眼科学

眼科学 · ML-56

眼表面腫瘍

Tumors of the ocular surface

前提:正常
感覚器:眼

🧠 全体像:眼表面(・輪部・角膜)の腫瘍は、色があるか()・ないか(非)、そして良性か悪性かの2軸で4つの箱に分けると整理できる。非の良性は輪部と乳頭腫、悪性は眼表面扁平上皮新生物とリンパ腫。の良性は母斑と原発性後天性メラノーシス、悪性はの悪性黒色腫である。見分ける鍵は「場所・色・形・年齢」で、確定は組織検査、治療は「腫瘍に触れずに広く切除し、をし、必要なら点眼の化学療法を加える」が基本である。

眼表面腫瘍の部位

眼表面の腫瘍は、どこにできるかで候補が絞れる。

部位 典型的な所見 考える腫瘍
・輪部 輪部に接して、細かい血管が点状・房状に集まった赤みのある隆起 眼表面扁平上皮新生物、母斑、原発性後天性メラノーシス、黒色腫
瞼・ 眼瞼をすると見える赤い隆起 乳頭腫、リンパ腫
角膜 輪部から角膜へ広がる灰白色のと、それに向かう血管 輪部から角膜へ進展した眼表面扁平上皮新生物、黒色腫

💡 輪部はの幹細胞がある場所で、瞼の開いた部分(部)の輪部は紫外線を最も強く浴びる。眼表面扁平上皮新生物が部の輪部に多いのはこのためで、とくに紫外線を最も強く受ける鼻側の輪部の幹細胞から生じるとする説がある1。

分類

flowchart TD
    A["眼表面の腫瘍"] --> B["非<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pigmented'>色素性</span>"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pigmented'>色素性</span>"]
    B --> B1["良性<br>輪部<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dermoid'>デルモイド</span>・乳頭腫"]
    B --> B2["悪性<br>眼表面扁平上皮新生物・リンパ腫"]
    C --> C1["良性<br>母斑・原発性後天性メラノーシス"]
    C --> C2["悪性<br>悪性黒色腫"]
区分 腫瘍 年齢 好発部位 見え方 治療
非・良性 輪部 先天性 耳下側の輪部 白いドーム状、境界明瞭、表面平滑 視力を妨げる・見た目で切除
非・良性 乳頭腫 小児〜成人 ・涙丘・輪部 、無茎または有茎 切除・・局所化学療法
非・悪性 眼表面扁平上皮新生物 高齢男性 部の輪部 ・状・結節状 切除・・局所化学療法
非・悪性 リンパ腫 高齢者 サーモンピンクの平滑な隆起 全身病なら血液腫瘍科、局所なら放射線
・良性 母斑 10代まで 輪部・涙丘 平坦〜わずかに隆起、境界明瞭、嚢胞を含む 経過観察、大きくなれば切除
・良性(前癌) 原発性後天性メラノーシス 中年の色白の女性 どこでも。角膜へ広がる 平坦でびまん性の褐色の斑、片眼 小さければ経過観察、転化を疑えば切除など
・悪性 悪性黒色腫 高齢者 どこでも 濃い色の不整な隆起、太い 広いの切除++局所化学療法

非色素性・良性の腫瘍

輪部デルモイド

生まれつきある腫瘍で、本来その場所にない組織が迷い込んでできたである。多くは耳下側の輪部にあり、白いドーム状で、境界がはっきりして表面が滑らかな腫瘤として見える。輪部に、角膜とにまたがる白い円形の盛り上がりとして見え、表面を細いの血管が這うこともある。

項目 内容
組織 に覆われた緻密な。毛包やを含むことがある
深さ 表層だけのものから、角膜の全層に及ぶものまである
合併 (眼・耳・脊椎の形成異常)の一部であることがある
治療 視力を妨げる場合(・にかかる)や、見た目を理由に本人が希望する場合に切除

💡 は角膜を引っ張ってを起こすので、小児ではの原因になりうる。切除してもは残ることがあり、と治療を並行して考える()。

乳頭腫

ヒトパピローマウイルスの感染で生じる扁平上皮の腫瘍である(症(疣贅・・))。HPV 6型・11型がの乳頭腫に関与する1。

  • 見え方:で、茎のない()もの、茎のある()ものがある。赤い点状の模様は、腫瘍の芯を通る血管である。
  • 組織:が樹枝状に伸び、その表面を肥厚した(の厚い)上皮が覆う。
  • 経過:自然に消えることがある一方で、再発しやすく、まれに悪性化する。
  • 治療:切除、、局所化学療法。

