病理学

病理学 · C/19

閉塞性肺疾患(COPDなど)

Obstructive lung diseases — COPD

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High-yield / ポイント
応用トピック
慢性閉塞性肺疾患慢性閉塞性肺疾患と肺気腫COPD急性増悪
疾患
肺気腫慢性閉塞性肺疾患
検査値
Charcot–Leyden結晶

🧠 全体像:講義が「(群)」としてまとめるはいずれも/比の低下という共通の機能的特徴を持つが、侵される部位が違う——喘息・・は気管支、肺気腫は腺房・肺胞——という一点で病理像と症状の違いを整理できる。ただし現行のが定義するCOPDは・・肺気腫による持続性であり、喘息とは別の疾患(併存はしうる)として扱う。肺気腫はプロテアーゼ・と酸化・という2つの不均衡が線維化を伴わない破壊に収斂する点が機序の核心。

COPDの概要

  • :部分・による抵抗増加のための
  • 特徴:低下()、は正常または増加 → /比が低下
  • 主症状:呼吸困難
  • ⚠️ 講義の「」はの総称として使われている。 現行の 2026はを「気道(気管支炎・)および/または肺胞(肺気腫)の異常による慢性の呼吸器症状(呼吸困難・咳・喀痰・増悪)を特徴とし、持続性でしばしば進行性のを来す不均一な肺の病態」と定義し、喘息とは異なる疾患で、一人の患者に併存しうると明記している1。下の表の喘息・は「」の仲間ではあるが、現行の定義でいうそのものではない。
  • ⭐ 診断:適切なで、の投与後/比0.7未満がを確定する1。
  • ⭐ :2011年に導入された多次元ABCD分類(・症状・増悪リスクを統合)は複雑さと誤分類が指摘され、2017年版で群分けからの閾値が外れ、2023年版でC群とD群が増悪歴だけで決まる単一のE群へ統合されてA・B・E群になった2。現行の分類は、で決まるのグレードと、症状と増悪歴で決まるA・B・E群という独立した2軸で評価する1。
のグレード(/<0.7の患者) 投与後(%予測値)
1(軽度) 80%以上
2(中等度) 50%以上80%未満
3(高度) 30%以上50%未満
4(最重度) 30%未満
ABE群 過去1年の中等度・重度の増悪 症状
A 0回 mMRC 0〜1 かつ (CAT)10未満
B 0回 2以上 または (CAT)10以上
E 1回以上 問わない
  • ⚠️ 2026ではE群の基準が「中等度または重度の増悪が1回以上」となり、1回のでもE群に入る。数はA・B・E群を決める項目ではなく、を使うかどうかの判断に別途用いる1。
疾患 部位 病理変化 病因 症状
喘息 気管支 ・過形成、過剰な粘液、炎症 免疫学的または不明 発作性の喘鳴、咳、呼吸困難
肺気腫 腺房・肺胞 拡大、壁の破壊 煙 呼吸困難
気管支 ・過形成、過分泌 煙、物質 咳、喀痰、呼吸困難
気管支 気道拡張と 持続性・重症感染 咳、、発熱、呼吸困難

💡 は「症状による臨床定義」(連続する咳・喀痰の期間)、肺気腫は「形態による病理定義」(拡大と壁破壊)であり、独立した2つの軸である。 同じ患者が両方を合併することも、片方だけのこともある——という傘の下での原因が異なるだけで、必ずしも同時に存在するとは限らない。

気管支喘息

定義

  • 気道の慢性炎症性疾患 → 喘鳴・・・咳の反復発作
  • 主な特徴:様々な刺激(感染、刺激物、、ストレス、運動)に対するの亢進()
  • 現行の 2026の定義は「通常は慢性の気道炎症を特徴とする不均一な疾患で、時間とともに強さが変動する呼吸器症状の病歴と、の呼気によって定義される」。と気道炎症は通常伴うが、診断に必要でも十分でもない3

症状

  • 間欠性で可逆的な気道閉塞
  • 好酸球を伴う症
  • の肥大・過反応
  • の増加

型

  1. 型喘息(外因性) — 最多、小児期発症、家族歴、I型過敏(IgE介在、Th2)、発作に先立って・蕁麻疹・湿疹を伴うことがある、環境抗原(塵、花粉、ふけ、食物)や感染が誘因
  2. 非型喘息(内因性) — 家族歴なし、アレルギーなし、ウイルス感染・物質が誘因
  3. 現行の 2026は講義の型・非型に相当する臨床表現型としてアレルギー性喘息(小児期発症が多くアレルギー疾患の既往・家族歴を伴い、好酸球性気道炎症を示すことが多く、によく反応する)と非アレルギー性喘息(喀痰は好中球性・好酸球性・少数細胞型のいずれもありうる)を挙げる。ただし臨床表現型は特定の病理過程や治療反応と強くは相関しないとも明記し、2型気道炎症のは難治性・重症喘息の評価でとくに役立つとしている3
  4. ⭐ 重症喘息では、を示唆する(150/µL以上、呼気NO 20 ppb以上、喀痰好酸球2%以上、臨床的にアレルゲン誘発性、のいずれか)で「Type 2-high重症喘息」と「低Type 2の重症喘息」に分け、前者では抗IgE・抗IL-5/・抗・抗TSLPといった2型標的の生物学的製剤の追加を検討する。これらの値そのものは生物学的製剤のではない4

