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Drug Atlas · C13 Antibiotics / 抗菌薬

プラゾミシン

plazomicin

分類
Antibiotics / 抗菌薬
科目
Pharmacology
トピック
C13: Aminoglycosides
承認適応
急性腎盂腎炎・腎膿瘍尿路感染症
標的微生物
Escherichia coliKlebsiella pneumoniaeProteus mirabilisEnterobacter cloacae
副作用
耳鳴難聴めまい筋力低下
監視検査値
クレアチニン

🧠 全体像:は、他のアミノグリコシドを無力化するをかわすよう設計された次世代のである1。・・が効かなくなったの主な耐性機構()を回避する一方、を持つ菌には効かない。米国では2018年に承認された注射薬で、適応は成人の(腎盂腎炎を含む)だけ。代替治療が限られる患者に温存する薬であり、アミノグリコシド共通の腎毒性・・・がとして掲げられている2。

薬効群の中での位置づけ

薬 立ち位置 への強さ
重症グラム陰性菌の基本薬 で不活化されやすい
緑膿菌・嚢胞性線維症の吸入 同上
耐性グラム陰性菌の切り札 多くのに耐える
耐性のに限る注射薬 ・・を不活化する酵素の多くで不活化されない2

⚠️ 日本では使えない可能性が高い。PMDAの添付文書検索(2026年11月)で「」「ゼムドリ」とも該当する電子添文は見つからなかった。国内の承認状況は自分で確認すること。本ノートの用法・禁忌・は米国の添付文書に基づく。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plazomicin'>プラゾミシン</span>が細菌内へ取り込まれる"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='30S ribosomal subunit'>30Sリボソームサブユニット</span>に結合"]
    B --> C["蛋白合成を阻害<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='concentration-dependent'>濃度依存性</span>に殺菌"]
    D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gentamicin'>ゲンタマイシン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amikacin'>アミカシン</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tobramycin'>トブラマイシン</span>を不活化するAAC・APH・ANT"] -.->|"ほとんどで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plazomicin'>プラゾミシン</span>は<br>不活化されない"| B
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='16S rRNA methyltransferase'>16S rRNAメチル基転移酵素</span><br>(標的のリボソームを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chemical modification'>化学修飾</span>)"] -.->|"結合できず完全に無効"| B

💡 耐性の機構は「薬を壊す」と「標的を変える」に分かれる。 は薬の・をして失活させる。はこの経路にほぼ耐え、大腸菌のの実験では、17株のうち15株で活性が保たれた。が下がったのはaac(2′)-Iaとaph(2″)-IVaだけで、この2つは主にProvidencia stuartiiと腸球菌にしかない1。それに対しては標的のリボソーム自体を変えるため、も含めて全アミノグリコシドが効かなくなる1。

抗菌スペクトルと穴

  • 活性あり:ESBL(TEM・SHV・CTX-M・AmpC)、KPC-2・KPC-3、OXA-48を産生するに対してで活性が示されている。
  • 活性なし/乏しい:レンサ球菌(肺炎球菌を含む)、腸球菌、嫌気性菌、Stenotrophomonas maltophilia、Acinetobacter属には活性がない。緑膿菌への活性は一定しない。
  • ⚠️ 金属βラクタマーゼ産生菌は要注意。このタイプの菌はをしていることが多く、その場合は無効になる2。「なら効く」と単純には覚えない。
  • の減少やのでも活性が下がることがある。

薬物動態

項目 内容(15 mg/kgを30分で静注した)2
73.7 mcg/mL。(24時間値)は0.3 mcg/mL
分布 17.9 L、は約20%
代謝 ほとんど代謝されない
排泄 97.5%が未変化体として尿中に排泄される(4時間で56%)。はに近い
半減期 3.5時間。1日1回投与でも蓄積しない
腎障害 7.5 mg/kg投与でAUCは軽度1.01倍、中等度1.98倍、高度4.42倍
  • 型なので、腎機能が落ちるほど血中濃度が上がる。腎機能で用量を変える理由であり、尿中に高濃度で出ることは尿路感染症に向く性質でもある。
  • 曝露と腎毒性の関係:CLcr 30超〜90以下の243例では、が3 mcg/mL以上のとき腎毒性が36%(10/28)、3 mcg/mL未満では5%(11/215)だった。が勧められる根拠はここにある2。

適応

18歳以上の(腎盂腎炎を含む)が唯一の適応である。起因菌はEscherichia coli・Klebsiella pneumoniae・Proteus mirabilis・Enterobacter cloacaeで、臨床データが限られるため、代替治療が限られるか無い患者に温存する位置づけである2。

