴う現象である。 による上半身の・掻痒で、速度を落とすことで対処する。腸管内に留まるとは別の話なので、を避ける理由にはならない。
  • ⚠️ 下痢のある患者を全員検査・治療しない。 C. difficile のは珍しくなく、症状の無いを治療しても利益は無い。

まとめ

  • C. difficile = 。抗菌薬がという防壁を壊した跡地で増え、毒素でを壊す。
  • クリンダマイシン、(特に第3世代)、が高リスク。ではとクリンダマイシンが最強クラスで、はそれより弱い。
  • との関連は観察研究の関連であって因果ではない——原著自身が因果を論じられないと明記している。
  • 治療はまず誘因抗菌薬の中止。初発には、米国・欧州ではが優先され、が代替となる。日本は非重症の初発にメトロニダゾール、重症にバンコマイシンかを第一選択とする。
  • 米国・欧州ではメトロニダゾールが初回の第一選択だったのは過去の推奨で、現在は「他の2剤が使えないとき」に限られる。日本では非重症の初発に今も第一選択。 反復・長期投与は不可逆となりうる神経毒性のため避ける。
  • 劇症型だけは扱いが別——500 mgを1日4回に静注メトロニダゾールをし、イレウスがあればを加え、早期に外科へ相談する。を劇症型に使う根拠は無い。
  • 再発はまたはバンコマイシンの・パルス法、多回再発はまたは。は抗菌薬ではなく、必ず併用で用い、心不全既往では慎重に判断する。日本では販売中止となっている。

出典

  1. 1.Clinical Practice Guidelines for Clostridium difficile Infection in Adults and Children: 2017 Update by the Infectious Diseases Society of America (IDSA) and Society for Healthcare Epidemiology of America (SHEA)(Clinical Infectious Diseases(IDSA / SHEA)・2018)発行元が公開している要約版の推奨本文を取得して確認した。初発エピソードにはバンコマイシン125 mgを1日4回またはフィダキソマイシン200 mgを1日2回10日間がメトロニダゾールより推奨される(強い推奨・高いエビデンスの質)。バンコマイシンとフィダキソマイシンへのアクセスが限られる状況では、メトロニダゾール500 mgを1日3回10日間を初発の非重症例に限り用いることを提案する(弱い推奨・高いエビデンスの質)とし、累積的で不可逆となりうる神経毒性の危険があるため反復・長期投与は避けるとしている(強い推奨・中等度のエビデンスの質)。劇症型(旧称は重症複雑型で、低血圧・ショック・イレウス・巨大結腸で特徴づけられる)には経口バンコマイシン500 mgを1日4回が第一選択で(強い推奨・中等度)、イレウスがあれば生理食塩水約100 mLに溶いた500 mgを6時間ごとに直腸内投与してよく(弱い推奨・低い質)、とくにイレウスがあるときは静注メトロニダゾール500 mgを8時間ごとに経口または直腸バンコマイシンへ併用する(強い推奨・中等度)。外科的管理を要するときは直腸を温存した亜全結腸切除術を行う(強い推奨・中等度)。誘因抗菌薬は可能な限り速やかに中止する(強い推奨・中等度)。抗菌薬適正使用の項では、フルオロキノロン系・クリンダマイシン・セファロスポリン系(術前予防投与を除く)の使用制限を考慮すべきとする(強い推奨・中等度)。プロトンポンプ阻害薬については、疫学的関連があり不要な投与は常に中止すべきとしつつ、CDI予防の手段として中止することを支持する根拠は不十分であるとして推奨を出していない閲覧 2026-09-22
  2. 2.Antibiotics and hospital-acquired Clostridium difficile infection: update of systematic review and meta-analysis(Journal of Antimicrobial Chemotherapy・2014)抄録(PMID 24324224)で確認した。症例対照研究13件・コホート研究1件(計15,938例)を統合した系統的レビューで、院内発症CDIとの関連が最も強かったのは第3世代セファロスポリン(オッズ比3.20、95%CI 1.80〜5.71、6研究)で、クリンダマイシン(2.86、2.04〜4.02、6研究)がこれに次ぎ、第2世代セファロスポリン(2.23、1.47〜3.37)・第4世代セファロスポリン(2.14、1.30〜3.52)・カルバペネム系(1.84、1.26〜2.68)・ST合剤(1.78、1.04〜3.05)・フルオロキノロン系(1.66、1.17〜2.35、10研究)・ペニシリン配合剤(1.45、1.05〜2.02)と続いた。著者らは、院内発症CDIの危険は依然としてセファロスポリン系とクリンダマイシンで最も高くその重要性を過小評価すべきではないとし、フルオロキノロン系の重要性を過大評価すべきではない、とくにフルオロキノロン耐性の流行株が存在しない状況ではそうである、と結論している閲覧 2026-09-22
