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Drug Atlas · 34 Prokinetic agents / 消化管運動促進薬

テガセロド

tegaserod

分類
Prokinetic agents / 消化管運動促進薬
科目
Clinical PharmacologyPharmacology
トピック
34: Irritable bowel syndrome35: Functional dyspepsiaB25: Drugs used in constipation (laxatives) and diarrhea. Drugs promoting digestion. Pharmacology of liver and biliary tract
承認適応
過敏性腸症候群
禁忌疾患
慢性冠症候群脳卒中一過性脳虚血発作慢性腎臓病肝硬変
副作用
下痢腹痛頭痛めまい悪心

🧠 全体像:は、腸管のと水分分泌を促進する選択的である。(IBS-C)に対するとして開発された。医学生が臨床で学ぶべき核心は、心血管虚血リスクによる・適応変遷の歴史にある。2002年に米国で承認された後、で心筋梗塞や脳卒中などの虚血性心血管イベントのわずかな増加(約0.1%)が示唆され、2007年に市場から自主回収された。その後、を持たない「65歳未満の女性」に厳格に対象を限定して2019年に再承認された。がhERG遮断による(QT延長)で撤退したのに対し、は不整脈ではなくが問題視されたという対比が重要である。

薬効群の中での位置づけ

(IBS-C)の治療薬は、運動改善薬、分泌促進薬、に大別される。

系統 代表薬 作用機序 主な対象と特徴
5-HT4作動薬 5-HT4部分作動(蠕動促進+内臓痛緩和) 65歳未満・心血管低リスク女性のIBS-C。虚血リスクに注意
5-HT4作動薬 高選択的5-HT4完全作動 慢性便秘症。5-HT4選択性が高く心毒性を回避
C作動薬 cGMP上昇 → CFTR活性化(水分分泌促進) IBS-Cの。腹痛改善効果も強い
ルビプロストン ClC-2チャネル直接活性化 IBS-Cおよび慢性便秘症。悪心が出やすい
酸化 内の浸透圧保持による水分保持 排便回数を増やすが腹痛・膨満の改善は乏しい

現行ガイドライン(AGA・ACG)では、安全性の高いやルビプロストンが優先される12。はこれらで無効な低リスク若年女性での二次的選択肢に位置づけられた。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tegaserod'>テガセロド</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral'>経口投与</span><br>(食前服用)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enteric plexus'>腸管神経叢</span>に到達"]
    B --> C["神経細胞上のセロトニン<span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-HT4 receptor'>5-HT4受容体</span>に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='partial agonist'>部分作動薬</span>として結合"]
    C --> D["Gs共役・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adenylyl cyclase, AC'>アデニル酸シクラーゼ</span>活性化・cAMP上昇"]
    D --> E["アセチルコリンおよびCGRP<span class='jp-term jp-term-diagram' title='release enhancement'>放出促進</span>"]
    E --> F["蠕動反射増強<br>(近位収縮・遠位弛緩)"]
    E --> G["粘膜からの水分・電解質分泌促進"]
    F & G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='colonic transit time'>結腸通過時間</span>の短縮および便通改善"]
    C --> I["内臓<span class='jp-term jp-term-diagram' title='afferent nerve'>求心性神経</span>伝達の抑制"]
    I --> J["腹痛・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='abdominal discomfort'>腹部不快感</span>の軽減"]

内には全身のセロトニンの約95%が存在し、から放出されて蠕動や分泌を調節する。は求心神経や神経の終末に存在し、蠕動反射のトリガーとなる。

はアミノグアニジン構造を持つである。に選択的に結合してアセチルコリンやCGRPの放出を促し3、腸管の協調的蠕動と水分分泌を促進してを短縮させる。さらに神経の伝達を修飾し、腹痛を抑制する。

薬物動態

項目 特徴・数値3
吸収 空腹時服用でTmaxは約1時間。は約10%
食事の影響 食事でが著明に低下する。食後服用ではAUCが40〜65%減少し効果が落ちるため食前30分以上の空腹時服用が必須
分布 は約98%(主にに結合)。は約368 L
代謝 胃酸による加水分解および肝臓での直接。CYPは主経路ではない
排泄 約3分の2が糞便中、約3分の1が尿中に排泄される
は約11時間

