画像診断学

画像診断学 · 03

CTの基礎:物理と原理

Basics of computed tomography: physics and principles

前提:正常
CTの原理と世代CT画像再構成CTのハンスフィールド単位とウィンドウ処理X線造影剤実効線量

🧠 全体像:は「X線がどれだけ弱められたか(減弱)」を体の断面の各点で測り、その値を値()という数字の地図にして灰色の濃淡で見せる検査である。読むときは、①何か(何でできているか)→②どのウィンドウで見ているか→③造影剤を使ったか、使ったならどのかの3点をいつも確かめる。造影剤と被ばくには固有の危険があるので、検査前に腎機能・過敏反応歴・・甲状腺・妊娠を確認する。臨床での使い分けはので扱う。

1. CTは何を測っているのか

はX線を使って体の(のスライス)を作る画像診断法である。体を通り抜けたX線の強さを多方向から測り、各点の減弱係数をコンピュータで再構成して、灰色の濃淡の画像として表示する。

⭐ が測っているのは「濃度(X線の減弱の大きさ)」である。 単純X線写真が体の厚み全体の重ね合わせ(重積像)なのに対し、は断面ごとに各点の値を分けて求めるので、組織が重ならず、拡大もされない。

flowchart TD
    A["X線管からX線を照射"] --> B["体を通過する間に<br>組織ごとに減弱する"]
    B --> C["反対側の検出器が<br>残ったX線の強さを測る"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tube (X-ray)'>管球</span>と検出器が回転し<br>多方向から測定を繰り返す"]
    D --> E["コンピュータが断面の各点の<br>減弱係数を再構成"]
    E --> F["減弱係数を水基準の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>値(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hounsfield unit'>HU</span>)に換算"]
    F --> G["ウィンドウ設定に従って<br>灰色の濃淡で表示"]

装置の構成

部品 役割
ー 患者が通るドーナツ状の筐体。内部の回転部にX線管と検出器を載せる
X線管(X線源) X線を扇状に照射する。検出器と向かい合わせに配置され、一緒に体の周りを回る
検出器 体を通過したX線を受ける。現代の装置では体軸方向に多数の列が並ぶ(検出器)
寝台 患者を乗せて体軸方向(頭尾方向)に移動する

ーの覆いを外すと、円形の回転枠の一方にX線管、その正反対に弧状の検出器が取り付けられ、X線が枠の中心を横切って扇状に検出器へ向かう配置になっている。

多列検出器CT

現代の検出器は体軸方向(z方向)に複数の検出器列を持つ。1回転で複数のスライスの情報を同時に集められるため、とが上がり、被ばくも減らせる。

項目
検出器 体軸方向に1列 体軸方向に多数の列
1回転で得られるスライス 1枚 複数枚を同時に
検出器列の信号の使い方 ― 1列ずつ使えば薄いスライス、数列をまとめれば厚いスライスになる

検出器1列の幅は、作りたい最も薄いスライスに合わせてある。たとえば中央の4列を1列ずつ使えば「薄いスライス4枚」、3列ずつ束ねて12列を使えば「厚いスライス4枚」になる。薄いスライスは細部が見えるが雑音が増え、厚いスライスは雑音が減るが小さな病変がぼける。

ヘリカル(らせん)撮影

X線管と検出器が連続回転しながら寝台が一定速度で進むので、X線のは患者から見るとらせんを描く。途切れのない体積データが得られ、一度の息止めの数秒間で複数の部位を撮り終えられる。この体積データから、あとで任意の厚さ・任意の断面の画像を作り直せる(5節)。

💡 は足側から見上げた向きで表示する。 画面の左側が患者の右、右側が患者の左である。左右マーカーを確かめてから所見の左右を記載する。

2. CT値(ハンスフィールド単位)

各点の減弱係数は、水を基準にした相対値である()で表す。

値()=1000×μ組織−μ水μ水\text{値()} = 1000 \times \frac{\mu_{組織} - \mu_{水}}{\mu_{水}}

水が0 、空気がおよそ−1000 になるように目盛りが決まっている。濃度が違えば灰色の濃淡が違って表示される。

物質・組織 典型的な値
骨 +400〜+1000
軟部組織 +40〜+80
水 0
脂肪 −60〜−100
肺 −400〜−600
空気 −1000
xychart-beta
    title "代表的な組織のCT値(範囲の中央付近をとった模式値)"
    x-axis ["空気", "肺", "脂肪", "水", "軟部組織", "骨"]
    y-axis "CT値(HU)" -1000 --> 1000
    bar [-1000, -500, -80, 0, 60, 700]