発生機序(アトピー型)

  • 過剰なTh2反応 → サイトカイン:
    • IL-4 → IgE産生を刺激
    • IL-5 → 好酸球を活性化
    • IL-13 → を刺激
    • IgE → 肥満細胞を被覆 → アレルゲン再曝露で
  • のアレルゲン反応:
    • 急性相:、浮腫、
    • (4〜8時間後):好酸球流入 → の放出 →
  • → :+

形態

  • ()による過拡張肺
  • 気管支・がで閉塞
  • 組織像:
    • :のき
    • +多数の好酸球
    • Creola体:脱落した線毛上皮細胞の
  • :肥厚した基底膜、、腺の腫大

臨床

  • 強い呼吸困難と喘鳴、呼気の困難( → )
  • 発作は1時間〜数時間続き、自然に、または+で軽快
  • 致死的というより日常生活を障害する
  • ⚠️ 現行の 2026は安全性の観点から、成人・思春期・6〜11歳の小児を短時間作用型β₂刺激薬()単独で治療することを推奨せず、重症増悪のリスクを減らすためを含む治療を行うとしている3

肺気腫

定義

  • 肺気腫は腺房に限局した(講義の表現では「腺房に限局した」)
  • より末梢のの永続的拡大に壁(肺胞)の破壊を伴うが、線維化はない
  • 患者:するが十分な酸素化を維持しうる → チアノーゼを回避

型(解剖学的分布による)

  1. — が侵され、末梢肺胞は保たれる(同じ腺房に気腫性と正常のが混在し、重症化すると遠位腺房も侵される)、(特に)、喫煙者で最多
  2. — 腺房全体が拡大、下葉、α₁-と関連。⭐ 最重症のPiZZ表現型ではがに蓄積し、のから成人期の肝硬変・までの肝病変も来しうる(肺はプロテアーゼ過剰による破壊、肝は蛋白蓄積という対照的な機序)
  3. 遠位腺房型(型・paraseptal) — 近位腺房は保たれ遠位が侵される、胸膜・に沿って強い、線維化・瘢痕・の隣にみられ肺の上半分で高度、のブラ、若年成人のと関連
  4. 不規則型 — 腺房が不規則に侵される、瘢痕と関連、最多だが通常無症状

発生機序:2つの不均衡

  1. プロテアーゼ・の不均衡:
    • α₁-アンチ()欠損 → 好中球プロテアーゼが抑制されず活性 → 弾性組織の破壊
    • 喫煙:好中球を誘引・活性化 → マクロファージの活性を増強
  2. 酸化・の不均衡:
    • 煙 → ROS → を枯渇 → +内因性の不活化 → 機能的α₁-
flowchart TD
    A["喫煙・α1-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='AAT / A1AT'>アンチトリプシン欠損</span>"] --> B["好中球プロテアーゼが抑制されず活性化"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tobacco'>タバコ</span>煙由来ROS"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antioxidant'>抗酸化物質</span>の枯渇"]
    D --> E["内因性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiprotease'>抗プロテアーゼ</span>の不活化<br>(機能的α1-AT欠損)"]
    B --> F["弾性組織の破壊"]
    E --> F
    F --> G["線維化を伴わない<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar wall'>肺胞壁</span>破壊"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='airspace'>気腔</span>の永続的拡大(肺気腫)"]

形態

  • :蒼白で容積の大きい肺
  • :より濃いピンク、容積は小さい、上2/3が最も侵される
  • 組織像:線維化を伴わない破壊 → 拡大、弾性組織の喪失 → 呼気時の虚脱、の減少

臨床

  • なし(「pink puffer」):、を伴う呼吸困難、、十分な酸素化、著明な体重減少
  • あり(「blue bloater」):呼吸困難は目立たず、CO₂貯留 → 低酸素+チアノーゼ、肥満、
  • 死因:肺不全(、低酸素、昏睡)または(右心不全)

💡 ポイント: 喘息 = IgE/Th2、好酸球、+、可逆的な。肺気腫 = 線維化を伴わない肺胞破壊、α₁-AT欠損 → 、喫煙 → 。(肺気腫)と (肺気腫+気管支炎)。すべてので/低下。

