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Drug Atlas · C6 Antivirals / 抗ウイルス薬

ラルテグラビル

raltegravir

分類
Antivirals / 抗ウイルス薬
商品名(日本)
アイセントレス
商品名(EU)
Isentress
科目
Pharmacology
トピック
C6: Antiretroviral agents
承認適応
HIV感染症・AIDS
標的微生物
HIV-1HIV-2
副作用
下痢悪心頭痛不眠皮疹
監視検査値
クレアチンキナーゼ

🧠 全体像:は、HIVのを阻害する最初の薬として2007年に米国で承認された第1世代の(INSTI)である1。ウイルスDNAを宿主の染色体へ組み込む反応を止め、の形成を断つ。その後、1日1回でが高い第2世代(・)が初回治療の中心になり、は「代替」「状況によって推奨」の位置に下がった23。それでも薬物相互作用が少なく、妊婦・曝露後予防・新生児での経験が長いため、特定の場面では今も選ばれる。

薬効群の中での位置づけ

世代 代表薬 特徴
400 mgの1日2回が標準。が比較的低い3。CYPの基質でなく相互作用が少ない
、 1日1回、が高い。初回治療の中核
長時間作用型 筋注の

⭐ 国ごとの現在の位置づけ:欧州のEACS 2025年版は、成人の初回治療で「TAF/FTCまたはTDF/XTC+RAL(1日1回または2回)」を代替レジメンに置く2。日本の2025年3月版ガイドラインは、「大部分のHIV感染者に推奨されるレジメン」には入れず、「状況によって推奨されるレジメン」(BII)とした。理由として、が比較的低いこと、1日1回の合剤がなく錠数が多いことを挙げる一方、副作用と相互作用が少ないこと、腎機能を評価しやすいこと、曝露後予防と妊婦に使えること、体重増加が少ないことを評価している3。

機序

flowchart TD
    A["逆転写で二本鎖のウイルスDNAができる"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='integrase'>インテグラーゼ</span>が<br>ウイルスDNAを宿主染色体へ組み込む<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='strand transfer'>鎖転移</span>)"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='provirus'>プロウイルス</span>が形成される"]
    D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='raltegravir'>ラルテグラビル</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='integrase'>インテグラーゼ</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='catalytic activity'>触媒活性</span>を阻害"] -.->|"組み込みを阻止"| B
    E["Y143・Q148・N155などの<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='integrase'>インテグラーゼ</span>変異"] -.->|"結合性が落ちて耐性化"| D

はHIV-1のを阻害して、直線状のウイルスDNAが宿主ゲノムへ共有結合で挿入されるのを防ぐ。ヒトのDNAポリメラーゼα・β・γは有意に阻害しない。HIV-1の複数のに加え、HIV-2にも活性がある。米国添付文書が挙げる根拠は、HIV-2の1株を使ったでEC95が6 nMだったという所見である1。⚠️ NNRTIがHIV-2に効かないのとは対照的に、INSTIはHIV-2の治療に使え、EACSはHIV-2の初回治療の代替に1日2回を含む組み合わせを挙げる2。

💡 耐性は特定の「3つの位置」に集中する。 耐性に関わる変異は、Y143(C・H・R)、Q148(H・K・R)、N155(H)のいずれかに、L74Mなどの追加変異が重なる形が典型である。STARTMRKの240週時点では、12例のうち4例に主要ながあった1。第2世代と比べてが低いとされる根拠は、この「主要変異が比較的少数で現れる」性質にある。

薬物動態

項目 値・特徴
吸収 速やかに吸収され、Tmaxは約3時間。食事の有無にかかわらず服用できる4
代謝 主にUGT1A1による。CYPの基質ではなく、CYP3A4も誘導しない4
分布 は約83%
排泄 投与量の約32%が尿中、約51%が糞中。未変化体のは主要な経路ではない
半減期 に消失し、終末相で約9時間、α相で約1時間。AUCに占めるα相の寄与が大きい。400 mg 1日2回で2日以内に定常状態へ達し、ほとんど蓄積しない41
腎・ 重度腎障害・中等度肝障害でも臨床的に意味のある差はなく、は不要
遺伝多型 UGT1A1の遺伝多型で臨床的に意味のある影響を受ける証拠はない。*28/*28と野生型のAUC比は1.41(90%0.96〜2.09)で、用量は変えない
  • CYPを介さないので、(・)が要らず、PI・NNRTI・・スタチン・などと相互作用が少ない。、、TDF、、、のにも臨床的に意味のある影響を与えない4。
  • 💡 相互作用の主役は「吸収」と「UGT1A1誘導」の2つだけ:①2価のを含むとの、②リファンピシンなどの強力なUGT1A1誘導剤。

