Pulmonology

Pulmonology · 08

咳嗽

Cough

前提:正常
呼吸器:気道部(線毛・杯細胞・粘液クリアランス)
症状

🧠 全体像:咳嗽は分泌物・異物・刺激物を排除する防御反射である。持続期間、乾性/湿性、随伴症状、薬剤・喫煙・曝露から原因を絞り、喀血や異物、肺炎、悪性腫瘍などを見逃さない。

分類と反射弓

期間 定義 代表原因
急性 3週未満 ウイルス性、肺炎、喘息、異物、PE
亜急性 3〜8週 感染後咳嗽、百日咳、喘息
慢性 8週超1 喘息GERD、ACE阻害薬、COPD、ILD、癌

は喉頭・、外耳道、胸膜などにあり、は主に迷走神経(CN X)内喉頭枝を介して延髄・橋のへ至る。は迷走神経、、脊髄を介し、短い深吸気→→呼気筋収縮→開放で高流速を生む。

病原体と痰

急性気道感染の多くはウイルス性で、、SARS-CoV-2、RSVなどがある。細菌性では 肺炎球菌では Mycoplasma pneumoniaeChlamydia pneumoniaeLegionella pneumophila などをから考える。痰のだけでは細菌感染と断定できず、抗菌薬は診断・重症度・地域指針に基づく。

咳の性状 原因の例
急性湿性 、肺炎
慢性湿性 結核、中枢性肺腫瘍
急性乾性 炎、非定型肺炎、、喘息、PE、異物
慢性乾性 喘息、GERD、、ACE阻害薬、心疾患、習咳嗽

問診とレッドフラッグ

  • 発症、期間、喀痰・喀血、、発作性咳、
  • 、アレルゲン、有害吸入、運動、臥位、昼夜差
  • 発熱・筋痛・、眼、嚥下時むせ
  • 喫煙、ACE阻害薬、喘息/COPD/GERD、感染・ワクチン歴、職業・旅行・結核曝露

喀血、体重減少、反復肺炎、安静時・夜間の強い呼吸困難、発熱、嚥下障害、嗄声、異常診察所見、画像異常、新規・変化した咳を伴う喫煙者では早急に評価する。

診察と検査

鼻腔・、咽頭、耳道、、喘鳴・呼吸音低下、を診る。成人の慢性咳嗽では全例で胸部X線とを行い、血算と、利用可能ならFeNOも初期評価に加える。胸部X線と診察が正常なら胸部CTや気管支鏡を一律には行わず、、喀血、、異常所見、初期評価後も原因不明などの適応に絞る。では胸部X線を全例に行う必要はない。1 異物疑いでは気道確保を優先し、残存異物は気管支鏡で確認・摘出する。

flowchart TD
  A["咳嗽"] --> B{"喀血・呼吸不全・異物・重症感染?"}
  B -->|"はい"| C["緊急評価・画像・気道管理"]
  B -->|"いいえ"| D{"8週を超える?"}
  D -->|"いいえ"| E["感染後・喘息・百日咳などを評価"]
  D -->|"はい"| F["胸部X線・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spirometry'>スパイロメトリー</span><br>薬剤/喫煙確認"]
  F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper airway cough syndrome, UACS'>上気道咳症候群</span>・喘息/好酸球性気管支炎・GERD"]
  G --> H["非典型例はCT・喀痰・気管支鏡を検討"]

治療

原因治療と禁煙・原因薬中止・刺激曝露回避が基本である。

  • ACE阻害薬:開始時期と咳の発症が離れていても原因候補とし、成人の慢性咳嗽では中止して少なくとも4週間再評価する。改善に4週間以上かかることがあり、治療が必要なら適応に応じてARBへ変更する。1
  • 抗菌薬:全身状態が良好で合併症高リスクではない急性には定型投与しない。では全身状態を改善せず、咳を短縮しても平均約半日である。肺炎、百日咳などの診断または重症・高リスク例では病態別指針に従う。2
  • :原因治療を優先し、夜間のつらいなどに短期間だけ検討する。成人のに対するの有効性は一定せず、は有効性が示されていないため定型使用しない。眠気、呼吸抑制、依存、相互作用にも注意する。2
  • :単純な急性などのを定型投与しない。慢性の喀痰疾患では病態別適応を判断し、水分とを支援する。2
  • 局所は気管支鏡前の抑制に用いる。
  • 蜂蜜などの粘膜被覆は、1歳以上の小児では何もしない場合・に比べ咳嗽頻度を減らす。3 成人でも症状緩和に用いられることがある。
  • を強く抑えると分泌物貯留を悪化させうる。

まとめ

  • 持続期間と乾性/湿性で鑑別を組み立てる。
  • 痰色だけで細菌性と決めず、胸部X線も全例一律ではない。
  • 慢性咳嗽では上気道、喘息・好酸球性炎症、GERD、ACE阻害薬をまず系統的に評価する。

出典

  1. 1.British Thoracic Society Clinical Statement on chronic cough in adults(British Thoracic Society・2023)成人の慢性咳嗽の定義、初期評価、ACE阻害薬中止、鎮咳薬の位置づけ閲覧 2026-08-02
  2. 2.Cough (acute): antimicrobial prescribing (NG120)(National Institute for Health and Care Excellence・2019)急性上気道感染・急性気管支炎での抗菌薬、粘液溶解薬、鎮咳薬の適応閲覧 2026-08-02
  3. 3.Honey for acute cough in children(Cochrane Database of Systematic Reviews・2018)蜂蜜が、何も治療しない場合・プラセボと比べて小児の急性咳嗽の頻度を減らすことを確認した。ただし対象は生後12か月以上の小児で、成人での有効性はこの論文からは確認できない。閲覧 2026-08-13