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Symptoms · Published

角膜後面沈着物

Keratic precipitates

別名
KP角膜後面沈着
臓器系
眼科
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Microscopic Anatomy)PediatricsInternal Medicine
トピック
組織学 17.1:感覚器:眼小児科 3-32:若年性特発性関節炎内科学 S-48:血清反応陰性脊椎関節炎
関連疾患
Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎Posner-Schlossman症候群UGH症候群

🧠 全体像:は、内の炎症細胞が面に貼りついたものである。⭐ 「あるかないか」は内に炎症があることしか語らないが、「どんな形で、どこに、何色で」貼りついているかは原因を語る。 読む軸は3つ——形態(大きく脂肪様か、細かいか)、分布(下方の三角形に集まるか、内皮全面に散るか、正中を越えるか)、色(無色か、色素を帯びるか)である1。⚠️ ただし「肉芽腫性かか」というな最初の分岐は、を絞る役には立っても、感染性かかは分けられない——は初期にはにみえることがある1。

定義と成り立ち

は、内へ滲出した細胞が面に凝集・沈着した塊で、・リンパ球・などからなる。で面に白色〜灰白色、あるいは色素を帯びた点として見える。

💡 なぜ角膜の裏側に貼りつき、しかも多くは下方に集まるのか。 はで産生されてから瞳孔を通りへ入り、隅角から流出する(組織学 17.1)。内では、側の温かいが上昇して角膜側の冷たい面で下降するというが生じるため、⭐ する炎症細胞はの下方に運ばれて沈着しやすい。 その結果できるのが、水平正中より下方の三角形の分布()である2。

⚠️ ・とは別の所見である。 は炎症の活動性を示し、は炎症の性質と経過を示す。両者が乖離することもあり、活動性が落ち着いた後も沈着物は色素を帯びた瘢痕的な塊として長く残りうる。

軸1:形態——肉芽腫性か非肉芽腫性か

肉芽腫性
での見え方 ⭐ 大きく、脂肪様につやのある(豚脂様)沈着物 細かく小さい沈着物
での型 が肉芽腫性群で有意に多い(P<0.001)3。も肉芽腫性側に位置づけられる1 (P<0.001)と樹状(P<0.005)が群で有意に多い3
する疾患 、、結核、梅毒、・によるぶどう膜炎 関連、、

💡 の沈着物が肉芽腫性を示唆する理由として、原著者らはの形成との対応をしている——の炎症ではができないため、この型の沈着物も生じにくい3。

⚠️ ・・浸潤性の沈着物は両群で同程度にみられ、群を分けない3。⭐ 「どの型が出たか」ではなく「どの型が有意に多いか」で語られている所見であり、1眼の観察で断定できるものではない。

⚠️⚠️ この分岐を「感染性かか」の判定に使わない。 総説は、⭐ 肉芽腫性/という分類は感染性との鑑別には役立たず、が初期にはにみえることがあると明言している1。💡 形態が絞るのはであって、病原体の有無ではない。

軸2:分布——どこに貼りついているか

⭐ 分布は形態と独立した情報を持つ。 同じ豚脂様の沈着物でも、下方の三角形に収まっているのか、正中を越えて広がっているのかで意味が変わる。

分布 示唆すること
(水平正中より下方の三角形) に従った通常の分布。多くのぶどう膜炎がこの形をとる2
⭐ 全面にびまん性の 。白色で小〜中型のが全面に散在するのが最も特徴的な所見の一つで、下方に局在する他のぶどう膜炎と対照的である24
⚠️ 正中を越えて広がる 感染性の原因を示唆しうる1
角膜中央または周辺に少数のコイン状 前部ぶどう膜炎。総説が引用する報告ではのが90.9%2
に限局 後の(のノートの鑑別表で扱っている)

⚠️ Fuchsのは「で全面びまん性」という組み合わせで効く。 全面びまん性という分布だけ、あるいはという形態だけでは決まらない。⭐ 同じ疾患でを欠くこと・が生じないことと合わせて読む24(詳細はの項)。

軸3:色——新鮮な色素性沈着物

⚠️ なの沈着物はウイルス性を示唆する1。💡 古い沈着物が時間とともに色素を帯びて残るのは経過の反映にすぎないが、発症から日が浅いのに色素を帯びているという組み合わせは別の意味を持つ。⭐ 「いつからあるか」と「何色か」を必ずセットで確認する。

疾患ごとの典型像

疾患 沈着物の型 併せて見るもの
前部ぶどう膜炎 豚脂様、2 片眼性、、の、による2
前部ぶどう膜炎 中〜大型の灰白色コイン状、少数、中央または周辺2 の、、50〜80歳(平均65歳)2
白色、小〜中型、内皮全面2 ⭐ が無い、が無い、軽度で持続する24
・ 肉芽腫性(が多い)3 全身所見。両眼性
関連 の細かい沈着物 急性・片眼性・、強い眼痛と
沈着物に加えて細胞・・微小前房出血 歴、反復するエピソード、画像でのレンズ接触

⚠️ 読み違えないための注意

  • ⚠️ 「沈着物がある=ぶどう膜炎」で止めない。 に炎症細胞が貼りつく病態は前部ぶどう膜炎に限らず、、、、など内皮に負荷がかかる状況で広く生じる。
  • ⚠️ 沈着物を欠くことは炎症を否定しない。 腫瘍細胞の沈降によるでは、・沈着物といった炎症所見を欠くことが逆に手掛かりになる(の項)。
  • ⚠️ 形態の記載は標準化されていない。 総説は、が標準化された形で記載されてこなかったこと自体を問題として挙げている1。診療録の「KP(+)」という記載だけでは、次の診察者は何も読み取れない。⭐ 形・大きさ・分布・色・数を書く。
  • ⚠️ の所見をそのまま所見に読み替えない。 ・・樹状といった型はによる分類であり3、で見える豚脂様・細かいという区別とは観察のが違う。