⭐ 金属・骨のようにX線を多く止めるものは白く写り、と呼ぶ()。空気・脂肪のようにX線をあまり止めないものは黒く写り、低吸収と呼ぶ。「白い=病変」ではない。たとえば口の中に含んだ大きな飴玉は、左下の歯肉と頬の間に完全な円形のな塊として写り、腫瘤と見誤りうる。

💡 値は目安の範囲であり、造影剤が入った組織や血管では値が上がる。凝血した血液(急性血腫は50〜80 )や脂肪を含む腫瘤(−100 前後)のように、数字そのものが診断の手がかりになる例はので扱う。

画像で確かめる

3. ウィンドウ処理(後処理)

値の目盛りは空気の−1000 から骨・金属側の+3000 程度まで約4000段階あるが、人の目が見分けられる灰色の濃淡は30〜40段階程度しかない。そこで、見たい値の範囲だけを灰色の階調に割り当てる。これがウィンドウである。

  • (L):表示する範囲の中心の値
  • (W):表示する範囲の広さ(何分を灰色に割り当てるか)
  • 範囲より上の値はすべて白、下の値はすべて黒になる
  • 範囲内の値だけが、目に見分けやすいで表示される

表示される範囲は「L − W/2 〜 L + W/2」で求められる。

ウィンドウ レベル/幅 表示される範囲 何を見るか
軟部組織条件(縦隔・腹部条件) 50 / 400 −150〜+250 、筋、血管、液体貯留、リンパ節
400 / 1800 −500〜+1300 骨、石灰化、異物
−600 / 1500 −1350〜+150 肺実質、、など空気を含む構造
脳条件 40 / 80 0〜+80 灰白質・白質の差、

💡 ウィンドウを変えても、画素の値は1つも変わらない。 同じ上腹部の造影CTを軟部組織・骨・の3条件で表示し、同じ場所に(ROI)を置くと、−106 、87 、347 といった値は3枚とも同じである。変わるのは「どの範囲を白黒の階調に当てるか」だけで、軟部組織条件では肝・腎・膵の差がよく見え、では骨の内部構造だけが見え軟部は灰色一色になり、では軟部はほぼ白く飛んで空気を含む構造だけに階調が残る。

⚠️ 狭い幅のウィンドウでは、範囲外の病変が見えなくなる。 脳条件(幅80)では骨はすべて真っ白でが埋もれる。では必ずでも見直す。

flowchart TD
    Q["何を見たいか"] --> S["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='solid organ'>実質臓器</span>・血管・液体・<br>リンパ節"]
    Q --> B["骨・石灰化・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metallic foreign body'>金属異物</span>"]
    Q --> L["肺実質・遊離ガス・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='mediastinal emphysema (pneumomediastinum)'>縦隔気腫</span>"]
    Q --> BR["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brain parenchyma'>脳実質</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute blood loss'>急性出血</span>"]
    S --> S2["軟部組織条件<br>L 50 / W 400"]
    B --> B2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone window'>骨条件</span><br>L 400 / W 1800 前後"]
    L --> L2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lung window'>肺野条件</span><br>L −600 / W 1500"]
    BR --> BR2["脳条件<br>L 40 / W 80"]

画像で確かめる

  • EI-08-02 頭蓋骨骨折を伴う右急性:自転車事故後の。同じを脳条件(L 40 / W 80)と(L 600 / W 2800)で並べる。脳条件では右側に型のがあり、右のとを伴う。では同じ位置の頭蓋骨に()が見える。1回の撮影を2つのウィンドウで読む典型例である。
  • EI-06-01 多発肺転移:悪性黒色腫の。立位胸部正面X線と、造影胸部CTのの。では大きさの違う円形の軟部濃度結節が両肺に多数あり、よりに多い。造影CTでもにすると、黒い肺の中の結節が浮かび上がる()。
  • EI-08-03 左:免疫不全患者の胸痛・咳・倦怠感。同じ造影胸部CTのをとで並べる。では左肺の背側にある液体の貯留を厚い造影される壁が囲むのが分かり、では同じ病変の内部に空気が入っているのが分かる。壁の造影は、空気の有無と周りの肺はで読む()。