試験 比較 主な結果
EPIC試験(609例) 15 mg/kg 1日1回 対 1 g 8時間ごと 5日目の複合治癒は88.0%対91.4%()、時は81.7%対70.1%3
  • 主な成績は微生物学的修正ITT集団(388例)での複合治癒(臨床的治癒+菌の消失)で、時に優っていたのは主に菌の消失率の差だった。臨床的治癒だけでは89.0%対90.4%とほぼ同じ2。
  • アミノグリコシド非感受性のでも消失率は78.8%対68.6%、では82.4%対75.0%だった3。
  • ⚠️ 登録された患者の99%は東欧の施設で、米国は3例だけだった。一般化できる範囲には限りがある2。

用法・用量

腎機能(CLcr、Cockcroft-Gault式) 用量
90 mL/min以上 15 mg/kgを24時間ごとに30分かけて静注
60以上90未満 15 mg/kgを24時間ごと
30以上60未満 10 mg/kgを24時間ごと
15以上30未満 10 mg/kgを48時間ごと
  • 治療期間は4〜7日で上限7日。に切り替えて合計7〜10日(静注+経口)にできる。
  • ⚠️ 体重の使い分けが2か所で違う。用量(mg/kg)はで計算し、がより25%以上重いときは(+0.4×(-))を使う。一方、CLcrをCockcroft-Gault式で推定するときはを使うが、25%以上重いときはを使う2。
  • 投与前と治療中は毎日CLcrを評価する。腎機能が変わったら用量間隔を見直す。CLcr 90 mL/min未満のではで過量を避けるよう勧められている2。
  • 他の薬と同じ静注路から同時に投与しない(配合の適合性が確立されていない)。

禁忌・注意

  • 禁忌:アミノグリコシドへの過敏症(アミノグリコシド同士にはが確立している)2。重症筋無力症は禁忌欄ではなく、ので「高リスク」として挙げられている。
  • ⚠️ 腎毒性:のある患者、高齢者、腎毒性のある薬を併用する患者で危険が大きい。の上昇は多くが1 mg/dL以下で可逆的だった。
  • ⚠️ (難聴・・めまい):投与終了後に初めて明らかになることがあり、不可逆なことがある。難聴の家族歴、腎障害、推奨量を超える投与量・期間で多い。MT-RNR1遺伝子のm.1555A>G変異を持つ人では、血中濃度が推奨範囲内でもが起こりうる。母系で薬剤性難聴の既往がある場合や変異が分かっている場合は、感染の重さに照らして不可逆的な難聴の危険が許容できる場合を除き、アミノグリコシド以外を選ぶ。
  • ⚠️ :重症筋無力症などの神経筋疾患がある患者や、を併用する患者で筋力低下が悪化する、あるいは回復が遅れる。
  • ⚠️ :胎盤を通過する。同じ系統ので、による先天性の完全・不可逆的な両側難聴が報告されている。妊娠中に使う場合や投与中に妊娠した場合は、胎児への危険を説明する。
  • 18歳未満では安全性・有効性が確立されていない。
  • 過敏症(アナフィラキシーを含む)、Clostridioides difficile関連下痢にも注意する。

副作用

頻度 内容(EPIC試験の群303例)2
高頻度 腎機能低下3.6%(群1.3%)、下痢2.3%、高血圧2.3%、頭痛1.3%、悪心1.3%、嘔吐1.3%、低血圧1.0%
がから0.5 mg/dL以上上昇:7.0%(群4.0%)
聴器 EPIC試験で可逆性のが1例(0.3%)。もう1つのではの1例と可逆性のめまい1例
中止 副作用による中止は2.0%で、群と同じ
  • 65歳以上では副作用の発現率が群で27%(37/137)、群で18.9%(27/143)と差があった。高齢者は腎機能とともに慎重に評価する。

まとめ

  • =(AAC・APH・ANT)をかわす次世代の。に結合して蛋白合成を阻害し、に殺菌する。
  • を持つ菌には効かない。金属βラクタマーゼ産生菌はこれをしやすい。レンサ球菌・腸球菌・嫌気性菌・Acinetobacterには活性がなく、緑膿菌は一定しない。
  • 適応は18歳以上の(腎盂腎炎を含む)。代替治療が限られる患者に温存する。治療は最長7日。
  • 投与前と毎日CLcrを評価。腎機能で用量を変え、CLcr 90 mL/min未満ではを勧める。型で濃度が高いほど腎毒性が増える。
  • は腎毒性・・・の4本立て。MT-RNR1の変異では推奨量でも難聴が起こりうる。
  • 日本では電子添文が見つからない。米国の添付文書を元にした記述である。

