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Drug Atlas · B10 Diuretics / 利尿薬

ドルゾラミド

dorzolamide

分類
Carbonic anhydrase inhibitors / 炭酸脱水酵素阻害薬
商品名(日本)
トルソプト
商品名(EU)
Trusopt
科目
PharmacologyOphthalmology
トピック
B10: Potassium excreting (wasting) diureticsML-33A: Glaucoma IIML-05A: Pharmacology in ophthalmology: eyedropsCore51: Drug-induced adverse reaction: sulfonamide allergy and its characterization
承認適応
緑内障
禁忌疾患
慢性腎臓病
副作用
灼熱痛味覚異常霧視角膜浮腫
監視検査値
眼圧
相互作用
アセタゾラミド
対象疾患
網膜色素変性

🧠 全体像:は、のII型を点眼で阻害しての産生を減らす緑内障治療薬である。標的は内服のと同じだが、眼局所に投与するため、代謝性アシドーシスや電解質異常といった全身の副作用を臨床的にはほぼ避けられるのが最大の利点である。一方で、①を持つためでも全身に吸収されて過敏症が起こりうる、②にもがあるため内皮の乏しい眼でを起こす、③1日3回点眼が必要、④点眼直後のしみる感じとが出やすい、の4点が実地での注意点になる1。

薬効群の中での位置づけ

緑内障の薬物治療は「の産生を減らす」か「流出を増やす」かで分かれる。は産生を減らす側で、単剤の下降はなどのより小さいため、他剤で効果不十分なときの併用や、他剤が使えないときの代替として使われることが多い。

系統 代表薬 機序 下降の目安 全身への影響
(点眼) 、 ↓ 約20% ごく小さい
(内服・静注) ↓ 30〜40% 、代謝性アシドーシス、電解質異常、腎結石
β遮断薬(点眼) 、 ↓ 20〜25% 徐脈、
↑ 第一選択(詳細は各薬の項) 小さい
α2作動薬 ↓と流出↑ 18〜25% 口渇、傾眠。乳幼児で注意

💡 は、とのとしても使われる。β遮断薬が使えない喘息・徐脈の患者では単剤のが選択肢になる、という使い分けも覚えておく。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dorzolamide'>ドルゾラミド</span>を点眼"] --> B["角膜から吸収され<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ciliary body'>毛様体</span>に分布"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ciliary epithelium'>毛様体上皮</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='carbonic anhydrase'>炭酸脱水酵素</span>II型を阻害"]
    C --> D["炭酸水素イオンの生成が遅れる"]
    D --> E["ナトリウムと水の輸送が低下"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aqueous humor'>房水</span>の産生が減る"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span>が下がる"]
    B -.->|"一部は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic circulation'>全身循環</span>へ"| H["赤血球の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carbonic anhydrase'>炭酸脱水酵素</span>に結合して蓄積"]

はのと炭酸の脱水の可逆反応を触媒する酵素で、ヒトではII型(CA-II)が赤血球などに多く、でもに関わる。はこのCA-IIの阻害薬で、ヒト赤血球のCA-IIに対するはの約5倍、メタゾラミドの約10倍(in vitro)とされる21。

薬物動態

項目 特徴・数値
吸収・分布 点眼するとに到達する。赤血球内のCA-IIにで結合して中に赤血球内へ蓄積する。は通常、未満1
蛋白結合 は約30%(国内 in vitro 27.8〜30.1%、米国約33%)
代謝 主にCYP2C9・2C19・3A4で代謝され、検出される代謝物はN-脱エチル体のみ(国内 in vitro)2。この代謝物はCA-IIの阻害はより弱いがCA-Iも阻害し、赤血球内でCA-Iに結合して蓄積する1
排泄 未変化体のまま尿中に排泄される。主にのため腎障害で蓄積しうる
消失 中止後の赤血球からのはで、終末相の半減期は約4〜5か月(米国約4か月、国内約5か月)

⭐ 赤血球に長く残るのは、CA-IIに強く結合するためである。ただし点眼量が少なく、定常状態でも腎機能や呼吸に薬理学的な影響を及ぼす程度のには達しないと評価されている1。

適応

  • 緑内障・。米国はまたはのが適応である。国内は「他の緑内障治療薬で効果不十分な場合の併用療法」に限られ、投与前に他剤での治療を行うこと、他剤で効果不十分または副作用で継続できない場合に検討することが条件になっている2。

臨床成績

  • 下降の大きさ:米国添付文書では、治療前のが23 mmHg以上の患者で1日を通して約3〜5 mmHg下がり、1年間の試験でも一貫していた。1日3回未満での有効性は確立していない1。
  • ・との比較(523例、1年):ピーク時の下降率は2%約23%、0.5%約25%、0.5%約21%、午後の時は17%、20%、15%で、の効果はと同等、よりやや弱い。経口ので見られるような臨床的に意味のある電解質異常や全身副作用は伴わなかった3。
  • 国内:中等度改善以上を示したのは本剤群75.2%(85/113例)、0.25%群80.4%(90/112例)で、有意差はなかった2。

