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Drug Atlas · 34 Antiemetics / 制吐薬

シサプリド

cisapride

分類
Prokinetic agents / 消化管運動促進薬
科目
Clinical PharmacologyPharmacology
トピック
34: Irritable bowel syndromeCore64: Drug-induced adverse reaction: QT prolongation
副作用
下痢疝痛(腹部けいれん)
影響検査値
QT延長
相互作用
クラリスロマイシンケトコナゾールビカルタミドフルコナゾールロキシスロマイシン

🧠 全体像:は、を介して消化管の運動を促す()である。と化学的に近いが、中枢の抗ドパミン作用はほぼ無い。・・・慢性便秘など広い適応に有効とされたが、心筋のを強く遮断してQT延長とを起こし、致死例が相次いで米国で販売中止になった。現在は治療薬としてより、薬剤性QT延長の典型例、代謝を妨げる薬との併用で致死的になる相互作用の例、5-HT4作動薬の安全性はで決まることを学ぶ薬である。12

薬効群の中での位置づけ

群 代表薬 心臓への影響
5-HT4作動薬(旧世代) +hERG(標的外) QT延長・トルサード。米国で販売中止
5-HT4作動薬(選択的) に高選択的 hERGを遮断せず、で問題になった心血管事象は見られていない
D2拮抗系 、、 薬剤ごとに異なる

5-HT4作動薬の心血管有害事象は、への作用そのものではなく標的外の作用によるとされ、選択性の高い薬ほど標的外の副作用を減らせる。3

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cisapride'>シサプリド</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-HT4 receptor'>5-HT4受容体</span>を刺激"]
    B --> C["消化管の運動が促進される<br>逆流・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='delayed gastric emptying'>胃排出遅延</span>・便秘に有効"]
    A --> D["心筋の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hERG potassium channel'>hERGカリウムチャネル</span>を強く遮断<br>(標的外の作用)"]
    X["代謝を妨げる薬・QT延長薬の併用<br>電解質異常などの危険因子"] --> E
    D --> E["心筋の再分極が遅れてQT延長"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='torsades de pointes'>トルサード・ド・ポワント</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventricular fibrillation, VF'>心室細動</span>・突然死"]

hERGの遮断は強く、IC50は44.5 nmol/Lと、やと同程度である。一方、別のKチャネル(Kv1.5)への作用は弱い。4 致死的な不整脈の多くは、他の薬や基礎疾患などの危険因子が重なった患者で起きた。2

代謝と相互作用

はCYP3A4で代謝されるため、・などのマクロライド、・などの、とは米国・スペイン・英国の添付文書でに挙がる(各薬のノートを参照)。やの米国添付文書にが禁忌として載っているのは、この経路による。QT延長を起こす他の薬との併用も、作用が加わるため危険である。5

かつての適応

1994年のレビューによる当時の評価を示す。1

領域 当時の評価
の治癒と症状を成人・小児で改善し、維持療法で再発を減らした。米国のは、に伴う夜間の
・ と症状が多くの患者で改善した。末期のでの効果は不明確
慢性便秘 排便回数を増やした
・ 限られたデータにとどまる

現行の添付文書が確認できないため、用法・用量は記載しない。

禁忌・注意

  • 新規に開始する薬ではない。 米国ではの危険が利益を上回ると判断されて販売中止になった。2
  • 1998年にFDAは、の代謝を妨げる薬やを延ばす薬を併用している患者、不整脈を起こしやすい他の疾患がある患者への使用を禁忌とし、に加えた。しかし後も、禁忌にあたる使用は2管理医療機関で26〜30%から24〜28%、メディケイドで60%から58%と、ほとんど減らなかった。を出すだけでは禁忌使用は防げないという教訓の例である。5
  • QT延長の危険因子(高齢・女性・・・徐脈・心疾患など)は薬剤性QT延長を参照。

副作用

  1. QT延長・・/細動・心停止・突然死:米国の市販後(1993〜1999年)に341例が報告され、80例(23%)が死亡した。多くは他の薬や基礎疾患などの危険因子を伴っていた。2
  2. 腹部けいれん・・下痢:頻度が高いが一過性。中枢神経系の副作用はまれ。1

