内科学

内科学 · L-37

慢性腎臓病・尿毒症症候群

Chronic Kidney Disease and Uremic Syndrome

前提:病態
慢性腎不全の原因と定義慢性腎不全における臓器の病的変化
前提:正常
腎循環と糸球体濾過
薬剤
フィネレノン
疾患
腎性貧血皮膚そう痒症慢性腎臓病慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)
検査値
アルブミン尿活動性尿沈渣重炭酸

🧠 全体像:は腎構造・機能異常が3か月以上持続する状態で、原因・区分(G)・区分(A)のCGAで表す。進行抑制と心血管保護、合併症治療、への計画を同時に進める。

定義とCGA分類

eGFR <60 mL/min/1.73 m²または以下の腎障害マーカーが3か月以上持続すればである:、尿沈渣異常、電解質異常、病理・画像異常、腎移植歴など。G1・G2でも腎障害マーカーがなければとはしない。

G区分 (mL/min/1.73 m²) 診療上の焦点
G1 ≥90 原因診断、併存症・進行リスク低減
G2 60–89 ・の推移評価
G3a 45–59 合併症と薬剤量を評価
G3b 30–44 合併症管理を強化し腎不全リスクを評価
G4 15–29 ・の情報提供と準備
G5 <15 症状・代謝異常・希望に基づきを判断
A区分 (mg/g) 意味
A1 <30 正常〜軽度増加
A2 30–300 中等度増加
A3 >300 高度増加

は年齢を140から引く式ではない。検証済みのクレアチニン推算式を用い、治療判断に高い精度が必要な場合や、が極端、肝硬変、切断、妊娠などで不正確な場合はを加えた推算式または実測を考慮する1。

⚠️ 推算式から人種係数が削除された。 かつてのMDRD式や-EPI 2009式には「黒人なら値を上げる」係数が入っていたが、2021年の-EPI式(-EPI 2021)はこれを外した。人種は式のうえでは生物学的なではなくなであるとの判断による。同時に発表されたクレアチニン・併用式は、クレアチニン単独式より実測との一致が良い2。 2024はクレアチニンによる算出を基本としつつ、人種係数を含まない2021年式を用いることを前提としている1。💡 古い問題集では人種係数つきのMDRD式・-EPI 2009式が出ることがあるので、「かつては係数があり、2021年に外れた」という経緯ごと覚える。

原因と評価

糖尿病、高血圧・血管性、糸球体疾患、、閉塞、薬剤、自己免疫・遺伝疾患が主な原因である。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='estimated glomerular filtration rate'>eGFR</span>低下/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='albuminuria'>アルブミン尿</span>・血尿"] --> B["3か月以上の持続を確認"]
    B --> C["Cause:病歴・尿沈渣・画像・必要時生検"]
    B --> D["G:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='estimated glomerular filtration rate'>eGFR</span>区分"]
    B --> E["A:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urine albumin-to-creatinine ratio'>UACR</span>区分"]
    C --> F["進行速度と腎不全リスクを評価"]
    D --> F
    E --> F
    F --> G["進行抑制+合併症管理+腎臓専門医紹介"]

検査はクレアチニン/、K、、Ca、リン酸、血算、・沈渣、を基本とし、で大きさ、左右差、嚢胞、閉塞をみる。急速な低下、、大量蛋白尿、難治性高血圧・電解質異常、遺伝性疾患疑いでは早期に腎臓専門医へ紹介する。G3〜G5では検証済み腎不全式を用い、5年リスク3〜5%を紹介、2年リスク10%超を多職種管理、2年リスク40%超を準備の判断材料とする(・に基づく基準に追加して用いる)1。

進行抑制と心血管保護

  • 血圧を標準化測定し、高血圧を伴う成人では可能なら120 mmHg未満を目標とする3。、、症候性などでは個別化する。⚠️ この目標値は標準化した診察室測定を前提としており(がその手順で測っているため)、通常の外来の測り方の値にそのまま当てはめない。 2021血圧ガイドラインは小児と腎移植をこの目標の例外としている3。
  • 非糖尿病A3、糖尿病A2〜A3では阻害薬またはを用い、非糖尿病A2でも考慮する。開始・増量後2〜4週でクレアチニンとKを確認し、阻害薬とを併用しない。
  • 2型糖尿病でeGFR20 mL/min/1.73 m²以上、またはeGFR20以上かつUACR200 mg/g以上、または心不全を伴う成人では阻害薬を用いる1。開始直後の可逆的な低下だけで中止せず、長時間絶食、手術、重篤な急性疾患では一時する。
  • 2型糖尿病+がRAS阻害下でも残る選択例では非ステロイド型MRAのを考慮し、Kを監視する1。

💡 の進行抑制は「RAS阻害薬1本」から「積み上げ」へ変わった。 2024は2型糖尿病合併について、RAS阻害薬と阻害薬( 20以上)を土台とし、血清Kが正常でのRAS阻害薬でも(30 mg/g超)が残る例に非ステロイド型MRA( 25超。推奨3.8.1、2A=提案)を加え、と阻害薬でも個別の血糖目標に届かない(またはそれらを使えない)例に長時間作用型受容体作動薬を用いる(推奨3.9.1、1B。条件はではなく血糖目標の未達)という構成を示している1。裏づけとなった主な試験は、で腎複合を0.61(95%CI 0.51〜0.72)に減らしたDAPA-4、で腎複合を減らしたFIDELIO-DKD5、で主要腎イベントを0.76(95%CI 0.66〜0.88)に減らしたFLOW6である。⚠️ これらの試験はいずれも組入れ時点で全例がを有していたため、のないへそのまま外挿はできない。

