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Disease Atlas · 皮膚 · 腫瘍

カポジ肉腫様血管内皮腫

Kaposiform hemangioendothelioma

別名
KHE
臓器系
皮膚血液
科目
Pathology
トピック
病理学 B/42:心臓・血管腫瘍
鑑別疾患
血管腫房状血管腫
合併症
Kasabach-Merritt現象
治療薬
シロリムスプレドニゾロンメチルプレドニゾロンビンクリスチンアセチルサリチル酸
症状
皮膚結節触知可能な紫斑疼痛
検査値
血小板数フィブリノゲン

🧠 全体像:(KHE)を理解する鍵は、「これは自然消退する乳児血管腫ではない」という一点に尽きる。乳児期に生じる硬く紫紅色のという見た目は乳児血管腫と紛らわしいが、KHEは分類で(、転移はまれ)に位置づけられる別個のであり、という重篤なを高率に合併する。免疫染色でが陰性という点も乳児血管腫(陽性)との決定的な鑑別点であり、治療の主軸も乳児血管腫のであるではなく、を中心とした腫瘍縮小療法である。

病態・分類

KHEは由来の腫瘍で、軟部腫瘍分類では血管系腫瘍のうち「()」カテゴリーに属する。は高いが、遠隔転移はまれである1。

flowchart TD
    A["乳児期に生じる紫紅色の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infiltrative mass'>浸潤性腫瘤</span>"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucose transporter 1'>GLUT1</span>免疫染色"}
    B -->|"陽性"| C["乳児血管腫を疑う<br>自然消退・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='propranolol'>プロプラノロール</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='(treatment) response'>奏効</span>"]
    B -->|"陰性"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='kaposiform hemangioendothelioma'>カポジ肉腫様血管内皮腫</span>を疑う"]
    D --> E{"血小板減少・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypofibrinogenemia'>低フィブリノゲン血症</span>を伴うか"}
    E -->|"あり"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Kasabach-Merritt phenomenon'>Kasabach-Merritt現象</span>の合併"]
    E -->|"なし"| G["KHE単独として経過観察・治療"]

⭐ 免疫染色でCD31・CD34・ERGが陽性、が陰性である。 は乳児血管腫では全増殖段階で陽性となる診断マーカーだが、KHEでは陰性であり、この違いが両者の鑑別に用いられる1。

⚠️ とは名称が似ているだけの別疾患である。 はHHV-8感染を背景とする成人・患者の腫瘍で、組織像・年齢層・原因のいずれもKHEと異なる。「に似た組織像を持つ」という意味のにすぎない。

房状血管腫との関係、および乳児血管腫との対比

KHEとは同一のスペクトラムの両極にあると考えられており、共通の分子異常(GNA14変異)を持つ。KHEはより深部・侵襲性が強く、はより浅く緩徐に進行するという違いはあるが、境界は連続的である2。

一方、KHE・と乳児血管腫はまったく別の腫瘍であり、この対比が実務上もっとも重要である。

KHE・ 乳児血管腫
性質 の(自然消退しにくい) 良性腫瘍(自然消退する)
免疫染色 陰性 陽性
高率に合併する(KMPの原因病変全体に占める割合はKHEが約7割・が約1割)3 合併しない
外観 硬く紫紅色に浸潤する腫瘤 の隆起性病変()
第一選択治療 (+副腎皮質ステロイド) 経口

⚠️ は乳児血管腫の薬であって、KHEには効かない。 乳児血管腫の第一選択である経口は、KHE・の治療エビデンスとしては確立されておらず、KHEの治療はを中心とした別の薬剤選択になる2。「血管性の乳児期腫瘤だから」と短絡しないことが、両者を取り違えないための実務上の要点になる。

臨床像

⚠️ 見逃してはいけないこと

⚠️ 急速増大する紫紅色腫瘤に血小板減少・を伴えば、乳児血管腫ではなくKHE(または)によるを疑う。 通常の乳児血管腫の経過観察方針をそのまま当てはめると、への対応が遅れる。

