小児科学

小児科学 · 1-01

小児のリンパ節腫大

Lymphadenomegaly in Children

前提:正常
リンパ節免疫系の役割・機構・器官・細胞
疾患
化膿性リンパ節炎

🧠 全体像: 小児のリンパ節腫大は感染による反応性変化が最多である。まず局在・経過・全身症状から「よくある感染」か「悪性腫瘍・結核などを疑う赤旗」かを分け、検査は疑う疾患に合わせて段階的に選ぶ。

鑑別の枠組み

病因 代表例 手がかり
ウイルス 、、、、風疹、、肝炎、、水痘 全身性、咽頭炎、発疹、肝脾腫
細菌 、黄色ブドウ球菌、、Bartonella henselae、梅毒、まれに 局所の疼痛・発赤・化膿、曝露歴
寄生虫 猫・食肉への曝露、後頸部リンパ節
悪性腫瘍 白血病、Hodgkin/非Hodgkinリンパ腫、、 硬い、固定性、進行性、B症状、血球異常
自己免疫・炎症 SLE、、、 発疹、状、長引く発熱、臓器所見
その他 などの蓄積病、薬剤反応、蛇咬傷 全身所見、、曝露歴

部位から考える

部位 主な流入領域 重要な鑑別
耳前 眼瞼・眼、顔面、頭皮 眼・耳感染、
後頸部 頭皮、頸部 風疹、、頭皮感染
・頸部前方 口腔、咽頭、舌、甲状腺 炎、、非定型抗酸菌、リンパ腫
胸郭・腹腔 悪性腫瘍や結核を強く疑う赤旗
腋窩・ 上肢、胸壁、乳房 、、悪性腫瘍
鼠径 下腹部、、肛門、下肢 下肢感染、性感染症、皮膚疾患;悪性ならリンパ腫など

問診と診察

  • 経過:急性か、4〜6週以上持続・増大するか。1
  • 随伴症状:発熱、、体重減少、倦怠感、、発疹、関節痛。
  • 曝露:猫、、未加熱肉、結核接触、旅行、、性的曝露。
  • :、、一部抗菌薬などは薬剤性リンパ節症を起こしうる。
  • 節の性状:大きさ、圧痛、発赤、硬さ、可動性、左右差、局在/全身性。

💡 健常小児でも頸部リンパ節を触れることは多い(ある評価では45%)。前頸部で1 cm未満の可動性のある節はしばしば正常範囲内である。1

  • 肝脾腫、を示唆する呼吸症状、皮膚・口腔・の感染源も探す。

⚠️ リンパ節、硬く固定した節、急速な増大、B症状、肝脾腫、血球減少、胸部症状は早期の専門評価が必要である。目安として節径2 cm超、または6週を超えて持続・増大する節も専門評価の対象とされる。1

検査の進め方

flowchart TD
    A["リンパ節腫大"] --> B["病歴・全身診察で感染源と赤旗を確認"]
    B --> C{"赤旗または持続性増大があるか"}
    C -->|"なし"| D["反応性を想定し短期経過観察"]
    C -->|"あり"| E["血算・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral smear'>末梢血塗抹</span>・炎症反応を基礎に追加検査"]
    E --> F["曝露に応じ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Epstein-Barr virus'>EBV</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytomegalovirus'>CMV</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human immunodeficiency virus'>HIV</span>・結核・Bartonellaなど"]
    E --> G["超音波、胸部X線、必要時<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>"]
    G --> H{"悪性腫瘍を疑うか"}
    H -->|"はい"| I["小児血液腫瘍科へ紹介し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='histology'>組織診</span>"]
  • 超音波では形、皮質、、血流、壊死をみる。楕円形でを保つ像は反応性を支持し、・消失・壊死は異常だが、画像だけで良悪性は確定しない。悪性を評価した小児500例のコホートでは、節径2 cm以上という基準はで独立した予測因子とならず、超音波で「」と判定された所見の方が強く悪性を予測した(約55.6)。2
  • や結核を疑えば胸部X線を行う。はを考え、深部病変・手術計画など必要時に限る。
  • リンパ腫が疑わしい場合、だけでは構築評価が不十分なことがあり、専門科と相談してコア針またはを選ぶ。超音波所見に基づき対象を絞ることで不要な生検を減らせる可能性が報告されている。2

治療

  • ウイルス性・反応性は水分、休養、など支持療法が中心。
  • 急性片側性は黄色ブドウ球菌・を想定し、地域耐性と重症度に合わせて抗菌薬・排膿を選ぶ。
  • は自然軽快も多く(90〜95%が2〜4か月で軽快)、アジスロマイシンなどは症例ごとに判断する(5日間投与でリンパ節症状は軽減するが全体の短縮は実証されていない)。3
  • 結核、、は確定診断後に専門的治療を行う。
  • 悪性腫瘍、自己免疫疾患、蓄積病は原因疾患を治療する。診断前の経験的副腎皮質ステロイドはを妨げうるため避ける。

まとめ

  • 小児では感染性が最多だが、・固定性・進行性・全身症状は赤旗である。
  • 部位の流入領域と曝露歴から検査を絞り、無差別な血清学的検査やを避ける。
  • 悪性を疑うときはを評価できる生検法を専門科と選ぶ。

出典

  1. 1.Paediatric cervical lymphadenopathy: an evidence-based approach for GPs(British Journal of General Practice・2026)健常小児の頸部リンパ節触知は45%と高頻度で前頸部の1 cm未満の節はしばしば正常範囲内であること、悪性を疑う赤旗として節径2 cm超・6週を超える持続増大・鎖骨上または膝窩リンパ節を挙げていることを確認した(対象は英国の小児科・GP向け評価経路)。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Childhood lymphadenopathy: ultrasonographic predictors of malignancy in a retrospective cohort of 500 patients(Frontiers in Pediatrics・2025)0〜18歳の小児500例(血液腫瘍専門外来、頸部リンパ節腫大が92.2%)の後方視的コホートで、単変量解析では節径2 cm以上・多発・部位が悪性と関連したが、多変量解析では超音波で悪性疑いと判定された所見のみが独立した予測因子であった(調整オッズ比約55.6、95%信頼区間14.3〜200)ことを確認した。生検は47例に施行され23例が悪性であった。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Cat Scratch Disease(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)免疫正常者の猫ひっかき病は90〜95%が2〜4か月で自然軽快すること、アジスロマイシン5日間投与でリンパ節の疼痛・腫大は軽減するが罹病期間全体の短縮は実証されていないことを確認した。閲覧 2026-08-27