臨床薬理学

臨床薬理学 · 30

細菌感染症の経験的抗菌薬療法

Bacterial infections

前提:病態
抗菌薬治療の原則:経験的・標的・予防的治療抗菌薬治療の原則:殺菌性・静菌性抗菌薬と抗菌薬併用抗菌薬選択の考慮事項:特定部位の感染症薬剤性有害反応:偽膜性大腸炎

🧠 全体像:抗菌薬は表を丸暗記して選ぶものではない。①その臓器の感染症を起こしやすい菌はどれか → ②その菌に確実に効く薬群はどれか → ③重症度・院内発症・耐性菌の危険でどこまで広げるか、の3段で論理的に選ぶ。重症なほど「最初の一手を外さない」広い処方にし、培養と感受性が出たら狭い薬へ絞る()。軽症なら安く狭い薬で始め、効かなければ変える余地がある。

この回の位置づけと学び方

個々の抗菌薬や菌名を細部まで覚えることが目的ではない。菌を形態・グラム染色性・好気性か嫌気性か・細胞内寄生かで分類できれば、どの菌がどの感染症を起こし、どの薬群が効くかから筋道を立てて最初の薬を選べる。前半で主な菌群ごとに使える抗菌薬群を、後半で感染症ごとの起因菌とを扱い、各感染症に添えた「基本原則」の理解を中心に置く。見出しに「(発展)」と付けた項目(群心内膜炎、・創感染・咬傷・、・、人獣共通感染症)と性感染症の用量は参考事項である。は地域・施設の耐性状況で変わるため、従来の整理を軸にしつつ、重要な点は現行の代表的なガイドラインと並べる。

抗菌薬選択の原則

flowchart TD
  A["感染症を疑う<br>感染臓器を推定する"] --> B["その臓器で多い起因菌を挙げる"]
  B --> C["重症度・市中か院内か・<br>耐性菌の危険因子を評価"]
  C --> D{"重症か"}
  D -->|"軽症"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='narrow-spectrum'>狭域</span>で安価な薬から開始<br>効かなければ変更"]
  D -->|"重症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intensive care unit'>ICU</span>"| F["外さないことを優先<br>広域・併用で開始"]
  E --> G["培養・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='susceptibility test'>感受性検査</span>"]
  F --> G
  G --> H["起因菌が判明したら<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='narrow-spectrum'>狭域</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='targeted therapy'>標的治療</span>へ切り替え<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='de-escalation'>デエスカレーション</span>)"]
原則 内容 代表例
重症度で「確実さ」を変える 重症ほど第一選択が外れないことが重要。軽症は不確実でも安価な薬で始め、無効なら変更できる の段階的な選択
臓器を考える 薬が感染部位に届かなければで効いても無効 β-ラクタム系は副鼻腔への移行がよくない。・は尿中(膀胱内)でしか効かない
・非経口 生体防御の届きにくい(弁のなど)ではの薬を静注で使う
で菌体へのアミノグリコシドの取り込みが増える 心内膜炎・胆嚢炎でのアミノグリコシド併用
嫌気性菌のカバー 嫌気性菌に弱い基本薬()には、嫌気性菌に強い薬を足す。(阻害薬配合)やなら不要 胆嚢炎・でのセフトリアキソン+メトロニダゾール
施設の耐性状況 院内感染では、その病院の耐性菌の分布が理想の選択を決める ・院内発症の腹膜炎

💡 が特に使われるのは髄膜炎のような致死的感染症である。疑った時点で広く始め(起因菌を外すと取り返しがつかない)、菌が同定されたら単剤に絞る。

主な菌群と使える抗菌薬群

グラム陽性好気性菌

菌 使える薬群 補足
Streptococcus pyogenes 基本のペニシリン(・)±アミノグリコシド、クリンダマイシン、マクロライド系 ペニシリンがいまも最良
Staphylococcus aureus ・、(第1〜2世代セファロスポリン、マクロライド系、クリンダマイシン、第3〜4世代キノロン、リファンピシン)。耐性ならバンコマイシンなどの()、・・・(局所の・、静注〈入手できない国もある〉)±アミノグリコシド 感受性ならに安定なペニシリンかが基本
Streptococcus pneumoniae (±阻害薬)、第1〜2世代セファロスポリン、セフトリアキソン・、第3〜4世代キノロン、バンコマイシンなどの マクロライド系は耐性が多く現在は頼りにならない。ケトライド系のは有効とされたが、現在はほとんど使われない
腸球菌(E. faecalis・E. faecium) (±阻害薬)単独またはセフトリアキソン併用、バンコマイシンなどの、、(E. faecium のみで E. faecalis には無効)、、、±アミノグリコシド、±リファンピシン 単独には
菌ごとに異なる:(Listeria monocytogenes・Corynebacterium diphtheriae)、(Bacillus anthracis) はに

グラム陰性好気性菌

菌 使える薬群
Neisseria gonorrhoeae セフトリアキソン、アジスロマイシン(、)
Neisseria meningitidis セフトリアキソン・(リファンピシン、、)
Moraxella catarrhalis アモキシシリン・、、、、キノロン系
腸内細菌目 感受性の幅が非常に広い。下の段階的な選択を参照
Haemophilus influenzae (±阻害薬)、第2〜3世代セファロスポリン、マクロライド系、()
Pseudomonas aeruginosa 、第3〜4世代セファロスポリン、(を除く)、、()、+アミノグリコシド(→)、
Acinetobacter baumannii (++?)、

腸内細菌目は、耐性の度合いに応じて次のように段階的に広げる。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aminopenicillin'>アミノペニシリン</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ureidopenicillin'>ウレイドペニシリン</span><br>第2〜4世代セファロスポリン"] --> B["耐性なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carbapenems'>カルバペネム系</span>"]
  B --> C["さらに耐性なら<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tigecycline'>チゲサイクリン</span>(効果は不確か)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='colistin'>コリスチン</span>+アミノグリコシド(→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amikacin'>アミカシン</span>)<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fosfomycin'>ホスホマイシン</span>)"]
  D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extended-spectrum β-lactamase'>ESBL</span>産生菌"] --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carbapenems'>カルバペネム系</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ceftolozane'>セフトロザン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tazobactam'>タゾバクタム</span><br>セフタジジム・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='avibactam'>アビバクタム</span>"]
  E --> F["一般に有効な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral drugs'>経口薬</span>は<br>ほとんどない"]

