臨床薬理学

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パーキンソン病と認知症の薬物療法

Parkinson's disease and dementia

前提:病態
神経変性疾患治療薬(錐体外路系・脳代謝賦活薬)

🧠 全体像:パーキンソン病の薬物療法は「足りなくなったドパミンを補う」治療である。が最も強く効くが、病気が進むと効く濃度の幅(治療域)が狭まり、薬が切れると動けず(オフ)、効きすぎると勝手に動く()。そこで・阻害薬・阻害薬で刺激を平らにし、にはを使う。ただし、ドパミンを増やす薬はどれも・・を招きうる。認知症では、アセチルコリンを増やすと、NMDA受容体を抑えるが対症療法の柱である。

パーキンソン病の症状:運動症状と非運動症状

パーキンソン病の症状は、ドパミン欠乏による運動症状と、ドパミン系以外の神経系も巻き込む非運動症状に分かれる。薬で良くなりやすいのは運動症状で、非運動症状はそれぞれ別の薬で対処することが多い。

運動症状 非運動症状
振戦
・ 声が小さい
足の有痛性けいれん
睡眠障害
抑うつ
椅子からにくい 不安
表情の乏しさ() 低血圧
が遅くなる 便秘
頻尿・

💡 非運動症状の一部は、運動症状より何年も前に始まる。 ・便秘・レム睡眠・抑うつは「」として知られ、診断時にはすでに脳の広い範囲に病変が広がっていることを意味する(次節)。

時間経過:前駆期から進行期まで

KaliaとLangの総説(2015年)の模式図にならい、診断(運動症状の出現)の時点を0年として、症状が現れる順序を並べると次のようになる。縦軸は障害の程度で、非運動症状→運動症状→治療に伴う合併症の順に積み重なっていく。

時期 目安の時点 非運動症状 運動症状 合併症
約20年前 便秘 — —
約10年前 レム睡眠 — —
数年前 、、抑うつ — —
早期(診断後) 0年〜 痛み、疲労、 、、振戦 —
早期〜の境 5〜10年 — — (・オンオフ)、
10年前後〜 、、認知症 嚥下障害、、、転倒
  • 早期に目立つ・・振戦はによく反応する。
  • の・・転倒・嚥下障害は、ドパミン系以外の障害が大きく、薬が効きにくい。
  • ・・は、病気そのものと治療薬の両方が関わる「合併症」である。

Braakの病期:なぜ治療が進歩しにくいのか

の病変は、脳の決まった順序で広がるという仮説がある(Braakら、2003年)。

Braak病期 臨床上の段階 病変の主な場所
1・2 ()と(延髄)
3・4 臨床的なパーキンソン病 中脳の黒質ドパミン神経へ上行
5・6 大脳へ広がる
flowchart TD
  A["病期1・2:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='preclinical stage'>前臨床期</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='olfactory bulb'>嗅球</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lower brainstem'>下部脳幹</span>に病変"] --> A2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyposmia'>嗅覚低下</span>・便秘・レム睡眠<span class='jp-term jp-term-diagram' title='behavioral disturbance'>行動障害</span><br>運動症状はまだない"]
  A2 --> B["病期3・4:臨床的パーキンソン病<br>黒質のドパミン神経が障害される"]
  B --> B2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bradykinesia'>動作緩慢</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rigidity (muscle rigidity)'>筋強剛</span>・振戦で診断<br>この時点で黒質の神経はすでに大きく失われている"]
  B2 --> C["病期5・6:大脳皮質へ拡大"]
  C --> C2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cognitive impairment'>認知機能障害</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hallucination'>幻覚</span>"]

💡 治療が「進歩しない」理由。 運動症状で診断がつく時点で、病変は・脳幹から黒質まで広がり、ドパミン神経は大きく失われている。今ある薬はどれも失われたドパミンを補う対症療法で、病気の進行そのものを止めることは証明されていない。も、や阻害薬を目的で使うのはの中に限るとしている1。病変を止める治療を試すにはで見つける必要があり、ここが研究の壁になっている。

臨床的な5段階

生活機能の障害から見た段階は、Hoehn-Yahrに似て、片側→両側→→介助→・と進む。

段階 状態 生活上の意味
1 体の片側だけの軽い振戦。歩行・姿勢・表情の変化を伴うが軽い 仕事・生活はほぼ自立
2 症状が悪化し体の両側に及ぶ。歩行と動作の変化で日常の作業が難しくなる 自立しているが時間がかかる
3 バランスの喪失と動作の緩慢化で転倒が増える。が大きく損なわれる 転倒対策が必要
4 症状が重く、一人暮らしが難しい。歩行器などの補助具を毎日使う 介助が必要
5 またはベッド上の生活。24時間のが必要。多くがなどの非運動症状を経験する