出典

  1. 1.Plazomicin Retains Antibiotic Activity against Most Aminoglycoside Modifying Enzymes(ACS Infectious Diseases(Cox G, Ejim L, Stogios PJ, et al.)・2018)抄録を読んで確認した(全文のREST取得は応答エラーのため未取得)。プラゾミシンは天然物シソマイシンを化学修飾した半合成アミノグリコシドで、N-アセチル化・O-アデニル化・O-リン酸化を行う一般的な修飾酵素から保護されるよう設計された。21種の耐性酵素を個別に発現させた大腸菌の同質遺伝子株のうち、修飾酵素を発現する17株の15株で活性を保ち、効力が下がったのはaac(2′)-Iaとaph(2″)-IVaの2つだけだった。この2酵素の分布はProvidencia stuartiiと腸球菌に限られる。一方、16S rRNAメチル基転移酵素を発現する株では効力が完全に失われる。閲覧 2026-11-03
  2. 2.ZEMDRI (plazomicin) injection, for intravenous use - Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)/Cipla USA Inc.・2024)DailyMed SPL APIで同じsetidのXMLを取得し、改訂日2024年12月20日の添付文書本文を読んで確認した。適応は18歳以上の複雑性尿路感染症(腎盂腎炎を含む)で、起因菌はEscherichia coli・Klebsiella pneumoniae・Proteus mirabilis・Enterobacter cloacae、限られた臨床データしかないため代替治療が限られるか無い患者に温存する。用法は15 mg/kgを24時間ごとに30分かけて静注(CLcr 90 mL/min以上)、治療は4〜7日で上限7日、経口に切り替えて合計7〜10日。CLcr 60以上90未満は15 mg/kgを24時間ごと、30以上60未満は10 mg/kgを24時間ごと、15以上30未満は10 mg/kgを48時間ごと。投与前と治療中は毎日CLcrを評価し、CLcr 90未満のcUTIでは治療薬物モニタリングを勧める。枠組み警告は腎毒性・聴器毒性・神経筋遮断・胎児毒性。禁忌はアミノグリコシドへの過敏症のみ。ミトコンドリア12S rRNA遺伝子MT-RNR1の変異(特にm.1555A>G)では血中濃度が推奨範囲でも聴器毒性が起こりうる。18歳未満の安全性・有効性は未確立。薬物動態は15 mg/kgで健康成人のCmax 73.7 mcg/mL・半減期3.5時間、代謝されず97.5%が未変化体として尿中に排泄、血漿蛋白結合約20%。腎障害ではAUCが中等度1.98倍・高度4.42倍。トラフ値3 mcg/mL以上で腎毒性が36%、未満で5%。微生物学の節は、30Sリボソームへの結合による蛋白合成阻害と濃度依存性殺菌作用、ほとんどのAMEで不活化されないこと、16S rRNAメチル基転移酵素産生菌には不活性であること、金属βラクタマーゼ産生菌はメチル基転移酵素を共発現して耐性となりやすいこと、レンサ球菌・腸球菌・嫌気性菌・Stenotrophomonas maltophilia・Acinetobacter属には活性がなく緑膿菌には活性が一定しないことを記載する。臨床試験の節にEPIC試験(Trial 1)の成績がある。閲覧 2026-11-03
  3. 3.Once-Daily Plazomicin for Complicated Urinary Tract Infections(The New England Journal of Medicine(Wagenlehner FME, Cloutier DJ, Komirenko AS, et al.)・2019)抄録を読んで確認した(全文は購読誌で未取得)。複雑性尿路感染症(急性腎盂腎炎を含む)609例を、プラゾミシン15 mg/kgの1日1回静注とメロペネム1 gの8時間ごと静注に1対1で割り付けたEPIC試験(NCT02486627)。主要評価は微生物学的修正ITT集団での5日目と治癒判定時の複合治癒(臨床的治癒と菌の消失)で、非劣性マージンは15パーセントポイント。5日目は88.0%(168/191)対91.4%(180/197)で差−3.4(95%CI −10.0〜3.1)、治癒判定時は81.7%(156/191)対70.1%(138/197)で差11.6(2.7〜20.3)。アミノグリコシド非感受性のEnterobacteriaceaeの消失は78.8%対68.6%、ESBL産生菌は82.4%対75.0%。後期追跡での微生物学的再発は3.7%対8.1%、臨床的再燃は1.6%対7.1%。血清クレアチニンが基線から0.5 mg/dL以上上昇した患者は7.0%対4.0%。閲覧 2026-11-03