拡張型を産生してと第3〜4世代を分解する菌を産生菌と呼ぶ。β-ラクタム系で使えるのはと、・のような新しいである。

スピロヘータ・細胞内寄生菌・嫌気性菌

群 菌 使える薬群
スピロヘータ Treponema pallidum 基本のペニシリン、、、ドキシサイクリン
スピロヘータ Leptospira ドキシサイクリン、セフトリアキソン
スピロヘータ Borrelia テトラサイクリン系、、
細胞内寄生菌 Chlamydia・Mycoplasma・Legionella・など テトラサイクリン系、マクロライド系、
嫌気性菌 Bacteroides fragilis・Clostridium など メトロニダゾール、クリンダマイシン、(基本・アミノ・ウレイド)・、テトラサイクリン系、(グラム陽性の嫌気性菌のみ)

💡 細胞内寄生菌にβ-ラクタム系が効かないのは、細胞壁(ペプチドグリカン)をもたない(Mycoplasma)か、細胞内にいて届きにくいからである。細胞内へよく入るテトラサイクリン系・マクロライド系・キノロン系を使う。

呼吸器感染症

上気道感染症

疾患 起因菌 治療 要点
咽頭炎 ウイルス、S. pyogenes(ほかのレンサ球菌、C. diphtheriae、淋菌など) 、、第1世代セファロスポリン、マクロライド系、クリンダマイシン ⭐ 大半はウイルス性で、通常は抗菌薬を要しない。非常に強い咽頭炎は S. pyogenes によることがあり、が効くのでそれで足りる
扁桃炎・副鼻腔炎・中耳炎 (肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、レンサ球菌)、Moraxella、H. influenzae、ときに嫌気性菌。扁桃炎はウイルス(伝染性単核症)でも起こる アモキシシリン、⭐アモキシシリン・、、セフプロジル(第2世代)。アレルギーならマクロライド系、 典型的なはで十分で、ほかの細菌性の場合に左の薬を使う

⚠️ 扁桃炎では先に伝染性単核症を除外する。 感染症の患者に(アモキシシリン・アンピシリン)を投与すると、高率に広範な皮疹が出る。

💡 副鼻腔はβ-ラクタム系の移行がよくないため、専門的な推奨は添付文書の記載より多い用量を勧めている。

気管支炎

病型 起因菌 治療
ウイルス、Mycoplasma pneumoniae、Chlamydia pneumoniae、Bordetella pertussis ⭐ 通常は不要。非常に長引くときにマクロライド系
の H. influenzae、Moraxella、S. pneumoniae マクロライド系、アモキシシリン・、第2世代セファロスポリン、第3〜4世代のレスピラトリーキノロン
同上で緑膿菌を疑うとき 緑膿菌 フルオロキノロン+アモキシシリン、・、セフタジジム、

💡 緑膿菌を疑う組み合わせのうち、アモキシシリンそのものは緑膿菌に効かない。緑膿菌を担うのはフルオロキノロン(・)で、アモキシシリンは肺炎球菌などの通常の起因菌を受けもつ。

市中肺炎

⭐ 基本原則:状態が重いほど、選んだ第一選択が確実に効くことが重要になる。軽症では確実性より安さを優先してよく、効かなければ治療を変えられる。

段階 起因菌 治療
併存症なし・65歳未満 肺炎球菌、H. influenzae、M. pneumoniae、C. pneumoniae、ウイルス(ときに Legionella、黄色ブドウ球菌、、) ⭐ アモキシシリン・、。非定型肺炎らしければマクロライド系
中等度の併存症または65歳超 肺炎球菌、H. influenzae、、黄色ブドウ球菌、C. pneumoniae(M. catarrhalis、Legionella、) 経口:アモキシシリン・または±マクロライド、レスピラトリーキノロン。静注:セフトリアキソン・±マクロライド
入院が必要 肺炎球菌、H. influenzae、、Legionella、黄色ブドウ球菌、C. pneumoniae、複数菌の嫌気性菌、ウイルス(M. pneumoniae、M. catarrhalis、) 静注:アモキシシリン・、、、セフトリアキソン・+マクロライド、またはレスピラトリーキノロン。嫌気性菌を疑えばセファロスポリンにクリンダマイシン・メトロニダゾールを足すか、
非常に重症(が必要) 肺炎球菌、Legionella、黄色ブドウ球菌、グラム陰性桿菌、M. pneumoniae、ウイルス(H. influenzae、) 緑膿菌の可能性が低い:セフトリアキソン・・+マクロライドまたはレスピラトリーキノロン。緑膿菌の可能性あり:セフタジジム・・・・+マクロライド、またはフルオロキノロン±アミノグリコシド

⭐ 定型菌かか決められないときは、両方をカバーする:単剤ならレスピラトリーキノロン、併用ならβ-ラクタム+マクロライド。入院患者では最初の選択を外す(定型・非定型の)がない。

💡 緑膿菌の可能性がある重症例の組み合わせは「抗緑膿菌β-ラクタムで緑膿菌を、マクロライドで細胞内寄生菌を」という役割分担である。キノロンを使うならを選ぶ。は緑膿菌への効果が弱い。

・米国感染症学会の2019年版との対比1

場面 従来の整理 2019年版(現行の代表的ガイドライン)
併存症のない外来 アモキシシリン・、、非定型ならマクロライド アモキシシリン1 g 1日3回(強い推奨)、またはドキシサイクリン100 mg 1日2回、マクロライドは肺炎球菌のが25%未満の地域に限る
併存症のある外来 β-ラクタム±マクロライド、レスピラトリーキノロン アモキシシリン・または第2〜3世代セファロスポリンとマクロライドまたはドキシサイクリンの併用、あるいはレスピラトリーキノロン単剤
入院(非重症・重症) β-ラクタム+マクロライド、レスピラトリーキノロン 非重症はβ-ラクタム+マクロライドかレスピラトリーキノロン単剤、重症はβ-ラクタム+マクロライドかβ-ラクタム+レスピラトリーキノロン
・緑膿菌 緑膿菌の可能性でを選ぶ 地域で検証された危険因子がある場合に限って経験的にカバー
嫌気性菌 疑えばクリンダマイシン・メトロニダゾールを追加 を疑っても、・を疑わなければには追加しない