運動症状の薬物療法

薬の分類と使い分け

薬の分類 代表薬 使いどころ 監視すべき副作用
(阻害薬との合剤) ・ 早期にもにも使える。最も効果が高い。副作用を減らすため最小で使う 不随意運動・、(転倒の危険)
ドパミン受容体作動薬 、、()、(注射) 2番目に効果が高い。を減量でき、を減らしうる。高齢者では慎重に 副作用が多い:(転倒)、、下肢浮腫、、(どの病期でも始まりうる。職業上・上の機能を損なうほどの過剰で普段と違う行動を指す)
阻害薬 、サフィナミド、 早期の初期治療に使える。にはと併用してを改善する (転倒)、、
阻害薬 、オピカポン 早期にを遅らせる効果はない。にと併用してを改善する 、下痢、尿のオレンジ色の着色
早期に使う根拠は不十分。のの治療に推奨 (転倒)、と、不眠

避けるべき薬

薬 避ける理由
(ベンズトロピン、) 高齢者でと記憶障害を起こす
() と漿膜(胸膜・心膜・後腹膜)の線維化の危険

💡 表の「効き目の順」と「副作用の順」は逆になる。 は線条体でドパミンに変わる材料そのものなので最も強く効く。は受容体を直接刺激し半減期が長いぶん刺激が持続的で、を起こしにくいが、のなども刺激するため・眠気・が多い。阻害薬と阻害薬はドパミン(または)の分解を止めて「長持ち」させる薬で、単独の効果は小さい。

💡 にを併用する理由。 は末梢でもによってドパミンに変わってしまい、脳に届く量が減るうえ、末梢のドパミンが悪心・嘔吐・を起こす。脳に入らないで末梢の変換だけを止めると、少ない量で脳内のドパミンを増やせる。阻害薬はもう一つの末梢分解経路(への代謝)を止め、の効果時間を延ばす。

⚠️ を避ける理由は線維化。 は、を含めて胸膜・心膜・後腹膜の線維化を起こしうる。とくにやはセロトニンを刺激してを起こすことが問題になった。はを第一選択にせず、使うのはで十分に抑えられない場合の追加薬に限るとしている1。

現行ガイドラインでの第一選択

NG71は、早期の運動症状を「生活の質を損なっているか」で分けて考える1。

状況 NG71の推奨
運動症状が生活の質を損なう早期例 を勧める(強い推奨)
運動症状が生活の質を損なわない早期例 ・・阻害薬から選ぶ
第一選択にしない薬
・が出た(最適化後) への追加として、・阻害薬・阻害薬から選ぶ
既存治療の調整で抑えられない を考慮
・のある患者 を使わない

選ぶときは、次の利益と害を患者と話し合う1。

比較項目 阻害薬
運動症状の改善 大きい 小さい 小さい
の改善 大きい 小さい 小さい
多い 少ない 少ない
・・ 少ない 多い 少ない

国際パーキンソン病・運動障害学会のエビデンス総説も、には・徐放製剤・・オピカポン・・サフィナミド・などを、にはとを臨床的に有用としている2。

⚠️ を急に止めない。 急な中止や、胃腸炎・腹部手術で吸収できず薬が途切れることは、急性のやに似た状態を起こしうる。以前行われた「」も同じ理由で行わない。入院時も決まった時刻に投与を続け、変更は専門医と相談する1。

レボドパのオンオフ現象

長期の治療では、服薬のたびに血中濃度が上下する。治療域(・が出る濃度より上、が出る濃度より下)が病気の進行とともに狭くなるため、同じ波でも症状の出方が変わっていく。

・が出る濃度の下限 が出る濃度の上限 同じ血中濃度の波で起こること
0〜4年 低い 高い 波の山も谷も治療域に収まり、1日を通して安定
4〜7年 やや上がる やや下がる 谷がオフの閾値をわずかに下回り始める(薬の切れ目の効果減弱)
7〜10年 さらに上がる 山の高さより下まで下がる 山で、谷で効果切れ
10年超 高い 低い 山ごとに、谷ごとに・(オンとオフの急な切り替わり)

