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Drug Atlas · A3 Anticholinergics / 抗コリン薬

ベンズトロピン

benztropine

分類
Anticholinergics / 抗コリン薬Antiparkinson drugs / 抗パーキンソン薬
科目
PharmacologyClinical Pharmacology
トピック
A3: Muscarinic receptor blocking drugsA22: Drugs of neurodegenerative diseases (extrapyramidal motoric system, nootropic drugs)10: Parkinson's disease and dementia
承認適応
パーキンソン病
副作用
口腔乾燥霧視錯乱便秘散瞳頻脈

🧠 全体像:は、中枢で働く()で、米国ではのとによるの治療に使われる1。最も出会うのは、や抗精神病薬によるに、1〜2 mgを筋注または静注して数分で軽快させる場面である2。落とし穴は3つで、には効かず悪化させうること、高齢者ではが回避を求めること、から・を起こしうることである。日本の電子添文には載っておらず、国内ではやが同じ役割を担う。

薬効群の中での位置づけ

薬 位置づけ
米国で使う。経口と注射がある。の注射薬として代表的
経口の。と並んでの回避対象
国内で使う。パーキンソン病とに使う
。振戦に使う
抗ヒスタミン薬。での代わりになる

機序

はと抗ヒスタミン作用をもつが、治療上の意義が確立しているのはだけである。の抗コリン活性はとほぼ同等と記載される1。

flowchart TD
    A["線条体のドパミンが減る<br>(パーキンソン病)"] --> C["相対的に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cholinergic'>コリン作動性</span>が優位になる"]
    B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuroleptic'>神経遮断薬</span>がD2受容体を遮断<br>(抗精神病薬・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metoclopramide'>メトクロプラミド</span>)"] --> C
    C --> D["振戦・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rigidity'>固縮</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dystonia'>ジストニア</span>などの運動症状"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='benztropine'>ベンズトロピン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscarinic receptor'>ムスカリン受容体</span>を遮断"] --> F["ドパミンとアセチルコリンの釣り合いが戻る"]
    F -.->|"症状が軽くなる"| D

ドパミンが減る病気でも、ドパミンの受容体が薬で遮断された状況でも、の相対的な優位という同じ不均衡が起こる。はそこをで戻す(:)。

薬物動態

電子添文はの数値を載せていない。効果が蓄積することとが長いことだけが記される。

  • があるため、継続的な観察が望ましく、低用量から始めて5〜6日ごとに増やす
  • が長いので、就寝前の投与が向く。夜間の寝返りや朝の起床が楽になる
  • 静注と筋注で効果発現に大きな差はなく、通常は静注の必要がない。どちらも速やかに効き、数分で改善することがある2

適応

米国の電子添文の適応は次の2つである1。

病態 使うか
あらゆる型の として使う。との併用もできる
(など)による 使う。やなど
使わない。 症状を軽くせず、悪化させることもある

⚠️ は適応から明示的に除外される。 同じ「薬剤性の不随意運動」でも、やには効くのに、には効かない。を足しても改善せず、むしろ悪化しうる1。

用法・用量

場面 用量
注射液1〜2 mL(1〜2 mg)を筋注または静注。通常すばやく軽快し、症状が戻れば反復できる2
薬剤性(経口) 1日1〜4 mgを1日1〜2回。早期に出たものは一過性のことが多く、1〜2 mgを1日2〜3回で1〜2日以内に軽快する。1〜2週後に中止して継続の要否を確かめ、すれば再開する
就寝前0.5〜1 mgの1日1回から始め、通常は1日1〜2 mg(範囲0.5〜6 mg)。4〜6 mg/日を要する人もいる
1日2 mgから。大量でもしやすい
増量 5〜6日ごとに0.5 mgずつ、最大6 mg/日まで
  • 他のを急に中止しない。 減らすときは徐々に行う
  • 高齢者や痩せた患者は、大量に耐えられない
  • ゆっくり出てくるタイプの薬剤性は、効かないことがある1

予防投与は有効か

の開始時にを併用する予防投与には、結果が割れている。若い精神病患者を対象にした試験では、併用での発生が14%対33%と少なかったが、有意差はなかった。群では口渇とが増えた。著者らは、若い患者では中等量の併用が合理的だとしている3。予防投与を一律に勧める根拠ではなく、の危険が高い若年の患者などに絞って考える。

禁忌・注意

区分 内容
禁忌 への過敏症、3歳未満の小児(の副作用のため)。3歳以上でも小児では注意する
注意 頻脈の傾向がある患者との患者は注意深く観察する(尿閉の報告がある)。には原則として使わない(電子添文は「おそらく使うべきでない」)、精神障害のある患者(を誘発しうる)
  • ⚠️ 高齢者ではが回避を求める。 AGS (2023年版)は、経口のとを「抗精神病薬によるの予防または治療には推奨されない。パーキンソン病の治療にはより有効な薬がある」として回避(根拠の質Moderate、推奨の強さStrong)とする4
  • ⚠️ と・。に似た構造のため発汗が抑えられ、暑い時期や、他の・との併用で重いと致死的なが起こりうる。症状は消化器の訴え・発熱・暑さに耐えにくいことなので、報告するよう説明する
  • ⚠️ :やとの併用で、ときに致死的な・・が起こりうる
  • ⚠️ 精神症状:大量や感受性の高い患者で、・興奮・が出る。精神障害のある患者にのの治療として使うと、精神症状が強まってを起こしうる
  • 精神的・身体的な能力が損なわれうるため、運転や危険な作業に影響する。妊娠での安全性は確立していない

