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Lab values · Published

標的赤血球

Target cell

別名
標的細胞コドサイト
臓器系
血液
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 H-01:貧血患者の診断アプローチ内科学 H-02:鉄欠乏性貧血内科学 L-59:高再生性貧血
関連疾患
サラセミア鎌状赤血球症肝硬変鉄欠乏性貧血

🧠 全体像)は、赤血球のの比が相対的に増大したときに生じる形態所見である。膜が相対的に余る(肝疾患やのようにが増える)場合と、ヘモグロビンが相対的に少ない(のようにが障害される)場合という、機序が正反対の2群がまったく同じ「射的の的」状の形に収束する点が最大の特徴である。臨床上もっとも重要な使い道はという2大の鑑別を後押しすることだが、単独で確定はできない。

何を見ているか

は、中心に部を残したまま周囲にがあり、その外側にもう一度ヘモグロビンの濃い輪ができる「射的の的(ブルズアイ)」状の赤血球である。この形は、赤血球のが細胞内のヘモグロビン量に対して相対的に過剰になったときに生じる。平たいの形を保てなくなった余剰の膜が中央にたるみ、たるんだ部分にヘモグロビンが集まって見かけ上の「的」ができる。

この「 / ヘモグロビン量」の比を押し上げる経路は2つあり、どちらに入っても同じ形態に行き着く。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane surface area'>膜表面積</span> / 細胞内ヘモグロビン量の比が上昇"] --> B{"どちらの経路か"}
    B -->|"膜が相対的に過剰"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane cholesterol'>膜コレステロール</span>/リン脂質比の上昇<br>(肝疾患)またはLCAT欠損"]
    B -->|"ヘモグロビンが相対的に不足"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemoglobin synthesis'>ヘモグロビン合成</span>障害<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Thalassemias'>サラセミア</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iron-deficiency anemia, IDA'>鉄欠乏性貧血</span>など)"]
    C --> E["余った膜が中央にたるむ"]
    D --> E
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='target cell'>標的赤血球</span>として観察される"]

膜が過剰になる経路では、肝疾患によるの上昇や、でのが膜の張力を落とし、面積だけが相対的に増える。ヘモグロビンが不足する経路では、やHbC症のようにの合成・構造そのものが障害されるか、のようにの材料が不足し、細胞内容積に対して中身が薄くなる1。原因の系統はまったく異なるのに行き着く形態が同じであることが、を見ただけでは原因を一つに絞れない理由である。

形態基準

と判定するのは、薄く均一に引き延ばされた適切な観察領域に限る。塗抹の引き終わりに近い厚い部分や辺縁は、乾燥不良や作製時の物理的な力で赤血球が正常な両凹形を保てず、に似たを生じやすい。真のかどうかは、赤血球が薄く1層に並ぶ観察に適した領域で判定し、辺縁や厚い部分だけで見た所見を過大評価しない。

💡 肝疾患によるの背景で、によるの背景で見られることが多く、同じ形態でも背景となるMCVが異なる2の有無だけでなく、周囲の赤血球の大きさも合わせて読むと原因の見当がつけやすい。

主な意味

機序の群 代表疾患・状況 一緒に見る所見
障害 、HbC症・HbSC症(著明に出現)、(軽度にとどまる) MCV、、Hb分画
膜脂質の相対的過剰 肝硬変などの肝疾患、 ビリルビンAST・ALT
脾臓による膜の刈り込み喪失 赤血球の低下、他の異常形態の出現
全般 HbSC症を含む鎌状赤血球症

はどちらもだが、の目立ち方が異なるでは目立つが高頻度に出現するのに対し、では出現しても軽度にとどまる。だけでなく、複数の指標を組み合わせて両者を隔てる。

指標 (保因者)
貧血の程度に応じて低下 貧血の程度の割に保たれる(正常〜上昇)
上昇 正常〜軽度上昇
メンツァー指数(MCV/ > 13が参考 < 13が参考
低下 正常
HbF 正常 上昇(β)が特徴的

