外科学

外科学 · B/03

甲状腺腫瘍(症状・診断・治療)

Tumors of the thyroid gland (symptoms, diagnosis, treatment)

前提:病態
甲状腺腫瘍がん遺伝子の活性化機構
疾患
甲状腺癌甲状腺髄様癌
症状
反回神経麻痺

ポッドキャスト

🧠 は起源細胞で3系統に分けて覚える。 由来の(・)は予後良好で、リスクに応じ〜+選択的I¹³¹を行う。同じ由来でもはしたで予後不良、多くは診断時からとなる。由来のはとは別系統ので、は高く、なら+リンパ節郭清で根治を狙える——「=の一種」という誤解をしないこと。診断では超音波リスク分類と結節径から()の適応を選び、採取した検体をで評価する。

1. 総論・病因

  • の多くは成人で発症するが、一部(特に)は小児期にも発症しうる。
  • 大部分は由来——例外は由来の。
  • 病因:
    • 遺伝的要因:病型ごとに関与する遺伝子が異なる
    • 環境要因:曝露(特に人生最初の20年間)、乳幼児期の頭頸部病変に対する放射線療法

2. 4病型の一覧

病型 頻度(授業資料の数値) 病理 臨床像 治療
~70%、若年に多い を伴う複雑な分枝構造と。 緩徐増大・・の甲状腺腫瘤または頸部リンパ節腫瘤。なし、予後良好 またはをリスクに応じて選択し、必要例でやI¹³¹を用いる1
~20%、女性に多い 正常甲状腺に類似したが発達。による遠隔転移(晩期) 緩徐増大・でを伴わない甲状腺腫瘤。よりやや高齢層 に準ずる
~5% 正常腺組織の範囲を急速に越えて広がる。低分化細胞。リンパ節・肺・骨・脳へ転移 びまん性で硬い甲状腺腫大、しばしば嗄声・を伴う 従来治療の効果は限定的だが、BRAF V600E陽性の進行例ではが有力な選択肢2
~2% 傍濾胞カルシトニン(C細胞)由来の緩徐増大・高分化腫瘍。間質に の甲状腺腫瘤として発見されることがあり、が。予後は病期依存で、早期完全切除例では比較的良好3 +リンパ節郭清

⭐ 頻度はが最多で、予後は一般に・が良好、は病期依存、が最も不良である。3

⚠️ 頻度の数値は資料によって差が大きく、との順序は逆転する。 上の表は授業資料の数値で、 約5%・ 約2%(=のほうが多い)という並びになっている。一方、疾患ノートは 約80〜85%・ 約10〜15%・ 数%・ 2%未満(=のほうが多い)という並びで整理している。どちらの数値も一次資料まで特定できていないので、本ノートは両方を併記するにとどめ、どちらが多いかを断定しない。押さえるべきなのは「が圧倒的に多く、とはいずれも数%以下の少数派」という桁の感覚である。

💡 授業資料はの病理に「/」と並べているが、同じ資料の詳細記載(本ノートの §3)にはが出てこず、挙がっているのはだけである。はを特徴づける所見なので、で覚えるべき像は間質のと腫瘍細胞質のカルシトニンのほうである。

3. 各病型の詳細

乳頭癌

  • 甲状腺の悪性腫瘍の中で最多。あらゆる年齢で発症しうるが、曝露既往に関連する癌の多くを占める。
  • 病因にRET遺伝子・NTRK1遺伝子の染色体再構成が関与。
  • 形態: 甲状腺内の単発または多発病変。境界明瞭・被膜形成型とがある。核内クロマチンが微細に分散し光学的に透明に見える——いわゆる「Orphan Annie eye核」。
  • 臨床像: 甲状腺内または頸部リンパ節内の無痛性腫瘤として発見されることが多い。は indolent()病変。

濾胞癌

  • 女性に多く、ピークは40〜60歳。
  • 地域で発症率が上昇——が本腫瘍発生の素地になりうる。
  • 形態: 被膜内浸潤にとどまる「」(なし、予後良好)と、被膜を越えて周囲甲状腺組織へ浸潤しも来す「」に分かれる。
  • 臨床像: 多くは孤立性の「冷たい(cold)」として発見。肺・骨・肝へのをきたしやすい。外科的切除で治療。

