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Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬 · 必修

セルペルカチニブ

selpercatinib

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
商品名(日本)
レットヴィモ
商品名(EU)
Retevmo
科目
Pharmacology
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)
承認適応
肺癌甲状腺髄様癌甲状腺癌
副作用
下痢出血浮腫腹痛発疹悪心
監視検査値
AST・ALTQT延長甲状腺刺激ホルモン
相互作用
イトラコナゾールリファンピシン

🧠 全体像は、RET遺伝子異常(融合・変異)だけを狙って設計された初の高選択性RET阻害薬である。それ以前の標準治療だったは、RETに加えてVEGFR・EGFRなど複数のキナーゼを同時に叩くであり、高い有効性と引き換えに由来の有害事象(高血圧・出血・創傷治癒遅延)や、に特徴的なQT延長・突然死のリスクを抱えていた。はRETをFGFR1・2の約60分の1、VEGFR3の約8分の1の濃度で阻害でき、「効かせたい標的だけを効かせる」設計によって毒性を減らし、の面で優先されることが多い。適応もに限らず、RET融合陽性の肺癌・・その他固形腫瘍へと臓器の枠を超えて(組織横断的に)広がっている点が、臓器別に薬剤が分かれていた時代との違いを象徴する。

薬効群の中での位置づけ

RET遺伝子異常陽性腫瘍に対する分子標的薬は、標的の広さで大きく2群に分かれる。

グループ 代表薬 標的の広さ ・特徴
プラルセチニブ RETに高い選択性(VEGFR等への親和性は数十倍低い) に優れ、RET陽性例では第一選択になることが多い
RET+VEGFR・EGFR等を同時阻害 由来の有害事象が多く、はQT延長・突然死のを持つ

RET陽性腫瘍の治療は「まず、効かない・使えないときに」という順序で考えるのが基本線。 が登場する前は、RET陽性MTCにもが使われていたが、現在は高いと良好なを理由に・プラルセチニブが優先される場面が多い1

機序

flowchart TD
    A["RET<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proto-oncogene'>プロト癌遺伝子</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='activating variant (mutation)'>活性化変異</span>または融合"] --> B["RET<span class='jp-term jp-term-diagram' title='kinase domain'>キナーゼドメイン</span>が恒常的にリン酸化・活性化"]
    B --> C["下流のRAS/MAPK経路・PI3K/AKT経路が持続的に活性化"]
    C --> D["腫瘍細胞の増殖・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='survival signal'>生存シグナル</span>が止まらなくなる"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='selpercatinib'>セルペルカチニブ</span>がRETの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ATP-binding site'>ATP結合部位</span>に結合"] --> F["RETキナーゼ活性を選択的に阻害"]
    F --> G["野生型RETと多様な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mutant'>変異型</span>・融合型RETの両方を阻害"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='downstream signal'>下流シグナル</span>を遮断→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor growth'>腫瘍増殖</span>を抑制"]

💡 「選択的」という言葉の中身は、標的が1つしかないという意味ではない。 は野生型RETだけでなく点(M918Tなど)・融合型(CCDC6-RETなど)のRETキナーゼを幅広くカバーする一方、VEGFR1・VEGFR3やFGFR1・2にも高濃度では作用しうる。ただしではRET阻害に必要な濃度がVEGFR3の約8分の1、FGFRの約60分の1と大きく低いため、ではRET以外への作用がほとんど表に出ない——これが「選択的」の実質的な意味であり、との違いを生む。

薬物動態

項目 値・特徴
約32時間
代謝 主にCYP3A4
約96%(濃度に依存しない)
食事・の影響 併用時は食後投与、併用時は投与時間をずらすなど、胃内pHを上げる薬剤との併用に注意が必要

適応

適応 対象
肺癌 RET融合陽性の局所進行・転移性(成人)
陽性の進行・転移性MTC(2歳以上、全身治療を要する例)
RET融合陽性の進行・転移性で、抵抗性(2歳以上)
その他固形腫瘍 RET融合陽性の局所進行・転移性固形腫瘍(2歳以上)

