Anesthesiology

Anesthesiology · A-09

敗血症・敗血症性ショック・多臓器障害

Sepsis, septic shock, multiple organ dysfunction syndrome: pathophysiology, diagnostics, therapy

前提:病態
敗血症性ショックの機序と治療の原則敗血症性ショックにおける炎症・凝固障害・内皮機能障害凝固系の低下と亢進が併存する病態(TTP・HIT・DIC)
疾患
ストレス潰瘍敗血症腹部コンパートメント症候群
スコア
qSOFASOFAスコア

🧠 全体像:敗血症は感染に対するの破綻で生命を脅かす臓器障害が生じた状態であり、感染の可能性、急性SOFA上昇、低灌流を認識したら、培養・抗菌薬・・循環蘇生を時間依存的に進める。

現在の定義

敗血症は「感染に対する調節不全のによって生じる生命を脅かす臓器障害」であり、感染が疑われる患者のスコア2点以上の急性上昇で臓器障害を実務的に表す。

は、適切な循環血液量の評価・蘇生後も、65 mmHg以上の維持にを要し、かつ乳酸値が2 mmol/Lを超える敗血症のサブセットである。

旧来の、敗血症、というSepsis-2分類は歴史的枠組みである。現在は「」という独立区分を用いない。

病態

は、急性疾患患者で恒常性を介入なしには保てないほど複数臓器の機能が変化した状態である。は、単純な二段階として順番に起こるとは限らず、時間的・臓器別に重なりながらと組織障害を生じ得る。

flowchart TD
    A["感染"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='host immunity'>宿主免疫</span>反応の調節不全"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endothelial injury'>内皮障害</span>・血管拡張・透過性亢進"]
    B --> D["凝固活性化・微小循環障害"]
    C --> E["相対的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypovolemia'>低容量</span>・低血圧"]
    D --> F["組織酸素利用障害"]
    E --> G["多臓器機能障害"]
    F --> G
臓器 早期の炎症・低灌流 進行時の障害
内皮・上皮障害、浮腫、依存部、酸素拡散低下 肺胞水腫、サーファクタント障害、・肺胞破壊、、ARDS
心血管 による血管拡張、透過性亢進、、相対的 血管麻痺、敗血症性心筋障害、冠微小循環障害、収縮力低下、乳酸上昇
消化管・肝 、イレウス、、毒素吸収 細菌・毒素移行、壊死、胆汁うっ滞、代謝・解毒低下
低下、神経内分泌反応、低下 微小循環・炎症・を伴う、乏尿
・血液脳関門の障害 微小循環・、敗血症性脳症、せん妄
凝固 凝固活性化、血小板消費、 、出血と

スクリーニングと評価

、SIRSなどを院内スクリーニングに利用できる。簡易SOFA(quick SOFA:)は、呼吸数22/分以上、意識変容、100 mmHg以下の3項目で、2項目以上なら予後不良リスクが高いが、単独の敗血症スクリーニング・除外には用いない。単一のだけで診断または除外することもできない。

SOFAスコア

各系統を0〜4点で評価する。の用量区分はスコア算定用であり、の推奨ではない。

系統 0点 1点 2点 3点 4点
呼吸: 400以上 400未満 300未満 200未満かつ 100未満かつ
凝固:血小板 ×10³/μL 150以上 150未満 100未満 50未満 20未満
肝:ビリルビン mg/dL 1.2未満 1.2〜1.9 2.0〜5.9 6.0〜11.9 12.0以上
循環 MAP 70以上 MAP 70未満 ドパミン≤5または任意量 ドパミン>5〜15、またはアドレナリン≤0.1、またはノルアドレナリン≤0.1 ドパミン>15、またはアドレナリン>0.1、またはノルアドレナリン>0.1
中枢神経:GCS 15 13〜14 10〜12 6〜9 6未満
腎:Cr mg/dLまたは尿量 1.2未満 1.2〜1.9 2.0〜3.4 3.5〜4.9または尿量500 mL/日未満 5.0超または尿量200 mL/日未満