4. アーチファクト

はよく起こり、病変に似て見えたり、を診断できないほど落としたりする。原因で2つに分けると整理しやすい。

種類 原因 見え方 対策
患者に起因: 撮影中の呼吸・体動。大量胸水などで息止めができない患者に多い 構造がぶれて二重・ぼやけて見える。横隔膜の輪郭が不鮮明になる 息止めの説明、撮影時間の短縮、小児や協力できない患者では鎮静
物理に起因:ビーム硬化 金属人工関節、の厚い骨など高密度の物体が低エネルギーのX線光子を選択的に吸収し、通過後のX線が「硬く」なる 金属から放射状に伸びる白黒の(ストリーク)、骨と骨の間の暗い帯 金属の除去(装身具・衣服)、撮影条件や再構成の工夫

💡 はのほうが問題になりやすい。 は撮像時間が長いためである。は数秒で撮れるので影響は比較的小さいが、ゼロではない。

5. 画像の再構成と表示

  • が基本:データはとして再構成される。
  • :撮影の体積データから・を作る。臓器の長軸や病変の上下の広がりを見やすくする。
  • 元表示(ボリュームレンダリング):造影剤で白くなった血管や骨だけを立体的に取り出す。から両下肢の末梢までの動脈を1枚の立体像に描くや、多発の全体像のに使う(の)。
  • HRCT:のこと。薄いスライスで撮り、高(強調)の再構成関数で処理する技法。肺・・の評価に使う。
  • 再構成の計算法(逆投影、逐次近似法など)と・線量の関係は画像再構成を参照。

6. 造影剤

消化管への造影剤

腸管の内腔に目印をつけ、腸管と腫瘤・液体貯留を区別するために使う。

種類 例 での見え方 向いている場面
陽性造影剤 ヨード系の(を含むなど) 腸管内腔が白くになる 術後の、消化管瘻、液体貯留・膿瘍の疑い
中性(陰性)造影剤 水、 より低吸収で内腔が黒っぽく見える の疑い(造影されたの増強を内腔と区別して見られる)

は経口(最も多い)、経直腸、経腸カテーテル・瘻孔・からの3つである。

  • 後、小腸から漏れた濃い造影剤が腹壁の開腹創の中まで白く入り込む → 腸管の損傷・を示す。
  • 経直腸で注入した造影剤が腸管の外(直腸周囲)に白く見える → のを示す。

⭐ 陽性造影剤が「管の外」にあれば漏れである。 で小腸・大腸が一様に白く満たされていれば正常の分布で、そこから外れた白い溜まりを探す。

静注造影剤:使う場面と使わない場面

静注用は、腕の静脈に留置した針から自動注入器(インジェクター)で一定速度で急速注入する。

静注造影を通常使わない 静注造影を使う
異物の描出(カテーテル、など)
腎結石の検索 血流の評価(虚血、梗塞)
腫瘍の鑑別、リンパ節腫大
肺の・ 炎症、膿瘍
脳卒中で出血を除外するとき 胸膜疾患
脂肪を含むの確認 ―
気胸・ ―
腹腔内の遊離ガス・遊離液体 ―
骨そのものの評価(での骨折、硬化性など) ―

💡 左の列は、それ自体の濃度が周囲と大きく違うもの(金属、結石、石灰化、空気、脂肪、)である。造影剤を入れると、かえって造影された血管や臓器に紛れて見えにくくなる。たとえばは細胞内に脂肪を含むためで低い値(10 以下が目安)を示し、だけで診断できることが多い。右の列は血流の有無や多寡で病変を見分けたいものである。

ダイナミックCTと造影の時相

ダイナミックは、を撮ったあと、造影剤を静注して同じ範囲を時間をずらして繰り返し撮る方法である。上腹部では病変ごとに血流のパターンが違うため、よくある病変をダイナミック(またはダイナミック)で見分けられる。

