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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 先天性疾患

下垂体茎断裂症候群

Pituitary stalk interruption syndrome

別名
PSIS
臓器系
内分泌・代謝小児
科目
PediatricsMicroscopic Anatomy and Embryology (Embryology)Medical Physiology
トピック
小児科 3-15:小児下垂体疾患発生学 6.1:胚子期(器官形成):外胚葉由来組織生理学 7.1:視床下部-下垂体系。成長ホルモンとソマトメジン。
鑑別疾患
視隔膜異形成症
続発疾患
成長ホルモン分泌不全性低身長症下垂体機能低下症停留精巣
治療薬
ヒドロコルチゾンレボチロキシンソマトロピンテストステロンウンデカン酸エステルエストラジオール
症状
遷延性黄疸
検査値
低血糖
画像所見
下垂体後葉異所性

🧠 全体像:(PSIS)は、という画像所見が、、の低形成という他の2所見と揃ったときに初めて成立するである。の一点(がずれている)から出発して、臨床の核心(が進行性に発症する)へとつながる、画像と内分泌臨床の橋渡しになる疾患として理解する。最大の落とし穴は、の提示のしかたが「」ではなく、低血糖・・という非特異的な症状であること——が明らかになるのを待っていては、生命に関わる・重症低血糖を見逃す。

概念と三徴

PSISは、で次の3所見が揃うことで診断される、低下の原因である1。そのものの画像的特徴・鑑別はに譲り、本項は臨床像・診断・治療に重点を置く。

PSIS三徴 内容
菲薄化(多くは1mm未満)または途絶
低形成・無形成
異所性(内の高信号が視床下部寄りへ移動)

病態・病因

はの下方陥入に由来する性組織で、視床下部のの軸索がを下ってまで到達することで機能する。この下降経路が先天的に絶たれると、(由来)の分化・成長にも波及し、PSISの三徴が同時に成立する。

病因としては、による頭部の変形や周産期の低酸素がを損傷するというが長く主要な仮説とされてきた。一方、HESX1・LHX4・SOX3・PROKR2・OTX2など下垂体の発生に関わる転写因子の遺伝子変異が同定されているが、これらが説明できるのはPSIS全体の5%未満にとどまり、大多数の症例では原因が特定されない1。

⚠️ PSISでは(欠乏)を合併する例は少ない。 とは上の起源が異なり、のの細胞体は視床下部に残ったままを分泌し続けられるため、が絶たれていてもの分泌そのものは比較的保たれやすい1。を疑う多尿・がみられた場合は、PSIS単独ではなく他の下垂体病変の合併を考える。

臨床像:新生児期から始まる進行性の下垂体機能低下

⭐ PSISは「で気づく疾患」である前に、「に見逃されると命に関わる疾患」である。 の代表的な提示のしかたは次の3つで、いずれも欠乏の直接の帰結である。

の所見 機序
低血糖 ・欠乏によりが働かず、糖新生も障害される
甲状腺ホルモン・コルチゾール欠乏による胆汁うっ滞(しばしば優位)
・(男児) のゴナドトロピン分泌不全による外性器の

あるPSIS3例の報告では全例に低血糖・黄疸がみられ、男児2例は全例に・を伴っていた。診断が遅れた症例ではに進行しており、診断の遅れそのものが生命に関わるリスクであることが強調されている2。の低血糖は約3割にみられるとされる1。

その後の経過では、の逸脱から発見されるとして見つかることが多いが、⭐ のまま一生を終えるとは限らない。 ・異常というを伴うPSISでは、10代後半から20代にかけて・・ゴナドトロピンの脱落が追加され、(CPHD)へ進行しうる13。「だから追跡は不要」と判断せず、生涯にわたる定期的なを組み込む3。

診断

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neonatal period'>新生児期</span>の低血糖・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prolonged jaundice'>遷延性黄疸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='micropenis'>小陰茎</span><br>または小児期の成長率低下"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior pituitary hormone'>下垂体前葉ホルモン</span>全系統を評価"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pituitary MRI'>下垂体MRI</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='T1-weighted imaging'>T1強調</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unenhanced imaging'>非造影</span>、薄いスライス)"]
    C --> D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pituitary stalk'>下垂体茎</span>菲薄化/途絶・前葉低形成・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior lobe'>後葉</span>異所性が揃うか"}
    D -->|"揃う"| E["PSISと診断"]
    D -->|"揃わない"| F["他の下垂体機能低下の原因を検索"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='septum pellucidum'>透明中隔</span>・視神経など<span class='jp-term jp-term-diagram' title='midline structures'>正中構造</span>異常の合併を確認<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='septo-optic dysplasia'>視隔膜異形成症</span>との鑑別)"]
    G --> I["単独欠乏でも前葉機能を生涯にわたり定期的に再評価"]

・を伴う場合はを疑う。は下垂体機能低下に加えの広範な異常を伴う点でPSISと区別される。

治療

複数ホルモンの生涯にわたる補充療法が治療の中心である。

は特に低血糖・電解質異常・血行動態のに注意し、の時点で確定診断を待たずホルモン補充を開始する判断が生命予後を左右する。

まとめ

  • PSISは、、という三徴がで揃うことで診断される、低下の原因である。
  • 病因はが長く主要仮説とされてきたが、遺伝子変異(HESX1・LHX4・SOX3・PROKR2・OTX2)が説明できるのは5%未満にとどまり、大多数は原因不明である。
  • 前葉との起源の違いから、の合併は比較的少ない。
  • は低血糖・・/という非特異的な症状で発症しやすく、診断の遅れは生命に関わる。
  • として発症しても、経年でへ進行しうるため、生涯にわたる定期的なを要する。治療は→甲状腺ホルモンの順を守った多ホルモン補充が中心となる。

出典

  1. 1.Pituitary Stalk Interruption Syndrome(Cureus・2020)PSIS三徴(菲薄化・途絶した下垂体茎、下垂体前葉の低形成・無形成、異所性後葉)の定義、出生時外傷説(骨盤位分娩・周産期低酸素)が主な病因仮説とされ遺伝子変異(HESX1・LHX4・SOX3・PROKR2・OTX2)はPSIS全体の5%未満にとどまること、前葉と後葉の胚発生起源が異なるため中枢性尿崩症を合併する例が少ないこと、新生児期の低緊張・二次性副腎不全による低血圧・遷延性胆汁うっ滞性黄疸・低血糖(33%)、単独GH欠乏症として発症した患者が10代〜20代にかけて複数下垂体前葉ホルモン欠乏症へ進行しうること、治療が生涯にわたる複数ホルモンの補充療法であることを確認した閲覧 2026-08-20
  2. 2.Hypoglycemia and jaundice in newborns with pituitary stalk interruption syndrome(Medicine (Baltimore)・2021)新生児期PSIS3例全例に低血糖・黄疸がみられ、男児2例全例に小陰茎・停留精巣を認めたこと、診断の遅れが多臓器障害症候群に至りうる生命に関わるリスクであることを確認した閲覧 2026-08-20
  3. 3.Evolving pituitary hormone deficits in primarily isolated GHD: a review and experts' consensus(Molecular and Cellular Pediatrics・2020)下垂体茎欠如・下垂体後葉異所性など下垂体・脳正中構造の器質的異常を伴う小児は複数下垂体前葉ホルモン欠乏症(CPHD)へ進行しやすいこと、器質性GH欠乏症の患者には下垂体機能の生涯にわたる内分泌学的モニタリングが推奨されることを確認した閲覧 2026-08-20