まとめ

  • はを刺激するで、・・・便秘に有効とされた。
  • 標的外にを強く遮断してQT延長とトルサードを起こし、米国で販売中止になった。
  • 代謝を妨げる薬(マクロライド、など)やQT延長薬との併用で致死的になる。
  • 同じ5-HT4作動薬でも、選択性の高いは標的外の作用が少ない。
  • 禁忌をしても禁忌使用はほとんど減らなかったことは、薬剤安全性の教訓として重要である。

出典

  1. 1.Cisapride. An updated review of its pharmacology and therapeutic efficacy as a prokinetic agent in gastrointestinal motility disorders(Drugs(Wiseman LR, Faulds D)・1994)抄録で確認した。シサプリドが消化管全体の運動を促進する経口プロキネティクスで、メトクロプラミドと化学的に近いが中枢抑制作用・抗ドパミン作用はほぼ無いこと、プラセボ対照試験で逆流性食道炎の治癒と症状を改善し維持療法で再発を減らしたこと、機能性ディスペプシアの症状と胃不全麻痺の胃排出・症状を改善し、慢性便秘で排便回数を増やし、慢性偽性腸閉塞と過敏性腸症候群には限られたデータがあること、副作用は腹部けいれん・腹鳴・下痢が多く一過性で中枢神経系の副作用はまれと当時評価されたこと。閲覧 2026-10-30
  2. 2.Postmarketing reports of QT prolongation and ventricular arrhythmia in association with cisapride and Food and Drug Administration regulatory actions(The American Journal of Gastroenterology(Wysowski DK, Corken A, Gallo-Torres H, Talarico L, Rodriguez EM)・2001)抄録で確認した。米国で販売された1993〜1999年に、FDAがQT延長117例・トルサード・ド・ポワント107例・心室細動18例・心停止25例・突然死15例などを含む計341例の報告を受け、80例(23%)が死亡したこと、多くの例で他の薬や基礎疾患などの危険因子が併存していたこと、承認適応である逆流性食道炎に伴う夜間の胸やけの治療に対して致死的不整脈の危険が利益を上回ると判断され、米国で販売中止となったこと。閲覧 2026-10-30
  3. 3.5-HT4 receptor agonists: similar but not the same(Neurogastroenterology & Motility(De Maeyer JH, Lefebvre RA, Schuurkes JAJ)・2008)抄録で確認した。5-HT4受容体作動薬が消化管運動促進の標的であること、シサプリドは5-HT4受容体以外にhERGカリウムチャネルにも明らかな親和性をもち(テガセロドは5-HT1・5-HT2受容体)、これらの薬で見られた心血管有害事象は5-HT4受容体とは無関係であること、プルカロプリドなど選択性の高い新しい化合物は標的外の副作用を減らせること。閲覧 2026-10-30
  4. 4.A mechanism for the proarrhythmic effects of cisapride (Propulsid): high affinity blockade of the human cardiac potassium channel HERG(FEBS Letters(Rampe D, Roy ML, Dennis A, Brown AM)・1997)抄録で確認した。シサプリドがヒト心筋のHERGカリウムチャネルを強く遮断し(IC50 44.5 nmol/L、長い脱分極では6.70 nmol/L)、その強さがクラスIII抗不整脈薬ドフェチリド(15.3 nmol/L)や抗ヒスタミン薬テルフェナジン(56.0 nmol/L)と同程度である一方、Kv1.5チャネルの遮断は弱い(21.2 μmol/L)こと、これが後天性QT延長とトルサード・ド・ポワントの機序と考えられること。閲覧 2026-10-30
  5. 5.Contraindicated use of cisapride: impact of Food and Drug Administration regulatory action(JAMA(Smalley W, Shatin D, Wysowski DK, et al.)・2000)抄録で確認した。1998年6月にFDAが、シサプリドの代謝を妨げる薬やQT間隔を延ばす薬の併用、不整脈を起こしやすい他の疾患がある患者への使用を禁忌と判断し、枠組み警告の追加と医療従事者への通知を行ったこと、その前後1年の比較で、禁忌にあたる使用が2管理医療機関で26%・30%から24%・28%、州のメディケイドで60%から58%とほとんど減らなかったこと。閲覧 2026-10-30