撮影のタイミングはで決める。大動脈にを置いて造影剤の到着を監視し、値がに達した時点を起点として、各の撮影を始める。

タイミング(到着検知から) よく造影されるもの 見つけたいもの
単純() 造影前 ― 腎・尿管(ときに)の結石、肝・膵の石灰化、肝腫瘍内の脂肪、・骨髄の脂肪、血腫、腸管拡張、異物、遊離ガス・液体。を判定する基準になる
早期(相) 直後 動脈だけがくっきり白い 、、動脈瘤、動脈の解剖学的変異、動脈の狭窄・屈曲・プラーク
後期(腎皮質相) 15〜20秒 多血性病変、胃・、膵実質、腎皮質 肝の・・腺腫、膵、、悪性黒色腫の転移、
相(後期) 50〜60秒 肝・脾の実質、門脈 乏血性の肝病変(嚢胞、膿瘍、多くの転移)、
腎実質相(静脈相) 70〜80秒 髄質を含む腎実質全体、静脈 、静脈の解剖・血栓、の「()」
() 5〜15分以上 線維性病変、腎と尿路(・腎盂・尿管) 肝の、線維性の転移(乳癌に多い)、腎盂・尿管の(癌)

同じ患者の上腹部を4相で並べると、の違いが腎に一番よく表れる。では腎は一様な灰色、後期では皮質だけが白く髄質が暗い(が見える)、静脈相では腎全体が一様に白い、では腎盂・に排泄された造影剤が白く溜まる。この患者は経口の陽性造影剤も飲んでおり、小腸はどのでも白い。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='noncontrast CT'>単純CT</span><br>石灰化・結石・脂肪・出血・空気<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='contrast enhancement'>造影効果</span>判定の基準"] --> B["造影剤を静注<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='bolus'>ボーラス</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='trucking'>トラッキング</span>で到着を検知"]
    B --> C["早期<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arterial phase'>動脈相</span>(直後)<br>動脈の形:解離・出血・動脈瘤・狭窄"]
    C --> D["後期<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arterial phase'>動脈相</span>(15〜20秒)<br>多血性病変:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatocellular carcinoma, HCC'>肝細胞癌</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='focal nodular hyperplasia, FNH'>限局性結節性過形成</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='insulinoma'>インスリノーマ</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuroendocrine tumor, NET'>神経内分泌腫瘍</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic parenchyma'>肝実質</span>相(50〜60秒)<br>乏血性の肝病変・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='portal vein thrombosis'>門脈血栓</span>"]
    E --> F["腎実質相・静脈相(70〜80秒)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal cell carcinoma (RCC)'>腎細胞癌</span>・静脈血栓・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatocellular carcinoma, HCC'>肝細胞癌</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='washout'>洗い出し</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='delayed phase'>遅延相</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='excretion phase'>排泄相</span>(5〜15分以上)<br>線維性病変・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cholangiocarcinoma'>胆管癌</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urothelial carcinoma'>尿路上皮癌</span>"]

💡 を増やすほど被ばくが増える。 臨床上の問いに必要なだけを選ぶ(8節)。臓器ごとのの使い分け(肝・膵・)はので扱う。多血性病変についてはも参照。

画像で確かめる

  • EI-10-02 スタンフォードA型:突然の激しい。大動脈ののと。からに低吸収のがあり、のと楕円形のに分かれる。のほうが造影剤濃度が高く白い。解離はに及ぶ。スタンフォードA型かB型かはに解離があるかで決まるので、まで必ず追う()。
  • EI-06-05 :倦怠感と体重減少で腫瘍を検索した患者。同じ(S5〜6)の低吸収腫瘤にを置くと、で平均27 、で平均44 と上がる。があるから「造影された」と数字で言える例である。活動性出血をと造影CTの比較で示す例はので扱う。

7. ヨード造影剤の安全性

腎:造影剤関連急性腎障害

血管内に投与したは腎毒性をもちうる。造影剤投与のあとに起こるを、以前は()と呼んだが、欧州泌尿生殖器放射線学会()は2025年版から米国と同じ()という呼び方に改めた。定義は、血管内投与後48〜72時間以内にが0.3 mg/dLを超えて、または基礎値の1.5倍を超えて上昇することである。1 造影剤が本当に原因かを区別する考え方は・で扱う。

危険因子 内容
腎機能(静注、または肺・末梢循環で薄まってから腎に届く) 30 mL/min/1.73 m² 未満
腎機能(腎へ薄まらずに届くの、または患者) 45 mL/min/1.73 m² 未満
急性の腎障害 既知または疑いの
手技 ので大量に使う、48〜72時間以内に繰り返し投与する

