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Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬 · 必修

バンデタニブ

vandetanib

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
商品名(日本)
カプレルサ
商品名(EU)
Caprelsa
科目
Pharmacology
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)
承認適応
甲状腺髄様癌
禁忌疾患
先天性QT延長症候群
副作用
下痢発疹悪心頭痛腹痛食欲不振
監視検査値
QT延長カルシウムカリウムマグネシウム甲状腺刺激ホルモン

🧠 全体像:は、・のようなが登場する前から使われてきたであり、RETに加えて・EGFRファミリーなど複数のを同時に阻害する。この「標的の広さ」が高い有効性を生む一方、QT延長・・突然死というを背負う理由にもなっている——QT延長を理由とするこのは、(・)の米国添付文書には無い。⚠️ ただし「にはが無い」と読み替えない。 の米国添付文書にはが無い1が、には2025年12月に「重篤な感染症(日和見感染を含む)」のが新設された2——の有無ではなく、何を理由とするかで比べる。2011年の承認当初は(Risk Evaluation and Mitigation Strategies)により処方医・薬局の認証とが制度として課されていたが、2025年9月にがこのを撤廃した。10年間の評価でが目標を一貫して達成し、QT延長・トルサードの監視と管理が標準診療に定着したと判断されたことが根拠であり、添付文書の内容自体(やQT延長への注意)は変わっていない。「が外れた=リスクが消えた」ではなく、「臨床現場に安全管理が定着したため制度上の追加要件を外した」と理解するのが正確である。

薬効群の中での位置づけ

グループ 代表薬 標的の広さ ・特徴
、 RETに高い選択性 RET変異陽性のでは、第3相LIBRETTO-531でが一次治療としてより無増悪生存を延長した(有害事象による減量38.9% 対 77.3%)3
、 RET+・EGFR等を同時阻害 はまれで、による重大な有害事象が多く生活の質を損ないうる4。はQT延長・・突然死のを持つ5

⭐ 同じでも、とでは主の中身が違う。 のは出血・消化管穿孔・が中心だが、は(など)に似た皮膚・消化器毒性に加え、チャネル阻害によるQT延長というのを独自に持つ点が識別点になる。

機序

flowchart TD
    A["RET<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proto-oncogene'>プロト癌遺伝子</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='activating variant (mutation)'>活性化変異</span>または融合"] --> B["RET<span class='jp-term jp-term-diagram' title='kinase domain'>キナーゼドメイン</span>が恒常的にリン酸化・活性化"]
    B --> C["下流の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='RAS/MAPK pathway'>RAS/MAPK経路</span>が持続的に活性化→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor growth'>腫瘍増殖</span>"]
    D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vandetanib'>バンデタニブ</span>がRET・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular endothelial growth factor receptor'>VEGFR</span>・EGFRファミリーの<br>チロシンキナーゼ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active site'>活性部位</span>に結合"] --> E["RET経路の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proliferative signal'>増殖シグナル</span>を遮断"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular endothelial growth factor receptor'>VEGFR</span>経路の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor angiogenesis'>腫瘍血管新生</span>を阻害"]
    D --> G["EGFR経路の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proliferative signal'>増殖シグナル</span>も阻害"]
    D --> H["心筋の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human ether-a-go-go-related gene'>hERG</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='potassium channel'>カリウムチャネル</span>も阻害"]
    H --> I["活動電位の再分極が遅延→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='QT interval prolongation'>QT間隔延長</span>"]

💡 同じ「RETを叩く」でも、標的の数が有害事象プロファイルを決める。 はRET阻害によると阻害による血管新生抑制を同時に得られる代わりに、EGFR阻害由来の皮膚・消化器症状、そしてにはないチャネル阻害によるQT延長リスクを併せ持つ。「効果の広さ」と「毒性の広さ」が表裏一体であるという、に共通する構図をよく表す薬剤である。

薬物動態

項目 値・特徴
中央値約19日(の32時間〜20時間と比べて桁違いに長い)
吸収 緩徐で、到達は投与後中央値6時間
蓄積 で約8倍蓄積し、定常状態到達に時間を要する
排泄 主に糞中・尿中、排泄は緩徐で21日を超えても続く

⚠️ 半減期が19日と極端に長いため、有害事象が出てから消失するまでにも数週間単位の時間がかかる。 QT延長や重篤な皮膚障害が生じた際、投与を中止してもすぐには血中から消えないという前提でモニタリングを継続する必要があり、妊娠可能な女性へのも投与終了後長期にわたって必要になる。

適応

米国添付文書は症候性または進行性でな局所進行・転移性のを適応とし、無症状・緩徐進行例では投与に伴うリスクを慎重に検討したうえで使用するよう求める5。⚠️ 日本の効能・効果は「な」で、症候性・進行性という限定は付いていない6。

