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Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬

ベルズチファン

belzutifan

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
科目
PharmacologyMolecular Cell Biology
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)48: Mechanisms of cellular oxygen sensing; adaption to hypoxia
承認適応
腎細胞癌血管芽腫褐色細胞腫
副作用
頭痛めまい悪心
監視検査値
ヘモグロビン
影響検査値
エリスロポエチンクレアチニン
対象疾患
von Hippel-Lindau病

🧠 全体像:は、2019年のノーベル生理学・医学賞が対象としたが、そのまま薬になった例である。VHL の機能が失われるとHIF-2αが分解されずに溜まり、低酸素でもないのに腫瘍の遺伝子群が転写され続ける——この一本道の最後の一歩、HIF-2αとHIF-1β(ARNT)の二量体形成を邪魔するのがこの薬である1。だから効く相手は病関連腫瘍とに集中し、⚠️ である貧血とも同じ機序から来る(HIF-2αは産生の主役なので、止めれば造血が落ちる)。

薬効群の中での位置づけ

低分子の経口分子標的薬だが、で先行する/阻害薬(、など)とは狙う階層が違う。標的薬がの下流に出てくる産物を叩くのに対し、はHIF-2α自体のを止めるので、より上流で経路を遮断する。同じを逆向きに操作するのが-PH阻害薬(など)で、こちらは-αを増やしてを治す。PHDを止めれば貧血が治り、HIF-2αを止めれば腫瘍が縮む。

機序

下ではpVHLがHIF-2αをへ送り込む。VHL の機能が失われるとHIF-2αが安定化・蓄積して核へ移り、HIF-1β(ARNT)と転写複合体を形成して細胞増殖・血管新生・にかかわる遺伝子を誘導する。はHIF-2αに結合し、低酸素またはVHL機能障害の条件下でHIF-2αとHIF-1βの相互作用を遮断して、の転写と発現を減らす1。

薬物動態

  • 経口。Tmaxは1〜2時間、定常状態には約3日で到達する。はTmaxを約2時間遅らせるがCmax・に臨床的に問題となる影響はなく、食事の有無を問わない1。
  • は約14時間。主にUGT2B17とCYP2C19で代謝され、の寄与は小さい1。
  • ⚠️ UGT2B17とCYP2C19の両方のでは曝露が高くなり、有害事象のリスクが上がる1。

適応

対象 適応の内容
同病に伴う・中枢神経系血管芽腫・のうち、即時の手術を要さない成人1
との併用、またはと配合の皮下注製剤(ベラ )との併用による、後(および後)の再発が中高リスクまたは高リスクの例に対する/PD-1もしくはPD-L1阻害薬と-の治療歴がある進行例に対する1
・ 局所進行・・転移性の12歳以上1

⭐ 病での成績が、この薬の位置づけを決めた。 第2相試験(120 mg1日1回)のは49%、膵病変77%、中枢神経系血管芽腫30%で、評価可能なは全眼が改善した2。進行ではとの第3相比較でとが優ったが(18か月無増悪割合24.0%対8.3%、21.9%対3.5%)、ではの有意水準に達しなかった3。

用法・用量

  • 成人は120 mg(40 mg錠3錠)を1日1回、食事の有無を問わずする1。
  • 12歳以上の小児では体重40 kg以上で120 mg、40 kg未満で80 mgを1日1回1。
  • 貧血・の重症度に応じて・減量・中止する1。

禁忌・注意

  • 禁忌:米国添付文書に禁忌は設定されていない1。
  • ⚠️ は。 投与前に妊娠の有無を確認し、でない避妊を指導する。⚠️ 本剤は一部の避妊薬の効果を減弱させるため、「ピルを飲んでいるから大丈夫」が通用しない1。
  • 注意すべき副作用:貧血と。投与前と投与中に定期的にヘモグロビンとを測定する1。
  • 感受性の高い基質との併用は避ける(濃度低下で基質側の効果が落ちる)1。

副作用

⭐ 貧血とは「予想外の毒性」ではなく機序そのものである。 HIF-2αは産生の主役で、本剤の投与では血漿が用量・依存性に低下し、2週間の連日投与でベースラインから平均約60%まで抑制される1。造血が落ちれば貧血になり、と低酸素適応の両方が鈍ればが起こる。

有害事象 病(LITESPARK-004) 進行(LITESPARK-005)
ヘモグロビン低下 93%(Grade 3は7%) 88%(Grade 3は29%)
1.6% 15%(Grade 3は10%)

いずれも添付文書の記載である1。貧血の発現までの中央値は病で31日と早い1。第2相試験でも最多の有害事象は貧血90%・疲労66%であった2。このほか疲労、クレアチニン上昇、頭痛、めまい、、悪心が高頻度で報告されている1。

