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Drug Atlas · B5 Antiarrhythmics / 抗不整脈薬

ドフェチリド

dofetilide

分類
Antiarrhythmics / 抗不整脈薬
科目
Pharmacology
トピック
B5: Drugs influencing cardiac electrophysiologyCore64: Drug-induced adverse reaction: QT prolongation
承認適応
心房細動心房粗動
禁忌疾患
先天性QT延長症候群
副作用
頭痛胸痛めまい
監視検査値
QT延長クレアチニンカリウムマグネシウム
相互作用
ケトコナゾールシメチジンST合剤ヒドロクロロチアジドベラパミル

🧠 全体像:は、(IKr)だけを選択的に遮断するで、心房細動・のとに使われる。や心不全のある患者でも死亡を増やさなかったことが強みで、とともにHFrEFのAFで選べる数少ない薬である。一方でQT延長との危険が用量・腎機能・併用薬の濃度でそのまま決まるため、開始は最低3日の入院・・による用量決定が必須になる。国内の薬剤ではなく、米国で使われ、EUでは販売承認が取り下げられている。QT延長を起こすの相手として、ST合剤・・など他の薬のノートに名前が出る。

薬効群の中での位置づけ

薬 分類 遮断する電流 特徴
III群(純粋) IKrのみ1 心房の再分極を延ばす。心不全でも死亡を増やさない。QT延長・TdPが
III群+β遮断 IKr+β受容体 心室不整脈にも使う。で、QT延長・TdPの危険は同様
III群(多重作用) K・Na・Ca電流とβ受容体 心不全でも使えるが、肺・甲状腺・肝などの長期毒性がある
III群(多重作用) 多チャネル 心不全の増悪例・NYHA III〜IVでは使わない

⭐ が心室の再分極だけを延ばし、伝導や機能を変えないのは、臨床濃度ではI群にあたる遮断やα・β受容体への作用がなく、とQRS幅を変えないためである(添付文書の記載)。QT延長は薬の濃度に直線的に比例するので、濃度を決める因子(腎機能・併用薬)がそのままの危険因子になる。

機序

flowchart TD
    A["IKr(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rapid delayed rectifier potassium current'>急速活性化型遅延整流K電流</span>)を選択的に遮断"] --> B["心房・心室の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='action potential duration (APD)'>活動電位持続時間</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='effective refractory period'>有効不応期</span>が延びる"]
    B --> C["再発性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reentrant tachycardia'>リエントリー頻拍</span>を止め、再誘発を防ぐ<br>(AF・AFl)"]
    B --> D["表面心電図で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='QT interval'>QT間隔</span>が延びる"]
    D --> E["濃度に比例して延長が大きくなる"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='early after-depolarization'>早期後脱分極</span>から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='torsades de pointes'>トルサード・ド・ポワント</span>"]
    G["腎機能低下・併用薬で血中濃度が上昇"] --> E

遮断するのはIKrだけで、IKs・IK1といった他の再分極電流への作用は臨床濃度ではできる。なお、2023年のACC/AHA/ACCP/HRSガイドラインは、選択的IKr遮断薬で(INaL)も遮断すると記載しており、ナトリウム電流への作用の書き方は資料で少し違う2。心拍出量・・血管抵抗への影響もなく、がないため、中等度までの心不全やが低い患者でも血行動態は悪化しなかった1。

薬物動態

項目 内容
吸収 90%超、は絶食時で約2〜3時間後。食事やの影響を受けない
半減期 約10時間。定常状態は2〜3日で、は1.5〜2.0
分布 蛋白結合は60〜70%で、腎機能が悪くても変わらない
排泄 投与量の約80%が尿中に出る(その約80%が未変化体)。に加え、によるを受ける
代謝 CYP3A4で代謝されうるが親和性は低く、寄与は小さい

⭐ とがの中心である。腎機能が下がると半減期が延びて血中濃度が上がるため、用量は、年齢・体重・から計算したで決める。の阻害薬(・・など)が濃度を押し上げる理由もここにある1。

適応

米国の添付文書は次の2つを適応とする。いずれも重篤なを起こしうるため、症状の強いAF/AFlに限る。

適応 内容
の維持 1週間を超えるAF/AFlがへ戻った患者で、再発までの時間を延ばす
AF/AFlの への変換。ただし発作性AFでの有効性は示されていない

心房細動のガイドラインでの位置づけ(2023年ACC/AHA/ACCP/HRS)は次のとおり2。

  • HFrEF(40%以下)のAF:またはがの長期維持に妥当(推奨クラス2a)。他のの多くが禁忌になるため、両者が残る
  • QT延長や・がないAF:腎機能に応じたと、QT・カリウム・・腎機能の監視を条件にが妥当(2a)
  • SAFIRE-D試験では、1年後にを維持している確率が最大量の群で0.58、で0.25だった(ガイドライン本文の用量表記は「500 mg」だが、添付文書の最大量500 μgと解して読む)