循環系の薬剤用量は1時間以上投与された値を用い、単位はµg/kg/分である。

初期診療

flowchart TD
    A["感染と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute organ damage'>急性臓器障害</span>を疑う"] --> B["乳酸・培養・臓器評価"]
    B --> C["必要な抗菌薬を速やかに開始"]
    C --> D["低灌流なら晶質液と早期再評価"]
    D --> E["低血圧持続なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='norepinephrine'>ノルエピネフリン</span>"]
    E --> F["画像・手術・ドレナージで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='source control'>感染源制御</span>"]
    F --> G["培養・反応に基づき<span class='jp-term jp-term-diagram' title='narrow-spectrum'>狭域</span>化"]
    G --> H["臓器支持と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluid overload'>過剰輸液</span>の解除"]

培養と抗菌薬

  • 血液培養をできるだけ早く、可能なら抗菌薬前に採取するが、治療を大きく遅らせない。
  • 、または可能性が高い・確定的な敗血症では直ちに、理想的には認識1時間以内に抗菌薬を開始する。
  • ショックがなく敗血症の可能性がある段階では感染・非感染原因を迅速評価し、懸念が残れば疑った時点から3時間以内に開始する。
  • 感染可能性が低くショックがなければ、監視しながら抗菌薬を保留できる。
  • 感染部位、過去培養、院内曝露、臓器機能、地域耐性を基に選び、耐性菌カバーは高リスク例に限定する。結果が得られたら化する。

感染源制御

膿瘍ドレナージ、感染デバイス除去、穿孔・壊死組織への手術などを必要とする解剖学的感染源を早期に探す。適応があれば、診断から理想的には6時間以内のを目指す。

循環蘇生

2026年Surviving Sepsis Campaignは、敗血症性低灌流またはに対し、最初の3時間に少なくとも30 mL/kgの静注晶質液を提案しているが、根拠確実性は低い。これは全員への自動的な一括投与量ではない。

  • 心不全、腎不全、肝硬変、肥満、肺水腫、年齢を考慮し、少量ずつ投与して頻回再評価する。
  • を通常優先し、敗血症との併存では0.9%食塩水を考慮する。
  • PLR、、PPV・SVVなど動的指標を、、乳酸推移、尿量と組み合わせる。
  • 不安定なショックでは晶質液とを同時開始し、を待たず適切なから開始できる。
  • 初期MAP目標は65 mmHgを基本とし、65歳以上では60〜65 mmHgという低めの初期範囲も選択肢となる。で個別化する。

が第一選択である。必要量が増えればを追加し、さらに不十分ならエピネフリンを検討する。十分な血圧と容量評価後も心機能低下・低灌流が続く場合はまたはエピネフリンを個別に用いる。

臓器支持

領域 要点
呼吸 ARDSでは6 mL/kgを基本とする30 cmH₂O以下、適応例で
緊急適応があれば。単なるCr上昇だけで早期開始しない
ステロイド を要するで静注副腎皮質ステロイドを検討
血糖 高血糖が持続し10 mmol/L以上ならインスリン開始を検討し、低血糖を避ける
栄養 循環が安定し禁忌がなければ
予防 VTE予防、・せん妄予防。消化管出血リスク例のみ予防

急性蘇生期を過ぎて水分過剰が残れば、利尿またはによる能動的除水を検討する。

まとめ

  • 敗血症は感染による生命を脅かす臓器障害で、旧来の区分は用いない。
  • は予後評価には使えるが、単独スクリーニングや除外には不十分である。
  • ショックまたは感染可能性が高い敗血症では、培養と抗菌薬を遅らせず、を早期に行う。
  • 30 mL/kgは低確実性の初期目安であり、患者背景、動的反応、過剰負荷を反復評価する。
  • を第一選択とし、臓器支持からの除水・リハビリまで連続して管理する。