Drug Atlas · B18 Antidiabetics / 糖尿病薬
グルカゴン
glucagon
🧠 全体像:グルカゴンは膵α細胞 pancreatic alpha cell 膵α細胞(pancreatic alpha cell) pancreatic alpha cell(膵α細胞) のホルモンで、肝臓のグリコーゲンを分解してブドウ糖を血中へ放出させる。血糖を下げるインスリンの正反対の働きをするため、薬としては抗糖尿病薬 antidiabetics 糖尿病薬(antidiabetics) antidiabetics(糖尿病薬) ではなく、重症低血糖で口から糖を摂れない患者を救う「救急の注射・点鼻」として使う。効き方は肝臓の蓄えに頼るので、グリコーゲンが枯れている状態(飢餓starvation飢餓(starvation)starvation(飢餓)、副腎不全、アルコール性低血糖alcohol-induced hypoglycemiaアルコール性低血糖(alcohol-induced hypoglycemia)alcohol-induced hypoglycemia(アルコール性低血糖))には効きにくい。回復して嚥下できるようになったら糖質を摂らせて再発を防ぐ。静脈路IV access 静脈路(IV access)IV access(静脈路) が無くても家族が筋注・点鼻できる点が、ブドウ糖静注との最大の違いである。
薬効群の中での位置づけ
| 状況 | 第一の手段 | グルカゴンの立場 |
|---|---|---|
| 意識があり嚥下できる低血糖 | 経口のブドウ糖などの糖質 | 使わない |
| 意識障害・痙攣・嚥下不能inability to swallow 嚥下不能(inability to swallow)inability to swallow(嚥下不能) (重症低血糖) | 医療者が静脈路 IV access 静脈路(IV access) IV access(静脈路) を確保できるなら静注ブドウ糖 intravenous glucose静注ブドウ糖(intravenous glucose) intravenous glucose(静注ブドウ糖) | 静脈路IV access 静脈路(IV access)IV access(静脈路) が無い・非医療者が対応する場面での救済1 |
| 肝グリコーゲンhepatic glycogen 肝グリコーゲン(hepatic glycogen)hepatic glycogen(肝グリコーゲン) が枯れている(長い絶食、副腎不全、アルコール性など) | ブドウ糖 | 効きにくいので第一選択にしない23 |
⭐ インスリン製剤Insulins インスリン製剤(Insulins)Insulins(インスリン製剤) を使う患者と家族に、グルカゴンを準備して使い方を教えておくことが重症低血糖の備えになる。現行の製剤は溶解の手間が投与の遅れにつながるため、保護者・介助者には使い方の教育と定期的な見直しが要る1。低血糖そのものの評価と治療の全体は低血糖を参照する。
flowchart TD
A["低血糖"] --> B{"意識があり<br>嚥下できるか"}
B -->|"はい"| C["経口のブドウ糖などの糖質"]
B -->|"いいえ(意識障害・痙攣・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inability to swallow'>嚥下不能</span>)"| D{"医療者がいて<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='IV access'>静脈路</span>を確保できるか"}
D -->|"はい"| E["ブドウ糖の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IV dosing'>静脈内投与</span>"]
D -->|"いいえ・家族や周囲が対応"| F["グルカゴンを筋注・皮下注・点鼻<br>(救急要請を並行)"]
F --> G{"回復して嚥下できるか"}
G -->|"はい"| H["経口の糖質で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic glycogen'>肝グリコーゲン</span>を補う"]
G -->|"いいえ・改善しない"| E
この流れは本ノートの整理で、追加投与や静注への切り替えの規則は製剤の添付文書による(後述)。
機序
グルカゴンは29個のアミノ酸からなるペプチドで、肝臓のグルカゴン受容体 glucagon receptor グルカゴン受容体(glucagon receptor) glucagon receptor(グルカゴン受容体) を活性化してグリコーゲンの分解を促し、肝からブドウ糖を放出させて血糖を上げる。グリコーゲンの蓄えが作用の前提である。肝臓以外の作用として、胃・十二指腸・小腸・大腸の平滑筋を弛緩させる2。糖新生も促す点は、膵ホルモンpancreatic hormones 膵ホルモン(pancreatic hormones)pancreatic hormones(膵ホルモン) の総論 common features 総論(common features) common features(総論) (B18)で扱う。