適応外の使い方:網膜色素変性に伴う嚢胞様黄斑浮腫

に合併するに、局所のが用いられることがある(ではない)。11報・194例358眼の統合では、は平均46.02 μm減少したが、視力への効果は研究間で一致しなかった。根拠は非研究が中心で、による確認が望まれている4。

用法・用量

地域 用法・用量
日本 通常0.5%製剤を1回1滴・1日3回点眼。十分な効果がなければ1%製剤を1回1滴・1日3回2
米国 2%製剤を1回1滴・1日3回。他の局所点眼薬と併用できる1
  • 他の点眼薬を併用するときは5分以上あけて点眼する。
  • 点眼後は1〜5分してを圧迫する(国内の指導)。涙で薬液が流れると期待した効果が得られないことがある。
  • 塩化物がソフトコンタクトレンズに吸着するため、レンズは点眼前に外す。再装用は国内の電子添文では5〜10分以上、米国添付文書では15分後とされる。

禁忌・注意

禁忌

国 禁忌
日本 本剤の成分に対する過敏症の既往歴/重篤な腎障害(主に腎から排泄され体内に蓄積するおそれ)2
米国 本剤の成分への過敏症のみ。重度腎障害(CrCl 30 mL/min未満)は未検討のため推奨されず、肝障害は慎重投与1

重要な注意

  • ⚠️ 過敏症:はで、でも全身に吸収される。・のほか、、、による死亡例がまれに報告されており、再投与で感作がしうる1。重い皮膚・過敏症状が出たら中止する。
  • ⚠️ の乏しい眼:はを使って角膜から水をくみ出しているため、内皮細胞数が少ないとの危険が増す。国内の電子添文も眼内手術の既往等を要注意としている。局所開始後にが非可逆的に進んだ9例の報告では、全例が後で、開始3〜20週(平均7.8週)に発症し、中止しても改善せず7例がに至った5。やのある眼ではとくに慎重にする。
  • :だけでは治療にならず、薬物療法以外に手術療法などを考慮する2。
  • 多回使用容器の汚染:点眼容器の先端が眼に触れないようにする。眼科手術後や眼の外傷・感染があれば、その容器を使い続ける前にに相談する。
  • 妊娠・授乳:十分な管理された試験はない。ウサギの(母体に代謝性アシドーシスを生じる用量)で胎児のが報告されている。授乳についてヒトのデータはない1。
  • 小児:米国では3か月の試験で安全性・有効性が示されている一方、国内では小児等を対象としたは実施されていない。

相互作用

併用薬 内容
内服・静注の() がになりうるため、併用は推奨されない1
大量のアスピリン() 経口のでは酸塩基・電解質の異常を介してが報告されており、併用で副作用が増強する可能性がある2

副作用

分類 主な症状・所見
点眼直後の(高頻度) 灼熱感・刺痛・不快感が約1/3、国内でもしみる・・疼痛・・などの症状が5%以上12
味覚 (米国で約1/4。国内は1%未満の記載)
角膜 (米国で10〜15%)、まれに・角膜障害
アレルギー 結膜炎・眼瞼反応(眼アレルギー反応の徴候が約10%)。で出て、中止で軽快することが多い
その他の かすみ、、、乾燥、(1〜5%)
全身 頭痛、悪心、倦怠感。まれに発疹、、
重大 、(頻度不明)

まとめ

は、CA-IIを点眼で阻害してを減らす局所ので、内服のと違い全身の代謝性アシドーシスや電解質異常をほぼ避けられる。下降は約20%でより少し弱く、国内では他剤で効果不十分なときの併用として0.5%(不十分なら1%)を1日3回点眼する。覚えるべき落とし穴は、過敏症、の乏しい眼での、点眼直後のしみる感じと、そして日本で重篤な腎障害が禁忌になっている点である。