用法・用量

1日1回300mgをする(米国添付文書は食事の有無を問わないとする)。重篤な毒性や延長時には減量が必要になることがある。米国添付文書は中等度では200mgから開始するとしている5。

⭐ 日本の電子添文は・減量の閾値を数値で定めている。 QTcBが500 msecを超えたらし、480 msec以下に軽快してから減量して再開する。して6週間以内に480 msec以下へ軽快しなければ中止する。減量は1日1回200mg、必要ならさらに100mgの順に行う6。

禁忌・注意

⚠️ :はを延長しうる。投与患者におよび突然死が報告されている。・・・のある患者には使用しない(は「先天性」に限定していない——第4節の禁忌がに限るのとは範囲が違う)。投与前に電解質異常を補正し、投与中は定期的に電解質をモニタリングする。QT延長をきたす薬剤との併用は避ける5。

  • 米国添付文書の正式な禁忌(第4節)はのみ——上記のなどは内の「補正してから投与する」という運用上の指示であり、電解質異常そのものを補正すれば投与しうる点に注意する5
  • ⚠️ 「禁忌はだけ」は米国の1文書についての事実である。日本の電子添文の禁忌は3項目——①本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者、②のある患者、③妊婦又は妊娠している可能性のある女性6。妊娠が禁忌に立っているかどうかは国で違うので、「の注意」とまとめて済ませない
  • 2025年9月、はのプログラムを撤廃した。承認当初は処方医・薬局・医療機関の認証が制度上義務づけられていたが、10年間の評価でが目標を一貫して達成し、QT延長・トルサードの監視と管理が標準診療に組み込まれたと判断されたことが根拠である7。QT延長・・突然死についてのは添付文書に残る5
  • (・、致死例を含む)、、、出血、心不全、、にも注意し、重症度に応じて・中止する
  • :阻害薬に共通する有害事象として生じうるため、定期的に甲状腺機能を評価する
  • 強いはのを減少させるため併用を避ける

副作用

頻度 内容
高頻度(20%超) 下痢/大腸炎、発疹、、高血圧、悪心、頭痛、、、腹痛
重篤・要警戒 QT延長・・突然死、、、、出血、心不全

まとめ

  • はRET・・EGFRファミリーを同時に阻害するで、(・)と異なりQT延長・・突然死のを持つ。⚠️ 限定は「QT延長を理由とする」であって、にが無いという意味ではない——は2025年12月に重篤な感染症(日和見感染を含む)のが新設されている2。
  • 禁忌は国で違う。 米国添付文書の正式な禁忌はのみで、・・は内で「補正してから投与する」と扱われる。日本の電子添文は禁忌を3項目(成分への過敏症の既往、、妊婦又は妊娠している可能性のある女性)とする。
  • 2025年9月にがプログラムを撤廃したが、添付文書上の内容自体は変わっておらず、電解質・の臨床的な必要性は続く。
  • が中央値19日と極端に長く、有害事象出現後も血中からの消失に時間を要する点がとの実務上の大きな違いになる。
  • 米国の適応は症候性・進行性のな局所進行・転移性に限られ、無症状・緩徐進行例ではリスク・を慎重に検討する。日本の効能・効果にはこの限定が無く「な」である。
  • 日本の電子添文はQTcB 500 msec超で、480 msec以下への軽快を再開の条件とし、6週間以内に軽快しなければ中止という数値基準を置いている。

