薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · B16 Sex hormones & modulators / 性ホルモン関連薬 · 必修

メゲストロール酢酸エステル

megestrol

分類
Sex hormones & modulators / 性ホルモン関連薬
商品名(EU)
MegaceMegace ES
科目
PharmacologySurgery
トピック
B16: Progestins and antiprogestins. Contraceptives外科学 G/06:外科腫瘍学II:治療の基本原則
承認適応
悪液質HIV感染症・AIDS乳癌子宮体癌
副作用
血栓塞栓症末梢浮腫体重増加
監視検査値
血糖コルチゾール

🧠 全体像:は、もともと乳癌・の薬として開発されただが、現在の臨床での主な役割は「がん・AIDSに伴う・の」へ移っている。この転換が起きた理由自体は添付文書上も「正確な機序は不明」とされており、視床下部のNPY()系への作用やTNF-αなどへのが仮説として挙げられるが、確立した単一機序ではない。⚠️ 食欲刺激効果と引き換えに、グルココルチコイド様作用による・血栓塞栓症・高血糖という、抗腫瘍とは別の種類の注意点を負う薬であることが実地での最大のポイント。

薬効群の中での位置づけ

用途 位置づけ 特徴
抗腫瘍(レガシー) 乳癌・への高用量 を介した直接的な抗腫瘍・作用。現行では他の(・など)に主役を譲っている
(現在の主用途) がん・AIDSに伴う・ 視床下部NPY系・サイトカイン(TNF-α等)への作用が仮説される。単一機序として確立していない

⭐ 「なぜ効くか分からないが、としてのデータは蓄積している」という薬。 (35試験、有効性3963例)は、と比べた食欲改善・体重増加の利益を確認した一方、他薬(など)との比較ではを示さなかった。同じ治療の選択肢である・(系)やと並ぶ薬という位置づけで覚える。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='megestrol'>メゲストロール</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='acetate ester'>酢酸エステル</span>を投与"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='progesterone receptor (PgR/PR)'>プロゲステロン受容体</span>(PR)を強く作動"]
    B --> C["視床下部のNPY(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuropeptide Y'>神経ペプチドY</span>)系への<br>作用が仮説される(機序未確立)"]
    B --> D["TNF-α等の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory cytokine'>炎症性サイトカイン</span>への<br>直接的な作用が仮説される(機序未確立)"]
    C --> E["食欲刺激・体重増加"]
    D --> E
    A --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucocorticoid receptor (GR)'>グルココルチコイド受容体</span>にも<br>交差して作動(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Dose-related'>用量依存性</span>)"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypothalamic-pituitary-adrenal axis'>視床下部-下垂体-副腎系</span>(HPA axis)の抑制"]
    G --> H["慢性使用・急な中止で<br>副腎不全のリスク"]

💡 作動と「ついで」の作動が、この薬の効果と主要な有害事象の両方を説明する。 食欲刺激効果は主に経路(機序は未確立)で説明されるが、高用量・長期使用時に問題となる・症状はへのによるもので、なのにステロイド様の内分泌副作用を持つという、他の多くのには無い特徴になる。

薬物動態

。は技術により、通常製剤より低用量・少量で同等の血中濃度が得られるよう設計されている。

適応

⭐ 現在最も使われる適応は、がん・AIDSに伴う・・原因不明の有意な体重減少の治療である。米国添付文書はAIDSに伴う・を適応として明記する1が、がん関連の・に対する使用もで広く検討されている2。

適応 位置づけ
がん関連・AIDS関連の・ 現行の主用途。プラセボ対照試験で食欲改善・体重増加の利益が確認されている
乳癌(レガシー適応) 高用量による直接的な抗腫瘍・作用。現行標準治療(・・LHRHアナログ等)に主役を譲っている
(レガシー適応) 同上。としての高用量は、現行ではがより一般的に使われる