  3. 3.Association between proton pump inhibitor therapy and Clostridium difficile infection in a meta-analysis(Clinical Gastroenterology and Hepatology・2012)抄録(PMID 22019794)で確認した。1990〜2010年の観察研究を対象とし、症例対照研究25件・コホート研究5件(29論文、計202,965例)をランダム効果モデルで統合した。プロトンポンプ阻害薬の使用はCDIの危険をおよそ2倍に高めた(オッズ比2.15、95%CI 1.81〜2.55)が、研究間の異質性が大きかった(P<0.00001)。⚠️ 著者ら自身が、解析対象が観察研究であるためこの関連の原因を調べることはできなかったと明記している閲覧 2026-09-22
  4. 4.European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases: 2021 update on the treatment guidance document for Clostridioides difficile infection in adults(Clinical Microbiology and Infection(ESCMID Study Group on Clostridioides difficile)・2021)全文PDFを取得して確認した。初発エピソードにはフィダキソマイシン200 mgを1日2回10日間を推奨する(強い推奨・中等度のエビデンス)。フィダキソマイシンが利用できないか実施困難なときは経口バンコマイシン125 mgを1日4回10日間が適切な代替である(強い・高い)。経口メトロニダゾール500 mgを1日3回10日間はバンコマイシンとフィダキソマイシンのいずれも利用できないか実施困難なときに限って用いるべきである(強い・中等度)。バンコマイシン500 mgを1日4回の使用は推奨しない(強い・非常に低い)。非重症例では可能なら誘因抗菌薬を中止し48時間厳重に観察する(good practice statement)。重症および重症複雑型の選択肢はバンコマイシン125 mgを1日4回またはフィダキソマイシン200 mgを1日2回10日間で、どちらかが優ることを示すデータは無い(good practice statement)。重症例に静注メトロニダゾールを経口標準治療へ定型的に追加することは推奨しない(弱い・非常に低い)。経口治療ができないときは胃十二指腸的または内視鏡的に腸管内へバンコマイシンまたはフィダキソマイシンを送達し、補助として静注メトロニダゾール500 mgを1日3回または静注チゲサイクリンを考慮する(弱い・非常に低い)。初発を経口バンコマイシンまたはメトロニダゾールで治療した場合、初回再発にはフィダキソマイシンが望ましい(強い・低い)。初発をフィダキソマイシンで治療した場合は経口標準治療へのベズロトクスマブ追加を考慮する。2回目以降の再発には標準治療の抗菌薬前投与に続く糞便微生物叢移植、または標準治療へのベズロトクスマブ追加が選択肢となる(弱い・中等度と低い)。抗菌薬投与中のCDI予防を目的にプロバイオティクスを定型的に投与することは推奨しない(強い・低い)。本文は、メトロニダゾールが初発治療で非劣性でないことを示した解析を根拠に、もはやCDI治療の第一選択薬として推奨されないと明記している閲覧 2026-09-22
  5. 5.Clostridioides difficile感染症診療ガイドライン2022(日本化学療法学会・日本感染症学会(感染症学雑誌 97巻 Supplement 01、2023年1月24日)・2023)日本感染症学会サイトの全文PDF(guideline_cdi_230125.pdf)で確認した。S50の表1は、非重症の初発にメトロニダゾール500 mg 1日3回10日間の経口投与または点滴静注(強い推奨・A。使えない場合や妊婦・授乳婦はバンコマイシン125 mg 1日4回10日間、再発リスクを有する場合などはフィダキソマイシン200 mg 1日2回10日間)、重症にバンコマイシン125 mg 1日4回10日間、再発リスクを有する場合はフィダキソマイシン(強い推奨・A)、両者が使えない場合にメトロニダゾール(弱い推奨・B)、ショック・低血圧・中毒性巨大結腸症・麻痺性イレウスにバンコマイシン500 mg 1日4回10日間の経口・経鼻胃管投与または500 mg/100 mL生理食塩液の経腸投与とメトロニダゾール点滴静注の併用考慮(弱い推奨・C)、再発にフィダキソマイシン200 mg 1日2回10日間またはバンコマイシン125 mg 1日4回10〜14日間(弱い推奨・B)、再発が何度も続く場合にバンコマイシンのパルス・漸減療法を考慮(弱い推奨・C)とする。S50〜S51の本文は、2018年のメタ解析で非重症群ではメトロニダゾールとバンコマイシンの治療成功率に有意差がなく重症群ではバンコマイシンが有意に高かったこと、メトロニダゾールの薬価の安さ、バンコマイシン使用量の増加がVREを増やしうることから非重症例でメトロニダゾールを第一選択薬として推奨したこと、高用量・長期投与で副作用が出やすいため非重症の初発例にのみ推奨したことを述べる。閲覧 2026-09-27
