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Disease Atlas · 神経 · 疾患

脳アミロイド血管症

Cerebral amyloid angiopathy

別名
CAA脳アミロイドアンギオパチー
臓器系
神経
科目
NeurologyPathophysiologyHistopathology
トピック
神経内科 G1-19:非外傷性頭蓋内出血神経内科 G1-39:アルツハイマー病病態生理学 P-2-32:認知機能検査と神経変性疾患(軽度認知障害)組織病理 H1-045:くも膜下出血と破綻性出血(肉眼標本)
続発疾患
脳内出血(非外傷性)
関連疾患
アルツハイマー病
治療薬
プレドニゾロン
症状
頭痛痙攣

🧠 全体像は、皮質・壁にが沈着し、血管壁をさせる病態である。高血圧性・視床・橋・小脳といった深部に好発するのに対し、CAAによる出血は皮質下(脳葉型)に生じる——この出血部位の対比がの原因を考えるときの幹になる。診断は2022年に改訂されたBoston criteria version 2.0を用い、MRIのT2*/SWIで検出する・皮質表在性という出血性所見に加え、という非出血性所見も診断に組み込まれた点が最大の変更である。臨床的には、抗凝固薬・で再出血リスクが著しく高まることと、抗抗体治療におけるARIA(関連画像異常)のリスク因子であることの2点が、他科・他疾患のを左右する実務上の要点である。

病態

CAAでは、皮質およびの中膜・外膜にが沈着し、の脱落と血管壁の形成を来す。これが高血圧性の障害とは異なる分布——皮質下(脳葉型)——での出血の土台になる。

flowchart TD
    A["皮質・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pia mater'>軟膜</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medium and small arteries'>中小動脈</span>壁への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amyloid beta'>アミロイドβ</span>沈着"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle'>血管平滑筋</span>の脱落・血管壁の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='detrusor weakness'>脆弱化</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microaneurysm'>微小動脈瘤</span>形成・血管壁破綻"]
    C --> D["皮質下(脳葉型)の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intracerebral hemorrhage, ICH'>脳内出血</span>"]
    C --> E["皮質<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microhemorrhage'>微小出血</span>の多発"]
    C --> F["皮質表在性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hemosiderosis'>ヘモジデローシス</span>・凸面<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subarachnoid hemorrhage'>くも膜下出血</span>"]
    G["高血圧性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perforating artery (perforator branch)'>穿通枝</span>障害(対比)"] --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='putamen'>被殻</span>・視床・橋・小脳など深部の出血"]

⭐ APOE遺伝子型が病態を修飾する。APOE ε4アレルはの血管壁への沈着そのものを促進し、の病理と重なる部分が大きい一方、APOE ε2アレルはすでにが沈着した血管が血管壁の・血管周囲への血液漏出という血管障害性変化(vasculopathy)を来して破裂に至る過程を促進する、という別々の機序でCAA関連出血に寄与する1とCAAは、という共通の病理基盤とAPOE遺伝子型という共通の危険因子を持つため、しばしば合併する。

画像所見とBoston criteria v2.0

診断は臨床像単独では困難で、MRIの出血性・非出血性所見を組み合わせたBoston criteriaを用いる。⚠️ 現行版は2022年に改訂されたversion 2.0であり、旧版(1.5)で用いられた基準のまま記憶で運用しない。

MRIのT2*強調像/SWI()で、皮質・皮質下優位の多発性皮質表在性(脳表のへのの沈着)を検出することが核心である。v2.0では、これらの出血性所見に加えて非出血性の白質所見——重度の中心半卵円形拡大、または多発小斑点状白質高信号パターン——が新たに診断項目に加わり、出血性病変が乏しい症例でも「possible CAA」の診断が可能になった点が最大の改訂点である2

具体的には、50歳以上を対象に、①2個以上の厳密に脳葉型の出血性病変(・皮質表在性。深部病変を伴わない)、または②1個の厳密に脳葉型の出血性病変+1個以上の白質所見、のいずれかを満たせばprobable CAAと診断する。この基準は病理に対する検証で感度74.5%・特異度95.0%(AUC 0.848)を示し、旧基準より診断精度が有意に向上した(p=0.0005)2

flowchart TD
    A["50歳以上、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lobar hemorrhage'>脳葉型出血</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cognitive decline'>認知機能低下</span>・一過性局所神経症状のいずれかで受診"] --> B["MRI T2*/SWIで出血性病変を評価"]
    B --> C{"厳密に脳葉型の出血性病変が2個以上あるか"}
    C -->|"はい・深部病変を伴わない"| D["probable CAA"]
    C -->|"いいえ"| E{"脳葉型の出血性病変が1個+白質所見<br>(重度の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perivascular space'>血管周囲腔</span>拡大または多発小斑点状白質高信号)があるか"}
    E -->|"はい"| D
    E -->|"いいえ・出血性病変のみ1個"| F["possible CAA"]

臨床像

高齢者の皮質下(脳葉型)の重要な原因であり、再発性の脳葉出血、、一過性の局所神経症状(発作)として発症しうる。頭痛痙攣を伴うこともある。

CAA関連炎症(CAA-ri)

CAA関連炎症(CAA-ri)は、血管壁のに対する炎症反応が加わった病型で、頭痛、痙攣、急性〜亜急性の・行動変化を来す。他の関連病態と異なり、CAA-riは副腎皮質ステロイドなど免疫に反応しうる治療可能な病型である点が重要である。臨床放射線学的基準(非対称性の皮質下とCAAの他の所見を組み合わせる)は病理に対する検証で感度82%・特異度97%を示し、この基準を満たせばを回避できる場合が多い3

