Internal Medicine

Internal Medicine · H-02

鉄欠乏性貧血

Iron-deficiency anemia

前提:病態
造血低下による貧血(低形成性貧血など)貧血治療薬
前提:正常
ヘムの生合成と分解;鉄の恒常性鉄とビタミンB12の吸収
疾患
鉄欠乏性貧血
症状
口角炎蒼白
検査値
HbA2トランスフェリントランスフェリン飽和度フェリチン可溶性トランスフェリン受容体血小板増多症標的赤血球
スコア
Mentzer指数

🧠 全体像は、体内鉄の枯渇によってが障害されるである。診断したら鉄を補充するだけで終わらず、月経・消化管出血、、妊娠など、鉄欠乏を生じた原因を明らかにする。は最も有用な指標だが、炎症時にはとなる。

鉄代謝

食事由来の鉄は主に十二指腸・で吸収され、に結合して骨髄へ運ばれる。大部分は赤血球Hbに利用され、を処理したマクロファージから再利用される。肝で産生されるは、鉄輸送体を分解し、と貯蔵細胞からの放出を抑える。

flowchart TD
    A["食事鉄"] --> B["十二指腸・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal jejunum'>近位空腸</span>で吸収"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transferrin'>トランスフェリン</span>で運搬"]
    C --> D["骨髄で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemoglobin synthesis'>ヘモグロビン合成</span>"]
    D --> E["赤血球"]
    E --> F["マクロファージで回収"]
    F --> C
    G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory cytokine'>炎症性サイトカイン</span>"] --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepcidin'>ヘプシジン</span>上昇"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal absorption'>腸管吸収</span>と鉄放出を抑制"]

原因

機序 主な原因
慢性血液喪失 消化性潰瘍、消化管腫瘍、、寄生虫、反復
需要増大 妊娠、授乳、成長期、持久運動
摂取不足 偏食、、厳格な食事制限
セリアック病、胃・小腸手術、活動性
その他 に伴う、反復採血

成人男性と閉経後女性の新規IDAでは、消化管出血を重要な原因として評価する。閉経前女性でも、月経量だけで説明しきれない場合、消化器症状、家族歴、重症度・再発性を踏まえて消化管評価を考える。

鉄欠乏の進行

鉄欠乏は段階的に進行する。

段階 骨髄鉄・ 血清鉄・TSAT TIBC Hb・MCV
正常 正常 正常 正常 正常
低下 ほぼ正常 上昇し始める 正常
低下 低下 上昇 Hbは正常〜低下、MCV低下開始
著減 低下 上昇 Hb低下、

臨床像

  • 、頭痛、集中力低下
  • 蒼白、頻脈
  • 、特に
  • 小児では発達・認知への影響、妊娠では母児合併症のリスク

診断

典型的な検査所見

検査 の所見
CBC Hb低下、MCV・MCH低下、上昇、しばしば
塗抹
低下。炎症がなければ特異度が高い
血清鉄 低下。ただしが大きい
TIBC・ 上昇
TSAT 低下。血清鉄 / TIBC × 100で算出
上昇し、炎症の影響を比較的受けにくい

貧血患者の鉄欠乏判定では、< 45 ng/mLを実用的なとして提案している。ただし慢性炎症、腎疾患、肝疾患ではが上昇するため、TSAT、、臨床背景を組み合わせる。

小球性貧血の比較

疾患 血清鉄 TIBC 追加の手掛かり
低下 上昇 低下 上昇、MCV/RBC > 13が参考
低下 低下〜正常 正常〜上昇 作用
正常〜上昇 正常 正常〜上昇 RBC数が保たれ、MCV/RBC < 13が参考、
上昇 正常〜低下 上昇 骨髄の、二峰性赤血球

MCV/RBC数)はスクリーニングの参考にすぎず、単独で診断しない。

原因検索

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iron-deficiency anemia, IDA'>鉄欠乏性貧血</span>を確認"] --> B["病歴・月経・薬剤・食事・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood donation'>献血</span>を評価"]
    B --> C["成人男性または閉経後女性"]
    B --> D["閉経前女性"]
    C --> E["上部・下部消化管評価を原則検討"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='menorrhagia (heavy menstruation)'>月経過多</span>と婦人科原因を評価"]
    D --> G["症状・重症度・再発性により消化管評価"]
    E --> H["陰性ならセリアック病・H. pylori・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='malabsorption'>吸収障害</span>を検討"]
    G --> H

セリアック病はまず血清学的検査を行い、陽性なら小腸生検を検討する。消化管内視鏡が陰性の場合は、非侵襲的なヘリコバクター・検査を考える。原因不明の再発例や治療反応不良例では小腸病変も再評価する。

治療

経口鉄

  • 硫酸鉄、鉄、グルコン酸鉄などを用いる。
  • 現行の推奨では、に高用量をするより、通常は鉄塩1錠を1日1回までとし、不良ならを考える。
  • 空腹時の方が吸収されやすいが、悪心・腹痛・便秘が強ければ食事とともに服用してよい。
  • Hbは数週以内に上昇し始める。反応がなければ服薬状況、持続出血、を確認する。
  • Hb正常化後も補充のため、一般に約3か月継続する。

静注鉄

経口鉄に不耐、十分な反応がない、が予想される、活動性、迅速な補充が必要な場合に検討する。少ない投与回数で必要量を補える製剤を優先し、過敏反応やなど製剤固有の副作用を監視する。

赤血球輸血

鉄欠乏そのものを治療する方法ではない。循環不全、活動性大量出血、重篤な虚血症状などに限定し、輸血後も鉄補充と出血源治療を行う。

まとめ

  • IDAはだが、早期にはMCVが正常なことがある。
  • は強い診断根拠だが、炎症時はTSATやCRPと合わせて解釈する。
  • 成人のIDAでは、鉄補充と同時にの原因を検索する。
  • 経口鉄は通常1日1回以下とし、不耐ならや静注鉄を選択する。
  • Hb正常化は治療終了を意味せず、原因治療との回復を確認する。