詳しい病態はを参照。

院内肺炎

⭐ 理想的な抗菌薬選択にはその病院の耐性状況の知識が欠かせない。グラム陰性菌の割合はよりはるかに高い。

発症時期 起因菌 治療
早期(入院3〜5日以内):⭐ 主に院内の菌ではない S. pneumoniae、H. influenzae、、患者自身の由来のグラム陰性桿菌(大腸菌、Klebsiella、Enterobacter など) 経口:アモキシシリン・、、。静注:セフトリアキソン、アモキシシリン・。なら、
晩期(5〜7日以降):⭐ 院内の耐性菌が増えてくる S. pneumoniae、H. influenzae、の(多くは多剤耐性の)グラム陰性腸内細菌目、 静注:、、セフトリアキソン、・、セフタジジム、
で獲得:⭐ が主体で、それに合わせた選択が要る 、Legionella、。人工呼吸中は緑膿菌とに注意 ±、±、セフタジジム±、と阻害薬の配合剤±、、。Legionella には、にはバンコマイシン・

⚠️ との配合でを挙げる整理もあるが、実在する配合剤は・で、との配合剤はない(と組むのはアモキシシリンとチカルシリン)。

は、全般はを参照。

感染性心内膜炎

⭐ 治療の基本原則

  • 起因菌の大半はである(例外はグラム陰性の群)。
  • 治療の軸はβ-ラクタム系で、併用(例:アンピシリン+セフトリアキソン)か、重症ならアミノグリコシドを加える。β-ラクタムにアレルギーか耐性ならが次の手である。
  • 治療と耐性の面では、緑色レンサ球菌が最も扱いやすく、黄色ブドウ球菌はβ-ラクタム耐性が多く、腸球菌が最も厄介である(グリコペプチド耐性もまれでなく、アミノグリコシド耐性はそれと独立に起こりうる)。
  • 診断に血液培養が含まれるので、耐性の確認は必ず治療の過程に組み込まれる。
  • 治療はどの場合も非経口で、の薬を選ぶのが望ましい(下の一覧で唯一の例外はのリネゾリド)。

💡 の中は菌が密集し白血球が届きにくく、菌の分裂も遅い。宿主の防御に頼れないので、菌を自力で殺しきるの薬を、確実に高い血中濃度が得られる静注で長期間使う。

自己弁の左心系心内膜炎

起因菌 治療
黄色ブドウ球菌 感受性:、、。:バンコマイシン、(4〜6週間)
緑色レンサ球菌・S. bovis 、アモキシシリン、アンピシリン、セフトリアキソン(アレルギーならバンコマイシン)±
腸球菌:β-ラクタム感受性 アンピシリン・アモキシシリン+またはセフトリアキソン
腸球菌:産生 アモキシシリン・、、バンコマイシン+
腸球菌:アンピシリン耐性 バンコマイシン+
腸球菌:耐性・アンピシリン感受性 アモキシシリン・アンピシリン+セフトリアキソン、または
+リネゾリドまたは。感受性成績しだいで、の併用も

💡 を足すと治療期間が縮む:ペニシリン感受性の緑色レンサ球菌による合併症のないでは、β-ラクタム単独なら4週間、併用なら2週間で済む。従来の整理には「併用で4週間でなく2週間」を逆向きに「2週間でなく4週間」と読める書き方もあるが、短くなるのは併用のほうである。ペニシリンに中等度耐性の株では、どのみち併用が必要になる。

⚠️ 腸球菌にセフトリアキソン単独、あるいはセフトリアキソン+は無効である。腸球菌はにで、セフトリアキソンが意味をもつのはアンピシリンと組んだときだけである。

💡 アンピシリン+セフトリアキソンが効くのは、両者が腸球菌の異なるを同時にふさぎ、をに止めるからである。腎毒性のあるを避けられるので、アミノグリコシド高度耐性株や腎機能の悪い患者で役立つ。

HACEK群による心内膜炎(発展)

群は口腔内にいるグラム陰性桿菌の一群で、Haemophilus parainfluenzae、Aggregatibacter aphrophilus、Aggregatibacter actinomycetemcomitans、Cardiobacterium hominis、Eikenella corrodens、Kingella kingae を含む。治療はセフトリアキソン、、またはアンピシリン+である。

人工弁心内膜炎と右心系心内膜炎

場面 治療
() ⭐ 抗菌薬の選び方はと同様だが、用量が異なり、より長い治療が必要なことがあり、リファンピシンを補助的に併用しうる
のブドウ球菌 と同じ薬+リファンピシン+
のコリネバクテリウム +。アレルギーかつ耐性ならバンコマイシン
合併症のない(初めての薬物注射使用者)・ またはの2週間で足りることがある。それ以外はと同じ

💡 リファンピシンをで足すのは、の表面にできた内の菌にも効くからである。単剤では耐性化が速いので必ず併用で使う。

詳しくはを参照。

尿路感染症

病型 起因菌 治療
女性の Escherichia coli、Staphylococcus saprophyticus、Proteus、Klebsiella、E. faecalis 、、(耐性に注意)、(耐性に注意)、経口
女性の単純性 E. coli(Proteus、Klebsiella、S. saprophyticus) 非経口の第2〜3世代セファロスポリン、経口、アモキシシリン・(静注なら)、アミノグリコシド(単剤で可。尿路感染症に限る)、第2世代フルオロキノロン(耐性が多い)
(男性は常にとして扱う) E. coli、Klebsiella、緑膿菌、Enterobacter、ほかの腸内細菌目、腸球菌、Staphylococcus epidermidis(微生物学的診断が重要) (アキセチル)、、セフトリアキソン、セフタジジム、・、アミノグリコシド(単剤)、(産生菌に)、(耐性が多い)

⭐ とは産生菌でも効果が落ちない。 ただし効くのは尿路の内腔(膀胱内)だけで、腎実質や血中には十分な濃度が得られないので、より重い感染症(腎盂腎炎・)には使わない。

💡 アミノグリコシドが尿路感染症に限って単剤で使えるのは、ほぼ未変化体のまま腎から排泄され、尿中・腎組織で高濃度になるからである。

⭐ 従来の整理では、上部尿路の産生菌感染症は状態が安定した外来患者でも使えるがなく、事実上非経口治療を避けられないとされた。現行ではしだいでも推奨薬になる(下の表)。

産生菌による尿路感染症 従来の整理 米国感染症学会2026年版2
・はの影響を受けない 、、アミノグリコシド単回、ゲポチダシン、、スロペネムが推奨薬(ベット順に並べたもので優先順位ではない)。は大腸菌に限る代替(他菌種は耐性遺伝子をもつことが多い)。耐性・入手性・不耐でこれらが使えないときは、・エンメ、も用いうる
腎盂腎炎・ 非経口治療が避けられない(がない) 感受性があれば、、が推奨薬。耐性・不耐・毒性でこれらが使えなければ・エンメか。静注・アミノグリコシド・・は代替で、うち・は重症でなく菌血症を伴わない例に限る