適応

HIV感染症。必ず他のと併用する。治療歴との結果を参考にする4。

場面 位置づけ
初回治療 日本は「状況によって推奨」、EACSは代替23
多剤耐性の治療経験者 BENCHMRK 1/2試験で3系統の薬に耐性のある患者にも有効性が示された
曝露後予防 日本の推奨薬に「(400 mg錠を1回1錠1日2回、または600 mg錠を1回2錠1日1回)+TAF/FTCまたはTDF/FTC」が含まれる3
妊婦 日本のガイドラインは使用可能とする。電子添文は有益性が危険性を上回る場合のみ投与するとし、米国の抗レトロウイルス妊娠登録ではの頻度が背景率と差がない1
HIV-2 初回治療の代替にRAL 1日2回を含む組み合わせがある2
新生児(生後0〜4週) 欧州の小児ガイドラインは代替アンカー薬の一つに挙げる2

主な臨床試験

試験 対象と比較 結果
STARTMRK 未治療者。400 mg 1日2回 対 (ともにFTC+TDFと併用) HIV RNA 50 copies/mL未満は48週で86.1%対81.9%、240週で71.0%対61.3%(電子添文の解析)4
BENCHMRK 1/2 3系統の薬に耐性を持つ治療経験者。最適基礎療法にまたはを追加 48週で62.1%対32.9%、96週で57.0%対26.2%
ONCEMRK 未治療者。1200 mg 1日1回 対 400 mg 1日2回 96週で82%対80%1
  • ⚠️ 解析の仕方で数字が変わる。STARTMRKの240週は米国添付文書のスナップショット解析では66%対60%で、有害事象による中止は5%、10%だった1。
  • 電子添文は小児等を対象としたを実施していないと書く。一方、米国は2 kg以上の小児にISENTRESS、40 kg以上にISENTRESS HDを適応とする。国によって適応が違う。

用法・用量

国・製剤 用法
日本(錠400 mg) 成人にとして400 mgを1日2回。食事の有無を問わない4
米国・成人の未治療、または400 mg 1日2回で抑制されている患者 1200 mg(600 mg錠2錠)1日1回、または400 mg 1日2回1
米国・成人の治療経験者 400 mg 1日2回
米国・リファンピシン併用の成人 800 mg 1日2回(1200 mg 1日1回の製剤は併用しない)
  • ⚠️ と懸濁用製剤は、とが違うので置き換えない。
  • 透析で除去されるかは不明なので、透析の直前の投与は避ける。

禁忌・注意

  • 禁忌:日本の電子添文は成分への過敏症の既往。米国添付文書は禁忌なし41。
  • ⚠️ :・含有は、投与前後6時間以内に併用するとが低下する(による吸収抑制)。米国添付文書は時間をずらしても併用を勧めない。1日1回1200 mgの製剤は含有とも併用しない41。
  • ⚠️ リファンピシン:UGT1A1の誘導でが下がる。米国は800 mg 1日2回へ増量する。
  • 強いUGT1A1阻害薬(など):は上がるが程度は大きくなく、は不要。
  • ⚠️ 重篤な皮膚反応・過敏症(SJS/TENを含む):重い発疹や、発熱・・筋痛・水疱・口腔内病変・結膜炎・・肝炎・好酸球増多・を伴う発疹が出たら、をただちに中止する。
  • :治療開始後に、無症候性だった日和見感染への炎症反応が顕在化することがある。
  • ・:筋痛、脱力、CK上昇があれば中止を検討する。
  • 精神症状:日本の電子添文は、頻度不明の副作用としてを挙げる。
  • 妊娠・授乳:妊婦は有益性が危険性を上回る場合のみ。日本の電子添文は授乳を避けさせる(HIVのの可能性があるため)。

副作用

頻度 内容
高頻度(2%以上) 下痢、悪心、疲労、頭痛、、不眠、、/蓄積。ではAST・ALT・・CKの上昇4
重篤・まれ 、、過敏症、・、腎不全(0.1%)、肝炎(0.1%)、胃炎(0.3%)、陰部ヘルペス(0.1%)

まとめ

  • =世界初のINSTI(第1世代)。のを阻害し、HIV-1に加えてHIV-2にも活性がある。
  • 標準用量は400 mg 1日2回(米国には1200 mg 1日1回の製剤もある)。第2世代よりが低く、耐性はY143・Q148・N155の変異に集中する。
  • UGT1A1で代謝され、CYPに依存しないため不要で相互作用が少ない。注意するのは含有()とリファンピシン(誘導で増量)。
  • 初回治療ではに譲り、日本では「状況によって推奨」、欧州では代替。それでも妊婦・曝露後予防・新生児での経験の長さで残っている。
  • 重篤な皮膚反応・過敏症、、CK上昇()に注意する。

