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Drug Atlas · C6 Antivirals / 抗ウイルス薬 · 必修

テノホビル

tenofovir

分類
Antivirals / 抗ウイルス薬
商品名(日本)
ビリアードベムリディ
商品名(EU)
VireadVemlidy
科目
Pharmacology
トピック
C6: Antiretroviral agentsC7: Agents against hepatitis viruses
標的微生物
HIV-1HIV-2B型肝炎ウイルス
監視検査値
クレアチニン
対象疾患
HIV感染症・AIDSウイルス性肝炎急性肝不全結節性多発動脈炎
原因となる疾患
Fanconi症候群

🧠 全体像:は、の中で唯一もともとホスホネート基(リン酸1個分を代替する基)を持つ「ヌクレオチド」類似体で、逆転写酵素とポリメラーゼの両方を止める。この薬を理解する軸は2つの形の違いに尽きる——古いTDF( ジソプロキシル塩)は血漿中濃度が高く効果は確実だが腎・骨への負担が大きく、新しいTAF( 塩)はへの到達効率を上げることでを大幅に下げ、同等の効果を保ちながら腎・骨への負担を軽くした。この「同じに行き着くのに、そこへ運ぶの設計だけを変えて毒性を減らした」という発想は、(ドラッグデリバリー)の好例として押さえておきたい。

薬効群の中での位置づけ

項目 TDF( ジソプロキシル塩) TAF( 塩)
血漿中濃度 高い 約90%低い(内に選択的に届くよう設計)
腎毒性(・) 相対的に高頻度 少ない
骨密度への影響 低下がより明瞭 影響が少ない
脂質への影響 などをやや低下させる(副次的な利点) TDFほどの脂質低下作用はない
適応 治療、治療、(安価で世界的な普及が進む) 治療(多くの現行配合錠)、単独治療(低用量専用製剤)、
コスト・入手性 安価・が広く普及 相対的に高価

⭐ 腎機能や骨密度に懸念がある患者ではTAFが優先されることが多いが、「TAFなら安全」ではない。 高度ではTAFにも投与制限があり、個々の患者のリスクに応じた選択が必要になる。TDFとTAFを直接比較した第3相2件では、48週時点の推定低下・骨密度低下・骨密度低下のいずれもTAF群で小さく、ウイルス学的著効率は両群で同等(90%超)だった1。

機序

flowchart TD
    A["TDFまたはTAF(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prodrugs'>プロドラッグ</span>)"] --> B["加水分解を経て<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tenofovir'>テノホビル</span>に変換"]
    B --> C["宿主細胞のキナーゼにより<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tenofovir'>テノホビル</span>二リン酸へ活性化<br>(ホスホネート基がリン酸1個分を代替するため<br>最初のリン酸化が不要)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human immunodeficiency virus'>HIV</span>逆転写酵素または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatitis B virus'>HBV</span>ポリメラーゼが<br>dATPの代わりに取り込む"]
    D --> E["3'-OHを欠くため<br>次のヌクレオチドが結合できない"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>鎖の伸長が止まる<br>(chain termination)"]

💡 「ヌクレオチド」類似体という点が他の(類似体)との構造上の違い。 通常のは細胞内で3段階のリン酸化を経て活性型になるが、はリン酸1個分に相当する基を初めから持つため活性化に必要な段階が1つ少ない2。

⚠️ ただしその基は「」ではなく「ホスホネート基」である。 通常のヌクレオチドのはリンと炭素が P–O–C結合()でつながるのに対し、ホスホネート基は P–C結合でリンが炭素に直接ついているため、細胞の(エステラーゼ)で切り離されない。この安定性こそが、ウイルス側のキナーゼに依存せずに活性化できる理由である。は・と同じ非環状ホスホネートに属する2。💡 これらが( ジソプロキシル、 ジピボキシル)にされているのは、が低いためである2。

薬物動態

項目 TDF TAF
吸収 食事でやや上昇 食事の影響は比較的小さい
主な内濃度 相対的に低い 高い(・肝細胞への到達効率が良い)
排泄 腎の+。腎毒性の機序そのもの が低いため腎への負担も軽減
併用の注意 TDF含有製剤とTAF含有製剤を同時に併用しない 同上

適応

領域 使いどころ
治療 バックボーンの構成要素。現行の単剤配合錠の多くでTAFが採用される
慢性B型肝炎 量・・線維化・年齢などを踏まえて適応を判断する第一選択の一つ。と並ぶ高の。 が20万IU/mLを超えるHBe抗原陽性妊婦では妊娠30〜32週からのTDF投与が母子感染率を低下させる3
陰性で継続的な曝露リスクがある人への。TDF/合剤が最初に確立し、TAF/合剤へも適応が広がっている