用法・用量

食欲刺激(AIDS関連、米国添付文書):で625 mg/日を1日1回1。がん関連での用量は間で幅があり、高用量ほど体重改善との関連が強い傾向が報告されているが、最適用量は確立していない2。実際の用量は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤成分に対する過敏症の既往歴、妊娠中または妊娠が疑われる場合1。
  • ⚠️ 副腎不全・:慢性使用に伴いまたは副腎不全が報告されている。ACTH試験では下垂体-副腎系の無症候性抑制が高頻度に検出される。低血圧・悪心・嘔吐・めまい・脱力などの症状は、投与中でも中止後でも副腎不全を示唆しうる。この抑制を見逃すと死亡につながりうるため、疑わしい場合は副腎機能評価と、必要に応じたグルココルチコイドの投与を検討する1。
  • ⚠️ 血栓塞栓症:市販後に・・肺塞栓の報告があり、血栓塞栓症の既往がある患者には慎重投与とする。でもプラセボ群より血栓塞栓性事象が多かった12。
  • ⚠️ 高血糖:新規糖尿病の発症・既存糖尿病の増悪が報告されている1。
  • ⚠️ 浮腫:でもプラセボ群より頻度が高かった2。
  • ⭐ は、群でプラセボ群より死亡が多かったと報告している。 進行がん・AIDSという背景疾患自体の予後を反映する可能性があり、この薬固有の毒性か背景疾患の重症度によるものかは切り分けが難しい。な位置づけの薬であることを踏まえ、個々の患者で利益とリスクを検討する2。

副作用

頻度 内容
高頻度(米国添付文書5%超) 悪心、下痢、、発疹、、高血圧、脱力1
注意 体重増加(の変化と重なる)、、血糖上昇
重篤・まれ 血栓塞栓症、副腎不全・(慢性使用)

まとめ

  • は、乳癌・の薬として開発されただが、現行の主用途はがん・AIDSに伴う・のである。
  • 食欲刺激の機序は未確立(NPY系・への作用が仮説)。(35試験)で対比の食欲改善・体重増加は確認されたが、他薬とのは示されていない。
  • へのにより、慢性使用・急な中止で副腎不全のリスクがある——症状(低血圧・悪心・脱力等)を見逃すと死亡につながりうる。
  • 血栓塞栓症・高血糖・浮腫にも注意する。はプラセボ群より死亡が多かったと報告しているが、背景疾患の重症度との切り分けは難しい。
  • 抗腫瘍としての適応(乳癌・)は現行では他の・に主役を譲っている。
  • 日本では未承認で、入手は個人輸入に限られる。

出典

  1. 1.Megace ES (megestrol acetate) Oral Suspension — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed・2014)米国添付文書(2014年8月改訂)を確認した。適応は「AIDS患者における食欲不振・悪液質または原因不明の有意な体重減少の治療」。用法・用量は625 mg/日(懸濁液5 mL/日)。禁忌は本剤成分に対する過敏症の既往歴、妊娠中または妊娠が疑われる場合。警告として、慢性使用に伴う顕性クッシング症候群または副腎不全(下垂体・副腎系の無症候性抑制がACTH試験で高頻度に検出される。低血圧・悪心・嘔吐・めまい・脱力などの症状が出た場合は副腎不全を疑い、負荷用量のグルココルチコイド投与を検討する)、血栓塞栓性疾患(市販後に血栓性静脈炎・深部静脈血栓症・肺塞栓の報告あり、既往歴のある患者には慎重投与)、高血糖・糖尿病の新規発症または既存糖尿病の増悪、浮腫を確認した。機序については「メゲストロール酢酸エステルが食欲不振・悪液質に効果を及ぼす正確な機序は不明」と明記されている。頻度5%超の有害事象は悪心、下痢、インポテンス、発疹、鼓腸、高血圧、脱力。閲覧 2026-09-26
  2. 2.Megestrol acetate for treatment of anorexia-cachexia syndrome(The Cochrane Database of Systematic Reviews・2013)悪液質・食欲不振症候群に対するメゲストロール酢酸エステルの有効性・安全性を検討したコクランレビュー(35試験、有効性評価3963例・安全性評価3180例、2012年5月までの検索)で、プラセボと比較して食欲改善・体重増加に有意な利益がみられたが、他薬(コルチコステロイド等)との比較では優越性が無かったこと、浮腫・血栓塞栓性事象・死亡がメゲストロール酢酸エステル群でより多くみられたことを、抄録(PMID 23543530)で確認した。閲覧 2026-09-26