副作用

系統 主な副作用(重い順に電子添文が列挙)
心血管 頻脈
消化器 、便秘、嘔吐、悪心、口渇
神経 (・・記憶障害・)、精神症状の悪化、、抑うつ、指の
眼 、
泌尿器 尿閉、
皮膚 発疹(用量を減らして抑えられなければ中止)
その他 、、発熱

口渇が強く飲み込みや会話に支障が出るときは、減量または一時中止する。悪心や嘔吐も、減量や一時中止で抑えられる1。

過量はや抗ヒスタミン薬の過量に似る。中枢神経の抑制と興奮、、、、口渇、頻脈、、せん妄、昏睡、けいれん、まで起こる。電子添文は、1〜2 mgの皮下または静注が症状を戻すと報告されているとし、それ以外は対症療法と支持療法とする()。

まとめ

  • は中枢性ので、米国での補助とによるに使う。日本の電子添文には載っていない
  • に注射液1〜2 mg(1〜2 mL)を筋注または静注し、数分で軽快する。静注の必要は通常ない
  • には使わない。効かず、悪化させることもある。の予防投与は結果が割れており、若年に絞って考える
  • 高齢者ではで回避(Moderate・Strong)。と・、、、尿閉に注意し、では原則使わない
  • 禁忌は過敏症と3歳未満の小児。の副作用は口渇・便秘・・・尿閉・頻脈で、過量はの像になる

出典

  1. 1.BENZTROPINE MESYLATE TABLETS, USP 0.5 mg, 1 mg and 2 mg — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)/Par Health USA, LLC・2026)DailyMed SPL APIで同じsetidのXML(有効日2026年8月20日)を取得し、本文全体を読んで確認した。抗コリン作用と抗ヒスタミン作用をもつが、パーキンソニズムの治療で意義が確立しているのは前者のみ。適応はあらゆる型のパーキンソニズムの補助療法と、神経遮断薬(フェノチアジンなど)による錐体外路障害(遅発性ジスキネジアを除く)の抑制。禁忌は薬剤への過敏症と3歳未満の小児(アトロピン様の副作用のため)。警告は、フェノチアジン・ハロペリドール・三環系抗うつ薬との併用で麻痺性イレウス・高体温・熱中症(ときに致死的)が起こりうること、無汗症、運転などへの影響、妊娠での安全性は未確立。注意は、頻脈・前立腺肥大、排尿困難・尿閉、精神障害のある患者で中毒性精神病を誘発しうること、遅発性ジスキネジアには効かず悪化させることもあり推奨されないこと、閉塞隅角緑内障には使うべきでないこと。用量は、初期は低用量から5〜6日ごとに0.5 mgずつ増やして最大6 mg、パーキンソニズムの通常量は1日1〜2 mg(範囲0.5〜6 mg)で特発性は就寝前0.5〜1 mgの1日1回から開始でき、薬剤性錐体外路障害は1日1〜4 mgを1日1〜2回、早期に出た障害は一過性で1〜2 mgを1日2〜3回で1〜2日以内に軽快し、1〜2週後に中止して継続の要否を確かめる。他の抗パーキンソン病薬は急に中止せず、レボドパとの併用も可。副作用は頻脈、麻痺性イレウス・便秘・嘔吐・悪心・口渇、中毒性精神病(錯乱・失見当識・記憶障害・幻視)、霧視・散瞳、尿閉・排尿困難、発疹、熱中症・高体温。過量はアトロピン中毒に似て、フィゾスチグミン1〜2 mgの皮下または静注が症状を戻すとされる。閲覧 2026-11-05
  2. 2.Benztropine Mesylate Injection, USP — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)/Navinta LLC・2026)DailyMed SPL APIで同じsetidのXML(有効日2026年3月17日)を取得し、本文を読んで確認した。静注・筋注用で1 mL中に1 mgを含む。静注と筋注で効果発現に大きな差はなく通常は静注の必要がなく、どちらも速やかに効き、数分で改善することもある。緊急時は注射液1〜2 mLで速やかな軽快が得られ、パーキンソン症状が戻れば反復できる。急性ジストニア反応では1〜2 mLで通常すばやく軽快する。神経遮断薬による錐体外路障害は1日1〜4 mgを1日1〜2回非経口投与する。禁忌・警告は錠剤と同じ。閲覧 2026-11-05
  3. 3.The effect of benztropine on haloperidol-induced dystonia, clinical efficacy and pharmacokinetics: a prospective, double-blind trial(Journal of Clinical Psychopharmacology(Goff DC ほか)・1991)PubMedの抄録で確認した。精神病の入院患者29例にハロペリドールを14日間投与し、1〜7日目にベンズトロピンまたはプラセボを二重盲検で割り付けた(14例対15例)。ハロペリドールの用量・血中濃度・BPRSに差はなかった。ベンズトロピン群は口渇と発汗減少が増え、ジストニアの発生率は14%対33%と低かったが有意差はなかった。ジストニアの患者は有意に若かった。抄録は、抗コリン薬の予防投与の有効性を示す他の研究と一致し、若い急性精神病患者では中等量の併用が合理的だとまとめる。閲覧 2026-11-05
  4. 4.American Geriatrics Society 2023 updated AGS Beers Criteria® for potentially inappropriate medication use in older adults(American Geriatrics Society(J Am Geriatr Soc 2023;71(7):2052-2081)・2023)PMC12478568の全文(NCBI efetch)を読み、表の該当行を確認した。強い抗コリン作用をもつ抗パーキンソン病薬(経口のベンズトロピン、トリヘキシフェニジル)は、「抗精神病薬による錐体外路症状の予防または治療には推奨されない。パーキンソン病の治療にはより有効な薬がある」として、回避(根拠の質Moderate、推奨の強さStrong)。抗コリン作用をもつ薬の一覧にもベンズトロピン・トリヘキシフェニジルが載る。閲覧 2026-11-05