💡 血糖を上げる経路が「肝グリコーゲンhepatic glycogen肝グリコーゲン(hepatic glycogen)hepatic glycogen(肝グリコーゲン)」に限られることが、効かない場面を決める。長い絶食、副腎機能低下、慢性の低血糖、一部の糖原病 glycogen storage diseases糖原病(glycogen storage diseases) glycogen storage diseases(糖原病)、肝硬変では肝の蓄えが乏しいので期待できず、アルコール性低血糖alcohol-induced hypoglycemia アルコール性低血糖(alcohol-induced hypoglycemia)alcohol-induced hypoglycemia(アルコール性低血糖) では血糖上昇 hyperglycemia 血糖上昇(hyperglycemia) hyperglycemia(血糖上昇) がみられない24。これらではブドウ糖で治療する。
薬物動態
| 項目 | 注射剤 | 点鼻剤 |
|---|---|---|
| 血糖の反応 | 10分以内に上昇し約30分で最大。作用は静注・筋注で60〜90分続く2 | 3 mgのTmaxは中央値30分(範囲10〜40分)。注射剤1 mgの中央値10分より遅い4 |
| 半減期 | 健常成人で筋注約16.3分・皮下約19.9分・静注約3.1分3。米国の添付文書は筋注で見かけの半減期45分とし、吸収の持続を反映するとする2 | 幾何平均geometric mean 幾何平均(geometric mean)geometric mean(幾何平均) 27分(範囲8〜85分)4 |
| 代謝 | 肝・腎・血漿で分解される2 | — |
| その他 | 作用時間duration 作用時間(duration)duration(作用時間) が短く、回復後に再び低血糖になりうる(経口糖質が必要な理由)23 | 感冒による鼻閉・鼻汁nasal discharge 鼻汁(nasal discharge)nasal discharge(鼻汁) があっても血漿グルコース plasma glucose 血漿グルコース(plasma glucose) plasma glucose(血漿グルコース) の上昇には影響しなかった(外国人データ)4 |
適応
| 製剤・国 | 承認された使い道 |
|---|---|
| 注射剤(米国) | 糖尿病の小児・成人の重症低血糖の治療。成人の放射線検査で消化管の動きを一時的に抑える診断補助2 |
| 注射剤(日本) | 消化管のX線及び内視鏡検査の前処置 preparation (pretreatment); conditioning (transplantation)前処置(preparation (pretreatment); conditioning (transplantation)) preparation (pretreatment); conditioning (transplantation)(前処置)、低血糖時の救急処置、成長ホルモンgrowth hormone (GH) 成長ホルモン(growth hormone (GH))growth hormone (GH)(成長ホルモン) 分泌機能 secretory functions 分泌機能(secretory functions) secretory functions(分泌機能) 検査、肝型糖原病hepatic glycogen storage disease 肝型糖原病(hepatic glycogen storage disease)hepatic glycogen storage disease(肝型糖原病) 検査、胃の内視鏡的治療 endoscopic treatment 内視鏡的治療(endoscopic treatment) endoscopic treatment(内視鏡的治療) の前処置 preparation (pretreatment); conditioning (transplantation) 前処置(preparation (pretreatment); conditioning (transplantation)) preparation (pretreatment); conditioning (transplantation)(前処置) の5項目3 |
| 点鼻剤(日本) | 低血糖時の救急処置のみ4 |