髄様癌

  • (C細胞)由来の——カルシトニンを分泌し、その測定が診断上重要。
  • 約70%は散発性、残り約30%は()の一部としての家族性(資料により約75%対25%とするものもある)。
  • 形態: 単発または両葉に多発。大きな病変は壊死・出血を伴い被膜を越えて進展することが多い。間質に、腫瘍細胞細胞質にカルシトニンを認める。
  • 臨床像: はとして発見され、圧迫症状を伴うこともある。一部では分泌(例:VIP分泌による下痢)が初発症状になることがある。

未分化癌

  • きわめて稀かつ極めて悪性度の高い腫瘍。高齢女性(平均65歳)に発症。
  • 上皮の腫瘍——高分化な/の「」により生じる。
  • 形態: 被膜を越えて急速に増大し隣接頸部構造へ浸潤する。高度に性の細胞(大型・の巨細胞)。
  • 臨床像: 遠隔転移は多いが、多くは頸部の重要構造への局所浸潤により1年未満で死亡する。

4. 臨床像 — 甲状腺結節の評価

の多くは無症状で、健診で発見される。

因子 悪性を示唆する所見
性別 結節自体は女性>男性だが、男性のは癌の可能性が相対的に高い
年齢 小児・高齢者の結節は癌の可能性が高い
家族歴 MEN2A・MEN2Bはのリスク
地理的背景 (原表は項目名のみで所見欄が空欄。地域はの素地になる——§3を参照)
頸部への放射線照射の既往 (原表は項目名のみ。§1のとおり、人生最初の20年間の曝露と乳幼児期の頭頸部放射線療法が最も強い危険因子)
単発か多発か (原表は項目名のみ。かの一部かの判定は§5の超音波で行う)
結節の性状 硬い・固定性の結節は癌を示唆。長期安定していた結節の急速な増大(特に高齢者)は要注意
頸部リンパ節腫大 (原表は項目名のみ。はで発見されることがある——§3を参照)
声の変化 は浸潤癌の

💡 原表(授業資料 Table 6.1)は9項目あり、うち4項目は「見るべき因子」だけを挙げて所見欄を空けている。 項目を落とすと5項目の閉じた一覧に見えてしまうので、空欄の4項目も残した。とくに頸部への放射線照射の既往は本ノート§1が挙げる最も強い環境因子で、で必ず拾う。

5. 診断

  1. 遊離T4、、甲状腺自己抗体の測定
  2. :結節のサイズ・性状を評価し、かの一部かを判定
  3. ()——すべての結節へ行うのではなく、超音波リスク分類と結節径、疑わしいリンパ節、臨床的から適応を選ぶ。細径針で検体を採取し、で評価する。4

ベセスダ報告様式(第3版・2023年)

⚠️ 版を必ず確かめてから使う。 甲状腺細胞診のベセスダ報告様式は2023年に第3版へ改訂され、6つのカテゴリーそれぞれに単一の名称が割り当てられた。第2版までの「/意義不明な病変(/FLUS)」「/その疑い(FN/SFN)」という併記形の名称は第3版には存在しない——それぞれ「()」「(FN)」だけになった。古い教科書やの2015年版ガイドラインは併記形で書かれているので、読んだ資料がどの版かを区別する。5

カテゴリー 第3版の名称 成人の悪性リスク 平均%(範囲) 通常の対応
I 13(5〜20) にを再検
II 良性 4(2〜7) 臨床的・超音波的な経過観察
III () 22(13〜30) 再検、分子検査、、または経過観察
IV (FN) 30(23〜34) 分子検査、
V 74(67〜83) 分子検査、または近全摘
VI 悪性 97(97〜100) または近全摘

6

💡 数値の意味を取り違えない。 上の悪性リスクはNIFTP(様核所見を伴う)を癌として数えた場合の値である。を癌から除くと各カテゴリーの値は下がり、I 12%・II 2%・III 16%・IV 23%・V 65%・VI 94% になる。は全体の病理学的検索を要するため細胞診では診断できず、多くは中間カテゴリー(IIIとIV)に落ちる——だからの扱いを変えると中間カテゴリーのリスクが最も動く。6

⭐ カテゴリーIIIとIVが「悪性かどうか決まらない」帯域である。ここを分子検査で振り分けられるかどうかが、を避けられるかの分かれ目になる。第3版はを核異型を伴うものとそれ以外の2群に細分し、前者のほうが悪性リスクが高いとした。5

授業資料が用いている Thy1〜Thy5(5段階)

⚠️ 授業資料はベセスダではなく、5段階の報告様式で書かれている。 国際文献の標準はベセスダの6カテゴリーだが、講義の記述に当たるときに混乱しないよう、資料が示している段階を残しておく。