治療上の要点

⚠️ 抗凝固薬・はCAAで再出血リスクが著しく高い。 ワルファリンなどの抗凝固薬やなどのは、心房細動や虚血性疾患の適応があっても、CAAによる脳葉出血の既往がある患者では出血リスクとの綿密な天秤にかける必要があり、などのも同様に慎重な判断を要する。

⚠️ 抗体治療(レカネマブなど)はARIA(関連画像異常)のリスクを高める。 APOE ε4アレルを2個持つ患者では症候性ARIA-Eの頻度が9.2%(1個のみの患者では1.7%)、ARIA-H(出血性ARIA)の頻度はε4で39%、で14%、非保有者で11.9%と報告されている4抗凝固薬(単独、または・アスピリンとの併用)を併用した例ではが2.5%(2/79例)に生じており、全体(0.9%、3/328例)や非併用例(0.6%、3/545例)より高い5。抗凝固薬を要する患者への投与は追加データが得られるまで推奨されない4。CAAそのもの(多発の存在)も、ARIA発症リスクを高める背景因子として治療適格性の評価時に重視される。

CAA-riが疑われ、臨床放射線学的基準を満たす場合は副腎皮質ステロイド()による治療を検討する。

まとめ

  • CAAは皮質・壁への沈着による血管症で、高血圧性の深部出血と対比し皮質下(脳葉型)出血を来す点が核心である。
  • 現行のはBoston criteria version 2.0(2022年)で、皮質・皮質下優位の・皮質表在性に加え、重度の拡大や多発小斑点状白質高信号という非出血性所見も診断項目に加わった。
  • APOE ε4はを、ε2は血管壁の・出血をそれぞれ促進する方向に働き、としばしば合併する。
  • CAA関連炎症(CAA-ri)はステロイドなど免疫に反応しうる治療可能な病型である。
  • 抗凝固薬・は再出血リスクを高め、抗抗体治療(レカネマブ等)ではARIAのリスク因子になる——いずれも他疾患のを左右する実務上の要点である。

出典

  1. 1.LEQEMBI (lecanemab-irmb) injection, for intravenous use — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / Eisai Inc.(DailyMed、Updated 2026-07-21)・2026)米国添付文書がARIAに関して、抗凝固薬単独または抗血小板薬・アスピリンとの併用を受けていた患者での頭蓋内出血の発現率を2.5%(2/79例、プラセボ群は0例)と報告する一方、事象発生時に抗血栓薬を使用していた患者全体では0.9%(3/328例)、使用していなかった患者では0.6%(3/545例)であり、"Antithrombotic medications did not increase the risk of ARIA with LEQEMBI." と明記していること、ARIAの局所神経症状が出ている状況で血栓溶解薬を使用した抗アミロイド抗体投与患者に致死性脳出血が生じた例があることを確認した(Warnings and Precautions節)。閲覧 2026-08-11
  2. 2.The Boston criteria version 2.0 for cerebral amyloid angiopathy: a multicentre, retrospective, MRI-neuropathology diagnostic accuracy study(Lancet Neurology・2022)Boston criteria v2.0では、少なくとも2つの厳密に皮質下(lobar)の出血性病変(脳内出血・微小出血・皮質表在性ヘモジデローシス)、または1つの厳密にlobarな出血性病変+1つの白質所見(重度の中心半卵円形血管周囲腔拡大または多発小斑点状白質高信号パターン)の組み合わせで診断し、対象は50歳以上であること、剖検確定例に対するprobable CAAの感度74.5%・特異度95.0%・AUC 0.848で、旧基準より診断精度が有意に改善したこと(p=0.0005)閲覧 2026-08-11
  3. 3.Validation of Clinicoradiological Criteria for the Diagnosis of Cerebral Amyloid Angiopathy-Related Inflammation(JAMA Neurology・2016)CAA関連炎症(CAA-ri)の臨床放射線学的診断基準を病理確定例で検証したところprobable基準で感度82%・特異度97%が得られ、この基準により多くの症例で脳生検を回避できること、CAA-riは免疫抑制療法に反応する症例が多いこと閲覧 2026-08-11
  4. 4.Association of apolipoprotein E epsilon2 and vasculopathy in cerebral amyloid angiopathy(Neurology・1998)APOE ε2とε4がCAA関連出血をそれぞれ別の機序で促進すること——ε4はアミロイド沈着そのものを促進し、ε2はすでにアミロイドが沈着した血管が血管壁の亀裂・血管周囲への血液漏出という血管障害性変化(vasculopathy)を来し破裂に至る過程を促進すること。血管障害性変化を示す群でε2の頻度が有意に高かったこと閲覧 2026-08-11
  5. 5.Lecanemab Therapy and APOE Genotype(Medical Genetics Summaries, NCBI Bookshelf・2024)レカネマブの第3相試験でAPOE ε4アレルを2つ持つ患者の症候性ARIA-E頻度が9.2%(1つのみの患者では1.7%)、ARIA-H頻度がε4ホモ接合体で39%・ヘテロ接合体で14%・非保有者で11.9%であったこと、この二次資料は添付文書の記述を「抗血栓薬(アスピリン・抗血小板薬・抗凝固薬)併用で頭蓋内出血2.5%」と要約しているが、添付文書原文では2.5%は抗凝固薬併用群の値であり本ノートでは採らない。抗凝固薬を要する患者には抗凝固薬を要する患者には追加データが得られるまでレカネマブを投与すべきでないとしていること閲覧 2026-08-11