のとは、左心、胸部・より上の、への注入のように、造影剤がほとんど薄まらずに腎へ届くものをいう。1

検査前に腎機能を測る。

  • 30以上:静注造影剤を使ってよい。
  • 30未満:禁忌ではなく高リスクとして扱う。検査の利益と危険を比べ、を使わない代替検査(、など)を考え、造影するならの予防輸液を行う。経口の水分摂取だけでは予防にならず、有効と確立した予防薬もない。1 米国放射線学会(ACR)の現行マニュアルも、予防輸液の適応をまたは 30未満とし、30〜44は個別の高リスク状況で考える立場である。2
  • 測定時期の目安は、急性疾患・入院患者では投与前7日以内、それ以外は3か月以内である。1
  • 高リスク例では投与48時間後にを測り直す。

⚠️ 緊急時はの結果を待って治療を遅らせない。 待つと害がある場合はなしで造影CTを行い、 30未満と同じ扱いでできるだけ早く輸液を始め、検査後に腎機能を追う。1 「腎機能が悪いから非緊急なら造影は一律に不可」とするのは古い運用で、現在は代替検査の可否と利益の大きさで個別に決める。

腎以外の副作用

時期 内容 注意点
即時型(投与後1時間以内、まれに6時間まで) 軽いじんま疹からアナフィラキシーショックまでの 過去の中等症・重症反応、喘息が危険因子。かつて使われたので多かった
非即時型(1時間〜1週間、まれに8週間まで) 皮疹など皮膚反応、頭痛 多くは軽症で対症療法。再投与で再発しうることを患者に伝える
さらに遅れて(投与後3〜4週) 未治療の甲状腺機能亢進症の患者

時期の区分は 2025年版による。1

の危険の見積もり

  • 同じ系統の造影剤に過去に反応したことが最大の危険因子で、再投与での反応の危険はおよそ5倍になる。2
  • 喘息は反応の可能性を高めるが、喘息だけを理由に造影をやめたりしたりはしない。2
  • ⭐ ヨード系の薬()や甲殻類へのアレルギーは、造影剤アレルギーと同じではない。 どちらも有意な危険因子ではない。2
  • との間にはない。一方の系統への過去の反応は、もう一方への反応をなアレルギー以上には予測しない。2

⚠️ 過去の重症反応(アナフィラキシー、、など)の扱いは変わってきた。 かつては同系統の造影剤のと教えられたが、現行のACRマニュアルはとし、どうしても必要で代替がなければを考えるとしている。2 2025年版は、薬剤アレルギー専門医へ紹介し、検査なら評価結果を待って延期し、原因の造影剤が分かっていれば別の造影剤に替え、投与後30分以上はを確保して観察し、・緊急のどちらでも蘇生に慣れたチームを近くに置くよう求めている。緊急検査では(50 mg静注と抗ヒスタミン薬を造影30分以上前)を考える。1 をしても反応()は起こりうるので、は「安全の保証」ではない。

メトホルミン

は腎から排泄される。造影剤でが起こると体内に溜まり、の危険が出る。造影剤そのものが危険なのではなく、「腎障害が起きたとき」が問題である。

状況 現行の対応
30以上でがない 通常どおり継続してよい
30未満、がある、または腎へする 造影剤投与の時点から中止し、48時間以内にを測って、腎機能が大きく変わっていなければ再開する
() 特別な対応は不要

根拠は 2025年版とACRマニュアルである。12 「48時間し、腎機能が正常と確認できてから再開」という覚え方は現行とほぼ同じ内容で、は投与の時点からでよく、検査の数日前から止める必要はない。

甲状腺

は大量のヨウ素を含むため、甲状腺に2つの問題を起こす。

  1. ヨウ素による甲状腺機能亢進症の誘発:危険が高いのは、未治療のと、機能を持つ(とくに高齢者、地域)である。甲状腺機能が正常な人には危険はない。顕在性の甲状腺機能亢進症にはを投与せず、危険が疑われればを測り、高リスク例ではがや経過観察を担う。1 の患者では避ける。2
  2. の治療・検査との干渉:造影剤のヨウ素が甲状腺を飽和させ、が取り込まれにくくなる。従来は「の前2か月はを使わず、2か月は甲状腺のを避ける」とされてきた。現行のACRマニュアルは、期間を甲状腺機能亢進症で理想的には3〜4週、甲状腺機能低下症で6週としている。2 欧州核医学会(EANM)の2023年指針は、良性のの前に、腎機能が正常なら水溶性から6〜8週空けるとしており、治療の側の基準はやや長い。3 を控えた患者では、造影の必要性を核医学・内分泌の担当と事前にすり合わせる。 そのものは核医学で扱う。

