薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · B6 Antihypertensives / 降圧薬

テルミサルタン

telmisartan

分類
Antihypertensives / 降圧薬
商品名(日本)
ミカルディス
商品名(EU)
Micardis
科目
PharmacologyClinical Pharmacology
トピック
B6: Drugs acting on the renin-angiotensin-aldosterone-system (RAAS)19: Hypertension
承認適応
高血圧症
副作用
めまい低血圧血管性浮腫
監視検査値
カリウムクレアチニン

🧠 全体像:テルミサルタンは、への親和性が高く、受容体から容易に解離しない長時間作用型のARBである。CYPでなくUGTによるで代謝され、主に胆汁中に排泄されるので、胆汁の分泌が極めて悪い患者や重篤な肝障害の患者が禁忌になり、肝障害では最大40 mgに抑える。半減期は約24時間で、1日1回でよい。日本の適応は高血圧症で、用量は40 mgを基本に最大80 mg。ONTARGET試験でと同等の心血管イベント抑制を示し、咳とが少なかった一方、との併用は利益がなく有害事象が増えた。ACE阻害薬やARBに共通する(米国は)、、との(糖尿病)に注意する。

薬効群の中での位置づけ

薬 特徴 排泄・代謝
・・カンデサルタン・・ を遮断するARB 薬ごとに異なる
テルミサルタン 親和性が高く解離しにくい(Ki 3.7 nM)。半減期約24時間 。主に胆汁中に排泄
・・ ACE阻害薬。咳とが多い ONTARGETでは、がテルミサルタンと比較された

ACE阻害薬とARBの使い分けは、高血圧の薬物療法のトピックのACE阻害薬・ARBの節も参照する。

機序

flowchart TD
    A["テルミサルタン"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle'>血管平滑筋</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiotensin II type 1 (AT1) receptor'>AT1受容体</span>で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiotensin'>アンジオテンシン</span>Ⅱと特異的に拮抗"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiotensin II type 1 (AT1) receptor'>AT1受容体</span>から容易に解離しない<br>親和性が高い(Ki 3.7 nM)"]
    C --> D["昇圧物質の血管収縮作用を抑制"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antihypertensive effect'>降圧作用</span>"]

日本の電子添文は、主にので生理的昇圧物質のⅡと特異的に拮抗し、その血管収縮作用を抑えてを示すと説明している。への親和性は高く(Ki=3.7 nM)、受容体から容易に解離しない1。

薬物動態

項目 内容
吸収 最高濃度に達するのは後0.5〜1時間(米国)。は用量に依存して、40 mgで42%、160 mgで58%2
食事の影響 日本人のカプセル剤40 mgでは、空腹時に比べて食後投与でtmaxが1.8時間から5.3時間に遅れ、Cmaxが57%、AUCが32%低下した。米国では、40 mg錠でAUCの低下が約6%と報告されている12
代謝・排泄 主にUGT酵素によるで代謝される。静注した14C標識体では、血漿中総の84%以上が未変化体で、残りが。主に胆汁中に排泄される
半減期 は約24時間(米国)。1日1回ので、血漿中のは1.5〜2。投与後の谷の濃度は、ピークの約10〜25%
クリアランスが低下しうる。外国では、肝障害患者の血中濃度が約3〜4.5倍上昇した

⭐ 胆汁排泄が主なので、肝・胆道の障害に注意する。 日本の電子添文は、胆汁の分泌が極めて悪い患者または重篤な肝障害のある患者への投与を禁忌とし、肝障害のある患者の最大投与量を1日1回40 mgとしている。

適応

  • 高血圧症(日本)1。
  • 高血圧症(米国)。は、脳卒中や心筋梗塞を主とする致死的・非致死的な心血管イベントのリスクを下げる2。

ONTARGETでは、心不全のない血管疾患または高リスクの糖尿病の患者を対象に、10 mg(8,576例)、テルミサルタン80 mg(8,542例)、併用(8,502例)を比べた。中央値56か月で、心血管死・心筋梗塞・脳卒中・心不全による入院の複合評価項目は、群1,412例(16.5%)、テルミサルタン群1,423例(16.7%)で、は1.01(95%信頼区間0.94〜1.09)と同等だった。テルミサルタン群は、群に比べて咳(1.1%対4.2%)と(0.1%対0.3%)が少なく、低血圧症状(2.6%対1.7%)が多かった。併用群は、利益が増えず、低血圧症状(4.8%対1.7%)・失神(0.3%対0.2%)・(13.5%対10.2%)が増えた3。

用法・用量

日本1 米国2
通常量 成人に1日1回40 mg。20 mgから開始し、漸次増量する 開始40 mg、用量範囲40〜80 mgを1日1回。の大半は2週間以内、最大は4週間
最大量 1日最大80 mg 80 mgで不十分なときは利尿薬を追加する
肝障害 最大40 mg
・高齢者 高齢者や透析を含むでも、初回のは不要。はに注意する
食事 食事の有無を問わない