💡 メンツァー指数もも、あくまでスクリーニングの参考値である。で鉄欠乏を除外できて初めて、Hb分画(・HbF)でを積極的に支持する、という順序で読む。

読み方

flowchart TD
    A["塗抹で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='target cell'>標的赤血球</span>を確認"] --> B{"MCVは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microcytosis'>小球性</span>か"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microcytosis'>小球性</span>"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ferritin'>フェリチン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transferrin saturation, TSAT'>トランスフェリン飽和度</span>を確認"]
    C --> D{"鉄欠乏を示すか"}
    D -->|"あり"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iron-deficiency anemia, IDA'>鉄欠乏性貧血</span>として治療し反応を見る"]
    D -->|"正常"| F["Hb分画(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemoglobin A2'>HbA2</span>・HbF)を確認"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Thalassemias'>サラセミア</span>を疑い家族歴・出身地域を確認"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='normocytic'>正球性</span>〜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macrocytic'>大球性</span>、または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='red blood cell count'>赤血球数</span>が保たれる"| H["肝機能・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='splenectomy'>脾摘</span>歴を確認"]
    H --> I["肝硬変・LCAT欠損・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='post-splenectomy'>脾摘後</span>を考える"]

であれば)を先に確認し、鉄欠乏が否定されて初めてHb分画に進む。は地中海沿岸・中東・南アジア・東南アジア・アフリカ系の出身者に多く、家族歴と出身地域の聴取が診断の後押しになる。MCVがでない、あるいはが貧血の程度に比べて保たれていない場合は、肝の既往を確認する方向に切り替える。

⚠️ 測定上の注意

  • 塗抹の引き終わりや厚い部分で人工的に生じた様の形態を、真のと誤認しない。薄く均一に引き延ばされた領域で判定する1
  • EDTA採血管での保存時間が長いと赤血球の形態が変化し、様の形態を含め評価が不正確になることがある。採血から染色までの時間が延びるほど解釈は慎重にする。
  • 少数のの出現は非特異的であり、健常者や他の貧血でも散見される。だけで診断を確定しない
  • を個別には検出できない。確定は目視の塗抹に委ねる。

経時変化とモニタリング

が消えるかどうかは、原因を切り分ける手がかりになる。では鉄補充によってが回復するとは消退するが、ではの合成障害そのものが変わらないため、は治療後も持続する形態である。治療反応を見る目的で塗抹を追う場合は、単回の所見よりも、鉄補充後や輸血後の推移を見て「消えるか、残るか」を確認する。

まとめ

  • は、赤血球のとヘモグロビン量の比が相対的に増大したときに生じる形態所見で、膜が余る経路(肝疾患・)とヘモグロビンが不足する経路(など)のどちらからも同じ形に行き着く。
  • 判定は薄く均一に引き延ばされた適切な観察領域で行い、塗抹の厚い部分・辺縁で生じると混同しない。
  • 主な原因は障害(、HbC症・HbSC症で著明、では軽度)、肝疾患・などの膜脂質過剰、全般に大別できる。
  • はどちらもだが、・メンツァー指数・/HbFを組み合わせて鑑別する。
  • 塗抹作製の、EDTA保存時間、少数出現の非特異性に注意し、だけで確定診断としない。
  • では鉄補充でが消退するのに対し、では治療後も持続する点が鑑別に使える。

出典

  1. 1.Poikilocytosis(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2026)標的赤血球(コドサイト)は細胞内容積に対する膜表面積の相対的増加で生じ、肝疾患では膜コレステロール減少による張力低下、ヘモグロビン異常症では細胞内ヘモグロビン分布の偏りが機序となる。サラセミア・肝疾患・HbC症・脾摘後で見られ、高湿度下で作製した塗抹では人工的に最大5%程度まで出現しうる閲覧 2026-08-03
  2. 2.Target Cells(American Society of Hematology・2016)標的赤血球は細胞容積に対する膜表面積の過剰で生じる。肝疾患による標的赤血球は大球性の背景で、サラセミアによる標的赤血球は小球性の背景で見られることが多く、HbC・HbE症、脾摘後でも認められる閲覧 2026-08-03