妊娠・授乳

  • 妊娠:撮影が不可欠な例外的状況では、妊婦にを投与してよい。は、その場合に新生児の甲状腺機能を生後1週以内に確認するよう求める(欧州では新生児のは全員に行う通常検査である)。1 一方ACRは、母体への単回投与は新生児の甲状腺機能に影響しないとしている。2
  • 授乳:の投与後も通常どおり授乳を続けてよい。1

検査前の準備

区分 確認・準備すること
放射線・に関して 装身具、画像に写り込む金属・衣服を外す(の原因)。妊娠の有無を確認する。小児や協力できない患者では体動を防ぐため鎮静が必要なことがある
静注に関して を測る。過去の血管内(、造影CT)での反応歴を聞く。未治療の甲状腺機能亢進症を除外する。腎機能低下例での扱いを決める
絶食 かつては造影前3〜4時間の絶食が勧められた(必須ではないとされていた)。現在の低浸透圧・では絶食の予防効果を示すデータがなく、ACRは通常の血管内造影の前に絶食は不要とし、も低・の前の絶食を推奨していない。絶食は、嘔吐の多かったの時代の名残である。鎮静を伴う場合は麻酔の指針に従う21
flowchart TD
    A["静注造影CTの依頼"] --> B{"造影しないと<br>答えが出ない問いか"}
    B -->|"いいえ"| B1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='noncontrast CT'>単純CT</span>または別の検査"]
    B -->|"はい"| C{"緊急で待てないか"}
    C -->|"はい"| C1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='estimated glomerular filtration rate'>eGFR</span>を待たずに撮影<br>高リスクとして輸液を早く開始<br>検査後に腎機能を追う"]
    C -->|"いいえ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='estimated glomerular filtration rate'>eGFR</span>・反応歴・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='metformin'>メトホルミン</span>・甲状腺・妊娠を確認"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='estimated glomerular filtration rate'>eGFR</span> 30未満<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute kidney injury, AKI'>急性腎障害</span>"}
    E -->|"はい"| E1["代替検査を検討<br>造影するなら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravenous'>静脈内</span>の予防輸液<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='metformin'>メトホルミン</span>は投与時点から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drug holiday (treatment interruption)'>休薬</span>"]
    E -->|"いいえ"| F{"同系統の造影剤で<br>過去に反応"}
    E1 --> F
    F -->|"重症"| F1["アレルギー専門医に相談<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='elective'>待機</span>検査は延期・別の造影剤<br>緊急なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='premedication'>前投薬</span>と蘇生<span class='jp-term jp-term-diagram' title='body plan'>体制</span>"]
    F -->|"軽症・中等症"| F2["原因薬を特定し別の造影剤<br>投与後30分以上観察"]
    F -->|"なし"| G["通常どおり造影"]

8. 被ばく

はを使い、1回のは撮影部位・の数・撮影範囲で一桁近く変わる。成人の代表値は次のとおりである。4

検査 の代表値 胸部X線(0.1 mSv)の何倍か
胸部X線 約0.1 mSv 1
約1.6 mSv 約16
胸部CT 約6.1 mSv 約60
腹部骨盤 約7.7 mSv 約80
腹部骨盤(単純+造影の2回) 約15.4 mSv 約150

検査の平均は、検査の種類を通じておよそ2〜20 mSvの範囲にある。5 「標準的なは5〜20 mSv、胸部X線の100〜800倍」という覚え方もあるが、倍率は胸部X線を何mSvと置くかで5倍変わる(0.02 mSvと置けば2〜16 mSvのが100〜800倍、0.1 mSvと置けば20〜160倍)。倍率は基準をそろえて使い、桁の目安として覚える(画像診断入門)。