💡 経験的に・で始めたが、あとから産生菌だと分かった場合、患者が臨床的に改善しているなら薬剤の変更も投与期間の延長も要らない2。「に・は不可」を一律に当てはめないための例外として押さえる。

詳しくは尿路感染症・を参照。

腹腔内感染症

下痢症

項目 内容
起因菌 ノロウイルス・・。Salmonella、Shigella、Campylobacter、Yersinia、E. coli、C. difficile(後述)
ウイルス性 対症療法:水分・電解質の補充。場合により(など)の補助薬。に確かな有益性はない
細菌性 症状が軽ければ対症療法で足りる。赤痢(血性下痢)には(・・Shigella)またはアジスロマイシン(Campylobacter)。(の大腸菌)にはも選択肢

⚠️ に抗菌薬を使うと、菌体の破壊での放出が増えの危険が高まりうるとして、抗菌薬を避ける考え方が一般的である。の対象を「赤痢様の血性下痢」とまとめるときも、が疑われる場合は慎重に判断する。

胆嚢炎

項目 内容
起因菌 腸内細菌目(大腸菌、Klebsiella、Enterobacter など)、腸球菌、嫌気性菌、Clostridium
治療 第3〜4世代セファロスポリン+メトロニダゾール・クリンダマイシン、・、
軽症 アモキシシリン・+、セフトリアキソン±メトロニダゾール、
中等症 ・、セフトリアキソン±メトロニダゾール、
重症 ・+、セフタジジム・±メトロニダゾール、±バンコマイシン
院内発症 上記に加え

⭐ 耐性率は常に変わっており、産生菌(とくに Klebsiella)が多い。重症なほど、また耐性の可能性が高いほど、より広域の薬を選ぶ。基本薬が嫌気性菌に弱い()なら嫌気性菌に強い薬を必ず足すが、(阻害薬配合)やなら不要である。アミノグリコシドの併用はで説明される。

腹膜炎

病型 起因菌 治療
腸内細菌目、腸球菌 、・、、・
二次性(外科的)腹膜炎・(例:虫垂穿孔) E. coli、Klebsiella pneumoniae、腸球菌+嫌気性菌(⭐ B. fragilis):⭐ グラム陽性・陰性のと嫌気性菌がすべて関わる セフトリアキソン+メトロニダゾール、・、(診断が遅れた例ではいずれにせよ)
・院内発症 多剤耐性の腸内細菌(大腸菌、Klebsiella、Enterobacter)、緑膿菌、、腸球菌 ±アミノグリコシド、第3〜4世代セファロスポリン+メトロニダゾール±バンコマイシン。には・リネゾリド、多剤耐性には

💡 は腸管の内容がそのまま漏れた感染なので、腸内細菌目+嫌気性菌(B. fragilis)の両方を必ず覆う。セフトリアキソンは B. fragilis に効かないのでメトロニダゾールを組む。

詳しくは腹膜炎を参照。

Clostridioides difficile 感染症(偽膜性大腸炎)

起因菌は Clostridioides difficile で、抗菌薬でが乱れたあとに増えて毒素を出す。従来のと、現行の米国感染症学会・米国医療疫学学会の2021年版、日本化学療法学会・日本感染症学会の2022年版を並べる。現行の第一選択は国によって違う。

場面 従来の整理 米国2021年版(現行)3 日本2022年版(現行)4
初発 ⭐ メトロニダゾール経口10日間。3〜5日で改善がなければバンコマイシン経口 200 mg 1日2回10日間を提案。バンコマイシン125 mg 1日4回10日間は許容できる代替 非重症はメトロニダゾール500 mg 1日3回10日間が第一選択。使えない場合や妊婦・はバンコマイシン125 mg 1日4回、再発リスクがあれば200 mg 1日2回10日間
重症 ⭐ メトロニダゾール静注(経口できなければ)+バンコマイシン経口。ではバンコマイシンの注腸も 劇症型にはバンコマイシン500 mg 1日4回の経口または投与(前版から変更なし) 重症はバンコマイシン125 mg 1日4回10日間または(再発リスクがあれば)。ショック・低血圧・・ではバンコマイシン500 mg 1日4回を経口・または注腸で投与し、メトロニダゾールの併用を考慮
再発 バンコマイシン(経口も可)、減量して3週間続ける長期投与、または(高価) (標準法または延長パルス法)を提案。初回再発ではバンコマイシンの・パルス法や標準投与も許容できる代替 またはバンコマイシン(弱い推奨)。再発が何度も続く場合はバンコマイシンのパルス・療法を考慮

💡 ・は腸管からほとんど吸収されず、大腸の内腔で高濃度になる。逆に静注バンコマイシンは腸管内へほとんど出ないので、C. difficile 感染症には効かない。静注で腸管へ届くのはメトロニダゾールのほうである。

⚠️ メトロニダゾールを第一選択とする整理は米国では従来のもので、現行では初発にもかバンコマイシンのが優先される3。日本では非重症の初発に限ってメトロニダゾールが今も第一選択で、非重症例ではバンコマイシンと治療成績に差がなく、が安く、バンコマイシンの使用量が増えるとが増えうることが理由である4。関連:C. difficile 感染症、。

細菌性髄膜炎

⭐ 治療の基本原則:重い病気なので戦略をとることが多い。疑った時点ですぐにセフトリアキソンかの静注を始める。確実に髄膜炎ならもありうる。

三剤の各成分 狙う菌
セフトリアキソン 髄膜炎菌(と肺炎球菌)
アンピシリン
バンコマイシン β-ラクタム耐性の肺炎球菌

起因菌が同定されたら単剤へ切り替えてよい。

年齢・背景別の経験的治療

対象 主な起因菌 治療
新生児 H. influenzae(ワクチンで減少)、Streptococcus agalactiae、E. coli、、ブドウ球菌 +アンピシリン
生後1〜3か月 S. agalactiae、、グラム陰性桿菌、肺炎球菌、髄膜炎菌、H. influenzae +アンピシリン±バンコマイシン
3か月〜60歳・素因なし 肺炎球菌、髄膜炎菌 ・セフトリアキソン±バンコマイシン
60歳超 肺炎球菌、髄膜炎菌、、腸内細菌目 ・セフトリアキソン+アンピシリン±バンコマイシン、または
特殊な状況(脳外科手術後、後、免疫抑制) 上記の菌+ブドウ球菌、グラム陰性菌(緑膿菌、Klebsiella)、 バンコマイシン+セフタジジム・・+アンピシリン
β-ラクタムアレルギー − バンコマイシン+±()。グラム陰性菌には、または(⚠️ ペニシリンとのはまれだが、アレルギー歴では慎重に)