成長ホルモンgrowth hormone (GH) 成長ホルモン(growth hormone (GH))growth hormone (GH)(成長ホルモン) 分泌機能 secretory functions 分泌機能(secretory functions) secretory functions(分泌機能) 検査の使い方はグルカゴン負荷試験glucagon stimulation testグルカゴン負荷試験(glucagon stimulation test)glucagon stimulation test(グルカゴン負荷試験)を参照する。承認適応authorized indications 承認適応(authorized indications)authorized indications(承認適応) ではないが、β遮断薬を服用中でアドレナリンが効きにくいアナフィラキシーや、ジアゾキシドdiazoxide ジアゾキシド(diazoxide)diazoxide(ジアゾキシド) 不応などの先天性高インスリン血症congenital hyperinsulinism先天性高インスリン血症(congenital hyperinsulinism)congenital hyperinsulinism(先天性高インスリン血症)での血糖維持に、専門家expert 専門家(expert)expert(専門家) が使う場面がある(それぞれの疾患ノートを参照)。
用法・用量
| 製剤 | 用量・経路 | 補足 |
|---|---|---|
| 注射剤(米国) | 体重25 kg以上または体重不明の6歳以上は1 mg、25 kg未満または体重不明の6歳未満は0.5 mgを、上腕・大腿・臀部の皮下か筋肉内 intramuscular筋肉内(intramuscular) intramuscular(筋肉内)、または静脈内 intravenous 静脈内(intravenous) intravenous(静脈内) に投与 | 15分たって反応がなければ、新しいキットでもう1回追加できる。静脈内intravenous 静脈内(intravenous)intravenous(静脈内) は医療監督下のみ2 |
| 注射剤(日本、低血糖時の救急処置) | 1 mgを注射用水1 mLに溶解し、筋肉内intramuscular 筋肉内(intramuscular)intramuscular(筋肉内) または静脈内 intravenous 静脈内(intravenous) intravenous(静脈内) に注射 | この適応に小児・体重別の用量の記載はない。低血糖は通常10分以内に改善し、改善しなければ直ちにブドウ糖の静脈内投与 IV dosing 静脈内投与(IV dosing) IV dosing(静脈内投与) などを行う3 |
| 点鼻剤(日本) | 1回3 mgを鼻腔内 intranasal 鼻腔内(intranasal) intranasal(鼻腔内) に投与 | 追加投与は行わない。改善しなければブドウ糖の静脈内投与 IV dosing 静脈内投与(IV dosing) IV dosing(静脈内投与) などを直ちに行う。小児は4歳以上17歳未満の1型糖尿病患者で試験され、4歳未満は試験されていない4 |
⚠️ 日本の注射剤は、低血糖時の救急処置の用法が筋注か静注で、皮下注は書かれていない。 米国の注射剤は皮下注も認める。国と製剤で投与経路 route of administration投与経路(route of administration) route of administration(投与経路)・用量・追加投与の規則が違うので、手元の製剤の添付文書を確認する。
国際小児思春期糖尿病学会(ISPAD)の2022年ガイドラインは、国によって入手できる製剤が違うことを前提に次を挙げる。用量は体重で決めるが、体重の区切りの根拠は不明確とされる1。
| 製剤 | 経路 | 用量 | 年齢 |
|---|---|---|---|
| 粉末(溶解して使う) | 皮下・筋注 | 25 kg超は1 mg、25 kg未満は0.5 mg | 全年齢 |
| 鼻腔内intranasal 鼻腔内(intranasal)intranasal(鼻腔内) 粉末 | 鼻腔内intranasal鼻腔内(intranasal)intranasal(鼻腔内) | 3 mg | 4歳超 |
| ダシグルカゴン(プレフィルドペン) | 皮下 | 0.6 mg | 6歳以上 |
| Gvoke(液状のオートインジェクター autoinjectorオートインジェクター(autoinjector) autoinjector(オートインジェクター)) | 皮下 | 45 kg超は1 mg、45 kg未満は0.5 mg | 2歳超 |
投与後、意識が戻って嚥下できるようになったら、経口の糖質を摂らせて肝グリコーゲン hepatic glycogen 肝グリコーゲン(hepatic glycogen) hepatic glycogen(肝グリコーゲン) を補い、低血糖の再発を防ぐ2。
禁忌・注意
禁忌は国で違う
| 項目 | 米国GlucaGen米国(GlucaGen)GlucaGen(米国) | 日本(上記の添付文書) |
|---|---|---|