⚠️ 国内では使えない。 国内で使えるの電子添文には見当たらない。欧州でも、EU全域の販売承認が1999年に与えられたものの、販売されないまま2004年に自主的に取り下げられた3。国内で処方できる薬ではないので、米国の薬の知識として整理する。

用法・用量

開始・再開始・増量はすべて、モニターとの備えのある施設で、最低3日間行う。 から12時間以内には退院させない。AFの患者はの前に通常どおり抗凝固する1。

flowchart TD
    A["投与前にQT/QTcを測定"] --> B{"QTcが440 msec超<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraventricular conduction abnormalities'>心室内伝導異常</span>は500 msec超)"}
    B -->|"はい"| C["禁忌:投与しない"]
    B -->|"いいえ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='creatinine clearance (CrCl)'>クレアチニンクリアランス</span>を計算"]
    D --> E["初回量を決める<br>60超:500 mcg 1日2回<br>40〜60:250 mcg<br>20〜40未満:125 mcg<br>20未満:禁忌"]
    E --> F["初回投与の2〜3時間後にQTcを測定"]
    F --> G{"ベースラインから15%超の延長<br>またはQTc 500 msec超"}
    G -->|"はい"| H["次の回から1段階減量"]
    G -->|"いいえ"| I["同量で継続し、毎回2〜3時間後に測定"]
    H --> J["2回目以降の投与後にQTc 500 msec超なら中止"]
    I --> J
  • 初回量の根拠はで、成人男性は(140−年齢)×(kg)÷(72×)、女性はそれに0.85を掛ける
  • 減量は500→250 mcg、250→125 mcg、125 mcg→1日1回の順
  • がある患者では、QTcの基準が440→500 msec、500→550 msecへ上方にずれる
  • 維持中も3か月ごとに腎機能とQTcを再評価し、腎機能が悪化したら用量を下げる
  • カリウムを正常範囲に保つ。はTdPの危険を上げるため、開始前に補正する

禁忌・注意

禁忌 理由・補足
・症候群 再分極をさらに延ばす
投与前のQT/QTcが440 msec超(は500 msec超) 同上
20 mL/分未満 排泄が滞り濃度が上がる。この群は・試験に含まれていない
薬剤への過敏症 —
下記の併用 血中濃度の著しい上昇

は、の血中濃度を大きく上げる薬である1。

併用薬 機序
腎臓のの阻害で濃度が上がる
ST合剤(を含む) 同上。単独でも
同上
添付文書上の
(との配合も含む) 濃度とQT延長の著しい増加が示された

⚠️ ほかにも「使うべきでない」とされる薬がある。腎臓のを阻害する・・である。QTを延ばす薬(系、、、、一部のマクロライドやフルオロキノロン)との併用は検討されておらず、推奨されない。I群・III群のは少なくとも3半減期あけてから開始する。

ST合剤は感染症治療で広く使われる薬なので、を使っている患者に感染症の治療薬を足すときは、この併用を必ず確認する。ST合剤の側の添付文書にもとの併用が禁忌として載っており、同じ併用を反対側から見たものである( C11)。

副作用

区分 内容
最も多い有害事象 頭痛・胸痛・めまい
試験中止 の試験で、群8.7%・プラセボ群8.0%。最も多い理由は(2.0%対1.3%)
の試験で0.8%(11/1346)、では0。を示す唯一の不整脈

TdPは用量と腎機能で決まる。 用量別では、250 mcgを1日2回で1/388、250超〜500 mcgで6/703(0.9%)、500 mcg超で4/38(10.5%)だった。腎機能に応じて用量を決める方式を導入すると、3.1%から0.4%へ下がった。発生の大半は最初の3日以内(10/11)で、これが3日間の入院の根拠になる1。

死亡率はで増えなかった。35%以下を対象としたDIAMOND CHF/MIでは、死亡が群36%・プラセボ群37%で差がなかった。ただしの(0.9%、0.4%)は症例数が少なく、死亡の増加を確実には否定できないとされている。

まとめ

  • はIKrだけを遮断するで、AF/AFlのと維持に用いる。がなく、心不全でも死亡を増やさないため、HFrEFのAFでとともに選べる(推奨クラス2a)
  • が中心で、用量はで決める。濃度が上がるほどQTが延び、TdPはに増える
  • 開始・再開始・増量は最低3日の入院、、初回投与2〜3時間後のQTc測定。QTcが15%超延長または500 msec超なら減量し、2回目以降に500 msec超なら中止する
  • は、・ST合剤()・・・。・・も使うべきでない
  • 国内では使えず、EUでは2004年に承認が取り下げられた。米国の薬として理解し、他の薬のノートでの相手として出会う