⚠️ 乳頭腫を切除するときは、ウイルスを含む細胞を周囲にまき散らさないよう、を併用することが多い。

非色素性・悪性の腫瘍

眼表面扁平上皮新生物

と角膜の上皮から生じる扁平上皮の腫瘍の総称で、上皮内にとどまるもの(内新生物)から基底膜を越えて浸潤する扁平上皮癌までを連続した一つの病気として扱う。

疫学と危険因子

⭐ 若い人の眼表面扁平上皮新生物は、HIV 検査のきっかけになる。

💡 HIV で細胞性免疫が落ちると、ヒトパピローマウイルスの感染が排除されずに持続し、紫外線による遺伝子の傷も修復・排除されにくくなる。では紫外線による DNA の傷を修復する仕組みそのものが働かない。どちらも「傷ついた上皮が残り続ける」ので、若くして発症する。

部位と見え方

最も多いのは部の輪部である。

形態 見え方
ピンク〜赤色で外へ盛り上がる、イチゴのような表面
状 表面が角化して白く厚い板状
結節状(ゼラチン状) 境界のはっきりした、半透明のゼリー状の隆起。ヘアピン状に曲がった血管を伴う
  • 腫瘍に向かう太いを伴うことが多い1。
  • 角膜へ広がった部分は、血管のない灰白色のすりガラス状ので、縁はのようにぎざぎざしている1。
  • 内新生物の白板状・結節状の型では、輪部に接して白くやや盛り上がった病変があり、そこへ向かって赤い血管が房状に集まる。
  • 浸潤癌の進行例では、眼球の表面の大部分が白色〜の不整な腫瘍に覆われ、角膜も濁って、出血を伴う。

組織による区分

区分 組織 意味
内新生物 が上皮の中だけにある 基底膜を越えていない。軽度(下3分の1)、中等度(中3分の1)、高度(全層=)に分ける1
浸潤性の扁平上皮癌 が基底膜を破っての実質へ入る 深部(・眼内・眼窩)への浸潤、まれに転移
flowchart TD
    A["紫外線・ヒトパピローマウイルス<br>(若年では HIV・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='xeroderma pigmentosum'>色素性乾皮症</span>)"] --> B["輪部の上皮の<br>幹細胞の遺伝子の傷"]
    B --> C["上皮内の異形成<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctival epithelium'>結膜上皮</span>内新生物)"]
    C --> D["基底膜を破る"]
    D --> E["浸潤性の扁平上皮癌"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>・眼内・眼窩への浸潤<br>まれに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='regional lymph node metastasis'>所属リンパ節転移</span>"]

ふるまい

局所でゆっくり広がり、局所再発が多いが、転移はまれである。報告では局所再発は5%、リンパ節転移は2%未満である1。

治療

治療の3本柱は切除・・局所化学療法である。

方法 内容1 ポイント
切除 ノータッチ手技で、腫瘍の周り3〜4 mm の健常なをつけて切り取る。角膜上の部分は無水アルコールで上皮をゆるめて剥がす 腫瘍を直接つかまず、細胞をまき散らさない。組織診断もできる
のに、凍結・融解・凍結を繰り返す 取り残した顕微鏡的な腫瘍細胞を壊す
局所化学療法(点眼) 、 眼表面全体を一度に治療でき、見えない広がりにも効く
局所免疫療法 (α-2b 製剤)の点眼・注射() ヒトパピローマウイルスとの関連を根拠に使われ、眼表面全体の顕微鏡的な病変にも効く
薬 使い方の例1 主な副作用
0.02〜0.04% を1日4回1週間 → 1週間、を1サイクルとして通常3サイクル(最大8サイクル) 、の障害()、の狭窄、の菲薄化
1日4回1週間 → 1週間 比較的がよい
α-2b 点眼 100万 IU/mL を1日4回、腫瘍が消えてからさらに1か月。注射は300万 IU 注射では一過性の発熱など