💡 を別枠でアンピシリンで覆うのは、がにだからである。新生児・高齢者・免疫抑制者でアンピシリンが加わる理由はこれに尽きる。

欧州臨床微生物感染症学会の2016年版との対比5

項目 従来の整理 2016年版
のカバーを加える年齢 60歳超 50歳超、または危険因子(糖尿病・・がんなど)のある成人
新生児 +アンピシリン アモキシシリン・アンピシリン・ペニシリン+、またはアモキシシリン・アンピシリン+アミノグリコシド
バンコマイシン 必要に応じて追加 ペニシリン感受性の低下した肺炎球菌がみられる地域で、・セフトリアキソンにバンコマイシンまたはリファンピシンを追加
触れていない 高所得国の成人・小児では、抗菌薬の初回投与と同時にを開始することを強く推奨(成人10 mg 1日4回を4日間)

髄膜炎菌の接触者予防

⭐ (同居者、保育施設の、口腔分泌物に直接曝露した人)にはかリファンピシンを予防投与する。現行の欧州臨床微生物感染症学会の2016年版は、単回経口、セフトリアキソン単回筋注、リファンピシン2日間経口を第一選択とし、患者の同定から24時間以内に始めるとしている。ペニシリンで治療した患者自身も、の保菌は除菌されないため、退院前に除菌効果のある抗菌薬を受ける5。

詳しくはを参照。

皮膚・軟部組織感染症と骨・歯の感染症

⭐ 治療の基本原則:が主体である。S. pyogenes にはいまも基本のペニシリンが最良の治療である。(この領域でははまれ)には、に安定なペニシリン(静注、経口)か第1世代セファロスポリン(経口、静注)を選ぶ。アレルギー時などの代替は主にクリンダマイシンである。

疾患 起因菌 治療
黄色ブドウ球菌、まれにグラム陰性桿菌(緑膿菌) 黄色ブドウ球菌:軽症なら局所の・クリンダマイシン・、全身投与なら・。緑膿菌:重症なら(通常は自然に治る)
S. pyogenes(まれに黄色ブドウ球菌) 、、クリンダマイシン(、、セフトリアキソン、リネゾリド)
蜂窩織炎 S. pyogenes、黄色ブドウ球菌(グラム陰性菌、Clostridium) 、、アモキシシリン・、クリンダマイシン、バンコマイシン
レンサ球菌性トキシックショック症候群() S. pyogenes (1日2,400万単位)+アミノグリコシド+クリンダマイシン
ブドウ球菌性トキシックショック症候群 黄色ブドウ球菌 バンコマイシン+クリンダマイシン+または・。には、、、、、
骨髄炎 黄色ブドウ球菌、グラム陰性菌(とくに緑膿菌) 感受性:、、クリンダマイシン。:バンコマイシン±リファンピシン。グラム陰性菌:セフタジジム、、。局所には
症 レンサ球菌、嫌気性菌(Actinomyces、スピロヘータなど) アモキシシリン・、クリンダマイシン

💡 毒素性の病態にクリンダマイシンを加える理由:クリンダマイシンはなので、毒素()の産生そのものを止める。また菌量が多く増殖が止まった状態ではの発現が減りβ-ラクタムが効きにくくなるが、クリンダマイシンは菌のに左右されにくい。関連:トキシックショック症候群、。

ガス壊疽・創感染・咬傷・糖尿病足(発展)

疾患 起因菌 治療
Clostridium(ときに腸内細菌目、Bacteroides、嫌気性レンサ球菌) ・+クリンダマイシン
汚染創(四肢) 、Clostridium、腸内細菌目、緑膿菌 アモキシシリン・、第1〜2世代セファロスポリン、・(+破傷風ワクチン)
術後創感染 黄色ブドウ球菌、S. epidermidis、腸内細菌 第1〜2世代セファロスポリン+クリンダマイシン、アモキシシリン・。重症なら・、フルオロキノロン+クリンダマイシン
猫・犬の咬傷 Pasteurella multocida、黄色ブドウ球菌、Capnocytophaga canimorsus アモキシシリン・が標準。代替は第2〜3世代セファロスポリン+嫌気性菌カバー(クリンダマイシンまたはメトロニダゾール)、、、ドキシサイクリン6(⚠️ の予防も考える)
・切断の危険なし 多くは複数菌:黄色ブドウ球菌、レンサ球菌、グラム陰性桿菌 第1〜2世代セファロスポリン、アモキシシリン・、クリンダマイシン
・重症で切断の危険あり ブドウ球菌(黄色ブドウ球菌+陰性)、レンサ球菌(腸球菌)、腸内細菌目(大腸菌、Klebsiella、Proteus、Morganella)、コリネバクテリウム科、嫌気性菌(レンサ球菌、Bacteroides、Clostridium) [・、・、アモキシシリン・+アミノグリコシド、+メトロニダゾールのいずれか]+バンコマイシン

⚠️ 咬傷に「クリンダマイシン単剤」「マクロライド単剤」を選ばない。 は感染した動物にと嫌気性菌の両方に効く薬を用いることを強く推奨し、その代表としてアモキシシリン・を挙げる6。クリンダマイシンは嫌気性菌カバーの追加薬として登場するだけで、単剤の選択肢には入っていない——咬傷で最も重要な*Pasteurella multocida*を外すからである。マクロライドもPasteurella multocidaとフソバクテリウムへの活性が一定しないため、他に選択肢が無い場合を除いて避ける6。ST合剤やを使うときは、クリンダマイシンかメトロニダゾールで嫌気性菌を補う6。

💡 妊娠中の咬傷では選択肢が狭まる。 テトラサイクリン系(ドキシサイクリン)とはで、ST合剤はを除けば安全に使える6。結果としてアモキシシリン・の位置がいっそう強くなる。

