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Drug Atlas · C6 Antivirals / 抗ウイルス薬

ドラビリン

doravirine

分類
Antivirals / 抗ウイルス薬
商品名(日本)
ピフェルトロ
商品名(EU)
Pifeltro
科目
Pharmacology
トピック
C6: Antiretroviral agents
承認適応
HIV感染症・AIDS
標的微生物
HIV-1
副作用
悪心頭痛下痢めまい
相互作用
リファブチンリファンピシン

🧠 全体像:は、第2世代のNNRTIで、第1世代(・)の弱点を埋めるように設計されたの薬である。逆転写酵素のにに結合して、HIV-1の複製を止める1。1日1回100 mg、食事に関係なく、は不要で、第1世代の代表的な(K103N、Y181C、G190A)にも活性を保ち、脂質への影響が小さく、より有害事象による中止が少なかった。欧州のEACS 2025年版では、INSTIと並ぶ推奨レジメンに含まれる2。ただしHIV-2には効かず、には向かない。最大の落とし穴は強力なCYP3Aとのである。

薬効群の中での位置づけ

世代 代表薬 特徴
、 で耐性化。(EFV)、肝障害・皮膚障害(NVP)
、、 変異に比較的強い。は食事と酸抑制薬に注意、は1日2回

⭐ 現在の位置づけ:EACS 2025年版の成人の初回治療では、TAF/FTCまたはTDF/XTCにを組み合わせる3剤、あるいはTDF/3TC/DORが「推奨」に載り、とは「代替」に下がる。注記として、HIV-2には活性がなく、には向かず、感染の伝播した耐性を除くため開始前のが望ましいと書かれている2。本文は、を含む組み合わせはとの直接比較試験の結果が出るまで推奨にとどまると述べる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='doravirine'>ドラビリン</span>が逆転写酵素の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydrophobic pocket'>疎水性ポケット</span>に結合"] --> B["酵素の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catalytic activity'>触媒活性</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-competitive'>非競合的</span>に阻害される"]
    B --> C["ウイルスRNAから<span class='jp-term jp-term-diagram' title='double-stranded DNA'>二本鎖DNA</span>ができず<br>HIV-1の複製が止まる"]
    D["K103N・Y181C・G190A<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='first-generation NNRTI'>第1世代NNRTI</span>の代表的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resistance mutation'>耐性変異</span>)"] -.->|"感受性の低下は3倍未満"| A
    E["Y188Lなどの変異"] -.->|"100倍超に感受性が低下"| A

はヒトのDNAポリメラーゼα・βとを阻害しない1。HIV-1の各(A、AE、AG、B、BF、C、D、G、H)に対するEC50は1.2〜10 nmol/Lの範囲だった。

💡 で一斉に効かなくなる変異に、は強い。 K103N、Y181C、K103N/Y181Cを持つ実験室株でも感受性の低下は3倍未満で、臨床的なでK103N、Y181C、G190A、E138Kを抑制する。K103N、Y181CまたはG190Aを持つ未治療の10例にDOR/3TC/TDFを投与した試験(DRIVE-BEYOND)では、48週までの試験を完了した8例の全員でが得られた1。

⚠️ ただし無敵ではない。 Y188L、K103N/Y188L、V106I/Y188L、V106A/G190A/F227L、E138K/Y181C/M230Lなどを持つでは、感受性が100倍超低下する。耐性株は他のNNRTIにもを示しうる——耐性を示した8例は全例がに、6例がに、4例がに耐性で、3例はにだった。NNRTIを失敗してから次のNNRTIに乗り換える設計は成り立たない。

薬物動態

項目 内容(日本の電子添文)1
吸収 約64%。Tmaxの中央値は約2.5時間。食事の有無を問わず服用できる(でAUCは16%、C24hrは36%上昇するが、Cmaxは変わらない)
分布 は約76%
代謝 主にCYP3A4による。P糖蛋白の基質でもある
排泄 は少なく、尿中の未変化体は約6%
半減期 単回投与で約12時間。定常状態には2日目までに近づく
腎・ 重度の腎障害では曝露(AUC)が43%上昇。中等度のでは差がない(AUC比0.99)
  • (・)は不要。を要すると違い、1日1錠で完結する。
  • CYP3A4の基質なので、強力なで血中濃度が著しく下がり、強力な阻害薬で上がる。との併用でAUCは3.06倍になる。