| 褐色細胞腫pheochromocytoma褐色細胞腫(pheochromocytoma)pheochromocytoma(褐色細胞腫) | 禁忌。カテコールアミンの遊離で血圧が大きく上がる | 禁忌(パラガングリオーマparaganglioma パラガングリオーマ(paraganglioma)paraganglioma(パラガングリオーマ) と、その疑いのある患者を含む) |
| インスリノーマinsulinomaインスリノーマ(insulinoma)insulinoma(インスリノーマ) | 禁忌。初めの血糖上昇 hyperglycemia 血糖上昇(hyperglycemia) hyperglycemia(血糖上昇) のあと過剰なインスリン放出が起き、低血糖になりうる | 禁忌欄には無い |
| グルカゴノーマglucagonomaグルカゴノーマ(glucagonoma)glucagonoma(グルカゴノーマ) | 診断補助での使用が禁忌。低血糖になりうる | 禁忌欄には無い |
| 成分への過敏症 | 禁忌 | 禁忌 |
⚠️ 褐色細胞腫pheochromocytoma 褐色細胞腫(pheochromocytoma)pheochromocytoma(褐色細胞腫) が疑われる患者に使って血圧が急に上がったら、 米国の添付文書は未診断の褐色細胞腫 pheochromocytoma 褐色細胞腫(pheochromocytoma) pheochromocytoma(褐色細胞腫) を疑い、フェントラミンphentolamine フェントラミン(phentolamine)phentolamine(フェントラミン) 5〜10 mgの静注が血圧を短時間下げるのに有効だったとする2。
注意すべき状況
| 状況 | 内容 |
|---|---|
| 肝グリコーゲンhepatic glycogen 肝グリコーゲン(hepatic glycogen)hepatic glycogen(肝グリコーゲン) が少ない | 飢餓starvation飢餓(starvation)starvation(飢餓)、副腎機能低下、慢性・頻発する低血糖、一部の糖原病 glycogen storage diseases糖原病(glycogen storage diseases) glycogen storage diseases(糖原病)、肝硬変、アルコール性低血糖alcohol-induced hypoglycemia アルコール性低血糖(alcohol-induced hypoglycemia)alcohol-induced hypoglycemia(アルコール性低血糖) では効果が乏しい。ブドウ糖で治療する24 |
| 回復後の二次的な低血糖 | 作用が短く、回復後に再び低血糖になりうる。経口糖質を摂らせ、運転や危険を伴う作業に注意させる3 |
| 持続投与repeated/continuous dosing持続投与(repeated/continuous dosing)repeated/continuous dosing(持続投与) | 持続点滴continuous infusion 持続点滴(continuous infusion)continuous infusion(持続点滴) 後に壊死性遊走性紅斑 necrolytic migratory erythema 壊死性遊走性紅斑(necrolytic migratory erythema) necrolytic migratory erythema(壊死性遊走性紅斑) (皮疹)の報告がある。中止で消失した2 |
| 診断補助での使用 | 糖尿病患者では高血糖になりうる。心疾患では心拍数・血圧が上がり心筋の酸素需要 oxygen demand 酸素需要(oxygen demand) oxygen demand(酸素需要) が増えるため、心電図などで監視する2 |
| 妊娠・授乳 | 米国の添付文書は、長年の使用で重大な先天異常 congenital anomalies 先天異常(congenital anomalies) congenital anomalies(先天異常) や流産のリスクは確認されず、グルカゴンは胎盤を通過しないとする2。日本の点鼻剤は有益性が危険性を上回るときにのみ投与とする4 |
相互作用
| 併用薬 | 内容 |
|---|---|
| プロプラノロールpropranololプロプラノロール(propranolol)propranolol(プロプラノロール)などβ遮断薬 | 米国と日本の点鼻剤の添付文書は、脈拍・血圧の一過性の上昇を挙げる。日本の注射剤の添付文書は、低血糖のリバウンドが起きやすくなり、低血糖の交感神経症状 sympathetic symptoms 交感神経症状(sympathetic symptoms) sympathetic symptoms(交感神経症状) がマスクされるおそれがあるとする243 |
| インドメタシンindomethacinインドメタシン(indomethacin)indomethacin(インドメタシン) | 血糖を上げる作用を失う、または低血糖を起こすことがある2 |