  6. 6.Clinical Practice Guideline by the Infectious Diseases Society of America (IDSA) and Society for Healthcare Epidemiology of America (SHEA): 2021 Focused Update Guidelines on Management of Clostridioides difficile Infection in Adults(Clinical Infectious Diseases(IDSA / SHEA)・2021)発行元が公開している要約版の推奨本文を取得して確認した。成人の初発エピソードには標準的なバンコマイシン投与よりフィダキソマイシンを用いることを提案する(条件付き推奨・中等度の確実性)とし、注釈でバンコマイシンは許容できる代替であり実施は利用可能な資源に依存すると述べる。再発エピソードにも標準的なバンコマイシン投与よりフィダキソマイシン(標準法または延長パルス法)を提案する(条件付き推奨・低い確実性)とし、初回再発にはバンコマイシンの漸減・パルス法や標準投与も許容できる代替、多回再発ではそれらに加えバンコマイシン後のリファキシミンと糞便微生物叢移植も選択肢とする。直近6か月以内に再発したエピソードには標準治療の抗菌薬にベズロトクスマブを併用することを提案する(条件付き推奨・非常に低い確実性)。本文は、劇症型に対してフィダキソマイシンではなくバンコマイシン500 mgを1日4回経口または経管で用いるという前版の推奨は変更されていないこと、フィダキソマイシンの試験が劇症例を除外していたため劇症型に用いる根拠が無いことを明記している。⚠️ 前版でバンコマイシンとフィダキソマイシンのいずれかをメトロニダゾールより優先したのは強い推奨だったが、フィダキソマイシンをバンコマイシンより優先する今回の順位づけは条件付き推奨である閲覧 2026-09-22
  7. 7.AGA Clinical Practice Guideline on Fecal Microbiota-Based Therapies for Select Gastrointestinal Diseases(Gastroenterology(American Gastroenterological Association)・2024)免疫正常の成人の再発性CDIでは標準治療の抗菌薬終了後に糞便微生物叢由来治療(従来型FMTまたは米国FDA承認製剤)を選択的に用いて再発を予防することを提案し、標準治療の抗菌薬に反応しない重症・劇症CDIで入院中の成人には従来型FMTの選択的使用を提案する一方、高度免疫抑制例には糞便微生物叢由来治療を用いないことを提案したことを確認した閲覧 2026-08-27
  8. 8.Bezlotoxumab for Prevention of Recurrent Clostridium difficile Infection(New England Journal of Medicine・2017)MODIFY I/II試験(第III相、30か国322施設、成人2,655例)でベズロトクスマブ単回投与群がプラセボ群に比べCDI再発率を有意に低下させたこと(16.5%対26.6%)を確認した閲覧 2026-08-27
  9. 9.「ジーンプラバ®点滴静注 625mg」 販売中止に関するお知らせ(MSD株式会社(医療関係者向けのお知らせ)・2023)2023年5月付の医療関係者向けのお知らせ(ウェブアーカイブの保存版PDF)で、ジーンプラバ点滴静注625mgを世界的な需要減少による供給体制の再編により販売中止とし、販売中止時期(予定)を2023年12月末、経過措置期間(予定)を2024年3月31日までとし、2024年4月1日以降は保険請求できないと記していることを確認した閲覧 2026-09-27
  10. 10.ZINPLAVA (bezlotoxumab) injection, solution — Prescribing Information(FDA / DailyMed・2024)ベズロトクスマブはCDIの治療薬ではなく抗菌薬でもないため抗菌薬治療との併用でのみ用いること、うっ血性心不全既往患者では心不全発現率(12.7%対4.8%)と死亡率(19.5%対12.5%)がプラセボより高かったことを確認した閲覧 2026-09-22