用法・用量

体重に応じたを1日2回行う:体重50kg未満は1回120mg、50kg以上は1回160mg(12歳以上の成人・青年)。2歳以上12歳未満の小児はに基づく用量設定を行う。重度では減量が必要。を嚥下できない患者には、40mg錠のみ懸濁して経口または経管投与できる2

禁忌・注意

禁忌は特に定められていない(DailyMed添付文書のCONTRAINDICATIONS節は「なし」)2。一方で、以下の項目は投与前・投与中のモニタリングと・減量・中止の判断が必要になる。

  • 肝毒性:投与開始前、最初の3か月は2週ごと、以後は月1回を目安にAST・ALTを測定する
  • :新規・増悪する呼吸器症状を監視する
  • 高血圧:コントロール不良の高血圧には開始せず、事前に血圧を最適化してから投与する
  • QT延長:リスクの高い患者では・電解質・TSHを定期的に評価し、強い/中等度CYP3A4阻害薬併用時はより頻回に監視する
  • 出血:重篤・生命を脅かす出血では永続的に中止する
  • 過敏症・・創傷治癒遅延の7日前から、大手術後は治癒まで再開しない)
  • :投与前後で定期的に甲状腺機能を評価する
  • :妊娠可能な女性には有効な避妊を指導する
  • 小児・青年ではのモニタリングが必要

副作用

高頻度(成人で25%以上)にみられるのは腹痛を含むの痛み、浮腫下痢感、、高血圧、悪心出血など多岐にわたる2と異なり、発疹のような皮膚毒性は前面に出にくい一方、上記のモニタリング項目の多さが示すとおり、無症状のうちに進行しうる肝毒性・QT延長・高血圧を定期検査で拾う姿勢が臨床上の要になる。

まとめ

  • RET融合・変異陽性腫瘍に対する高選択性RET阻害薬で、VEGFR・EGFRも同時に阻害する)よりに優れることが多い。
  • 適応はMTCに限らず、RET融合陽性の肺癌・(RAI抵抗性)・その他固形腫瘍へと組織横断的に広がっている。
  • 明確な禁忌はないが、肝毒性・・高血圧・QT延長・出血・など多岐にわたる有害事象を定期モニタリングで管理する必要がある。
  • CYP3A4で代謝されるため、強い/中等度のCYP3A4阻害薬・との併用は避ける。
  • 体重(成人・青年)または(小児)に基づく1日2回という、体格を反映した用量設定が特徴。

出典

  1. 1.RETEVMO (selpercatinib) capsules and tablets, for oral use — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed (Eli Lilly and Company)・2026)RETEVMOに枠組み警告が存在しないこと、成人・12歳以上の体重別用量(50kg未満120mg・50kg以上160mg、1日2回経口)、適応(RET融合陽性NSCLC、RET変異陽性MTC、RET融合陽性甲状腺癌〈RAI抵抗性〉、RET融合陽性固形腫瘍)、禁忌が「なし」であること、警告(肝毒性・間質性肺疾患・高血圧・QT延長・出血・過敏症・腫瘍崩壊症候群・創傷治癒遅延・甲状腺機能低下・胎児毒性・小児の大腿骨頭すべり症)、CYP3A4基質としての相互作用、消失半減期32時間を確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Current Guidelines for Management of Medullary Thyroid Carcinoma(Endocrinology and Metabolism(大韓内分泌学会)・2021)選択的RET阻害薬セルペルカチニブ(LIBRETTO-001試験、2020年FDA承認)が高い奏効率と長い無増悪生存期間を示し、マルチキナーゼ阻害薬(バンデタニブ・カボザンチニブ)に比べ忍容性の点で優先されることが多いことを確認した閲覧 2026-08-11