適応

HIV-1感染症。必ず他のと併用する。日本の電子添文は、使える患者を次の2つに限る1。

対象 条件
による治療経験がない患者 治療歴と、可能なら(遺伝子型・表現型)を参考にする
治療経験のある患者(切り替え) の経験がなく、切り替え前に6か月以上(HIV-1 RNA 50 copies/mL未満)があり、を持たない
  • 米国は35 kg以上の成人と小児に適応を広げている3。日本の電子添文は「小児等を対象としたは実施していない」とする。国で適応の範囲が違う。
  • 💡 を含む配合錠:日本には、とを1錠に含む配合錠(2026年4月販売開始)がある。切り替え用で、3か月以上ウイルス学的に抑制され、の既往がなく、とへのがない既治療の成人が対象。との投与中の患者には禁忌である4。
  • HIV-2には使えない。を含むレジメンは、HIV-2の治療には選ばない。

主な臨床試験

試験 対象と比較 結果(HIV-1 RNA 50 copies/mL未満、FDAスナップショット法)
DRIVE-FORWARD 未治療766例。100 mg 対 /(ともにFTC/TDFまたはABC/3TC) 48週83.8%対79.9%、96週73.1%対66.0%()1
DRIVE-AHEAD 未治療728例。DOR/3TC/TDF 対 /FTC/TDF 48週84.3%対80.8%、96週77.5%対73.6%()
DRIVE-SHIFT ・を併用したPIなどで6か月以上抑制中。DOR/3TC/TDFへ切り替え 切り替え群の48週90.8%、遅延群の24週94.6%()
  • 有害事象による中止(96週):DRIVE-AHEADでDOR/3TC/TDF群3%、群7%。DRIVE-FORWARDで群2%、/群3%3。
  • 脂質:48週のの変化は、DRIVE-FORWARDで−4.6対/+9.5 mg/dL、DRIVE-AHEADで−2.1対+8.3 mg/dL。LDLと非HDLでが優れていたが、臨床的な利益は示されていない3。

用法・用量

  • 成人にとして100 mgを1日1回、食事の有無にかかわらずする。必ず他のと併用する1。
  • を併用するときは、100 mgを約12時間あけて1日2回に増量し、併用をやめたら1日1回に戻す。300 mgで単回の100 mgのAUCが0.50倍、C24hrが0.32倍に下がるが、100 mgを1日2回にするとAUC 1.03倍、C24hr 0.98倍まで回復した。

禁忌・注意

併用禁忌(強力なCYP3A誘導薬)

日本の電子添文の禁忌 米国が加える薬
カルバマゼピン、、フェニトイン、、、、リファンピシン、、、、含有食品1 、3
  • ⚠️ 血中濃度が低下して治療効果が失われ、耐性が生じるおそれがある。リファンピシン600 mgでのAUCは0.12倍、C24hrは0.03倍まで下がる。結核の治療を要する患者では、を選ばない。
  • 成分への過敏症の既往がある患者にも投与しない(日本)。米国の禁忌欄は強力なCYP3Aのみ。
  • 重篤な皮膚反応:米国添付文書は、を含むレジメンでSJS/TENが市販後に報告され、を含む2剤療法ので(DRESS)が報告されたとする。痛みを伴う、進行する重い発疹、全身症状や好酸球増多を伴う発疹が出たら直ちに中止する。
  • に注意する。
  • 妊娠・授乳:日本の電子添文は、妊婦は有益性が危険性を上回る場合のみ、授乳は避けさせる(HIVの可能性があるため)。

副作用

頻度 内容
日本の電子添文:2%以上5%未満 悪心、下痢、疲労、頭痛、、1
(頻度不明)
試験での主な副作用 DRIVE-FORWARD(96週)の悪心7.0%、頭痛6.0%、下痢5.7%。DRIVE-AHEADのDOR/3TC/TDF群は6.9%、悪心4.9%、4.9%
まれ SJS/TEN、DRESS(米国添付文書)
  • 1200 mg(推奨量の約4倍の最高濃度を与える用量)でQTc間隔に臨床的に有意な延長はなかった。

まとめ

  • =第2世代のNNRTI()。逆転写酵素のにに結合し、K103N・Y181C・G190Aにも活性を保つ。HIV-2には効かない。
  • 100 mgを1日1回、食事の有無を問わず、不要。主にCYP3A4で代謝される。
  • 未治療者では、/やにで、脂質への影響が小さく、より有害事象による中止が少ない。EACS 2025年版では推奨レジメンに含まれるが、には向かず、開始前のが望ましい。
  • 強力なCYP3A(リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン、など)は。は100 mgを1日2回に増量する。
  • Y188Lなどで100倍超に感受性が下がり、他のNNRTIとになりうる。NNRTIの乗り換えは成り立たない。
  • 日本には切り替え用の・配合錠()がある。