性感染症

用量は参考値である。従来の用法と、現行の米国疾病予防管理センターの2021年版を並べる7。

梅毒

病期 従来の用法 2021年版(現行)
早期(1期・2期) ⭐ 240万単位筋注を1期は1回、2期は1週間隔で2回。代替:アモキシシリン3 g+を1日2回14日間、ドキシサイクリン100 mg 1日2回14日間、セフトリアキソン10〜14日間 1期・2期・とも240万単位の単回筋注。追加投与は効果を高めない。ペニシリンアレルギーではドキシサイクリン100 mg 1日2回14日間など。セフトリアキソンの・期間は定まっていない
晩期(なし) ⭐ を週1回、3週間。代替:セフトリアキソン、ドキシサイクリン 240万単位を1週間隔で3回。アレルギーではドキシサイクリン100 mg 1日2回28日間など
300万〜400万単位を4時間ごと(1日1,800万〜2,400万単位)、ペニシリン240万単位+を毎日、セフトリアキソン2 gを10〜14日間 水溶性 1日1,800万〜2,400万単位(300万〜400万単位を4時間ごと静注)を10〜14日間。代替はペニシリン240万単位1日1回筋注+500 mg 1日4回を10〜14日間、アレルギーではセフトリアキソン1〜2 gを10〜14日間

💡 はから少しずつ溶け出す持続製剤で、分裂の遅いに対して低濃度のペニシリンを長く保てる。一方、髄液へは十分に届かないので、には大量の水溶性を静注する。関連:梅毒。

淋菌感染症

項目 従来の用法 現行
標準 セフトリアキソン250 mg筋注+アジスロマイシン1 g経口の単回、または400 mg経口単回+アジスロマイシン ⭐ より新しい推奨:セフトリアキソン500 mg〜1 gの単回筋注。米国疾病予防管理センター2021年版は体重150 kg未満で500 mg(150 kg以上は1 g)の単回とし、クラミジアを除外できなければドキシサイクリン100 mg 1日2回7日間を加える。800 mg単回はセフトリアキソンが使えないときの代替
2 g筋注(3日間とする整理もあるが、での通常の用法は単回投与)。セフトリアキソン耐性はいまのところ少ないが報告はある 米国では入手できず、咽頭感染への効果も乏しい
β-ラクタムアレルギー 感受性を確認したうえで(+アジスロマイシン)を考慮。ペニシリンはもはや選択肢にならない セファロスポリンアレルギーでは240 mg筋注+アジスロマイシン2 g経口の単回

関連:。

非淋菌性尿道炎と鼠径リンパ肉芽腫

疾患(起因菌) 従来の用法 2021年版(現行)
(Chlamydia trachomatis、Mycoplasma hominis、Ureaplasma) ⭐ アジスロマイシン1 g経口単回、またはドキシサイクリン1日100 mgを1週間 にはドキシサイクリン100 mg 1日2回7日間が推奨。アジスロマイシン1 g単回と500 mg 1日1回7日間は代替
(C. trachomatis L1〜L3型) アジスロマイシン1 g経口を週1回3週間、ドキシサイクリン100 mg 1日2回3週間 ドキシサイクリン100 mg 1日2回21日間が推奨、アジスロマイシン1 g週1回3週間は代替

鼠径肉芽腫と軟性下疳(発展)

疾患(起因菌) 従来の用法 2021年版(現行)
(Klebsiella granulomatis) アジスロマイシン1 g経口を週1回、3週 アジスロマイシン1 g週1回または500 mg連日を、3週以上かつ病変が完全に治るまで
(Haemophilus ducreyi) アジスロマイシン1 g経口、またはセフトリアキソン250 mg筋注の単回 同じ(ほかに500 mg 1日2回3日間、)

関連:、・・。

人獣共通感染症(発展)

疾患(起因菌) 治療
ライム病(広義の Borrelia burgdorferi) 早期(限局性・播種性):アモキシシリン(+)、ドキシサイクリン、の経口を3週間。セフトリアキソン静注2週間。マクロライド系やの追加の位置づけは定まっていない。晩期:セフトリアキソン静注2〜4週間
(Yersinia pestis) ()+ドキシサイクリン、()、・・
(Francisella tularensis) ()、ドキシサイクリン、。髄膜炎ではアミノグリコシド+ドキシサイクリンまたは
(Brucella) +ドキシサイクリン、またはドキシサイクリン+リファンピシン()
(Leptospira interrogans) 外来:ドキシサイクリン、アジスロマイシン、アモキシシリン。入院:、、セフトリアキソン、ドキシサイクリン、アジスロマイシン。予防:低リスク(実験動物)ならドキシサイクリン1回
(Rickettsia など) ドキシサイクリン、妊婦では
  • ライム病は、どちらの時期に治療しても慢性化を否定しきれず、治療について国際的な合意は現在ない。Anaplasma・Babesia とのもある。
  • 💡 細胞内で増える・ブルセラ・には、細胞内に入るテトラサイクリン系が軸になり、アミノグリコシドやリファンピシンを組み合わせる。
  • ⚠️ 妊婦にを選ぶのは、テトラサイクリン系が胎児の歯・骨に沈着するためである。ただしも、出産間近に使うと新生児のグレイ症候群を起こしうる。

耐性菌への対応の整理

耐性菌 従来の整理での選択肢 現行の注意点
バンコマイシン・()、、リネゾリド、、、 はで失活するので肺炎には使わない
リネゾリド、、、(E. faecium のみ) 心内膜炎ではを軸にした併用
産生腸内細菌目 、・、セフタジジム・。はほとんどない 膀胱炎は内腔で効く、腎盂腎炎・は感受性があれば(なければ非経口)。尿路以外では(・・)が推奨で、重症例やではまたはを選び、・エンメが代替。・はで感受性があっても尿路以外では勧められない。尿路以外でも臨床的に反応し感受性があれば、経口の・・への切り替えを考慮できる2
耐性緑膿菌 抗緑膿菌β-ラクタム+アミノグリコシド()、 新しいやが選択肢に加わった
多剤耐性・ (++)、 侵襲性感染症では・とまたはの併用が推奨。これがすぐに使えないときだけ、高用量(成分で1日9 g)に・・のいずれか1剤以上を併用し、・を開始できるまでの一時的な橋渡しとして用いる2

