病態生理学

病態生理学 · 2-9

慢性腎不全の原因と定義

Causes and definition of chronic renal failure

応用トピック
慢性腎臓病・尿毒症症候群尿細管間質性疾患・嚢胞性腎疾患腎移植と腎代替療法腎疾患 症例4腎疾患 症例5尿検査の異常所見と基準値腎疾患 症例1急性腎障害と慢性腎不全
疾患
高血圧性腎硬化症慢性腎臓病
検査値
代謝性アシドーシスβ2ミクログロブリン

🧠 本質は「が減る → 残存がする → さらにを失う」悪循環。 早期は無症状でも、低下とを別々に評価し、原因・・のCGA分類で将来リスクを捉える。

慢性腎不全(CRF)

原因

腎線維化(悪循環)

flowchart TD
  NL["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Nephron'>ネフロン</span>喪失(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glomerular filtration rate'>GFR</span>_total = 単一×数)"] --> V["残存<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Nephron'>ネフロン</span>の容量↑ → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraglomerular pressure'>糸球体内圧</span>↑"]
  V --> HF["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperfiltration'>過剰濾過</span>"]
  HF --> TGF["TGF-α/EGFR → 肥大"]
  TGF --> PL["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='podocyte'>ポドサイト</span>喪失 → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='focal scarring'>巣状瘢痕化</span>"]
  PL --> MA["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='albuminuria'>アルブミン尿</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glomerular filtration rate'>GFR</span>低下"]
  PL --> NL
  • 💡 残存の代償により症状より先に検査異常が現れる。ただし、を伴わないや、が保たれたままを示すもあるため、単一の「最初の徴候」や閾値では診断できない。
  • 💡 この悪循環は薬理学的に断ち切れる。RAS阻害薬(を下げる)を土台に、 2024は次の薬を対象を限ってする1。
    • 阻害薬(・など。を介して・を抑える):2型糖尿病を伴うで20以上なら推奨(1A)。糖尿病の有無を問わず、20以上で200 mg/g以上の場合、または心不全がある場合(の程度を問わない)に推奨(1A)、20〜45で比200 mg/g未満なら提案(2B)。
    • 非ステロイド性(。炎症・線維化を標的とする):2型糖尿病の成人で、25超・血清K正常・最大量のRAS阻害薬でも(30 mg/g超)が残る場合に提案(2A)。
    • 長時間作用型受容体作動薬:2型糖尿病を伴うで、と阻害薬を用いても個別の血糖目標に届かない、またはそれらを使えない場合に推奨(1B)。
    • ⚠️ と受容体作動薬の 2024の推奨は2型糖尿病を伴うについてのもので、糖尿病の無いに一律に広げない。

CGA分類

G1・G2は腎障害マーカーがなければではない。G区分だけで「可逆」「」と決めず、原因と()によるA区分を組み合わせる。

G区分 (mL/min/1.73 m²) 意味
G1 90以上 正常または高値
G2 60〜89 軽度低下
G3a 45〜59 軽度〜中等度低下
G3b 30〜44 中等度〜高度低下
G4 15〜29 高度低下
G5 15未満 腎不全
A区分 (mg/g) 意味
A1 30未満 正常〜軽度増加
A2 30〜300 中等度増加
A3 300超 高度増加

eGFRの推算

  • G区分に用いるは、から年齢・性別を用いて算出する推算式が基本である。2021年に-EPI式は人種(黒人)係数を含まない版へ改訂された——人種は生物学的なではなくなであるという考えに基づく変更で、原著は人種を外した式の精度を実測と突き合わせて検証している2。日本では日本人係数を用いた式が使われるなど、地域別の推算式が並存する1。
  • ⚠️ クレアチニンによる推算値は、・食事・急性期の変動に弱い(クレアチニン産生量・がだと式の前提が崩れるため)。腎機能を過大・過小評価しやすい場面(、四肢切断、菜食、急性疾患など)や治療判断に精度が要る場面では、を併用した推算式や実測を検討する1。

紹介と腎代替療法の準備

⚠️ 腎臓専門医への紹介は、G区分だけでなく次のような状況を目安に検討する( 2024の紹介基準の主なもの)1。

  • eGFR30未満(G4以降)、または妥当な推算式で5年以内にを要するリスクが3〜5%超
  • の持続的な低下が20%超(血行動態に作用する薬の開始後なら30%超)
  • 300 mg/g以上が一貫して血尿を伴う、高度の経過観察中にが2倍以上に増える、または比700 mg/g超が一貫して続く——A3(300超)であることだけでは紹介基準にならない
  • 説明のつかない・持続する赤血球20個/HPF超、4剤以上に抵抗する高血圧、持続する血清K異常、遺伝性腎疾患、再発性・広範な腎結石、の原因が不明

(・・)やの準備も、が下がりきってから慌てて始めるのではなく、**15〜20未満または2年以内のリスク40%超**でやバスキュラーアクセスの計画を検討し、患者とを始める1。数値基準・治療の積み上げ方の詳細はを参照。

全身的帰結

💡 ()と()を区別する。 は特定の、、クレアチニンだけでは診断せず、食欲低下、掻痒、、脳症、などを総合する。

  • 検査:
    • 貧血(↓)
    • アシドーシス
    • (濃縮/希釈不能→多尿)
    • 尿素・クレアチニン上昇(産生量、、薬剤にも左右される)
    • K⁺上昇(心電図変化や内科治療への反応を緊急評価)