出典

  1. 1.ピフェルトロ錠100mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/MSD株式会社・2026)電子添文(2026年8月改訂、第6版)の本文を開いて確認した。販売名ピフェルトロ錠100mg、一般的名称ドラビリン錠、承認番号30200AMX00002000、販売開始は2020年2月。禁忌はカルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、ホスフェニトイン、エンザルタミド、アパルタミド、リファンピシン、ミトタン、イボシデニブ、エンコラフェニブ、セイヨウオトギリソウ含有食品の投与中の患者と、成分への過敏症の既往。適応はHIV-1感染症で、抗HIV薬による治療経験がない患者か、ウイルス学的失敗がなく6か月以上抑制され(HIV-1 RNA 50 copies/mL未満)ドラビリン耐性変異を持たない既治療患者への切り替え。用法は成人に100 mgを1日1回、食事の有無を問わず、必ず他の抗HIV薬と併用。リファブチン併用時は12時間間隔で1日2回に増量する。主にCYP3A4で代謝され、リファンピシン600 mg反復投与でAUCが0.12倍、リファブチン300 mg反復で0.50倍、ケトコナゾールで3.06倍。単回投与の半減期は12.3時間、絶対バイオアベイラビリティ約64%、血漿蛋白結合約76%、尿中の未変化体は約6%。小児等を対象とした臨床試験は実施していない。臨床成績にDRIVE-FORWARD(未治療766例、DOR対DRV/r、48週83.8%対79.9%、96週73.1%対66.0%)、DRIVE-AHEAD(728例、DOR/3TC/TDF対EFV/FTC/TDF、48週84.3%対80.8%、96週77.5%対73.6%)、DRIVE-SHIFT(切り替え、48週90.8%)。ピリジノン型のNNRTIで、ヒトのDNAポリメラーゼα・β・γは阻害しない。K103N・Y181C・G190Aでは感受性の低下が3倍未満で、Y188L等では100倍超。副作用は2%以上5%未満に悪心、下痢、疲労、頭痛、浮動性めまい、異常な夢。閲覧 2026-11-03
  2. 2.Major revision version 13.0 of the European AIDS Clinical Society guidelines 2025(HIV Medicine (European AIDS Clinical Society)・2026)PMC全文(PMC12757896、CC BY-NC-ND)の本文を読んで確認した。成人HIV-1の初回治療(Table 1)で、TAF/FTCまたはTDF/XTC+DORまたはTDF/3TC/DORが「推奨レジメン」に含まれ、注記は「HIV-2には活性がない。迅速な治療開始には向かない。感染の伝播した耐性を除外するため、開始前の遺伝子型検査が望ましい」。本文は「ドラビリンを含む組み合わせは、DTGとの直接比較試験の結果が出るまで推奨レジメンにとどまる」と述べる。12歳超の小児・青年の表(Table 3)では代替アンカー薬にDORが載る。閲覧 2026-11-03
  3. 3.PIFELTRO (doravirine) tablet, film coated - Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)/Merck Sharp & Dohme LLC・2026)DailyMed SPL APIで同じsetidのXMLを取得し(SPLの有効日は2026年7月8日)、本文を読んで確認した。適応は他の抗レトロウイルス薬との併用によるHIV-1感染症で、35 kg以上の成人・小児が対象。抗レトロウイルス治療歴のない患者、または失敗歴がなくドラビリン耐性置換のない抑制中の患者の切り替え。100 mgを1日1回、食事の有無を問わない。リファブチン併用時は1日2回。強力なCYP3A誘導薬(カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、エンザルタミド、リファンピシン、リファペンチン、ミトタン、セイヨウオトギリソウ)との併用は禁忌。重篤な皮膚反応(SJS/TEN)が市販後に報告され、ドラビリンを含む2剤療法の臨床試験でDRESSが報告されている。有害事象による中止は、96週でDRIVE-FORWARDのドラビリン群2%・DRV+r群3%、DRIVE-AHEADのDOR/3TC/TDF群3%・EFV/FTC/TDF群7%。48週のLDLコレステロール変化はDRIVE-FORWARDでドラビリン−4.6対DRV+r +9.5 mg/dL、DRIVE-AHEADで−2.1対EFV +8.3 mg/dL(臨床的な利益は示されていない)。1200 mgでQT延長なし。閲覧 2026-11-03
  4. 4.イドビンソ配合錠 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/MSD株式会社・2026)電子添文(2026年8月改訂、第3版)の冒頭部分を開いて確認した。一般的名称はドラビリン・イスラトラビル水和物で、1錠にドラビリン100 mgとイスラトラビル0.25 mgを含む。販売開始は2026年4月。効能はHIV-1感染症で、ウイルス学的失敗がなく3か月以上抑制され、ドラビリンまたはイスラトラビルへの耐性関連変異がない既治療の成人への切り替えに使う。成人に1回1錠を1日1回、食事の有無を問わず経口投与する。禁忌にはピフェルトロ錠と同じ薬剤・食品に加え、ラミブジンとエムトリシタビンの投与中の患者が含まれる。閲覧 2026-11-03