⚠️ は腎毒性・神経毒性が強く、併用薬としての位置づけが中心である。新しい薬が使えるなら、より安全な薬が優先される。

まとめ

  • 抗菌薬選択は「臓器 → 起こしやすい菌 → その菌に効く薬群 → 重症度とで広げる」の順に論理で組み立てる。重症ほど外さない広い処方で始め、菌が分かったら絞る。
  • 臓器が選択を決める:副鼻腔はβ-ラクタムが届きにくく、・は膀胱内でしか効かず、にはの薬を静注で長く使う。
  • 嫌気性菌に弱いにはメトロニダゾールを足し、(阻害薬配合)やなら不要。では腸内細菌目+ B. fragilis を必ず覆う。
  • は定型・非定型を読み違えたときの失敗を許せない入院例で両方をカバーする。は発症時期と施設の耐性状況で広げる。
  • 心内膜炎:緑色レンサ球菌が易しく、黄色ブドウ球菌はβ-ラクタム耐性、腸球菌が最難関。腸球菌にセフトリアキソン単独は無効で、アンピシリンとの併用で初めて意味をもつ。
  • 髄膜炎はセフトリアキソン(髄膜炎菌・肺炎球菌)+アンピシリン()+バンコマイシン(耐性肺炎球菌)の発想で始める。現行の欧州の推奨ではを覆う年齢は50歳超で、を抗菌薬と同時に始める。
  • 扁桃炎では伝染性単核症を除外してからを使う。
  • 従来と現行で大きく変わった点:C. difficile 感染症の第一選択は米国ではメトロニダゾールから・へ(日本は非重症の初発にメトロニダゾールを残す)、淋菌はセフトリアキソン250 mg+アジスロマイシンから500 mg〜1 gの単剤へ、2期梅毒のは2回から単回へ、クラミジアはドキシサイクリン1日2回7日間が優先に。
  • 耐性菌:にはなどを、産生菌の尿路以外の感染にはを使い、菌には新しい・、は最後の手段として使う。