適応

男性患者、65歳以上、小児に対する安全性・有効性は確立されておらず適応外である。

心血管イベントと承認・回収の歴史

年代 経緯と背景31
2002年 米国FDAがIBSの女性治療薬として承認
2007年 で心筋梗塞・脳卒中などのが群で0.11%(13/11,614例)、プラセボ群で0.02%(1/4,607例)とわずかに高頻度と判明し自主回収
2019年 が1つ以下の65歳未満女性に厳格に限定して米国再承認
2022年 製造元が商業的理由により米国での販売を自主中止

用法・用量

項目 内容3
標準用量 1回6 mgを1日2回
服用時期 食事の少なくとも30分前(食前空腹時)に水で服用
評価 4〜6週間の投与で改善がみられない場合は中止する

禁忌・注意

禁忌

虚血性疾患のハイリスク患者を中心に厳格な禁忌が設定されている3。

重要な警告・注意点

  • ⚠️ :心筋梗塞、脳卒中、TIA、狭心症のリスクがある。(高血圧、糖尿病、喫煙、、肥満など)を複数有する患者には投与不可。胸痛や脱力などが出現した場合は直ちに中止する。
  • ⚠️ :血便や激しい腹痛が出現した場合は直ちに・精査する。
  • 重篤な下痢と低血圧・失神:投与初期に下痢が好発し、や失神を招くことがある。
  • うつ病と:は未確定だがでが報告されており気分変化に注意する。

副作用

分類 主な症状・所見3
下痢(最頻度・約9%)、腹痛、悪心、、(まれ)
中枢神経系 頭痛(約15%)、めまい、抑うつ・(まれ)
、低血圧、失神、(まれ・重篤)
その他 疲労、、関節痛

まとめ

は、蠕動促進と内臓痛緩和を併せ持つである。IBSに有効である一方、心血管虚血イベントリスクの懸念から「65歳未満・のない女性」へと適応が狭められた歴史は、医薬品安全性評価の重要事例である。

出典

  1. 1.ACG Clinical Guideline: Management of Irritable Bowel Syndrome(American College of Gastroenterology / The American Journal of Gastroenterology・2021)ACGガイドラインにおいて、テガセロドは65歳未満の女性で心血管危険因子が1つ以下であり、ルビプロストンやリナクロチドなどの分泌促進薬が無効であった便秘型IBS患者に限定して使用を提案すること、2007年の心血管イベントリスクによる自主回収から2019年の再承認までの経緯を確認した。閲覧 2026-11-01
  2. 2.AGA Clinical Practice Guideline on the Pharmacological Management of Irritable Bowel Syndrome With Constipation(American Gastroenterological Association / Gastroenterology・2022)AGAガイドラインにおいて、便秘型IBSに対する薬物治療の推奨としてテガセロドが条件付きで推奨(中等度の確実性)されたこと、心血管虚血イベントの懸念から使用適応が低リスク女性に制限されていることを確認した。閲覧 2026-11-01
  3. 3.ZELNORM (tegaserod) tablet — Prescribing Information(DailyMed (NLM) / Alfasigma USA, Inc.・2020)米国添付文書(SPL)で確認した。適応は65歳未満の成人女性における便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)。用法は1回6 mgを1日2回食前(少なくとも30分前)に服用すること。禁忌は心筋梗塞・脳卒中・一過性脳虚血発作・狭心症の既往、虚血性大腸炎や他の腸管虚血の既往、重度腎機能障害(eGFR 15 mL/min/1.73 m2未満)または末期腎不全、中等度から重度の肝機能障害(Child-Pugh BまたはC)、腸閉塞・胆嚢疾患・Oddi括約筋機能不全疑い・腹腔内癒着の既往。重大な副作用として心血管虚血性イベント、虚血性大腸炎、失神や循環血液量減少を伴う重篤な下痢、自殺念慮があることを確認した。閲覧 2026-11-01