段階 授業資料の記述
Thy1 診断不能検体
Thy2 良性の結節
Thy3 病変(腺腫か癌かは細胞診では区別できない)
Thy4 疑わしいが、の確定診断には至らない
Thy5 の確定診断

💡 2つの様式を並べると、どこで段階数が変わるかが分かる。 Thy4・Thy5 はベセスダの V()・VI(悪性)にそれぞれ対応する形になっている。段階数が5と6で食い違うのは、ベセスダが Thy3(病変)を III()と IV()の2つに分けているためである。⚠️ ただしこれは2つの表の構造を並べた観察であって、両様式のな対応表ではない。報告書を読むときは、どちらの様式で書かれているかを確認する。

6. 治療

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid nodule'>甲状腺結節</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fine-needle aspiration biopsy'>FNAB</span>結果"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='differentiated carcinoma'>分化癌</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='papillary carcinoma (thyroid: PTC)'>乳頭癌</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicular thyroid carcinoma, FTC'>濾胞癌</span>)"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medullary carcinoma'>髄様癌</span>"]
  A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='undifferentiated carcinoma / anaplastic carcinoma'>未分化癌</span>"]
  B --> B1["2cm以下・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extrathyroidal extension'>甲状腺外進展</span>なし・cN0M0<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='lobectomy'>葉切除</span>(強い推奨)"]
  B --> B2["2cm超4cm以下・低リスク・片側性<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='lobectomy'>葉切除</span>が好まれうる(条件つき推奨)"]
  B --> B3["4cm超、または肉眼的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extrathyroidal extension'>甲状腺外進展</span>、cN1、cM1<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='total thyroidectomy'>甲状腺全摘</span>+郭清(強い推奨)"]
  C --> C1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resectable'>切除可能</span>なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='total thyroidectomy'>甲状腺全摘</span>+病変区域のリンパ節郭清"]
  D --> D1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resectable'>切除可能</span>なら手術を含む<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multimodal therapy'>集学的治療</span>"]
  D --> D2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unresectable'>切除不能</span>例が多く、BRAF V600E陽性なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='molecularly targeted therapy'>分子標的治療</span><br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='quality of life'>QOL</span>も重視"]

1) 分化癌(乳頭癌+濾胞癌)

と証明されたリンパ節転移領域の完全切除が目標。手術範囲は()の2025年版ガイドライン推奨15が、で3段に分けて定めている(詳細は内科学 E-03・外科学6 S-03を参照)。1

初回術式 推奨の強さ
2 cm以下・肉眼的なし(cT1)・転移なし(cN0M0) とすべき。ただし両側性の癌がある場合や、対側葉を摘出すべき他の適応がある場合は除く 強い推奨・中等度の確実性
2 cm超4 cm以下・低リスク・片側性(cT2N0M0) 危険と副作用が有意に少ないことから、が初回治療として好まれうる。ただしI¹³¹投与や、対側の疑わしい結節、患者の希望から全摘を採ってもよい 条件つき推奨・低〜中等度の確実性
4 cm超(cT3a)、大きさを問わない肉眼的(cT3b・cT4)、臨床的に明らかなリンパ節転移(cN1)または遠隔転移(cM1) との肉眼的全摘・郭清を含めるべき(禁忌がないかぎり) 強い推奨・中等度の確実性
  • 細胞診が不確定な場合: → リスク(超音波所見・サイズ・追加検査)に応じてへ移行
  • を提示するときは、移行の可能性を先に説明する: 術中または術後に高リスク因子が明らかになれば、全摘への移行や後日の補完全摘が必要になりうることをあらかじめ伝える1

⚠️ 区間の端に隙間を作らない。 上の3段は「2 cm以下」「2 cm超4 cm以下」「4 cm超」で、2.0 cm と 4.0 cm がどこに属するかまで決まっている。「2〜4 cm」「>2cm」のような書き方をすると、ちょうどの値がどちらにも読めてしまう。

⭐ 2 cm以下と、2 cm超4 cm以下とで「推奨の強さ」が違う。 2 cm以下のは強い推奨(=原則そうする)、2 cm超4 cm以下のは条件つき推奨(=好まれうるが、事情によって全摘も選ぶ)。どちらも「でよい」と一括りにすると、このが消える。1