まとめ

  • 講義が「」としてまとめるはいずれも低下・/比低下を示すが、侵される部位が異なる(喘息・・は気管支、肺気腫は腺房・肺胞)。現行のの定義ではは気管支炎・・肺気腫による持続性で、喘息とは別の疾患(併存しうる)である。
  • の診断は投与後/比0.7未満で確定し、による 1〜4と、症状(・)と過去1年の増悪歴によるA・B・E群の2軸で評価する。 2026では中等度以上の増悪が1回でもあればE群となる。
  • は型(IgE介在、Th2優位、/IL-5/)と非型に分かれ、・が組織学的特徴。
  • のはによるとで、可逆的なを基本病態とする。
  • 肺気腫はプロテアーゼ・の不均衡と酸化・の不均衡という2つの機序が、線維化を伴わない破壊に収斂する。
  • 肺気腫は解剖学的分布により(喫煙者、)、(α1-AT欠損、下葉)、遠位腺房型(若年成人のと関連)、不規則型に分かれる。
  • 臨床的にはpink puffer(肺気腫優位、十分な酸素化)とblue bloater(あり、低酸素+チアノーゼ)で対比される。

出典

  1. 1.Global Strategy for the Diagnosis, Management, and Prevention of Chronic Obstructive Pulmonary Disease: 2026 Report(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease (GOLD)・2026)全文で、COPDを「気道(気管支炎・細気管支炎)および/または肺胞(肺気腫)の異常による慢性の呼吸器症状(呼吸困難・咳・喀痰・増悪)を特徴とし、持続性でしばしば進行性の気流閉塞を来す不均一な肺の病態」と定義していること、適切な臨床状況で気管支拡張薬投与後のFEV1/FVC比0.7未満が診断を確定すること、気流閉塞の重症度は気管支拡張薬投与後FEV1(%予測値)によるGOLD 1(80%以上)・2(50%以上80%未満)・3(30%以上50%未満)・4(30%未満)で示すこと(Figure 2.10)を確認した。ABE評価(Figure 2.13)は過去1年の中等度または重度の増悪が1回以上ならE群、0回ならmMRC 0〜1かつCAAT 10未満でA群、mMRC 2以上またはCAAT 10以上でB群とし、E群の基準は1回の中等度増悪も含むよう改められた。血中好酸球数は群分けの項目ではなく、吸入ステロイドの使用判断に用いる別の評価項目である。喘息とCOPDは異なる疾患で、一人の患者に併存しうると明記していることも確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.Prognostic risk profiling in COPD using Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease 2023 ABE and comorbidity assessment: evidence from a register-based COPD cohort(Journal of Global Health・2025)GOLD 2011が導入した多次元ABCD分類(スパイロメトリー・症状・増悪リスクを統合)は複雑さと誤分類が指摘され、2017年版で群分けからスパイロメトリー閾値を外し症状と増悪歴のみで判定するよう簡略化され、2023年版で高リスクのC群とD群を増悪歴のみで決まる単一のE群へ統合してA・B・Eの3群に再編された経緯を確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Global Strategy for Asthma Management and Prevention(Global Initiative for Asthma (GINA)・2026)GINA 2026年版の全文で、喘息を「通常は慢性の気道炎症を特徴とする不均一な疾患で、喘鳴・息切れ・胸部絞扼感・咳など時間とともに強さが変動する呼吸器症状の病歴と、変動性の呼気気流制限によって定義される」としていること、気道過敏性と気道炎症は通常伴うが診断に必要でも十分でもないこと、代表的な臨床表現型としてアレルギー性喘息(小児期発症が多く、湿疹・アレルギー性鼻炎・食物/薬物アレルギーの既往や家族歴を伴い、治療前の誘発喀痰で好酸球性気道炎症を示すことが多く、吸入ステロイドによく反応する)と非アレルギー性喘息(喀痰の細胞像は好中球性・好酸球性・少数細胞型がありうる)を挙げつつ、一般に臨床表現型は特定の病理過程や治療反応と強くは相関せず、2型気道炎症のバイオマーカーは難治性・重症喘息の評価と治療でとくに有用としていることを確認した。安全性の観点から成人・思春期・6〜11歳の小児をSABA単独で治療することを推奨せず、吸入ステロイドを含む治療を行うとしていることも確認した閲覧 2026-09-24
  4. 4.Difficult-to-Treat and Severe Asthma in Adolescent and Adult Patients: Diagnosis and Management(Global Initiative for Asthma(GINA)・2026)GINA 2026の重症喘息ガイドで、重症喘息の意思決定樹が2型炎症を示唆するバイオマーカー(血中好酸球150/µL以上、呼気NO 20 ppb以上、喀痰好酸球2%以上、臨床的にアレルゲン誘発性のいずれか)によりType 2-high severe asthmaと低Type 2バイオマーカーの重症喘息に分けること、これらの値は生物学的製剤追加の適格基準ではないと注記していること、2型標的の生物学的製剤(抗IgE・抗IL-5/IL-5Rα・抗IL-4Rα・抗TSLP)の追加を検討する段階が別にあることを確認した閲覧 2026-08-27