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Drug Atlas · 11 Respiratory and allergy drugs / 呼吸器・アレルギー薬

ジフェンヒドラミン

diphenhydramine

分類
Antihistamines / 抗ヒスタミン薬
商品名(日本)
レスタミンドリエル
商品名(EU)
BenadrylNytol
科目
Clinical PharmacologyPsychiatryPharmacology
トピック
11: Sedative-hypnotics, anxiety, and insomniaB-07: Sleep disorderscore69: Drug-induced adverse reaction: Sedation
承認適応
蕁麻疹アレルギー性鼻炎不眠症・ナルコレプシー
禁忌疾患
緑内障前立腺肥大症
副作用
傾眠口渇便秘

🧠 全体像:は、第一世代の抗ヒスタミン薬(ヒスタミン・)である。末梢のを遮断して蕁麻疹やアレルギー症状を抑える。脂溶性が高く血液脳関門を容易に通過するため、中枢性による強い鎮静・を示す。このを利用して一時的な不眠に対する(一般用医薬品)としても利用される。しかし、強力な(遮断)を併せ持つため、口渇・便秘・尿閉・などの副作用が多く、緑内障やでは禁忌となる。

薬効群の中での位置づけ

抗ヒスタミン薬は、とに基づいて第一世代と第二世代に大別される。

世代 代表薬 血液脳関門通過性 鎮静・ 主な臨床的用途
第一世代() 極めて高い 著明 極めて強い アレルギー急性期、、、短期の1
第一世代(アルキルアミン系) クロルフェニラミン 高い 中等度 中等度 感冒薬配合剤、アレルギー急性期
第一世代(系) 高い 著明 強い 鎮静、、
第二世代 (レボ)、 低い〜極めて低い なし〜軽微 ほぼなし 、(長期管理の第一選択)

第一世代であるは、抗アレルギー薬の長期管理薬としては第二世代に取って代わられたが、注射薬による過敏反応の急性期治療や、(鎮静・鎮暈)を目的とした場面で確固たる役割を持つ。

機序

は、主としてヒスタミンおよびをに遮断する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diphenhydramine'>ジフェンヒドラミン</span>を投与"] --> B["全身および中枢神経系へ速やかに分布"]
    B --> C["末梢の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='H1 receptor'>H1受容体</span>を遮断"]
    B --> D["中枢神経系(視床下部・大脳皮質)の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='H1 receptor'>H1受容体</span>を遮断"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscarinic receptor'>ムスカリン受容体</span>(M1〜M3)を遮断<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anticholinergic effects'>抗コリン作用</span>)"]

    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased capillary permeability'>毛細血管透過性亢進</span>の抑制<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='sensory nerve ending'>知覚神経終末</span>の刺激抑制<br>(蕁麻疹・掻痒の軽快)"]
    D --> G["覚醒維持機構の抑制<br>(著明な眠気・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypnosis'>催眠</span>・鎮静効果)"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vestibular nerve'>前庭神経</span>路の刺激伝達抑制<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='motion sickness'>乗り物酔い</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='motion sickness'>動揺病</span>の抑制)"]
    E --> I["分泌抑制・平滑筋弛緩<br>(口渇・便秘・尿閉・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriasis'>散瞳</span>)"]

ヒスタミン神経系は大脳皮質の維持に中心的な役割を果たしている。が中枢のを遮断することで覚醒維持系が強く抑制され、鎮静および効果が発現する。

薬物動態

項目 特徴
吸収 後、消化管から速やかに吸収される。は約1〜4時間
分布 脂溶性が高く、血液脳関門および胎盤を速やかに通過する。母乳中へも移行する
代謝 主として肝臓のチトクロームP450(CYP2D6など)により広範に代謝される
排泄 主に代謝物として尿中に排泄される
成人でおよそ4〜9時間(高齢者では半減期が延長しやすい)