💡 切らずに見るという選択肢もある。 1 cm以下で節・遠隔転移のない(cT1aN0M0)の一部には、を管理の選択肢として提示してよい(条件つき推奨・低い確実性)。患者と診療チームのが前提となる。1

2) 髄様癌

由来でとは別系統。なら+病変区域のリンパ節郭清で根治を狙える点がと大きく異なる。に伴う例では、に先立ちの有無を評価する(を参照)。

3) 未分化癌

で診断時にはすでになことが多い。可能であれば手術を含むを行い、でBRAF V600E陽性の例ではなどのが選択肢になる——多臓器にわたる大侵襲切除より生活の質()を優先する判断も重視される

4) リンパ節管理

  • (“en bloc”)が推奨——腫大リンパ節のみをつまみ取る「」は避ける

⚠️ 「郭清する/しない」は、リンパ節転移が臨床的に見えているかどうかで分かれる。 予防的(cN0に対する)と(cN1に対する)を一緒に書かない。1

状況 推奨 推奨の強さ
cN0(臨床的リンパ節陰性)の小さくの(cT1-T2)の大半、およびの大半 予防的は行うべきでない 強い推奨・中等度の確実性
cN0だがが進行している(T3・T4)、または郭清の情報を次のの決定に使う場合 予防的を考慮してよい。ただし術中に見えてくるリスクと秤にかける 条件つき推奨・低い確実性
cN1a(臨床的にリンパ節が陽性) (レベルVIと上部VII)を甲状腺摘出に併せて行うべき 強い推奨・中等度の確実性
生検陽性または臨床的に明らかな転移 郭清(通常レベルIIa・III・IV・Vb)を初回手術として行うべき 強い推奨・中等度の確実性

💡 予防的郭清が抑制されるのは、との危険を上げるのに、再発抑制の利益が証明されていないためである。転移が見えているなら郭清、見えていないなら原則しない、と覚える。

5) 薬物療法

  • 後のI¹³¹は再発リスクや病理所見に応じて選択的に用いる。低リスクに対する全摘後の残存組織はルーチンには推奨されない(強い推奨・高い確実性)1
  • 管理は再発リスクと残存甲状腺の有無に応じて個別化する7

💡 の管理は一律ではない。 を未満まで抑制するかどうかは、利益と危険を勘案して個別化する(条件つき推奨・低い確実性)——高リスク例のほうが抑制の恩恵を受けやすい。一方、生化学的にも構造的にも再発の所見がない低リスク・例には、長期の抑制は提案されない(条件つき推奨・低い確実性)。⚠️ どちらも「条件つき」であって、「抑制せよ」「抑制するな」という強い指示ではない。1

7. 周術期の実際的注意点

術前:

  • ベータ遮断薬の有無にかかわらず甲状腺機能正常化が必要
  • に対するな溶液(Lugol液)投与は甲状腺血流・血管性・術中出血量を減らすとされるが、手術転帰そのものへの効果は証明されていない
  • 術前のカルシウム投与(例: 1日3回、2週間)および/または投与と正常血中濃度は、術後の予防に有益

特殊な切開・縫合:

  • Kocher切開(皮膚・は水平、正中頸線は垂直)
  • 治癒良好、時に「1インチ=2.5cm」の小切開で足りることもある
  • 縫合:皮膚縫合は2日後に可能またはを使用
  • ドレーン:かつては出血対策として多くの症例で留置し、24時間後に量50 mL未満ならしていた。⚠️ 現在の推奨は逆向きである—— 2025 の推奨25は「大半の状況で甲状腺摘出床のドレナージは推奨されない。の延長と関連し、感染を増やしうる一方、血腫の発生を減らさない」と述べている(条件つき推奨・高い確実性)。ドレーンを置いてもは防げない、という点が要点である1

術中の神経・副甲状腺の扱い:

  • は視認する——甲状腺摘出および気管傍リンパ節郭清の際にを目で同定し、神経のと機能を守る(good practice statement)1
  • 術中神経モニタリングは、とくに全摘やでの危険を下げる目的で行ってよい(条件つき推奨・低〜中等度の確実性)。視認の代わりではなくである1
  • 副甲状腺とその血流を温存する。血流を失ったり摘出されたりした副甲状腺は、近傍の筋へする1