出典

  1. 1.Diagnosis and Treatment of Adults with Community-acquired Pneumonia. An Official Clinical Practice Guideline of the American Thoracic Society and Infectious Diseases Society of America(American Thoracic Society / Infectious Diseases Society of America・2019)PMC全文(PMC6812437)で、併存症のない外来成人にアモキシシリン1 g 1日3回(強い推奨)・ドキシサイクリン100 mg 1日2回・マクロライド(肺炎球菌のマクロライド耐性が25%未満の地域に限る)、併存症のある外来成人にアモキシシリン・クラブラン酸または第2〜3世代セフェム(セフポドキシム・セフロキシム)とマクロライドまたはドキシサイクリンの併用、あるいはレスピラトリーキノロン単剤、非重症入院にβ-ラクタム+マクロライドまたはレスピラトリーキノロン単剤、重症入院にβ-ラクタム+マクロライドまたはβ-ラクタム+レスピラトリーキノロンを推奨すること、MRSAと緑膿菌は地域で検証された危険因子がある場合に限って経験的にカバーすること、誤嚥性肺炎が疑われても肺膿瘍・膿胸を疑わなければ嫌気性菌カバーを定型的に加えないことを提案していることを確認した。閲覧 2026-09-26
  2. 2.Infectious Diseases Society of America 2026 Guidance on the Treatment of Antimicrobial-Resistant Gram-Negative Infections(Clinical Infectious Diseases / Infectious Diseases Society of America・2026)DOI 先の academic.oup.com は bot 判定で 403 を返すため、IDSA の指針掲載ページ(`https://www.idsociety.org/practice-guideline/amr-guidance/`、CURRENT 表示、2026年7月30日公開、内容は2026年3月1日時点)にブラウザの User-Agent を付けた素の curl で全文を取得し、Question 1.1〜1.4 と Question 5.1・5.2 の suggested approach を逐語で確認した。Question 1.1 は単純性尿路感染症の推奨薬をアミノグリコシド単回・ゲポチダシン・ニトロフラントイン・ピブメシリナム・スロペネム・スルファメトキサゾール+トリメトプリムとし(原文で「listed alphabetically and in no preferential order」と明示)、経口ホスホマイシンをESBL産生大腸菌に限る代替、耐性・入手性・不耐でこれらが使えない場合にフルオロキノロン系・セフェピム・エンメタゾバクタム・カルバペネム系を用いうるとする。Question 1.2 は複雑性尿路感染症で感受性が示されればスルファメトキサゾール+トリメトプリム・シプロフロキサシン・レボフロキサシンを推奨薬、耐性・不耐・毒性でこれらが使えないときはセフェピム・エンメタゾバクタムまたはカルバペネム系(エルタペネム・メロペネム・イミペネム)を推奨薬、静注ホスホマイシン・アミノグリコシド・ピペラシリン・タゾバクタムを代替とする。Question 1.3 は尿路以外のESBL産生菌感染症でエルタペネム・イミペネム・メロペネムを推奨薬とし、重症例または低アルブミン血症ではイミペネムまたはメロペネムを優先、セフェピム・エンメタゾバクタムを代替とし、臨床的反応が得られ感受性が示されれば経口シプロフロキサシン・レボフロキサシン・スルファメトキサゾール+トリメトプリムへの切り替えを考慮できるとする。Question 1.4 はピペラシリン・タゾバクタムを、経験的に開始した単純性尿路感染症であとからESBL産生菌と判明し臨床的改善があれば変更も期間延長も不要とし、複雑性尿路感染症では重症でなく菌血症を伴わない患者に限る代替とし、尿路以外では試験管内で感受性があっても勧めないとする。Question 5.1 は逐語「Sulbactam-durlobactam, in combination with imipenem or meropenem, is the preferred treatment for invasive CRAB infections.」、Question 5.2 はスルバクタム・デュルバクタムがすぐに使えない場合に限り高用量アンピシリン・スルバクタム(スルバクタム成分で1日9 g)にセフィデロコル・ミノサイクリン・ポリミキシンBなど少なくとも1剤を併用し、スルバクタム・デュルバクタム(カルバペネム併用)を開始できるまでの一時的な橋渡しとする、と述べることを確認した。閲覧 2026-09-28
  3. 3.Clinical Practice Guideline by the Infectious Diseases Society of America (IDSA) and Society for Healthcare Epidemiology of America (SHEA): 2021 Focused Update Guidelines on Management of Clostridioides difficile Infection in Adults(Clinical Infectious Diseases(IDSA / SHEA)・2021)発行元が公開している推奨本文で、初発エピソードに標準的なバンコマイシン(125 mg 1日4回10日間)よりフィダキソマイシン(200 mg 1日2回10日間)を提案し(条件付き推奨)バンコマイシンは許容できる代替であること、再発例にもフィダキソマイシン(標準法または延長パルス法)を提案し、初回再発ではバンコマイシンの漸減・パルス法や標準投与も許容できる代替であること、劇症型ではバンコマイシン500 mg 1日4回の経口または経鼻胃管投与という前版の推奨が変わっていないことを確認した。閲覧 2026-09-26
  4. 4.Clostridioides difficile感染症診療ガイドライン2022(日本化学療法学会・日本感染症学会(感染症学雑誌 97巻 Supplement 01、2023年1月24日)・2023)日本感染症学会サイトの全文PDF(guideline_cdi_230125.pdf)で確認した。S50の表1は、非重症の初発にメトロニダゾール500 mg 1日3回10日間の経口投与または点滴静注(強い推奨・A。使えない場合や妊婦・授乳婦はバンコマイシン125 mg 1日4回10日間、再発リスクを有する場合などはフィダキソマイシン200 mg 1日2回10日間)、重症にバンコマイシン125 mg 1日4回10日間、再発リスクを有する場合はフィダキソマイシン(強い推奨・A)、ショック・低血圧・中毒性巨大結腸症・麻痺性イレウスにバンコマイシン500 mg 1日4回10日間の経口・経鼻胃管投与または経腸投与とメトロニダゾール点滴静注の併用考慮(弱い推奨・C)、再発にフィダキソマイシンまたはバンコマイシン(弱い推奨・B)、再発が何度も続く場合にバンコマイシンのパルス・漸減療法を考慮(弱い推奨・C)とする。S51の本文は、2018年版から海外のガイドラインと異なり非重症例でメトロニダゾールを推奨しており、薬価の安さとバンコマイシン使用量の増加がVREを増やしうることから今回も非重症例でメトロニダゾールを第一選択薬として推奨したと述べる。閲覧 2026-09-27
  5. 5.ESCMID guideline: diagnosis and treatment of acute bacterial meningitis(European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases (ESCMID)・2016)Wayback Machineに保存された誌面HTML全文(2023年10月20日取得)の表4.1で、経験的治療を新生児(1か月未満)はアモキシシリン/アンピシリン/ペニシリン+セフォタキシムまたはアモキシシリン/アンピシリン+アミノグリコシド、1か月〜18歳と18〜50歳はセフォタキシムまたはセフトリアキソン(ペニシリン感受性が低下した肺炎球菌の地域ではバンコマイシンまたはリファンピシンを追加)、50歳超または危険因子(糖尿病・免疫抑制薬・がんなど)のある成人はこれにアモキシシリン/アンピシリン/ペニシリンGを加えるとしていること、本文で50歳超の成人または危険因子のある50歳未満の成人ではリステリアをカバーすること、髄膜炎菌感染症の濃厚接触者にはシプロフロキサシン単回経口・セフトリアキソン単回筋注・リファンピシン2日間経口が第一選択で同定から24時間以内に始め、ペニシリンで治療した患者も退院前に除菌効果のある抗菌薬を受けるべきこと、高所得国の急性細菌性髄膜炎の成人(10 mg 1日4回4日間)と小児に経験的なデキサメタゾンを強く推奨し抗菌薬の初回投与と同時に始めるとしていること(Grade A)を確認した。閲覧 2026-09-26
  6. 6.Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Skin and Soft Tissue Infections: 2014 Update by the Infectious Diseases Society of America(Infectious Diseases Society of America (IDSA)・2014)誌面HTML全文(Wayback Machineの2026年5月17日取得版)で推奨XIIとその根拠の節を読んだ。感染した動物咬傷創には好気性菌と嫌気性菌の両方に活性のある薬剤を用いる(原文「An antimicrobial agent or agents active against both aerobic and anaerobic bacteria such as amoxicillin-clavulanate (Table 5) should be used (strong, moderate).」)とし、アモキシシリン・クラブラン酸が咬傷創で想定される好気性菌・嫌気性菌をカバーする適切な経口薬であること、代替は第2世代(セフロキシムなど)または第3世代セファロスポリンに必要なら嫌気性菌カバー(クリンダマイシンまたはメトロニダゾール)を加える方法で、カルバペネム系・モキシフロキサシン・ドキシサイクリンも適切であること、ST合剤またはレボフロキサシンを用いる場合はクリンダマイシンかメトロニダゾールで嫌気性菌をカバーすべきこと(原文「If SMX-TMP or levofloxacin is used, anaerobic coverage with either clindamycin or metronidazole should be added」)、他に選択肢が無い場合を除きマクロライドは避けるべきこと(原文「Unless no alternative agents are available, macrolides should be avoided due to variable activity against Pasteurella multocida and fusobacteria.」)、妊娠はテトラサイクリン系とフルオロキノロン系の相対禁忌でST合剤は妊娠第3三半期を除けば安全に処方しうることを確認した。クリンダマイシンは嫌気性菌カバーの追加薬として挙がるだけで、単剤の選択肢としては示されていない。閲覧 2026-09-27
  7. 7.Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021(Centers for Disease Control and Prevention(MMWR Recommendations and Reports)・2021)CDCが公開している本ガイドラインのウェブ版の各章で、1期・2期・早期潜伏梅毒がベンザチンペニシリンG 240万単位の単回筋注で追加投与は効果を高めないこと、ペニシリンアレルギーの代替がドキシサイクリン100 mg 1日2回14日間などでセフトリアキソンの至適用量・期間は定まっていないこと、晩期潜伏梅毒が240万単位を1週間隔で3回、神経梅毒が水溶性ペニシリンG 1日1,800万〜2,400万単位(300万〜400万単位を4時間ごと)を10〜14日間、代替がプロカインペニシリン240万単位1日1回筋注+プロベネシド500 mg 1日4回を10〜14日間、アレルギー時はセフトリアキソン1〜2 gを10〜14日間であること、淋菌感染症は体重150 kg未満でセフトリアキソン500 mgの単回筋注(150 kg以上は1 g)で、クラミジアが除外できなければドキシサイクリン100 mg 1日2回7日間を加え、セフィキシム800 mg単回は代替、セファロスポリンアレルギーではゲンタマイシン240 mg筋注+アジスロマイシン2 g経口、スペクチノマイシンは米国で入手できず咽頭への効果が乏しいこと、クラミジアはドキシサイクリン100 mg 1日2回7日間が推奨でアジスロマイシン1 g単回とレボフロキサシンが代替であること、鼠径リンパ肉芽腫はドキシサイクリン100 mg 1日2回21日間が推奨でアジスロマイシン1 g週1回3週間が代替、鼠径肉芽腫はアジスロマイシン1 g週1回または500 mg連日を3週以上かつ病変が治るまで、軟性下疳はアジスロマイシン1 g単回またはセフトリアキソン250 mg単回筋注などであることを確認した。晩期潜伏梅毒のペニシリンアレルギーの代替がドキシサイクリン100 mg 1日2回28日間であることも同ガイドラインの記載による。閲覧 2026-09-26