💡 1週間使って1週間休むのは、ゆっくり増える正常な上皮や輪部の幹細胞に DNA を修復する時間を与え、・・緑内障・の壊死を防ぐためである1。

⚠️ 切除だけでは再発が15〜52%と多い1。のや、術前・術後の局所化学療法を組み合わせる。

💡 は、凍らせると細胞の中と外に氷の結晶ができて細胞膜が壊れ、ゆっくり融けるときにさらに細胞が傷むことを利用する。凍結と融解を繰り返すのは、1回では生き残る細胞を2回目で確実に壊すためである。

flowchart TD
    A["輪部の白色〜ゼリー状の病変<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasa vasorum'>栄養血管</span>・角膜側の灰白色の縁"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='slit-lamp'>細隙灯</span>での記録と<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior segment'>前眼部</span> OCT で上皮の肥厚を確認"]
    B --> I{"眼内・眼窩への浸潤があるか"}
    I -->|"ある"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enucleation'>眼球摘出</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orbital exenteration'>眼窩内容除去術</span>を検討"]
    I -->|"ない"| C{"病変は切除しやすい<br>範囲にとどまるか"}
    C -->|"とどまる"| D["ノータッチ切除(3〜4 mm の縁)<br>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resection margin'>切除縁</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cryotherapy'>冷凍凝固</span><br>+角膜部分のアルコール上皮剥離"]
    C -->|"広い・角膜の大部分に及ぶ"| E["局所化学療法・免疫療法で<br>まず縮小させる"]
    E --> F["残った病変を切除"]
    D --> G["病理で上皮内か浸潤かを確認"]
    F --> G
    G --> H["術後の局所化学療法を検討<br>長期の経過観察で再発を監視"]

これは標準的な考え方の整理で、局所化学療法・免疫療法だけで病変が消え、切除を要しない例もある。

⭐ 眼表面扁平上皮新生物の再発はと取り残しで決まる。「触らずに広く取る・を凍らせる・眼表面全体を点眼で治療する」の3つを組み合わせるのが基本である。

眼内や眼窩へ広がった例は、まれにやが必要になる1。

鑑別

病気 見分けるポイント
黄白色で平坦、部ので輪部を越えない
鼻側から角膜へ三角形に伸びる血管性の組織。頭部は角膜に平らに接する
眼表面扁平上皮新生物 ゼリー状・白板状・、太い、角膜側の状の灰白色の縁

と思って切除した組織から扁平上皮新生物が見つかることがあるので、なは病理に出す。

結膜リンパ腫

全身のリンパ腫の一部として生じることも、だけに生じることもある。

  • 見え方:サーモンで表面の滑らかな、やわらかい隆起。眼球を下に向かせて上方を見ると、上方のからにかけて、の平滑な厚みのある組織が広がり、その表面を細い血管が這っている。
  • 部位:から生じることが最も多い。
  • 組織:の実質に、リンパ球が層をなして密に並ぶ。多くは低悪性度の B 細胞リンパ腫で、MALTリンパ腫が代表である。
状況 治療
全身のリンパ腫の一部 血液腫瘍科での全身治療
だけに限局 放射線照射

予後はよい。リンパ系腫瘍117例の報告では、31%が全身性リンパ腫をもつか後に発症したが、全身性リンパ腫で死亡したのは1例(1%未満)だった2。

所見 全身性リンパ腫をもつか後に発症した割合
片眼の病変 17%
両眼の病変 47%
全体 31%

⚠️ 両眼の例に加え、・中央部など輪部以外にある例、多発する例で全身性リンパ腫が多い。眼瞼・眼窩・・など眼の他の部位にもリンパ系腫瘍が見つかることがある(23%)。全身性リンパ腫はの診断から何年も後(10年で28%)に見つかることがあるので、全身の検索と長期の経過観察が必要である2。眼窩のリンパ腫はで扱う。

💡 、とくににはがあり、慢性の刺激でリンパ球が集まる場所である。このため MALT リンパ腫のような低悪性度の B 細胞リンパ腫が生じやすく、ゆっくり育つので予後がよい。