合併症

合併症 頻度・注意点
初回手術で~1%、で5〜15%。30〜40%は長期に及ばない(1〜6か月)。授業資料は最大の危険因子を「経験の浅い(年間50〜100件未満)」としている。神経の可視化・術中神経モニタリングが重要。両側麻痺では/を要する
出血 <1%だが、全外科手術平均の約5倍のリスク。気管圧迫は緊急事態——進行性の呼吸苦があればベッドサイドで即座に創を開放する。LMWH()はできる限り避ける
<2%。40%は可逆性——術後カルシウム管理が重要。血流は由来の性であることに注意。、、、(、・陽性、〔main d’accoucheur〕)、抑うつを呈しうる

⭐ の手術件数がを直接左右する、数少ない外科合併症である。 授業資料はの最大の危険因子を「年間50〜100件未満の」と書いている。⚠️ 数字の意味が資料で違うので、そのまま足し引きしない—— 2025 の推奨6が高volumeを「年間25〜50件超」と定義し、の患者には高volumeへの紹介を提示すべきとしている(強い推奨・中等度の確実性)のに対し、授業資料の50〜100件は危険因子としての下限である。両者が一致して述べているのは「症例数の少ないでは合併症が増える」という向きのほうである。1

まとめ

  • は由来の(・、頻度高く予後良好)、同じく由来だがした(頻度低く予後不良)、由来の(とは別系統の)の3系統に分けて理解する。
  • はRET/NTRK1再構成とOrphan Annie eye核が特徴、はとの関連と、はカルシトニン産生とMEN-2との関連、は高齢女性での急速なが特徴。
  • 診断は超音波リスク分類と径で適応を選び、必要な結節を細胞診で評価する。すべてのにを行うわけではない。細胞診は2023年の第3版ベセスダ報告様式(6カテゴリーそれぞれに単一名称)で報告し、カテゴリー別の悪性リスク(I 13%・II 4%・III 22%・IV 30%・V 74%・VI 97%)で次の一手を決める。56
  • の手術範囲は2 cm以下=(強い推奨)/2 cm超4 cm以下=が好まれうる(条件つき推奨)/4 cm超・肉眼的・cN1・cM1=全摘+郭清(強い推奨)の3段で覚える。I¹³¹は低リスク例の残存組織をルーチンに行わず(強い推奨・高い確実性)、抑制も低〜例には長期には提案しない。はなら+リンパ節郭清で根治を狙い、はやBRAF、重視の治療を選ぶ。132
  • ・出血・術後がの三大合併症で、いずれもの経験数(高volume=年間25〜50件超)や血流解剖の理解と密接に関わる。⚠️ 摘出床のドレナージは血腫を減らさないので、大半の状況では推奨されない。1