⚠️ は活動性出血・周術期以外は避ける。 輸血された血小板も病変内に捕捉・活性化され、腫瘍増大や疼痛を助長しうる3。

治療

⭐ ()が第一選択に位置づけられつつある。 副腎皮質ステロイド併用のもとで、合併症の有無や難治例を問わず良好な成績が報告されている2。を合併した場合は、副腎皮質ステロイド+週1回静注、あるいは+アスピリン+()が用いられる23。

位置づけ 治療
第一選択 (±副腎皮質ステロイド)
合併時 または+週1回静注
欧州の標準治療 ++()

⚠️ ・ヘパリンの扱いはのノートに準じる。 活動性出血・周術期以外の、およびヘパリンによるはいずれも病態を悪化させうる。

まとめ

  • KHEは乳児期に生じる(、転移まれ)ので、良性で自然消退する乳児血管腫とは免疫染色(KHEは陰性)で鑑別できる。
  • とは同一スペクトラムの両極にある近縁腫瘍で、KHEのほうが深部・侵襲性が強い。
  • 高率に()を合併し、これが乳児血管腫との最大の臨床的相違点である。
  • は乳児血管腫の薬であってKHEには効かず、治療の第一選択はである。合併時は副腎皮質ステロイド+を併用する。

出典

  1. 1.Kaposiform Hemangioendothelioma: clinicopathological characteristics of 8 cases of a rare vascular tumor and review of literature(Diagnostic Pathology・2021)カポジ肉腫様血管内皮腫(KHE)がWHO分類で「中間悪性度(局所侵襲性)」に位置づけられ局所再発率は高いが遠隔転移はまれであること(自験8例中転移・再発は0例)、免疫染色でCD31・CD34・ERGが陽性である一方GLUT1は陰性で、GLUT1が通常陽性である若年性(乳児)血管腫との鑑別に有用であること、伝統的に乳幼児の腫瘍とされるが成人例の報告もあること、皮膚・皮下発生例は赤色〜紫紅色の局面または結節として現れ深部組織へ浸潤しうることを確認した。閲覧 2026-08-19
  2. 2.Kaposiform hemangioendothelioma and tufted angioma: two entities of the same clinicopathological spectrum(Anais Brasileiros de Dermatologia・2023)カポジ肉腫様血管内皮腫(KHE)と房状血管腫(TA)が同一のスペクトラムの両極(KHEがより侵襲性)であり共通の分子異常(GNA14変異)を持つこと、治療として全身副腎皮質ステロイド、静注ビンクリスチン、mTOR阻害薬(シロリムス)、抗血小板薬が用いられ、Kasabach-Merritt現象を伴う例にはビンクリスチン+アスピリン+チクロピジン(VAT療法)が使われること、シロリムスが合併症の有無・難治例を問わず良好な成績を示していることを確認した。閲覧 2026-08-19
  3. 3.Kasabach-Merritt Phenomenon: Classic Presentation and Management Options(Clinical Medicine Insights: Blood Disorders・2017)Kasabach-Merritt現象(KMP)の原因病変がKHE(約7割)と房状血管腫に限定されること、機序は腫瘍血管の裂隙状血管腔への血小板捕捉と局所でのフィブリノゲン消費であること、血小板輸血が活動性出血・周術期以外は禁忌に近い扱いであること(腫瘍増大・疼痛を助長するため)、シロリムス+副腎皮質ステロイドが第II相試験で全例のKHE部分奏効・KMP完全消退を達成したことを確認した。閲覧 2026-08-19
  4. 4.Kasabach-Merritt Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Kasabach-Merritt症候群が血小板減少・微小血管症性溶血性貧血・消費性凝固障害を呈し、凝固検査でPT・aPTT延長・低フィブリノゲン血症・Dダイマー上昇を認めることを確認した。閲覧 2026-08-19