💡 サーモンピンクの隆起は、や慢性の結膜炎と見誤られやすい。治りにくい片眼の「の腫れ」は、してまで確かめる。

色素性の腫瘍

母斑・原発性後天性メラノーシス・黒色腫の比較

項目 母斑 原発性後天性メラノーシス 悪性黒色腫
現れる時期 10代まで 中年以降に後天的に 高齢者
形 平坦〜わずかに隆起、境界明瞭 平坦でびまん性、境界不明瞭 隆起、
色 褐色、ときに色が薄い() 淡褐色〜褐色の斑が散らばる 濃い褐色〜黒色、濃淡あり
特徴 嚢胞を含む 片眼、角膜へ広がることがある 太い
部位 輪部・涙丘 どこでも どこでも
悪性化 まれ 異型の程度で決まる ―
治療 経過観察、大きくなれば切除 小さければ経過観察、転化を疑えば切除・・局所化学療法 広いの切除++局所化学療法。眼窩へ広がれば

結膜母斑

生まれて20年以内(10代まで)に現れる。平坦か、わずかに盛り上がった境界のはっきりした病変で、色のあるものも、色の薄いもの()もある。病変の中に小さな嚢胞を含むことがある。輪部か涙丘に多い。涙丘のすぐそばのに、濃い褐色で形が不整なとして見えることもある。

悪性化はまれで、治療は経過観察が基本である。大きくなれば切除する。

💡 母斑の中の透明な小嚢胞は、良性の母斑を示す有力な手がかりである。

原発性後天性メラノーシス

後天的に、平坦でびまん性の褐色のがに現れる状態である。

項目 内容
疫学 主に色白の中年の女性。典型的には片眼。311眼の報告では平均56歳、62%が女性、96%が白人3
部位 どこにでも生じ、角膜へ広がることがある
見え方 から輪部にかけて、淡い褐色の細かい色素が砂をまいたように平らに広がる。盛り上がりはない
組織 上皮の基底層の近くに異常なが増える
ふるまい 悪性黒色腫へ転化しやすい

悪性黒色腫への転化のしやすさは、組織の異型の程度と広がりで決まる。311眼の報告では、異型のないもの・軽度の異型では黒色腫への進行は0%、高度の異型では13%だった。経過観察した例の10年推定では12%が黒色腫へ転化し、時計の時間数で表した病変の範囲が広いほど再発と転化が多かった3。

広がりは、輪部を時計のに見立てて「何時間分か(時計の時間数)」で表す。311眼を診た Shields らは、範囲ごとに次の方針をとっている3。

範囲 Shields らの方針
1時間分未満 年1〜2回の経過観察(本人が望めば切除)
1〜2時間分 経過観察と治療の両方を説明したうえで、切除が望ましいと助言する
2時間分を超え5時間分まで 全切除+
5時間分を超える 広い+。びまん性なら各から小さな生検を行い、二重の
結節・血管を伴う 範囲によらず切除
角膜へ広がった部分 アルコールによる上皮剥離、または点眼
flowchart TD
    A["片眼に後から現れた<br>平坦な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brown spots'>褐色斑</span>"] --> B{"結節や血管を伴うか"}
    B -->|"伴う"| D["切除して組織診断<br>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cryotherapy'>冷凍凝固</span>"]
    B -->|"伴わない"| C{"範囲は時計の何時間分か"}
    C -->|"1時間分未満"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='slit-lamp'>細隙灯</span>で記録し<br>年1〜2回の経過観察"]
    C -->|"1〜2時間分"| F["経過観察と治療を説明<br>切除が望ましい"]
    C -->|"2時間分を超える"| G["切除または広い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='incisional biopsy'>切開生検</span><br>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cryotherapy'>冷凍凝固</span>"]
    D --> H{"組織の異型の程度は"}
    G --> H
    H -->|"異型なし・軽度"| I["経過観察"]
    H -->|"高度の異型"| J["黒色腫への転化に備え<br>追加治療と厳重な経過観察"]

⚠️ 経過観察中に、色の薄い(の)厚みがどこかに出てきたら、黒色腫へ進みつつあるとみなす。また、点眼のあとは色素が抜けて、下に隠れた浸潤性の黒色腫が見えにくくなることがあるので、慎重に使う3。

⚠️ 色の濃い人に両眼で対称的に見られる輪部の色素沈着(人種性メラノーシス)とは区別する3。原発性後天性メラノーシスは片眼に後から現れる。

⭐ 「片眼・後天性・平坦・嚢胞なし」のは原発性後天性メラノーシスを考え、範囲を時計の時間数で記録する。

結膜の悪性黒色腫

のから生じる悪性腫瘍である(悪性黒色腫)。

項目 内容
起源 原発性後天性メラノーシス、母斑、または何もない所から(新たに)。多くは原発性後天性メラノーシスから生じ、約25%は新たに生じる4
疫学 主に高齢者。眼の黒色腫の10%未満4
見え方 濃い色の、形の不整な、盛り上がった腫瘍。太いを伴うことがある
部位 どこにでも
組織 の実質の中に悪性のがある
ふるまい 皮膚の黒色腫と同じく、局所再発し、遠隔転移しやすい