出典

  1. 1.TIKOSYN (dofetilide) capsule — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)/Pfizer Laboratories Div Pfizer Inc・2026)DailyMed SPL APIで同じsetidのXML(有効日2026年4月21日)を取得し、本文を読んで確認した。適応は、1週間を超えるAF/AFlが洞調律へ戻った患者での洞調律の維持と、AF/AFlの洞調律への変換で、発作性AFでの有効性は示されておらず、重篤な心室性不整脈を起こしうるため症状の強い患者に限る。禁忌は先天性または後天性のQT延長症候群、ベースラインのQT/QTcが440 msec超(心室内伝導異常があれば500 msec超)、クレアチニンクリアランス20 mL/分未満、薬剤への過敏症、ベラパミルおよびシメチジン・トリメトプリム(単独またはスルファメトキサゾールとの配合)・ケトコナゾールの併用、ヒドロクロロチアジド(単独またはトリアムテレンとの配合)の併用で、プロクロルペラジン・ドルテグラビル・メゲストロールも腎臓のカチオン輸送系の阻害薬として使うべきでないとされる。初回投与はクレアチニンクリアランスで決め、60 mL/分超で500 mcgを1日2回、40〜60で250 mcg、20〜40未満で125 mcg。初回投与の2〜3時間後にQTcがベースラインから15%超延長するか500 msec(心室内伝導異常があれば550 msec)を超えたら次の段階へ減量し、2回目以降の投与後に500 msec超(同550 msec)なら中止する。開始・再開始は最低3日間の連続心電図モニター下、電気的・薬理学的な洞調律化後は12時間以内に退院させず、維持中は腎機能とQTcを3か月ごとに再評価する。トルサード・ド・ポワントは上室性不整脈の試験で0.8%(11/1346)、用量別では250 mcgを1日2回で1/388、250超〜500 mcgで6/703、500 mcg超で4/38(10.5%)、腎機能に応じた用量調節の導入前3.1%から導入後0.4%、発生の大半は最初の3日以内(10/11)。DIAMOND CHF/MI(左室駆出率35%以下)の死亡はドフェチリド群36%(541/1511)、プラセボ群37%(560/1517)。最も多い有害事象は頭痛・胸痛・めまい。経口バイオアベイラビリティは90%超、半減期約10時間、蛋白結合60〜70%、投与量の約80%が尿中に出て(その約80%が未変化体)、CYP3A4の寄与は小さい。QTを延ばす薬(フェノチアジン、シサプリド、ベプリジル、三環系抗うつ薬、一部のマクロライド・フルオロキノロン)との併用は検討されておらず推奨されず、I群・III群の抗不整脈薬は少なくとも3半減期あけてから開始する。閲覧 2026-11-05
  2. 2.2023 ACC/AHA/ACCP/HRS Guideline for the Diagnosis and Management of Atrial Fibrillation(American College of Cardiology / American Heart Association / American College of Clinical Pharmacy / Heart Rhythm Society・2024)PMC掲載の全文(JACC版、PMC11104284)を読んで確認した。洞調律の長期維持について、HFrEF(40%以下)のAFではドフェチリドまたはアミオダロンが妥当(推奨クラス2a)、有意なQT延長や未補正の低カリウム血症・低マグネシウム血症がないAFでは、腎機能に基づく用量選択とQT・カリウム・マグネシウム・腎機能の監視を条件にドフェチリドが妥当(2a)、ドフェチリドの開始・増量・再開始は連続心電図モニターとクレアチニンクリアランスの算出と蘇生の備えがある施設に最低3日間入院して行う(推奨クラス1)と記載されることを確認した。SAFIRE-Dでは1年後に洞調律を維持している確率が、ドフェチリド(ガイドライン本文は「500 mg twice daily」と記載するが、添付文書の最大量500 mcgの誤記と解して読んだ)で0.58、プラセボで0.25。ドフェチリドとソタロールは、QTを延ばすためトルサード・ド・ポワントの危険が比較的高く、開始早期に起こりうるとされる。閲覧 2026-11-05
  3. 3.Public statement on Tikosyn (dofetilide): voluntary withdrawal of the marketing authorisation in the European Union(European Medicines Agency(EMEA/CPMP/1504/04)・2004)PDFを取得して本文を読んで確認した(2004年4月13日付)。欧州委員会が1999年11月29日にEU全域の販売承認をPfizer Ltdへ与え、適応は持続性のAF/AFlの洞調律化と洞調律の維持。EU域内のどこでも販売されておらず、Pfizer Ltdが2004年1月12日に商業上の理由で自主的な取り下げを欧州委員会へ通知し、2004年3月2日に欧州委員会が承認取り下げを決定した。閲覧 2026-11-05