| ワルファリン | 抗凝固作用が増強することがある(機序は不明)34 |
| インスリン | 作用が拮抗する。診断補助で使うときは血糖を監視する2 |
| 抗コリン薬anticholinergics抗コリン薬(anticholinergics)anticholinergics(抗コリン薬) | 診断補助では併用を勧めない。消化管運動GI motility 消化管運動(GI motility)GI motility(消化管運動) の抑制が重なる2 |
副作用
| 製剤 | 内容 |
|---|---|
| 注射剤(米国、市販後) | 注射部位の反応、悪心、嘔吐、頭痛、めまい、脱力、蒼白、下痢、傾眠、血圧低下。全身のアレルギー反応(アナフィラキシーショックanaphylactic shock アナフィラキシーショック(anaphylactic shock)anaphylactic shock(アナフィラキシーショック) を含む)、高血圧と頻脈2 |
| 注射剤(日本) | 重大な副作用はショック・アナフィラキシーショックanaphylactic shock アナフィラキシーショック(anaphylactic shock)anaphylactic shock(アナフィラキシーショック) と低血糖症状。その他に悪心・嘔吐、じん麻疹、血圧低下、血糖値上昇、尿糖glycosuria尿糖(glycosuria)glycosuria(尿糖)3 |
| 点鼻剤(日本) | 成人71例では16.9%で、鼻痛8.5%、悪心5.6%、血圧上昇elevated blood pressure 血圧上昇(elevated blood pressure)elevated blood pressure(血圧上昇) 5.6%、嘔吐2.8%、耳痛otalgia 耳痛(otalgia)otalgia(耳痛) 2.8%。小児36例では50.0%で、嘔吐30.6%、頭痛22.2%、悪心16.7%、鼻部不快感8.3%4 |
💡 悪心・嘔吐は意識が戻るときに出やすく、反復投与repeated administration 反復投与(repeated administration)repeated administration(反復投与) で増える。 投与後は意識が戻るまで近くで観察を続け、血糖も測る1。
まとめ
- グルカゴンは膵α細胞 pancreatic alpha cell 膵α細胞(pancreatic alpha cell) pancreatic alpha cell(膵α細胞) のホルモンで、肝グリコーゲンhepatic glycogen 肝グリコーゲン(hepatic glycogen)hepatic glycogen(肝グリコーゲン) の分解でブドウ糖を放出させ、重症低血糖の救急に筋注・皮下注・点鼻で使う。静脈路IV access 静脈路(IV access)IV access(静脈路) が無くても家族が投与できる。
- 肝グリコーゲンhepatic glycogen 肝グリコーゲン(hepatic glycogen)hepatic glycogen(肝グリコーゲン) が前提なので、飢餓starvation飢餓(starvation)starvation(飢餓)・副腎不全・アルコール性低血糖alcohol-induced hypoglycemiaアルコール性低血糖(alcohol-induced hypoglycemia)alcohol-induced hypoglycemia(アルコール性低血糖)・肝硬変などでは効きにくく、ブドウ糖で治療する。回復後は経口の糖質で再発を防ぐ。
- 日本の注射剤は筋注か静注(皮下注は用法に無い)、点鼻剤は3 mgを1回で追加投与しない。米国の注射剤は皮下注も認め、15分で反応がなければ追加できる。
- 褐色細胞腫pheochromocytoma 褐色細胞腫(pheochromocytoma)pheochromocytoma(褐色細胞腫) は日米とも禁忌。インスリノーマinsulinoma インスリノーマ(insulinoma)insulinoma(インスリノーマ) は米国のみ禁忌に挙がる。成分への過敏症も禁忌。
- 悪心・嘔吐は意識の回復時に出やすい。β遮断薬・インドメタシンindomethacinインドメタシン(indomethacin)indomethacin(インドメタシン)・ワルファリンとの併用に注意する。
出典