出典

  1. 1.ISENTRESS (raltegravir) tablet, film coated; ISENTRESS HD; chewable tablet; for oral suspension(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)/Merck Sharp & Dohme LLC・2024)DailyMed SPL APIで同じsetidのXMLを取得し(SPLの有効日は2024年10月18日)、本文を読んで確認した。Initial U.S. Approval 2007。成人の適応は他の抗レトロウイルス薬との併用によるHIV-1感染症で、小児は2 kg以上でISENTRESS、40 kg以上でISENTRESS HDが適応。用量は、未治療または400 mg 1日2回でウイルス学的に抑制されている成人は1200 mg(600 mg錠2錠)1日1回または400 mg 1日2回、治療経験のある成人は400 mg 1日2回、リファンピシン併用中の成人は800 mg 1日2回。禁忌は「None」。重篤な皮膚反応(SJS/TENを含む)と過敏症、免疫再構築症候群が警告。Al/Mg含有制酸剤は時間をずらしても併用しない。ONCEMRKは1200 mg 1日1回と400 mg 1日2回の比較で96週のウイルス学的抑制が82%対80%。STARTMRK 240週のスナップショット解析は66%対60%で、有害事象による中止は5%対10%。耐性変異はY143、Q148、N155が中心。抗レトロウイルス妊娠登録で先天異常の頻度は背景率と差がない。フェニルケトン尿症の患者にはチュアブル錠が注意。閲覧 2026-11-03
  2. 2.Major revision version 13.0 of the European AIDS Clinical Society guidelines 2025(HIV Medicine (European AIDS Clinical Society)・2026)PMC全文(PMC12757896、CC BY-NC-ND)の本文を読んで確認した。成人HIV-1の初回治療(Table 1)の推奨レジメンは、TAF/FTC/BIC、TAF/FTCまたはTDF/XTC+DTG、XTC+DTG、TAF/FTCまたはTDF/XTC+DORまたはTDF/3TC/DOR。代替レジメンに「TAF/FTCまたはTDF/XTC+RAL 1日1回または1日2回」が載る。HIV-2の初回治療(Table 2)でも、推奨はTAF/FTC/BICとTAF/FTCまたはTDF/XTC+DTG、代替にTAF/FTCまたはTDF/XTC+RAL 1日2回とABC/3TC+RAL 1日2回が載る。小児・青年の初回治療(Table 3)では、0〜4週の新生児の代替アンカー薬にLPV/r・NVPとともにRALが載る。閲覧 2026-11-03
  3. 3.抗HIV療法のガイドラインに関する研究(HIV感染症および血友病におけるチーム医療の構築と医療水準の向上を目指した研究 分担研究報告書)(厚生労働行政推進調査事業費補助金(エイズ対策政策研究事業)/四本美保子ほか・2025)PDFからテキストを抽出して本文を読んで確認した。2025年3月版の抗HIV治療ガイドラインで、初回治療の「大部分のHIV感染者に推奨されるレジメン」はBIC/TAF/FTC、DTG+TAF/FTC、DTG/3TCの3つ(全てINSTIベース)に収束した。RAL+TAF/FTCは、耐性バリアが比較的低く1日1回1錠の合剤がなく錠数が多いが、副作用と薬物相互作用が少なく、腎トランスポーターへの影響が少なく腎機能を評価しやすく、曝露後予防と妊婦に使用でき、体重増加が少ないことから「状況によって推奨されるレジメン」(BII)のままとされた。ビラミューン錠(ネビラピン)は発売中止予定で使用頻度も低いため、ガイドラインから削除された。曝露後予防の推奨薬にRAL(アイセントレス400 mg錠を1回1錠1日2回、または600 mg錠を1回2錠1日1回)+TAF/FTCまたはTDF/FTCが含まれる。閲覧 2026-11-03
  4. 4.アイセントレス錠400mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/MSD株式会社・2023)電子添文(2023年8月改訂、第3版)の本文を開いて確認した。販売名はアイセントレス錠400mg、一般的名称はラルテグラビルカリウム錠、承認番号22000AMX01647000、販売開始は2008年7月。効能は「HIV感染症」で、治療歴と薬剤耐性検査結果を参考にする。用法は成人にラルテグラビルとして400 mgを1日2回、食事の有無にかかわらず、必ず他の抗HIV薬と併用する。禁忌は成分への過敏症の既往。小児等を対象とした臨床試験は実施しておらず、16歳未満の薬物動態は確立していない。妊婦には有益性が危険性を上回る場合のみ投与し、授乳は避けさせる。主にUGT1A1によるグルクロン酸抱合で代謝され、リファンピシンなど強力なUGT1A1誘導剤で血漿中濃度が低下するおそれがあり、水酸化マグネシウム・水酸化アルミニウム含有制酸剤は投与前後6時間以内に併用すると血漿中濃度が低下する。重大な副作用は皮膚粘膜眼症候群、薬剤性過敏症症候群、横紋筋融解症・ミオパチー、腎不全、肝炎など。2%以上の副作用に下痢、悪心、疲労、頭痛、浮動性めまい、不眠、異常な夢、体脂肪の再分布/蓄積。CYPの基質ではなく、UGT1A1*28/*28のAUC比は1.41。臨床成績にBENCHMRK 1/2(治療経験者、48週のHIV RNA<50 copies/mLは62.1%対32.9%、96週で57.0%対26.2%)とSTARTMRK(未治療者、EFV+FTC+TDFと比較、48週86.1%対81.9%、240週71.0%対61.3%)がある。閲覧 2026-11-03