まとめ

  • は経口のHIF-2α阻害薬で、HIF-2αとHIF-1β(ARNT)の二量体形成を妨げての転写を止める。
  • VHL 機能喪失でHIF-2αが分解されなくなる病態、すなわち病関連腫瘍とが主戦場である。
  • 適応は病に伴う・中枢神経系血管芽腫・(即時の手術を要さない例)、(術後補助・既治療の進行例)、/。
  • 用量は成人120 mg1日1回、食事の影響を受けない。UGT2B17とCYP2C19で代謝され、両方のでは曝露が上がる。
  • ⚠️ の貧血とは機序そのものから来るで、産生低下が本体である。ヘモグロビンとを定期的に監視する。
  • ⚠️ は。避妊薬の効果を減弱させるため、非の避妊を指導する。

出典

  1. 1.WELIREG (belzutifan) tablets, for oral use — Prescribing Information(Merck Sharp & Dohme LLC(米国添付文書)・2026)米国添付文書の版は Revised 06/2026、初回承認は2021年。適応がvon Hippel-Lindau病に伴う腎細胞癌・中枢神経系血管芽腫・膵神経内分泌腫瘍で即時の手術を要さない成人、淡明細胞成分を有する腎細胞癌(ペムブロリズマブとの併用、またはペムブロリズマブとberahyaluronidase alfa-pmphとの併用による、腎摘後もしくは腎摘および転移巣切除後で再発が中高リスクまたは高リスクの例に対する術後補助療法、およびPD-1/PD-L1阻害薬とVEGF-TKIによる治療歴のある進行例の単剤療法)、局所進行・切除不能・転移性の褐色細胞腫または傍神経節腫(12歳以上)であること、成人の推奨用量が120 mg1日1回・食事の有無を問わないこと、12歳以上の小児では体重40 kg以上で120 mg・40 kg未満で80 mgであること、枠組み警告が胚・胎児毒性であり妊娠の有無を投与前に確認しホルモン性でない避妊を指導すること(本剤は一部のホルモン性避妊薬の効果を減弱させうる)、禁忌が設定されていないこと、警告・使用上の注意の筆頭が貧血と低酸素症であること、LITESPARK-004ではヘモグロビン低下が93%・Grade 3が7%に生じ発現までの中央値が31日であったこと、同試験で低酸素症が1.6%に生じたこと、LITESPARK-005ではヘモグロビン低下88%・Grade 3が29%、低酸素症15%・Grade 3が10%であったこと、作用機序としてHIF-2αに結合しHIF-2αとHIF-1βの相互作用を阻害して標的遺伝子の転写を減らすこと、薬力学として血漿エリスロポエチンが用量・曝露量依存性に低下し2週間連日投与後に最大の抑制(ベースラインから平均約60%の低下)に達すること、主にUGT2B17とCYP2C19で代謝され消失半減期が約14時間であること、UGT2B17とCYP2C19の両方の低代謝者では曝露が高くなること、感受性の高いCYP3A4基質との併用を避けるべきことを確認した閲覧 2026-09-02
  2. 2.Belzutifan for Renal Cell Carcinoma in von Hippel-Lindau Disease(The New England Journal of Medicine・2021)von Hippel-Lindau病に伴う腎細胞癌を対象とした第2相・非盲検・単群試験でベルズチファン120 mg1日1回を投与し、追跡期間中央値21.8か月の時点で腎細胞癌の客観的奏効率が49%(95%CI 36〜62)であったこと、膵病変では61例中47例(77%)、中枢神経系血管芽腫では50例中15例(30%)に奏効が得られたこと、評価可能な網膜血管芽腫12例16眼のすべてが改善と判定されたこと、最も多い有害事象が貧血(90%)と疲労(66%)であったことを確認した閲覧 2026-09-02
  3. 3.Belzutifan versus Everolimus for Advanced Renal-Cell Carcinoma(The New England Journal of Medicine・2024)免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬の治療歴がある進行淡明細胞型腎細胞癌746例を対象とした第3相・非盲検・実薬対照試験で、ベルズチファン120 mg1日1回とエベロリムス10 mg1日1回を1対1に割り付けたこと、第1回中間解析(追跡期間中央値18.4か月)で無増悪生存期間の中央値は両群とも5.6か月であったが18か月時点の無増悪生存割合がベルズチファン群24.0%・エベロリムス群8.3%であったこと(両側P=0.002)、確定客観的奏効率が21.9%対3.5%であったこと(P<0.001)、第2回中間解析(追跡期間中央値25.7か月)の全生存期間中央値が21.4か月対18.1か月でハザード比0.88(95%CI 0.73〜1.07、両側P=0.20)と事前規定の有意水準を満たさなかったこと、Grade 3以上の有害事象が61.8%対62.5%であったことを確認した(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-02