上方のから輪部を越えて角膜の上方へ、帯状に濃淡のある褐色〜黒褐色の色素が広がる例がある。下の組織にして輪部へ広がり、同じ側の耳前・・頸部のリンパ節が腫れることがある4。

治療

  • 健常な組織を広くつけた切除 + の + 局所化学療法( など)。
  • 腫瘍細胞をまき散らさないよう、や腫瘍への直接の操作を避ける(ノータッチ手技)。には凍結・融解を2回繰り返すを行い、アルコールを使うこともある。必要ならを加える4。
  • 眼窩へ広がった場合は。

治療後の5年生存率は83〜84%、10年は69〜80%と報告されている4。

💡 ぶどう膜の黒色腫とは遺伝子の背景が違う。の黒色腫には、皮膚の黒色腫と同じ BRAF・NRAS・NF1 などの変異が見られる4。ぶどう膜の黒色腫は成人の、眼瞼の黒色腫は眼瞼腫瘍で扱う。

診断の方法

方法 分かること
(腫瘍を丸ごと切り取る) 組織の確定診断と治療を同時に行う。小さな病変に向く
(一部を切り取る) 大きく広がった病変の診断。黒色腫が疑われるときは腫瘍の播種を避けるため原則として行わない
OCT 上皮の厚さ、実質への浸潤、腫瘍の縁を断面で見る1
深部(・)への浸潤の有無
細胞の形を非侵襲的に見る。治療効果の判定

内新生物の病理組織では、上皮が厚くなり、核の濃いが密に並ぶ。 OCT では、病変の部分で表層の上皮が厚く、強く光る(高反射)層として見え、正常な上皮との境で急に薄くなる。

💡 OCT は「光る厚い上皮」と「急な」で、切らずに眼表面扁平上皮新生物を疑える。局所化学療法で上皮が薄くなっていくことも確かめられる。

まとめ

  • 眼表面の腫瘍は「色素の有無 × 良性・悪性」の4つの箱で整理する。部位(・輪部/瞼・/角膜)も手がかり。
  • 輪部:先天性の、耳下側の輪部の白いドーム状の腫瘤、毛包・を含む。。視力を妨げれば切除。
  • 乳頭腫:ヒトパピローマウイルス、で無茎または有茎。自然消退も再発もある。切除・・局所化学療法。
  • 眼表面扁平上皮新生物:高齢男性、紫外線とヒトパピローマウイルス、50歳未満なら HIV。部の輪部。・状・結節状。上皮内(内新生物)か浸潤癌か。局所でゆっくり広がり再発が多く転移はまれ。ノータッチ切除(3〜4 mm)++・・。
  • リンパ腫:のサーモンピンクの平滑な隆起。全身病なら血液腫瘍科、限局なら放射線。予後はよいが全身の検索と長期の経過観察。
  • 母斑:10代まで、輪部・涙丘、平坦〜軽く隆起、嚢胞。悪性化はまれ。
  • 原発性後天性メラノーシス:色白の中年女性の片眼の平坦な、角膜へも広がる。異型が高度なら黒色腫へ転化(13%)。広いほど危険。
  • の悪性黒色腫:原発性後天性メラノーシス・母斑・新生から。濃い色の不整な隆起と。局所再発と遠隔転移。広いの切除++局所化学療法、眼窩へ広がれば。
  • 診断は組織(・)と画像( OCT・・)。