💡 を1つ増やすと、同じ範囲をもう1回撮ることになるので線量はほぼその分だけされる。単純+造影の2相で約2倍になる腹部骨盤の値が、その実例である。

  • の原則:診断に必要なを保ちながら、合理的に達成できる限り線量を低くする。
  • が第一歩:臨床上の問いに合った適切な検査を依頼することが、の被ばくを減らす最初の手段である。
  • 最適化が次:が正当と判断されたら、撮影範囲・数・撮影条件を必要最小限にする。はスクリーニング、小児、繰り返しの経過観察に使う(の)。
  • 妊娠:妊娠の有無を検査前に確認する。ただし必要なを妊娠だけを理由に一律に中止しない。同等の情報が得られるなら超音波やを優先し、母体の診断遅れの危険と胎児線量を比べて決める。6
  • 小児:放射線への感受性が高く余命が長いので、と線量の最適化がとくに重要である。小児であること自体は禁忌ではない。

の考え方はを参照。

9. CTの長所と短所

短所・注意点
元の体積データが得られる の線量が高い
組織が重ならず、拡大もされない 装置が高価
がよい 撮影は主に(・は再構成で作る)
軟部組織の分解能もよい(主に静注) 軟部組織の分解能はに劣る
たいていの施設で使える 骨による(など)
速い(数秒〜数分で複数部位を撮れる) 造影剤に関する(造影剤への過敏反応、腎機能低下)と、被ばくに関する配慮(妊娠、小児)。いずれも一律の禁忌ではなく、利益と危険で判断する
、小さな腎結石、異物、骨片を描出できる ―
肺組織をよく描出できる ―

10. まとめ

  • は断面の各点のを測り、水0・空気−1000を基準にした値()で表す。
  • 検出器と撮影で、一度の息止めで広い範囲の体積データを撮り、任意の断面や立体像を作れる。は足側から見た向き(画面左=患者右)で表示する。
  • ウィンドウ(レベルと幅)は表示だけを変え、値は変えない。軟部組織・骨・・脳条件を目的で使い分け、外傷ではでも見直す。
  • には体動(患者側)とビーム硬化(物理側)があり、病変に似ることがある。
  • 静注造影は血流を見たいときに使い、がもともと大きいもの(石灰化・結石・空気・脂肪・・異物)には使わない。ダイナミックは単純→早期動脈→後期動脈→→腎実質(静脈)→遅延の順に、病変の血流パターンを読む。
  • の前には、(30未満は高リスク)、同系統の造影剤への反応歴、、甲状腺、妊娠を確認する。過去の重症反応は現在はとして個別に判断し、や甲殻類のアレルギーは造影剤アレルギーではない。
  • 被ばくは:まず(適切な検査の選択)、次に最適化(必要な範囲とだけ)。