適応

  1. アレルギー性疾患の緩和:蕁麻疹、湿疹・皮膚炎に伴う掻痒、、枯草熱
  2. 抗がん薬投与時や輸血時の:などの過敏反応リスクが高い薬剤の前投与(、との併用)
  3. 一時的な状の緩和:寝つきが悪い、眠りが浅いといった一時的な不眠に対する短期使用(一般用医薬品の)
  4. ()の予防と治療:刺激の抑制による悪心・嘔吐の抑制
  5. の治療:抗精神病薬などによる()に対するによる対症療法

用法・用量

アレルギー性疾患に対しては、成人1回30〜50 mgを1日2〜3回する1。睡眠改善を目的とする一般用医薬品では、就寝前に1回50 mgを服用する。のとしては、開始の30〜60分前に50 mgを静注する。

禁忌・注意

  • :によりが生じ、が狭小化してが障害され、(による失明リスク)を誘発するため禁忌である1。
  • など:が()を弛緩させを収縮させるため、高度のやを来す危険があり禁忌である。
  • 高齢者への投与():米国老年医学会のにおいて、強力なとにより、せん妄、、、転倒・骨折リスクを顕著に高めるため原則回避すべき薬剤に指定されている2。
  • に対する継続使用の否定:連用により数日から1〜2週間で速やかに耐性が形成され効果が減弱する。また睡眠構造(やレム睡眠)を乱し、翌朝への持ち越し眠気やを招くため、米国睡眠医学会(AASM)ガイドラインはに対するの使用を推奨していない3。
  • 自動車の運転等の危険作業:服用後は眠気や注意力の低下が必発であるため、機械類の操作や運転は厳重に禁止する。

副作用

  1. :強い傾眠、倦怠感、、脱力感、集中力低下(いわゆる)。
  2. 抗コリン性副作用:口渇、悪心・嘔吐、便秘、・尿閉、、頻脈。
  3. 時の:、、皮膚の・乾燥、、、せん妄、、不整脈、昏睡を来す。

まとめ

  • は、強いとを併せ持つ第一世代抗ヒスタミン薬である。
  • 蕁麻疹やアレルギー急性期、抗がん薬に有用である一方、中枢による強い眠気を呈する。
  • 一時的不眠に対するとして用いられるが、やのための治療薬としては推奨されない。
  • 強力なを有するため、やでは禁忌であり、高齢者ではせん妄や転倒の誘発に厳重な警戒が必要である。

出典

  1. 1.レスタミンコーワ錠10mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/興和株式会社・2022)電子添文(2022年2月改訂・第1版)で、ジフェンヒドラミン塩酸塩がヒスタミンH1受容体を競合的に遮断すること、蕁麻疹・皮膚疾患に伴う掻痒(湿疹・皮膚炎)・枯草熱・アレルギー性鼻炎等に適応を持ち成人1回30〜50 mg(3〜5錠)を1日2〜3回経口投与すること、閉塞隅角緑内障および前立腺肥大等下部尿路閉塞性疾患への禁忌、眠気(自動車運転等の禁止)や抗コリン作用に関する注意を確認した。閲覧 2026-11-02
  2. 2.American Geriatrics Society 2023 updated AGS Beers Criteria® for potentially inappropriate medication use in older adults(American Geriatrics Society・2023)高齢者において潜在的に不適切な薬剤基準(Beers基準)において、ジフェンヒドラミンを含む第一世代抗ヒスタミン薬が強力な抗コリン作用を有し、錯乱・口渇・便秘・尿閉・認知機能低下および転倒リスクを高めるため原則回避すべき薬剤に分類されていることを確認した。閲覧 2026-10-30
  3. 3.Clinical Practice Guideline for the Pharmacologic Treatment of Chronic Insomnia in Adults: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline(American Academy of Sleep Medicine・2017)成人の慢性不眠症に対する薬物療法ガイドラインにおいて、ジフェンヒドラミンの使用を有効性の根拠不足および有害事象(翌朝への持ち越しや抗コリン作用)の観点から推奨しない(弱い推奨)と明記されていることを確認した。閲覧 2026-10-30