出典

  1. 1.RETEVMO (selpercatinib) capsules and tablets, for oral use — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed (Eli Lilly and Company)・2026)現行版(印字された改訂表示は Revised 07/2026)のSPL本文を取得し、枠組み警告の見出しが存在しないこと(boxed の出現が0件)、4 CONTRAINDICATIONS が逐語で「None.」であること、QT延長が5.4の警告として独立していることを確認した閲覧 2026-09-16
  2. 2.GAVRETO (pralsetinib) capsules, for oral use — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed(Rigel Pharmaceuticals, Inc.)・2025)比較の限定(枠組み警告の有無ではなくQT延長を理由とする枠組み警告かどうか)を裏づけるために引いた。DailyMedのSPL本文を自分で取得し、ラベラーがRigel Pharmaceuticals, Inc.、印字された改訂表示が Revised 12/2025 であること、冒頭の枠組み警告の見出しが逐語で「WARNING: SERIOUS INFECTIONS, INCLUDING OPPORTUNISTIC INFECTIONS」であること、Recent Major Changes に「Boxed Warning 12/2025」の行があること、その内容がQT延長ではなく重篤な感染症であることを確認した。閲覧 2026-09-16
  3. 3.Phase 3 Trial of Selpercatinib in Advanced RET-Mutant Medullary Thyroid Cancer(The New England Journal of Medicine・2023)対照群としてバンデタニブが置かれた第3相試験。抄録をPubMed(eutils、PMID 37870969)で自分で取得して確認した(全文は未取得)。登録前14か月以内に進行が確認された進行RET変異陽性髄様癌291例を、一次治療としてのセルペルカチニブと医師選択のカボザンチニブまたはバンデタニブへ無作為化し、盲検独立中央判定による無増悪生存期間の中央値はセルペルカチニブ群が未到達・対照群16.8か月(ハザード比0.28、95%CI 0.16〜0.48、P<0.001)、奏効率は69.4%対38.8%、有害事象による減量は38.9%対77.3%、投与中止は4.7%対26.8%であった。⚠️ 対照群はカボザンチニブとバンデタニブの混合であり、バンデタニブ単独との比較ではない。閲覧 2026-09-17
  4. 4.Current Guidelines for Management of Medullary Thyroid Carcinoma(Endocrinology and Metabolism(大韓内分泌学会)・2021)全文をEurope PMC(PMC8258323)で取得して確認した。同総説は、症候性または進行性で切除不能な局所進行・遠隔転移のMTCに対する一次全身治療としてバンデタニブまたはカボザンチニブを挙げ、第3相ZETA試験で無増悪生存期間中央値が30.5か月対19.3か月(ハザード比0.46、95%CI 0.31〜0.69、P<0.001)であったこと、症候性・進行性の集団に限った事後解析でもハザード比0.43(95%CI 0.28〜0.64)であったこと、全生存期間では有意差が付かなかったことを記す。マルチキナーゼ阻害薬について逐語で「complete responses by multi-kinase inhibitors are virtually uncommon and have many significant adverse effects due to off-target effects, which can lead to poor quality of life」と述べる。⚠️ 一方で全文にtolerability・toleranceの語は0件、boxed warningの語も0件であり、枠組み警告の有無や選択的RET阻害薬との優先順位づけはこの総説の記述ではない。閲覧 2026-09-17
  5. 5.CAPRELSA (vandetanib) tablets, film coated — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed (Genzyme Corporation / Sanofi)・2026)CAPRELSAの枠組み警告(QT延長・トルサード・突然死、先天性QT延長症候群を含む電解質異常のある患者には使用しないという文言)を本文で直接確認したこと、正式なCONTRAINDICATIONS節(第4節)が先天性QT延長症候群のみを挙げていること、用量(1日1回300mg、中等度腎機能障害では200mgから開始)、機序(EGFR・VEGFRファミリー・RET・BRK・TIE2・EPH受容体・Srcファミリーの阻害)、消失半減期の中央値19日、高頻度副作用(下痢/大腸炎・発疹・ざ瘡様皮膚炎・高血圧・悪心・頭痛・上気道感染・食欲不振・腹痛)、現行のDailyMed本文に"REMS"の記載が存在しないことを確認した(2026年1月改訂版)閲覧 2026-08-11
  6. 6.カプレルサ錠100mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(サノフィ株式会社)・2025)日本の電子添文本体を取得して確認した。表示は「2025年11月改訂(第3版)」(その前が2024年2月改訂・第2版)、YJコードは4291041F1029、販売開始は2015年12月である。⚠️ 2. 禁忌は3項目で、逐語は「2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」「2.2 先天性QT延長症候群のある患者[QT間隔延長が増悪するおそれがある。]」「2.3 妊婦又は妊娠している可能性のある女性」——米国添付文書の第4節が先天性QT延長症候群の1項目だけであるのと異なる。4. 効能又は効果は「根治切除不能な甲状腺髄様癌」で、米国のような症候性・進行性という限定は付いていない。6. 用法及び用量は成人1回300mgを1日1回。7.1の休薬・減量基準は、QTcBが500 msecを超えたら480 msec以下に軽快するまで休薬し再開時は減量、6週間以内に480 msec以下へ軽快しなければ中止と定め、7.2は減量の順序を1日1回200mg、必要ならさらに100mgと定める。閲覧 2026-09-17
  7. 7.NDA 022405/S-025 Supplement Approval Letter: CAPRELSA (vandetanib) tablets — REMS Modification(U.S. Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research・2025)2025年9月23日付でFDAがバンデタニブ(CAPRELSA)のREMSを撤廃する一部変更申請を承認したこと。REMSは処方医・薬局・医療機関の認証を求める「適正使用を確保するための要素」と実施体制からなる制度であったこと。撤廃の根拠は、2015年2月7日から2025年2月6日までの評価期間でREMSが目標を一貫して達成し、13年目の評価調査で処方医がQT延長・トルサード・デ・ポアントの監視と管理について十分に教育されていると示され、これらのリスク管理がCAPRELSAの標準診療に組み込まれたと判断されたことであること閲覧 2026-08-25