出典

  1. 1.ESUR Contrast Media Safety Committee Guidelines 2025(European Society of Urogenital Radiology・2025)発行元が配信している2025年版PDFの本文で確認した。2025年から旧称の造影後急性腎障害(PC-AKI)を造影剤関連急性腎障害(CA-AKI)へ改め、造影剤の血管内投与後48〜72時間以内の血清クレアチニン0.3 mg/dL超(26.5 μmol/L超)または基礎値の1.5倍超の上昇と定義すること。患者側の危険因子が、静注または二次通過の動注ではeGFR 30未満、腎へ直接流れる初回通過の動注またはICU患者ではeGFR 45未満、既知または疑いの急性腎不全であり、手技側の危険因子が初回通過の大量動注と48〜72時間以内の反復投与であること。eGFRの測定時期が急性疾患・入院患者では投与前7日以内、それ以外では3か月以内であること。緊急時は結果を待つと害があるならeGFRを待たず、得られない場合はeGFR 30未満の手順にできるだけ従うこと。高リスク例ではヨード造影剤を使わない代替検査を考え、静脈内の予防輸液(生理食塩水または炭酸水素ナトリウム)を用い、経口補水だけの予防は推奨せず、薬物による予防で一貫した効果を示したものはないこと、高リスク例では48時間後にeGFRを測ること。即時型過敏反応は投与後1時間以内(まれに6時間まで)、非即時型は1時間〜1週間(まれに8週間まで)に起こること。重症の即時型反応の既往がある患者は薬剤アレルギー専門医へ紹介し、待機検査は評価結果を待って延期し、緊急検査では前投薬(プレドニゾロン50 mg静注と抗ヒスタミン薬クレマスチン2 mg静注を造影30分以上前)を考慮し、原因薬が分かれば別の造影剤を選び、投与後30分以上静脈路を確保して観察すること。メトホルミン服用者は、eGFR 30超で急性腎障害がなければ通常どおり継続し、eGFR 30未満・初回通過の動注・急性腎障害のいずれかでは造影剤投与の時点から中止して48時間以内にeGFRを測り、腎機能が大きく変わっていなければ再開すること。未治療のバセドウ病と自律性機能を持つ多結節性甲状腺腫(とくに高齢者・ヨウ素欠乏地域)が甲状腺機能亢進症誘発の危険群で、顕在性の甲状腺機能亢進症にはヨード造影剤を投与しないこと。妊婦には撮影が不可欠な例外的状況で投与してよく、その場合は新生児の甲状腺機能を生後1週以内に確認すること、授乳は通常どおり続けてよいこと。重症の即時型反応の既往がある患者の造影では、待機・緊急のいずれでも訓練を受けた迅速対応(蘇生)チームを近くに置くこと。低・等浸透圧の非イオン性ヨード造影剤の前の絶食は推奨しないこと(絶食は嘔吐の多かった高浸透圧造影剤の時代に始まった)。閲覧 2026-09-25
  2. 2.ACR Manual on Contrast Media(American College of Radiology・2026)発行元が配信している現行PDFの本文で確認した。同じ系統の造影剤への過去のアレルギー様反応が将来の反応の最大の危険因子(約5倍)であること、甲殻類やポビドンヨードのアレルギーは有意な危険因子ではないこと、造影剤の系統間(ガドリニウムとヨード)に交差反応はないこと、喘息は反応の可能性を高めるがそれだけを理由に造影を制限・前投薬しないこと、過去の重症反応は患者の状況にかかわらず同じ系統の造影剤の相対的禁忌であり、必要で代替がなければ前投薬を考慮すること。甲状腺クリーゼではヨード造影剤を避けること、放射性ヨウ素治療や甲状腺の放射性ヨウ素検査を予定している患者では造影剤が取り込みを妨げるため、洗い出し期間を甲状腺機能亢進症で理想的には3〜4週、甲状腺機能低下症で6週置くこと。現在の低浸透圧・等浸透圧造影剤では絶食の予防効果を示すデータがなく、通常の血管内造影の前に絶食は不要であること。メトホルミンはeGFR 30以上で急性腎障害がなければ中止不要で、急性腎障害・eGFR 30未満・腎動脈へ塞栓が及びうる動脈カテーテル検査では検査時または検査前に中止して48時間休薬し、腎機能の再評価後に再開すること。閲覧 2026-09-25
  3. 3.The EANM guideline on radioiodine therapy of benign thyroid disease(European Association of Nuclear Medicine・2023)PMC全文(PMC10542302)の表1で確認した。放射性ヨウ素の甲状腺取り込みを下げる薬剤・物質の休止期間として、腎機能正常を前提に水溶性の静注ヨード造影剤は6〜8週、脂溶性ヨード造影剤は3〜6か月とされていること(SNMMI 2012年手順基準から改変)。閲覧 2026-09-26
  4. 4.Radiation Dose(Radiological Society of North America, American College of Radiology・2025)2025年4月15日最終レビューのページで確認した。成人の代表的な実効線量が胸部X線0.1 mSv、頭部CT 1.6 mSv、胸部CT 6.1 mSv、腹部骨盤CT 7.7 mSv、腹部骨盤CTを造影なしと造影ありで繰り返すと15.4 mSvであり、値は体格や装置で大きく変わること。閲覧 2026-09-26
  5. 5.Effective doses in radiology and diagnostic nuclear medicine: a catalog(Radiology・2008)抄録で確認した。CT検査の平均実効線量はおよそ2〜20 mSvの範囲にあり、一般撮影は0.01〜10 mSvと1000倍以上の幅があり、自然放射線の年間平均実効線量約3 mSvと比較できること。閲覧 2026-09-26
  6. 6.Guidelines for Diagnostic Imaging During Pregnancy and Lactation(American College of Obstetricians and Gynecologists・2017)妊娠中の超音波・MRI優先、必要なX線・CTを一律に中止しないこと、ガドリニウム造影の限定閲覧 2026-08-02