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Microbe Atlas · 細菌

Prevotella intermedia

分類
G− 桿菌・偏性嫌気性 / Gram− rods (anaerobic)Prevotella
性状
Gram陰性 (G−)桿菌 Bacilli偏性嫌気性 Obligate anaerobe
科目
Medical MicrobiologyPathology
トピック
2/6: Anaerobic Gram-negative rods (Bacteroides, Fusobacterium, Prevotella, Porphyromonas)5/5: Normal flora of the oral cavity. Microbes causing infections of the oral cavity (list)病理学 C/30:口唇・口腔・咽頭の病理
自然耐性薬
ゲンタマイシンアミカシントブラマイシンアズトレオナム
原因となる疾患
急性壊死性潰瘍性歯肉炎口底蜂窩織炎根尖性歯周炎歯周炎歯性上顎洞炎脳膿瘍肺膿瘍頸部膿瘍
作用する薬剤
クリンダマイシンセフメタゾール

🧠 全体像:P. intermediaは口腔常在の黒色で、*Porphyromonas gingivalis*と並んでの菌叢を構成する。特徴は、で性ステロイドホルモンを発育因子のビタミンKの代わりに利用できることで1、思春期・妊娠期にが悪化する現象の説明の一つとして提唱されてきた。臨床面では、βラクタマーゼを産生してが効かない株があることを押さえる。

微生物学的な特徴

グラム陰性の桿菌で、口腔(腟にも分離される)に常在する。血液寒天培地上で黒色色素を産生する点は*Porphyromonas*属と共通する(かつては両者とも「黒色性Bacteroidaceae」として一括されていたが、現在は別属に再分類されている)。

*Bacteroides fragilis*との鑑別点は——B. fragilisが高濃度胆汁存在下でも発育できるのに対し、Prevotella属・Porphyromonas属は胆汁に感受性があり、この性質の違いが両属を分ける分類上の根拠の一つになっている。

、、を産生し組織侵入を助ける。

病原性の仕組み

💡 性ステロイドホルモンをビタミンKの代わりに使える。 本菌(旧名 Bacteroides melaninogenicus subsp. intermedius)は妊娠中に菌叢で増えることが知られていた。では、本菌がエストラジオール・プロゲステロンを菌体に取り込み、必須発育因子のビタミンKの代わりにこれらを利用して発育できた。一方、同じ実験でP. gingivalis(当時の B. gingivalis)は代用できなかった。ステロイドは還元酵素系と相互作用して発育を促すと推定されている1。

flowchart TD
    A["思春期・妊娠期<br>性ステロイドホルモンの上昇"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gingival crevicular fluid'>歯肉溝滲出液</span>中のホルモン濃度も上昇"]
    B --> C["P. intermedia がホルモンを<br>ビタミンKの代わりに利用して増殖<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='in vitro'>試験管内</span>の所見)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subgingival'>歯肉縁下</span>菌叢で本菌の比率が上昇"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gingivitis'>歯肉炎</span>の増悪<br>(説明の一つとして提唱)"]

⚠️ の所見から組み立てた説明である。 原著者自身も「生態学的な意義があるかもしれない」と述べるにとどめており1、妊娠性の原因が本菌であると確定したわけではない。の増悪には宿主側の変化も関わりうるので、菌側の説明だけで完結させない。

(*Treponema属)・Fusobacterium*属と協調してのを形成することもある。⚠️ これが扁桃・咽頭へ及んだ病型が Plaut-Vincent anginaで、ではVincent炎とも呼ぶ。angina は本来「咽頭の炎症」を指す語である。

感染経路と疫学

  • 口腔常在菌の一員として・に定着し、の病原菌叢の一員となる
  • 思春期・妊娠期にはの頻度・重症度が上がり、本菌の比率が上がることが知られる
  • 不十分な、喫煙が破壊のリスク因子

起こす疾患

  • ・:*Porphyromonas gingivalis*と並ぶ代表的なの一つ。妊娠期・思春期の増悪との関連が知られる
  • 顔面・口腔膿瘍:から隣接組織への波及
  • :・Fusobacterium属との(扁桃・咽頭へ及んだ病型が Plaut-Vincent angina)

診断・治療

診断は・口腔病変からの検体採取と、黒色の確認による。治療の基本は機械的なプラーク・除去である。欧州連盟のS3ガイドラインは、デブライドメントへののな補助的使用を推奨せず、若年成人のIIIのような特定の患者群に限って考慮してよいとしている2。用いる場合はメトロニダゾールなど嫌気性菌に活性を持つ薬剤を選ぶ。

⚠️ が効かない株がある。 247株を調べた研究では、嫌気性菌のは全般にを下回ったが、P. intermedia 3株がアモキシシリン耐性で、いずれもβラクタマーゼ陽性だった3。Prevotella属全体(19菌種508株)でみると、アンピシリン非感性51.2%・クリンダマイシン非感性33.7%と高い一方、メトロニダゾール・・・・には全株が感性だった4——配合剤やメトロニダゾールを選び、クリンダマイシン単剤を当てにしない理由である。