まとめ

  • は内の炎症細胞が面に沈着したもので、のにより多くは水平正中より下方の三角形()に集まる。
  • 読む軸は形態・分布・色の3つ。形態はを絞り、分布と色は感染性・ウイルス性の手掛かりを与える。
  • 形態:豚脂様(共焦点で)は肉芽腫性、細かい沈着物(共焦点で・樹状)はを示唆する。⚠️ ・・浸潤性は両群で同程度で、群を分けない。
  • ⚠️⚠️ 肉芽腫性/というな分岐は、感染性とを分けられない。 は初期ににみえることがある。
  • 分布:⭐ 内皮全面にびまん性の白色はに特徴的(他のぶどう膜炎は下方に局在する)。正中を越える広がりは感染性を、少数のコイン状は(総説が引用する報告では90.9%)を示唆する。
  • 色:⚠️ なの沈着物はウイルス性を示唆する。
  • ⚠️ 「KP(+)」だけの記載では次の診察者が読み取れない。形・大きさ・分布・色・数を書く。

出典

  1. 1.Keratic Precipitates: The Underutilized Diagnostic Clue(Ocular Immunology and Inflammation・2021)角膜後面沈着物の形態が重要な診断上の手掛かりになりうる一方、その記載は標準化されておらず、⚠️ 肉芽腫性か非肉芽腫性かという伝統的な分類は感染性と非感染性の鑑別には役立たないこと、肉芽腫性ぶどう膜炎が初期には非肉芽腫性にみえることがあること、著者らが感染性と非感染性を分けるために3つの見方を提案していること——第一が生体共焦点顕微鏡による記載と分類で「非肉芽腫性」の亜型である dendritiform(樹状)・infiltrative(浸潤性)を「肉芽腫性」の smooth-rounded(平滑円形)・globular(球状)と区別すべきこと、第二が分布で正中を越えて広がる沈着物は感染性を示唆しうること、第三が色で新鮮な色素性沈着物はウイルス性を示唆すること——を、出版社の抄録で確認した。ペイウォールのため全文は取得できておらず、本文の記載は確認していない。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Viral anterior uveitis(Saudi Journal of Ophthalmology・2022)Europe PMC経由でPMC9811927の全文XMLを取得し確認した。単純ヘルペスウイルス前部ぶどう膜炎が欧州のウイルス性前部ぶどう膜炎の15.6〜23.5%を占める最多の原因であり、通常は片眼性で、豚脂様(mutton fat)の角膜後面沈着物が水平正中より下方に三角形に配列すること(Arlt三角)、虹彩後癒着・区域性の虹彩萎縮・線維柱帯炎による続発性の眼圧上昇を伴うこと、サイトメガロウイルス前部ぶどう膜炎では中〜大型で灰白色のコイン状(coin-shaped)肉芽腫性沈着物が角膜の中央または周辺に少数みられ、コイン状沈着物の存在はサイトメガロウイルスに対する陽性的中率90.9%であること、同症では虫食い状の虹彩実質萎縮と虹彩異色を伴いうること、慢性のサイトメガロウイルス前部ぶどう膜炎が50〜80歳(平均65歳)に多いこと、Fuchsぶどう膜炎では単純ヘルペス・水痘帯状疱疹によるぶどう膜炎と違って毛様充血を欠くことが特徴的であり、最も特徴的な所見の一つが白色で小〜中型の星状(stellate)沈着物が角膜内皮全面にびまん性に分布することで、これは下方に局在する他のぶどう膜炎と異なる点であること、前房内炎症は軽度で持続しうることを確認した。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Confocal Scan Features of Keratic Precipitates in Granulomatous versus Nongranulomatous Uveitis(Journal of Ophthalmic & Vision Research・2011)Europe PMC経由でPMC3306115の全文XMLを取得し確認した。非感染性ぶどう膜炎90例127眼(肉芽腫性39眼=特発性肉芽腫性27眼・Vogt-小柳-原田病8眼・サルコイドーシス3眼・交感性眼炎1眼、非肉芽腫性88眼=Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎63眼ほか)を生体共焦点顕微鏡で観察したこと、平滑円形(smooth-rounded)の沈着物が肉芽腫性群で有意に多かったこと(P<0.001)、十字形(cruciform)と樹状(dendritiform)の沈着物が非肉芽腫性群で有意に多かったこと(それぞれP<0.001、P<0.005)、球状(globular)・点刻状(stippled)・浸潤性(infiltrating)の沈着物は両群で同程度にみられたこと(P値0.2・0.08・0.3)、平滑円形沈着物の形成が多核巨細胞の形成と関係している可能性を著者らが考察していることを確認した。閲覧 2026-09-03
  4. 4.Fuchs Uveitis Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)既存ノート(Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎)が確認済みの出典を再利用した(本ノートの担当は原文を再取得していない)。白色星状の角膜後面沈着物が角膜内皮全面に分布し境界明瞭で小〜中型であること、多くが無症候で定期検査の際に見つかること、疼痛と結膜充血を欠き結膜は静穏で毛様充血がないこと、虹彩後癒着を欠くことが鑑別上重要であることを確認した。2024年2月29日最終更新。閲覧 2026-09-03