出典

  1. 1.DORZOLAMIDE HYDROCHLORIDE solution/ drops — Prescribing Information(DailyMed (NLM) / Sandoz Inc(製造 Alcon Laboratories)・2022)米国添付文書(Rev. December 2022)で、適応が高眼圧症または開放隅角緑内障の眼圧上昇であること、用量が2%製剤を1回1滴・1日3回で、他の点眼薬とは5分以上あけること、禁忌が成分への過敏症のみであること、スルホンアミドであり局所投与でも全身に吸収されてStevens-Johnson症候群・中毒性表皮壊死融解症・劇症肝壊死・無顆粒球症・再生不良性貧血などによる死亡例がまれにあり再投与で感作が再燃しうること、角膜内皮細胞数が少ない患者で角膜浮腫の可能性が増すこと、経口の炭酸脱水酵素阻害薬との併用は推奨されないこと、重度腎障害(CrCl 30 mL/min未満)は未検討のため推奨されず肝障害は慎重投与とされること、眼の灼熱感・刺痛・不快感が約1/3、苦味が約1/4、点状表層角膜炎が10〜15%、眼アレルギー反応が約10%であること、ヒト炭酸脱水酵素IIの阻害薬で赤血球内に蓄積し洗い出しの終末相半減期が約4か月であること、眼圧下降が約3〜5 mmHgで1日3回未満の有効性は確立していないこと、ウサギ経口投与(母体に代謝性アシドーシスを生じる2.5 mg/kg/日)で胎児の椎体奇形が認められたこと、小児で3か月の多施設二重盲検試験により安全性と有効性が示されていることを確認した閲覧 2026-11-01
  2. 2.トルソプト点眼液0.5%/トルソプト点眼液1% 電子添文(参天製薬(日本の添付文書)・2022)2022年4月改訂(第1版)の電子添文で、効能が「他の緑内障治療薬で効果不十分な場合の併用療法」としての緑内障・高眼圧症であること、用法が0.5%製剤を1回1滴・1日3回とし効果不十分なら1%製剤へ切り替えること、禁忌が本剤の成分に対する過敏症の既往歴と重篤な腎障害(主に腎から排泄され体内に蓄積するおそれ)であること、眼内手術の既往等がある患者では角膜内皮細胞数の減少により角膜浮腫が増える可能性があること、急性閉塞隅角緑内障では薬物療法以外に手術療法などを考慮すること、全身吸収されスルホンアミド系薬剤の全身投与と同様の副作用があらわれうること、併用注意が全身投与の炭酸脱水酵素阻害剤(アセタゾラミド)と大量アスピリンであること、重大な副作用がStevens-Johnson症候群・中毒性表皮壊死融解症(頻度不明)で、5%以上の副作用が眼刺激症状(24.4%)であること、苦味は1%未満に挙がっていること、健康成人8例への2.5%点眼でドルゾラミドが赤血球中の炭酸脱水酵素と結合し消失半減期が約5か月であること、主にCYP2C9・2C19・3A4で代謝されること、国内第III相試験で中等度改善以上が本剤群75.2%(85/113例)・0.25%チモロール群80.4%(90/112例)で有意差がなかったこと、小児等を対象とした臨床試験は実施していないこと、ソフトコンタクトレンズは点眼前に外し点眼後5〜10分以上あけて再装用すること、他の点眼剤とは5分以上あけること、点眼後に1〜5分閉瞼して涙嚢部を圧迫することを確認した閲覧 2026-11-01
  3. 3.A double-masked, randomized 1-year study comparing dorzolamide (Trusopt), timolol, and betaxolol. International Dorzolamide Study Group(Archives of Ophthalmology・1995)開放隅角緑内障または高眼圧症523例を対象に2%ドルゾラミド1日3回・0.5%チモロール1日2回・0.5%ベタキソロール1日2回を1年間比較した二重盲検試験で、ピーク時の平均眼圧下降率が約23%・25%・21%、午後のトラフ時が17%・20%・15%であり、ドルゾラミドの眼圧下降効果はベタキソロールと同等で、長期使用でも経口の炭酸脱水酵素阻害薬で見られる臨床的に意味のある電解質異常や全身性副作用は伴わなかったことを確認した(抄録)閲覧 2026-11-01
  4. 4.Efficacy of carbonic anhydrase inhibitors in management of cystoid macular edema in retinitis pigmentosa: A meta-analysis(PLOS ONE・2017)網膜色素変性に伴う嚢胞様黄斑浮腫に対する炭酸脱水酵素阻害薬(ドルゾラミドなどの点眼とアセタゾラミドなどの内服)の臨床研究11報(194例358眼)の統合で、中心黄斑厚が46.02 μm減少した(95%信頼区間−60.96〜−31.08、I2=65%)一方、視力への効果は研究間で一貫せず、非ランダム化研究に基づく結果であったことを確認した(抄録)閲覧 2026-11-01
  5. 5.Irreversible corneal decompensation in patients treated with topical dorzolamide(American Journal of Ophthalmology・1999)局所ドルゾラミド開始後に非可逆的な角膜代償不全をきたした9例9眼の多施設症例集積で、全例に内眼手術歴があり(白内障手術8例、角膜移植4例、Fuchs角膜内皮ジストロフィ2例)、開始3〜20週(平均7.8週)で発症して中止しても改善せず、7例が角膜移植を受けたこと、角膜内皮が障害された一部の緑内障患者でドルゾラミドが非可逆的な角膜浮腫を起こしうると結論されていることを確認した(抄録)閲覧 2026-11-01