⚠️ 嫌気性菌はアミノグリコシド系・に通常耐性である5。アミノグリコシド系は細胞内への取り込みに性のが作る膜電位を要するためでは菌体に入れず、はのPBP3に強く結合して効く薬で、嫌気性菌には臨床的に有用な活性を持たない。

まとめ

  • P. intermediaはグラム陰性の・黒色桿菌で、口腔常在菌の一員。*Bacteroides fragilis*と異なりである点が分類上の鑑別点。
  • で性ステロイドホルモンをビタミンKの代わりに利用でき、思春期・妊娠期の増悪の説明の一つとされる(因果は確定していない)。
  • *Porphyromonas gingivalisと並ぶで、・Fusobacterium*属とのでも起こす。
  • 治療の基本は機械的なプラーク除去で、全身性抗菌薬のな併用は推奨されない。βラクタマーゼ産生株があり単独は当てにならない。Prevotella属はメトロニダゾールに感性を保つがクリンダマイシン非感性が多い。アミノグリコシド系・には通常耐性。

出典

  1. 1.Effects of estradiol and progesterone on Bacteroides melaninogenicus and Bacteroides gingivalis(Infection and Immunity(Kornman KS, Loesche WJ)・1982)Europe PMC(PMID 6119293)の抄録で確認した。Bacteroides melaninogenicus subsp. intermedius(現Prevotella intermedia)が妊娠中に歯肉縁下菌叢で増えるという先行知見を受けた試験管内研究であること、同菌が標識エストラジオール・プロゲステロンを取り込み、発育曲線ではB. melaninogenicusのintermedius・melaninogenicus両亜種が必須発育因子であるビタミンKの代わりにプロゲステロンまたはエストラジオールを利用できたがB. gingivalis(現Porphyromonas gingivalis)はできなかったこと、ステロイドの取り込みはフマル酸の添加で増え、著者はステロイドがフマル酸還元酵素系と直接相互作用して発育を促すと推定し「生態学的な意義があるかもしれない」と述べるにとどめていること閲覧 2026-09-27
  2. 2.Treatment of stage I–III periodontitis—The EFP S3 level clinical practice guideline(Journal of Clinical Periodontology(European Federation of Periodontology)・2020)PMC全文(PMC7891343)で、推奨2.16が「患者の健康と公衆衛生への影響への懸念から、歯周炎患者の歯肉縁下デブライドメントへの全身抗菌薬の日常的な補助的使用は推奨しない」とし、続けて「特定の全身抗菌薬の補助的使用は、特定の患者群(例:若年成人の広汎型ステージIII歯周炎)では考慮してよい」としていることを確認した閲覧 2026-09-27
  3. 3.Antibiotic susceptibility profiles of oral pathogens(International Journal of Antimicrobial Agents・2012)Europe PMC(PMID 22890195)の抄録で確認した。歯周病原菌5菌種247株に歯周治療でよく使う6抗菌薬をEtestで試験し、EUCASTとCLSIの両基準で判定したこと、嫌気性菌のMIC90はすべて基準値を十分下回ったが、例外としてPrevotella intermedia 3株とFusobacterium nucleatum 1株がアモキシシリン耐性(CLSI基準)で、これらはいずれもβラクタマーゼ陽性だったこと、P. gingivalisの感受性には欧州の国によって差がみられたこと閲覧 2026-09-27
  4. 4.A multicenter survey of antimicrobial susceptibility of Prevotella species as determined by Etest methodology(Anaerobe(ESCMID Study Group for Anaerobic Infections)・2018)Europe PMC(PMID 29860038)の抄録で確認した。欧州・クウェート・トルコの臨床分離株Prevotella属19菌種508株に12薬剤をEtestで試験し、全株がピペラシリン・タゾバクタム、イミペネム、メロペネム、チゲサイクリン、メトロニダゾールに感性だったこと、アンピシリン・スルバクタムとセフォキシチンも良好な活性を示したこと、アンピシリン・クリンダマイシン・テトラサイクリン・モキシフロキサシンの非感性率がそれぞれ51.2%・33.7%・36.8%・18.3%だったこと、9.6%が3剤以上に耐性で多剤耐性株の多くはPrevotella biviaだったこと。菌種別(P. intermedia単独)の数値は抄録に無い閲覧 2026-09-27
  5. 5.Expected Resistant Phenotypes, Version 1.2(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing (EUCAST)・2023)現行版(v1.2、2023年1月)のPDFを取得し、Table 5(嫌気性菌)の表題が「嫌気性菌は通常アズトレオナム・アミノグリコシド系・ポリミキシンB/コリスチン・ナリジクス酸に耐性」と述べていることを確認した。同表にPrevotella属の個別の行は無い閲覧 2026-09-27