出典

  1. 1.Ocular Surface Squamous Neoplasia(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2023)章本文(2023年7月31日更新版、NCBI FTPの書籍アーカイブのXML)で、眼表面扁平上皮新生物の要因としてヒトパピローマウイルス・紫外線B・HIV・色素性乾皮症などが挙げられること、HPV 6・11が結膜乳頭腫に関与すること、主に高齢男性(約80%)に生じ平均年齢56歳であること、アジアでは若年のHIV感染者・色素性乾皮症の患者に多いこと、紫外線を最も強く受ける鼻側の輪部の幹細胞から生じるとする説、上皮内新生物が異形成の深さで軽度(下3分の1)・中等度(中3分の1)・高度(全層、上皮内癌)に分かれ、基底膜を越えて実質へ浸潤したものが浸潤癌であること、乳頭腫状・白板症状・ゼラチン状(結節型・びまん型)の形態と栄養血管、角膜への進展が血管のない灰白色のすりガラス状で偽足状の縁を示すこと、前眼部OCTで上皮の肥厚と実質浸潤と腫瘍の縁を評価できること、局所化学療法(マイトマイシンC 0.02〜0.04%を1日4回1週間・1週間休薬で通常3サイクル・最大8サイクル、フルオロウラシルを1週間点眼・1週間休薬)と免疫療法(インターフェロンα-2bの点眼100万IU/mLを1日4回、結膜下注射300万IU)、ノータッチ手技で3〜4 mmの健常結膜の切除縁をとる切除・無水アルコールによる角膜上皮の剥離・切除縁への凍結融解凍結の冷凍凝固、一次切除後の再発が15〜52%、局所再発5%・リンパ節転移2%未満であることを確認した閲覧 2026-09-29
  2. 2.Conjunctival lymphoid tumors: clinical analysis of 117 cases and relationship to systemic lymphoma(Ophthalmology(Shields CL, Shields JA, et al.)・2001)PubMed抄録で、結膜リンパ系腫瘍117例の平均年齢が61歳で、片眼62%・両眼38%であったこと、23%で眼瞼・眼窩・脈絡膜・硝子体など眼の他の部位にもリンパ系腫瘍があったこと、31%が全身性リンパ腫をもつか後に発症し(片眼17%・両眼47%)、円蓋部や球結膜中央部など輪部以外の部位と多発が全身性リンパ腫の予測因子であったこと、全身性リンパ腫が10年で28%に見つかり、全身性リンパ腫で死亡したのは1例(1%未満)であったことを確認した閲覧 2026-09-29
  3. 3.Primary acquired melanosis of the conjunctiva: experience with 311 eyes(Transactions of the American Ophthalmological Society(Shields JA, Shields CL, et al.)・2007)PMC全文(PMC2258121)で、原発性後天性メラノーシスを結膜・角膜・涙丘の後天性で平坦な嚢胞のない色素病変と定義し、色の濃い人では通常両眼対称の人種性メラノーシスと区別すること、範囲が時計の1時間分未満なら年1〜2回の経過観察、1〜2時間分なら経過観察と治療を説明して切除が望ましいと助言、2時間分を超え5時間分までは全切除と冷凍凝固、それより広ければ広い切開生検と冷凍凝固、結節や血管を伴えば切除、びまん性なら各象限の地図状生検と二重の凍結融解、角膜部分はアルコール上皮剥離かマイトマイシンC点眼で、マイトマイシンCで色素が抜けて下の浸潤性黒色腫が隠れうるので慎重に使うこと、経過観察中に無色素性の肥厚が出たら黒色腫への進行とみなすことを確認した。また抄録で、原発性後天性メラノーシス311眼の診断時の平均年齢が56歳で62%が女性・96%が白人であったこと、経過観察した例の10年推定で拡大35%・黒色腫への転化12%、生検した例の10年推定で再発58%・転化11%であったこと、黒色腫への進行が異型なし0%・軽度異型0%・高度異型13%で、再発と黒色腫への進行の最大の因子が病変の範囲(時計の時間数)であったことを確認した閲覧 2026-09-29
  4. 4.Ocular Melanoma(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2024)章本文(2024年5月2日更新版、NCBI FTPの書籍アーカイブのXML)で、結膜の黒色腫が眼の黒色腫の10%未満であること、結膜黒色腫の多くが原発性後天性メラノーシスを背景に生じ約25%が新たに生じること、下の組織に固着して輪部へ広がり、同側の耳前・顎下・頸部のリンパ節が腫れうること、BRAF・NRAS・NF1・TERTプロモーターの変異がみられること、治療は広範な局所切除と切除縁への二重の凍結融解の冷凍凝固(ときにアルコール)で、必要なら小線源治療を加え、腫瘍の播種を防ぐため切開生検と腫瘍への直接の操作を避けること、治療後の5年生存率が83〜84%・10年生存率が69〜80%であることを確認した閲覧 2026-09-29