用法・用量

TDFは通常成人量300mgを1日1回、TAFは治療では通常25mg(またはされたレジメンでは低用量)を1日1回、B型単独治療でも25mgを1日1回とすることが多い。いずれも腎機能に応じた・使用制限があり、TDFとTAFを同時に含む製剤を重複させない。実際の用量は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ :・のリスク(特にTDF)。投与前後で腎機能をモニタリングする
  • ⚠️ 骨密度低下:特にTDFで明瞭。骨折リスクの高い患者ではTAFを検討する
  • ⚠️ /で本剤を中止・変更する際は重症のに注意する。 ・と共通する重要な注意点で、中止後は少なくとも数か月、肝機能とを観察する4
  • TDF含有製剤とTAF含有製剤を同時に併用しない

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心(軽度)
注意 クレアチニン上昇・機能障害(TDFでより顕著)、骨密度低下(TDFでより顕著)
重篤・まれ 、を伴う重度の・(クラス共通の)、/での中止後の

まとめ

  • の。逆転写酵素とポリメラーゼの両方をchain terminationで止める。
  • TDF(旧世代・腎/あり・安価)とTAF(新世代・腎/が少ない・高価)という2つのの違いが最大の論点で、頭同士の比較試験でも腎機能・骨密度の指標はTAF群で一貫して良好だった1。
  • 治療・慢性B型肝炎治療・の3つの適応をまたぐ、抗ウイルス薬の中でも汎用性の高い薬。
  • 腎機能・骨密度のモニタリングが重要、特にTDF。
  • ⚠️ /で中止・変更する際はのリスクに注意する4。妊娠中の例ではTDFがにも用いられる3。
  • ・と並び、との両方に効く数少ないの一つ。

出典

  1. 1.Tenofovir alafenamide versus tenofovir disoproxil fumarate, coformulated with elvitegravir, cobicistat, and emtricitabine, for initial treatment of HIV-1 infection: two randomised, double-blind, phase 3, non-inferiority trials(The Lancet・2015)16か国178施設で治療未経験HIV-1感染者1,733人(TAF群866人・TDF群867人)を対象とした二重盲検第3相非劣性試験2件(背景薬はエルビテグラビル/コビシスタット/エムトリシタビン配合)で、48週時点のHIV-1 RNA 50コピー/mL未満の達成率はTAF群92%(800/866)・TDF群90%(784/867)で非劣性が示され(補正差2.0%、95%信頼区間 -0.7〜4.7)、血清クレアチニン上昇の平均はTAF群の方が有意に小さく(0.08 mg/dL 対 0.12 mg/dL)、著者らは腎および骨への影響がTAF群で有意に軽減されたと結論していること。なお本試験はGilead Sciencesの資金提供による閲覧 2026-08-27
  2. 2.Clinical Potential of the Acyclic Nucleoside Phosphonates Cidofovir, Adefovir, and Tenofovir in Treatment of DNA Virus and Retrovirus Infections(Clinical Microbiology Reviews・2003)PMCのHTML全文(PMC207110)で確認した。テノホビル(PMPA)はシドフォビル(HPMPC)・アデホビル(PMEA)と同じ非環状ヌクレオシドホスホネートであり、ホスホネート基が安定なP–C結合でつながっている。P–O–C結合のリン酸基と違い、P–C結合のホスホネート基は細胞のヒドロラーゼ(エステラーゼ)で切り離されない。リン酸を模したこの基を初めから持つため、活性代謝物に至るのに3段階ではなく2段階のリン酸化で足り、ウイルス誘導性キナーゼに依存しない。アデホビルとおそらくテノホビルでは、二リン酸体への変換が5-ホスホリボシル-1-ピロリン酸合成酵素またはAMP(dAMP)キナーゼの働きで1〜2段階で達成される。経口バイオアベイラビリティが低いためアデホビル・テノホビルは経口プロドラッグ(アデホビル ジピボキシル、テノホビル ジソプロキシル)にされていること、テノホビルはシドフォビルに比べ腎近位尿細管上皮細胞の増殖・生存への影響が実質的に弱いことも確認した閲覧 2026-09-07
  3. 3.Tenofovir to Prevent Hepatitis B Transmission in Mothers with High Viral Load(The New England Journal of Medicine・2016)HBV DNAが20万IU/mLを超えるHBe抗原陽性母体に妊娠30〜32週からテノホビル(TDF)を投与すると、免疫グロブリン・ワクチンのみの通常ケア群に比べ母子感染率が低下したことを確認閲覧 2026-08-27
  4. 4.Prevention and Management of Hepatitis B Virus Infection in Adults With HIV(NYSDOH AIDS Institute Clinical Guidelines Program・2026)HIV/HBV重複感染患者でHBVに活性を持つ薬剤を中止するとHBV再活性化による肝炎増悪・肝不全のリスクがあり、HBV単独感染よりHIV/HBV重複感染の方が肝障害・劇症肝不全のリスクが高いこと、治療の中断・中止が必要な場合はHIV/HBV重複感染に精通した専門家へ相談すべきことを確認閲覧 2026-08-27