甲状腺腫(B/02: 甲状腺腫)と副甲状腺(B/04: 副甲状腺の外科的側面)は同じ頸部内分泌外科として関連づけて学ぶとよい。

出典

  1. 1.2025 American Thyroid Association Management Guidelines for Adult Patients with Differentiated Thyroid Cancer(Thyroid(American Thyroid Association)・2025)PMCの全文を自分で取得して次を逐語で確認した。推奨15Aは「肉眼的甲状腺外進展がなく(cT1)転移もない(cN0M0)2 cm以下の甲状腺癌に切除を行う場合、両側性の癌や対側葉を摘出すべき他の適応がないかぎり、初回術式は葉切除とすべきである」(強い推奨・中等度の確実性)。15Bは「低リスクで片側性の2 cm超4 cm以下(cT2N0M0)では、危険と副作用が有意に少ないことから葉切除が初回治療として好まれうる」が、放射性ヨウ素投与やフォローアップ、対側の疑わしい結節、患者の希望により全摘を採ってもよく、葉切除を提示する際は術中・術後に高リスク因子が現れた場合の全摘への移行や補完全摘の可能性を説明するとする(条件つき推奨・低〜中等度の確実性)。15Cは「4 cm超(cT3a)、大きさを問わない肉眼的甲状腺外進展(cT3bまたはcT4)、臨床的に明らかなリンパ節転移(cN1)または遠隔転移(cM1)では、禁忌がないかぎり初回術式に甲状腺全摘と原発巣の肉眼的全摘・郭清を含めるべきである」(強い推奨・中等度の確実性)。推奨32Aは低リスク分化癌の全摘後に残存組織アブレーションをルーチンに行わないことを推奨(強い推奨・高い確実性)。推奨45はTSHを基準範囲未満へ抑制するかの判断を個別化することを推奨(条件つき推奨・低い確実性)、46Aは生化学的・構造的再発の所見がない低リスクおよび中リスク例に長期のTSH抑制を提案しないとする(条件つき推奨・低い確実性)。推奨19Aは「小さく非浸潤性で臨床的リンパ節陰性の乳頭癌(cT1-T2、cN0)の大半と濾胞癌の大半には予防的中央区域郭清を行うべきでない」(強い推奨・中等度の確実性)、19Bは進行原発巣(T3・T4)などでは考慮してよいとする(条件つき推奨・低い確実性)。推奨20Aは臨床的に中央区域リンパ節が陽性(cN1a)の例に治療的中央区域郭清を甲状腺摘出に併せて行うべきとし(強い推奨・中等度の確実性)、20Cは生検陽性または臨床的に明らかな側頸部転移には治療的側頸部郭清(通常レベルIIa・III・IV・Vb)を初回手術として行うべきとする(強い推奨・中等度の確実性)。推奨25は「大半の状況で甲状腺摘出床のドレナージは推奨されない。在院日数の延長と関連し、感染を増やしうる一方、血腫の発生を減らさない」(条件つき推奨・高い確実性)。推奨6は高volume甲状腺外科医(年間25〜50件超)への紹介を提示すべきとする(強い推奨・中等度の確実性)。推奨23Aは甲状腺摘出・気管傍郭清の際に反回神経を視認すべきとし(good practice statement)、23Bは術中神経モニタリングを行ってよいとする(条件つき推奨・低〜中等度の確実性)。推奨11AはcT1aN0M0の乳頭癌の一部に積極的経過観察を選択肢として提示してよいとする(条件つき推奨・低い確実性)。閲覧 2026-09-21
  2. 2.Dabrafenib plus trametinib in patients with BRAF V600E-mutant anaplastic thyroid cancer: updated analysis from the phase II ROAR basket study(Annals of Oncology・2022)BRAF V600E変異陽性の未分化甲状腺癌に対するダブラフェニブとトラメチニブ併用の有効性を確認した。閲覧 2026-08-09
  3. 3.Predicting Outcomes in Sporadic and Hereditary Medullary Thyroid Carcinoma over Two Decades(Thyroid・2021)髄様甲状腺癌の予後は病期、甲状腺外進展、リンパ節転移、遠隔転移などに依存することを確認した。閲覧 2026-08-09
  4. 4.2015 American Thyroid Association Management Guidelines for Adult Patients with Thyroid Nodules and Differentiated Thyroid Cancer(American Thyroid Association・2016)甲状腺穿刺吸引細胞診はBethesda分類で評価することを確認した。なお本版が用いているのはベセスダ報告様式の旧版(意義不明な異型/意義不明な濾胞性病変、濾胞性腫瘍/その疑い、という併記形の名称)である。閲覧 2026-08-09
  5. 5.The 2023 Bethesda System for Reporting Thyroid Cytopathology(Thyroid(Ali SZ, Baloch ZW, Cochand-Priollet B, Schmitt FC, Vielh P, VanderLaan PA)・2023)抄録で確認した。第3版が6つの診断カテゴリーそれぞれに単一の名称を割り当てたこと(不適正・良性・意義不明な異型・濾胞性腫瘍・悪性疑い・悪性)、各カテゴリーの想定悪性リスク(ROM)が第2版以降のデータで更新され平均値に加えて予想される範囲が示されるようになったこと、意義不明な異型(AUS)の細分類が想定ROMと分子プロファイルに基づく2群へ簡素化されたこと、小児甲状腺疾患の記述と小児のROM・管理アルゴリズムが追加されたこと、用語が2022年WHO甲状腺腫瘍分類に整合させられたことを確認した。本文は購読制のため未取得で、カテゴリー別の数値そのものは抄録に含まれない。閲覧 2026-09-21
  6. 6.Highlights of the 2023 Bethesda System for Reporting Thyroid Cytopathology, 3rd Edition(Korean Journal of Head & Neck Oncology(Song)・2024)2023年ベセスダシステム第3版の悪性リスク表で成人の平均値がI 13%・II 4%・III 22%・IV 30%・V 74%・VI 97%であること、NIFTPを悪性から除外した場合の推定悪性リスクが I 12%・II 2%・III 16%・IV 23%・V 65%・VI 94% であることを確認した。閲覧 2026-09-21
  7. 7.Approach to the Patient With Thyroid Cancer: Selection and Management of Candidates for Lobectomy(The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism・2025)低リスク分化甲状腺癌では葉切除が選択肢となり、放射性ヨードやTSH管理をリスクに応じて個別化することを確認した。閲覧 2026-08-09