⚠️ 透析開始をK値だけで固定しない。内科治療で制御できない高K血症、代謝性アシドーシス、、・脳症などが緊急適応となり、では症状、徴候、生活の質、希望、、検査異常を総合して判断する。 2024は、腎不全に起因する症状・徴候(による神経症状、、、治療抵抗性の酸塩基・電解質異常、難治性掻痒、など)、や血圧を管理できないこと、食事介入に抵抗するの悪化またはのいずれかがあれば透析を開始するとし、それは多くの場合(常にではなく)5〜10 mL/min/1.73 m²の範囲で起こるとしている1。

尿毒症性貯留物質

  • : 透析が蛋白結合毒素を除けない → 高CV死亡率。
    • 透析性:
    • 由来:
      • 内因性(→)
      • 腸内細菌(/類)
      • 外因性()

尿毒症症状の発展

  1. :
    • →浮腫+HTN+肺水腫
    • K⁺貯留→不整脈
  2. 毒素貯留:
  3. ホルモン/:
    • アルブミン喪失→浮腫
    • ↓→貧血
    • 産生↓+リン酸貯留→→+

まとめ

論点 要点
定義 腎構造・機能の異常が3か月以上続き健康に影響する状態。60未満、またはなどの腎障害マーカー
原因 糖尿病・高血圧などのと、糸球体腎炎・・などの
悪循環 喪失→残存の→肥大→喪失・瘢痕→さらに喪失。早期は無症状
分類 原因(C)×区分(G1〜G5)×区分(A1〜A3)。G1・G2は腎障害マーカーが無ければではない
2021年-EPI式は人種係数を外した。などで誤差が出る場面ではや実測を検討する
進行抑制 RAS阻害薬を土台に阻害薬を。と受容体作動薬の 2024の推奨は2型糖尿病を伴うが対象
紹介と準備 30未満・持続的な低下・血尿を伴う高度などで紹介し、15〜20未満や高い腎不全リスクでを計画する
透析開始 K値など単一の数値ではなく、症状・徴候・生活の質・希望・・検査異常を総合する

出典

  1. 1.KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease(KDIGO・2024)CKDの重症度はGFR区分(G1〜G5)×アルブミン尿区分(A1〜A3)で評価し、eGFRは人種係数を含まない2021年CKD-EPI式(または地域別の推算式。Practice Point 1.2.4.1は地域内で同じ式を使うとする)を用いる。推奨1.2.2.1はクレアチニンによる推算の精度が落ちGFRが臨床判断に関わる場面でクレアチニン・シスタチンC併用の推算式を推奨し(1C)、Practice Point 1.2.2.2はより正確なGFRが治療判断を左右する場面で外因性マーカーのクリアランスによる実測を求める。2026年9月24日にkdigo.orgの全文PDFで、推奨3.7.1(2型糖尿病・CKD・eGFR 20以上にSGLT2阻害薬、1A)、3.7.2(CKDの成人でeGFR 20以上かつ尿アルブミン/クレアチニン比200 mg/g以上、またはアルブミン尿の程度を問わず心不全がある場合にSGLT2阻害薬、1A)、3.7.3(eGFR 20〜45で比200 mg/g未満にSGLT2阻害薬、2B)、3.8.1(2型糖尿病の成人でeGFR 25超・血清K正常・最大耐容量のRAS阻害薬でもアルブミン尿30 mg/g超が残る場合に非ステロイド性MRA、2A)、3.9.1(2型糖尿病とCKDでメトホルミンとSGLT2阻害薬でも血糖目標に届かないか使えない場合に長時間作用型GLP-1受容体作動薬、1B)を確認した。紹介基準のFigure 48(eGFR 30未満、5年の腎代替療法リスク3〜5%超、GFRの持続的低下20%超〈血行動態に作用する治療の開始後は30%超〉、血尿を伴う比300 mg/g以上、高度アルブミン尿の監視中の2倍以上の増加、比700 mg/g超の持続、説明のつかない赤血球円柱や赤血球20個/HPF超、4剤以上に抵抗する高血圧、持続する血清K異常、遺伝性腎疾患、再発性・広範な腎結石、原因不明のCKDなど)、Practice Point 5.4.3(GFR 15〜20未満または2年の腎代替療法リスク40%超で先行的腎移植・透析アクセスの計画を検討)、5.4.1・5.4.2とTable 41(透析開始は症状・徴候・QOL・希望・GFR・検査異常の総合評価により、腎不全に起因する症状・徴候、体液量や血圧の管理不能、栄養状態の悪化や認知障害で開始し、多くの場合GFR 5〜10の範囲で起こる)も確認した。閲覧 2026-09-24
  2. 2.New Creatinine- and Cystatin C-Based Equations to Estimate GFR without Race(New England Journal of Medicine・2021)人種は eGFR 推算式において生物学的ではなく社会的な構成概念であるとして、人種を含まない新しいクレアチニン式およびクレアチニン・シスタチンC併用式を開発し、実測GFRとの精度を検証した原著。抄録で「race in eGFR equations is a social and not a biologic construct」という前提と、併用式の方が精度が高いことを確認した。閲覧 2026-08-15