禁忌・注意

日本の禁忌は4つである1。

禁忌(日本) 理由
本剤の成分に対する過敏症の既往
妊婦または妊娠している可能性のある女性 阻害薬で、胎児・新生児に障害が出る
胆汁の分泌が極めて悪い患者、または重篤な肝障害のある患者 主に胆汁中に排泄されるため、クリアランスが低下するおそれ
を投与中の糖尿病患者(他の治療でも血圧の管理が著しく不良の患者を除く) ・・・低血圧のリスクが増える

米国の禁忌は、過敏症(アナフィラキシー・など)と、糖尿病患者でのとの併用である。はで、妊娠が分かったらできるだけ早く中止する2。

  • 慎重投与(日本):両側性またはでの・(治療上やむを得ない場合を除き避ける)、(過度ので不全が起きうる)、厳重な療法中・中(低用量から開始)、重篤な腎障害(3.0 mg/dL以上)、。
  • 手術前24時間は投与しないことが望ましい。ARB投与中は、麻酔・手術中に高度な血圧低下を起こすことがある。
  • 肝炎などの重篤な肝障害がARBで報告されているため、肝機能検査などで観察する。
  • 併用注意:ジゴキシン(血中濃度が上がった報告。機序不明)、カリウム保持性利尿剤・カリウム補給剤(。で危険が高い)、製剤(ACE阻害薬との併用での報告)、利尿剤(急な血圧低下。低用量から)、(糸球体ろ過量がさらに減り、腎障害のある患者ではのおそれ)。

副作用

頻度(日本) 内容
0.5〜5%未満 めまい・頭痛・眠気・頭のぼんやり感、、・心悸亢進、腹痛・下痢・、AST・ALT・Al-P・LDHの上昇、咳
0.5%未満 ・発疹、不安感、・性・心房細動・、・・胃炎・口渇・、喀痰増加・咽頭炎
頻度不明 紅斑・じん麻疹、不眠・抑うつ状態、好酸球上昇・血小板減少・貧血、低血圧・・徐脈、・嘔吐

重大な副作用は、(0.1%未満)、、、ショック・失神・(0.1%)、・黄疸、低血糖、アナフィラキシー、、である1。

まとめ

  • への親和性が高く、解離しにくいARB。で代謝され、主に胆汁中に排泄される。半減期は約24時間で、1日1回。
  • 日本は40 mgを基本に20 mgから開始、最大80 mg。肝障害では最大40 mg。米国は40 mgから開始し40〜80 mg。
  • 妊婦は禁忌(米国は)。胆汁分泌が極めて悪い患者・重篤な肝障害の患者(日本)、糖尿病患者での併用も禁忌。
  • ONTARGETでと同等の心血管イベント抑制で、咳・が少なかった。併用は有害事象だけが増えた。
  • ・・に注意し、手術前24時間は投与しないことが望ましい。

出典

  1. 1.ミカルディス錠20mg/ミカルディス錠40mg/ミカルディス錠80mg 電子添文(日本ベーリンガーインゲルハイム/医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2025)2025年9月改訂の電子添文で、効能が高血圧症、用法が成人1日1回40 mg(20 mgから開始し最大80 mg)で肝障害のある患者は最大40 mgであること、禁忌が過敏症・妊婦または妊娠している可能性のある女性・胆汁の分泌が極めて悪い患者または重篤な肝障害のある患者・アリスキレンを投与中の糖尿病患者であること、主にUGT酵素によるグルクロン酸抱合で代謝され主に胆汁中に排泄されること、食後投与で空腹時よりtmaxが遅延しCmaxが57%・AUCが32%低下すること、AT1受容体の親和性が高く(Ki=3.7 nM)容易に解離しないこと、重大な副作用の一覧を確認した。閲覧 2026-11-06
  2. 2.Telmisartan tablets — full prescribing information (Alembic Pharmaceuticals Limited)(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)/Alembic Pharmaceuticals Limited・2026)2026年5月29日有効の米国添付文書(後発品)で、枠組み警告が胎児毒性であること、適応が高血圧症であること、開始量40 mg・用量範囲40〜80 mgで食事の有無を問わず、高齢者や透析を含む腎機能障害でも初回の用量調整は不要なこと、禁忌が過敏症と糖尿病患者でのアリスキレンとの併用であること、最高濃度到達が0.5〜1時間、絶対バイオアベイラビリティが40 mgで42%・160 mgで58%、終末消失半減期が約24時間であることを確認した。閲覧 2026-11-06
  3. 3.Telmisartan, Ramipril, or Both in Patients at High Risk for Vascular Events(The New England Journal of Medicine(ONTARGET Investigators)・2008)抄録(PMID 18378520)で、心不全のない血管疾患または高リスクの糖尿病患者でラミプリル10 mg(8,576例)・テルミサルタン80 mg(8,542例)・併用(8,502例)を比べた試験で、中央値56か月の主要複合評価項目の発生がラミプリル16.5%に対しテルミサルタン16.7%(相対リスク1.01)で同等だったこと、テルミサルタンは咳(1.1%対4.2%)と血管性浮腫(0.1%対0.3%)が少なく低血圧症状(2.6%対1.7%)が多かったこと、併用は利益が増えず低血圧症状・失神・腎機能障害が増えたことを確認した。全文は読んでいない。閲覧 2026-11-06