  • 糖尿病、脂質、体重、運動、禁煙を管理し、適応に応じスタチンを用いる。と不要な造影・腎毒性物質を避け、薬剤量を腎機能に合わせる。
  • 蛋白摂取は多くの成人で約0.8 g/kg/日を目安とし、栄養不良を招く過度な制限を避ける。Na摂取を抑える。

CKD合併症

合併症 評価・対応の要点
・高血圧 Na制限、、心不全評価
高K血症 薬剤・食事・アシドーシス・便秘を見直し、必要に応じ;有益なRAS阻害薬を安易に中止しない
代謝性アシドーシス 成人で18 mmol/L未満など臨床的影響が懸念される場合、Na負荷、血圧、K、体液状態を監視して補正を考慮
血算、、、で評価し、鉄欠乏・出血などを是正後、選択例でESA;Hbを11.5 g/dL以上に維持しない7
Ca、リン酸、、、25(OH)Dを病期に応じ評価し、単一値でなく推移で治療。透析前成人へを一律投与しない
悪心、食欲低下、掻痒、傾眠・、、など

腎代替療法

G5または腎不全リスクが高い段階で、、、腎移植、について早めにする。透析開始は <15だけで自動的に決めず、治療抵抗性・高K血症・アシドーシス、症状・、栄養悪化などを基準にする1。これらはしばしばGFR5〜10 mL/min/1.73 m²で生じるが一定ではない。

まとめ

  • は3か月以上持続する低下または腎障害マーカーで定義し、CGA分類を用いる。
  • とからリスクを層別化し、RAS阻害薬、阻害薬、心血管管理で進行を抑える。
  • 透析は値だけでなく、・体液・電解質・酸塩基・から判断する。

出典

  1. 1.KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease(KDIGO・2024)CKDを原因・GFR区分・アルブミン尿区分のCGAで分類すること、eGFRはクレアチニンによる算出を基本とし人種係数を含まない2021年CKD-EPI式を用いること、精度が要る場面ではシスタチンCを併用すること、2型糖尿病合併CKDではRAS阻害薬・SGLT2阻害薬(eGFR 20以上)を土台とし、血清Kが正常で最大耐用量のRAS阻害薬でもアルブミン尿(30 mg/g超)が残る例に非ステロイド型MRA(eGFR 25超。推奨3.8.1、2A=提案)を加え、メトホルミンとSGLT2阻害薬でも個別の血糖目標に届かない(またはそれらを使えない)例に長時間作用型GLP-1受容体作動薬を用いる(推奨3.9.1、1B。条件はアルブミン尿ではなく血糖目標の未達)という積み上げること、検証済み腎不全リスク予測式を紹介・多職種管理・腎代替療法準備の判断に用いることを確認した。閲覧 2026-09-24
  2. 2.New Creatinine- and Cystatin C-Based Equations to Estimate GFR without Race(New England Journal of Medicine・2021)人種はeGFR推算式において生物学的ではなく社会的な構成概念であるとして、人種係数を含まない新しいクレアチニン式およびクレアチニン・シスタチンC併用式を開発し、実測GFRとの精度を検証した。併用式のほうが精度が高いことを確認した。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Executive summary of the KDIGO 2021 Clinical Practice Guideline for the Management of Blood Pressure in Chronic Kidney Disease(KDIGO・2021)主にSPRINT試験の結果に基づき、透析を受けていないCKDのほとんどの人について、標準化した診察室測定による収縮期血圧の目標を120 mmHg未満とすることを提案していること、例外が小児と腎移植レシピエントであること、大規模試験が標準化された測定手順に従っていたことから血圧測定法に独立した章を設けたことを確認した。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Dapagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease(New England Journal of Medicine・2020)DAPA-CKD試験。eGFR 25〜75 mL/min/1.73 m²かつ尿中アルブミン/クレアチニン比200〜5000 mg/gのCKD患者で、ダパグリフロジンが主要複合腎アウトカム(持続的eGFR 50%以上低下・末期腎不全・腎死または心血管死)をハザード比0.61(95%CI 0.51〜0.72)で減らした。全例がアルブミン尿を有するため、アルブミン尿のない患者への外挿はこの試験からは導けない。閲覧 2026-08-25
  5. 5.Effect of Finerenone on Chronic Kidney Disease Outcomes in Type 2 Diabetes(New England Journal of Medicine・2020)FIDELIO-DKD試験。2型糖尿病合併CKDで、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノンが腎複合アウトカム(eGFRの持続低下・末期腎不全・腎死)を有意に減らした。閲覧 2026-08-25
  6. 6.Effects of Semaglutide on Chronic Kidney Disease in Patients with Type 2 Diabetes(New England Journal of Medicine・2024)FLOW試験。2型糖尿病かつCKDの3,533例で、セマグルチド1.0 mg週1回皮下投与が主要腎イベント(腎不全・eGFR 50%以上低下・腎/心血管死の複合)をハザード比0.76(95%CI 0.66〜0.88)で減らした。組入れ時点で全例がアルブミン尿を有し全例が2型糖尿病であるため、アルブミン尿の有無によらないという一般化はこの試験からは導けない。閲覧 2026-08-25
  7. 7.KDIGO 2026 Clinical Practice Guideline for the Management of Anemia in Chronic Kidney Disease(KDIGO・2026)非透析CKDの鉄治療開始はフェリチン100 ng/mL未満かつTSAT 40%未満、または100〜300 ng/mLかつTSAT 25%未満が目安。ESA開始Hbは固定閾値を廃して個別化し(目安8.5〜10 g/dL)、維持Hbは11.5 g/dL未満とする。閲覧 2026-08-25