- 1.ISPAD Clinical Practice Consensus Guidelines 2022: Assessment and management of hypoglycemia in children and adolescents with diabetes(Pediatric Diabetes(Abraham MB, Karges B, Dovc K, et al.)・2022)PMC10107518の全文(Europe PMCのfullTextXML)で確認した。意識がない・嚥下できない小児の重症低血糖はグルカゴンで安全に改善でき、静脈内・経鼻・筋肉内・皮下に投与できること。グルカゴンの形態(Table 4)は、粉末の注射剤が皮下・筋注で25 kg超1 mg・25 kg未満0.5 mg(全年齢)、鼻腔内粉末が3 mg(4歳超)、ダシグルカゴンが0.6 mg皮下(6歳以上)、Gvokeが皮下で45 kg超1 mg・45 kg未満0.5 mg(2歳超)。用量は体重で決めるが根拠は不明確とされる。グルカゴンは意識の回復時に悪心・嘔吐を起こしやすく、反復投与で副作用の頻度が増える。肝グリコーゲンが十分あることが前提で、長い絶食に伴う低血糖ではブドウ糖の非経口投与が第一選択。溶解の手間が投与の遅れにつながるため、保護者・介助者には使い方の教育と定期的な見直しが要る。病院では小児に10%ブドウ糖2 mL/kgの静注が選べる。閲覧 2026-10-28
- 2.GlucaGen (glucagon) for injection — Prescribing Information(Novo Nordisk(米国添付文書、FDA)・2021)2021年7月改訂の版(FDAの表示に「最新版とは限らない」とある)。適応は糖尿病の小児・成人の重症低血糖の治療と、成人の放射線検査での消化管運動の一時的抑制(診断補助)。重症低血糖の用量は体重25 kg以上または体重不明の6歳以上で1 mg、25 kg未満または体重不明の6歳未満で0.5 mgを皮下・筋肉内・静脈内に投与し、15分たって反応がなければ新しいキットでもう1回追加できる(静脈内は医療監督下のみ)。回復して嚥下できたら経口糖質で肝グリコーゲンを補い再発を防ぐ。禁忌は褐色細胞腫、インスリノーマ、成分への過敏症、診断補助目的でのグルカゴノーマ。肝グリコーゲンが十分にあるときだけ有効で、飢餓・副腎不全・慢性の低血糖では効かないことがあり、その場合はブドウ糖で治療する。血糖は10分以内に上昇し約30分で最大、作用は静注・筋注で60〜90分続く。1 mg筋注で中央値Tmax 12.5分、見かけの半減期45分(吸収の持続を反映)、肝・腎・血漿で分解される。相互作用はβ遮断薬(脈拍・血圧の一過性上昇)、インドメタシン(血糖を上げられない、または低血糖を起こすことがある)、ワルファリン(抗凝固作用の増強)、インスリン(拮抗)、抗コリン薬(診断補助での併用は非推奨)。妊婦での数十年にわたる使用の症例報告・観察研究から重大な先天異常や流産のリスクは確認されておらず、膵グルカゴンは妊娠初期のヒトの胎盤を通過しないとされる。閲覧 2026-10-28
- 3.グルカゴンGノボ注射用1mg(添付溶解液あり)添付文書(ノボ ノルディスク ファーマ(PMDA医療用医薬品情報)・2023)2023年11月改訂(第2版)。効能又は効果は消化管のX線及び内視鏡検査の前処置、低血糖時の救急処置、成長ホルモン分泌機能検査、肝型糖原病検査、胃の内視鏡的治療の前処置の5項目。低血糖時の救急処置の用法及び用量は「グルカゴン(遺伝子組換え)として1mgを1mLの注射用水に溶解し、筋肉内又は静脈内に注射する」で、小児・体重別の記載はない(体重別の0.03 mg/kg・最大1 mgは成長ホルモン分泌機能検査と小児の肝型糖原病検査)。禁忌は褐色細胞腫又はパラガングリオーマの患者及びその疑いのある患者と成分への過敏症で、インスリノーマは含まれない。血糖上昇作用は肝グリコーゲンの分解によるため飢餓状態・副腎機能低下症・一部の糖原病では効果がほとんど期待できず、アルコール性低血糖では効果がみられない。低血糖の患者は通常10分以内に改善し、改善しないときは直ちにブドウ糖の静脈内投与などを行う。併用注意はβ遮断剤(低血糖のリバウンド、交感神経症状のマスク)・インスリン・ワルファリン。重大な副作用はショック・アナフィラキシーショックと低血糖症状。健常成人1 mgの半減期は筋注約16.3分・皮下約19.9分・静注約3.1分、tmaxは筋注約9.2分・皮下約8.0分。閲覧 2026-10-28
- 4.バクスミー点鼻粉末剤3mg添付文書(日本イーライリリー(PMDA医療用医薬品情報)・2024)2024年12月改訂(第4版)。効能又は効果は低血糖時の救急処置のみ。用法及び用量は「通常、グルカゴンとして1回3mgを鼻腔内に投与する」で、追加投与は行わず、改善しないときはブドウ糖の静脈内投与などを直ちに行う。禁忌は褐色細胞腫又はパラガングリオーマと成分への過敏症。飢餓状態・副腎機能低下症・頻発する低血糖・一部の糖原病・肝硬変などでは効果がほとんど期待できず、アルコール性低血糖では血糖上昇効果がみられない。副作用は成人71例で16.9%(鼻痛8.5%、悪心5.6%、血圧上昇5.6%、嘔吐2.8%、耳痛2.8%)、小児36例で50.0%(嘔吐30.6%、頭痛22.2%、悪心16.7%、鼻部不快感8.3%)。小児は4歳以上17歳未満の1型糖尿病患者で試験され、4歳未満の試験は実施されていない。3 mgのTmaxは中央値30分(範囲10〜40分、注射剤1 mgは中央値10分)、半減期は幾何平均27分。感冒に伴う鼻閉・鼻汁があっても血漿グルコースの上昇に影響しなかった(外国人データ)。閲覧 2026-10-28