この表は、濃度の波と2本の閾値の関係を模式的に表したもので、実測値ではない。

flowchart TD
  A["黒質のドパミン神経が減る"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='presynaptic'>シナプス前</span>でドパミンを<br>ためて少しずつ放出する力が落ちる"]
  B --> C["線条体のドパミン濃度が<br>血中<span class='jp-term jp-term-diagram' title='levodopa'>レボドパ</span>濃度にそのまま連動"]
  C --> D["間欠的な服薬による<br>拍動的な受容体刺激"]
  D --> E["受容体側の変化で<br>治療域が狭まる"]
  E --> F["濃度の山:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dyskinesia'>ジスキネジア</span>"]
  E --> G["濃度の谷:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='akinesia'>無動</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rigidity (muscle rigidity)'>筋強剛</span>(オフ)"]

従来の「温存」の考え方では、対処の原則は次の2つとされてきた。

  • 遅らせる:症状が軽い初期治療では、と阻害薬を優先する(現行のはこれを一律には求めない。下の💡)。
  • 和らげる:現象が出たら、・阻害薬・阻害薬を追加薬として使う。

💡 「遅らせる」か「よく効かせる」かは、現在は患者ごとの選択になっている。 がを起こしやすいのは事実だが、早期にで始めると・・が増え、運動症状との改善は小さい。このためは、運動症状が生活の質を損なっていればを、損なっていなければ3系統から話し合って選ぶとしており、一律に「を温存する」立場はとらない1。

⭐ 追加薬の狙いは「山を削る」か「谷を埋める」か。 阻害薬・阻害薬・は、の効果を延ばしたり持続的な刺激を足したりして谷(オフ)を埋める。はグルタミン酸のNMDA受容体を抑えて山()を削る。谷を埋める薬はを悪化させうるので、阻害薬の副作用にが挙がる。

ドパミン作動薬と衝動制御障害

、、、買い物依存などのは、で特に多い。このため、の既往、、衝動的な性格の患者ではを避ける。

は、がどのドパミン補充療法でもどの病期でも起こりうることを認めたうえで、危険因子と対応を次のように整理している1。

項目 内容
危険因子 の使用、衝動的行動の既往、飲酒歴・喫煙歴
開始時の説明 危険が高まること、本人が隠しがちなこと、種類(賭博・・・買い物)、相談先、出現したら減量・中止を検討すること
出現時の管理 専門医に相談し、まずを徐々に減らす。改善とを観察する
減量で改善しないとき に的を絞った

⚠️ を急に止めると、不安・抑うつ・疼痛・発汗などの()が出ることがあるため、する。本人が症状を隠すことが多いので、診察ごとに家族にも尋ねる。

パーキンソン病の精神病症状

危険を高める因子

患者側の因子 治療・身体疾患に関わる因子
の低下 ・・の使用
認知症(、) ・の増量
が長い 複数のの併用
高齢 他のの併用
状 睡眠不足
レム睡眠 感染症・代謝異常などせん妄のほかの原因

初期対応:減らす薬と残す薬

方針 対象の薬
慎重にし、できれば中止する 、、、阻害薬と阻害薬
継続しつつ必要に応じて用量を再調整する ・

💡 を最後まで残す理由。 は運動症状への効果が最も大きく、を起こす危険はより小さい。効果が小さく精神症状の危険が大きい追加薬から外していけば、動ける状態を保ったままを減らせる。

の手順も同じ方向である1。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hallucination'>幻覚</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='delusion'>妄想</span>が出た"] --> B["全身の評価<br>感染・代謝異常などの誘因を治療"]
  B --> C{"本人・家族が<br>苦痛なく受け入れている?"}
  C -->|"はい"| D["治療しない<br>経過を観察"]
  C -->|"いいえ"| E["誘因となりうる<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiparkinsonian drug'>抗パーキンソン病薬</span>を減量<br>専門医に相談し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='withdrawal symptom'>離脱症状</span>に注意"]
  E --> F{"改善した?"}
  F -->|"はい"| D
  F -->|"いいえ"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cognitive impairment'>認知障害</span>がなければ<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='quetiapine'>クエチアピン</span>を考慮"]
  G --> H{"無効?"}
  H -->|"はい"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clozapine'>クロザピン</span><br>血球監視の登録が必要"]

⚠️ 使ってはいけない抗精神病薬。 は使わない。系やなどのは線条体のD2受容体を強く遮断して運動症状を悪化させる。ともパーキンソン病では他の適応より少量で使う1。はの危険があるため血球数の監視が必須である(薬剤性)。

非運動症状の薬物療法

症状の群 症状 薬の分類 薬
認知症
精神症状 抑うつ
、、、、
セロトニン・ 徐放製剤
、
、
睡眠障害 レム睡眠 ベンゾジアゼピン
ホルモン
便秘
活性化薬 ルビプロストン
の低下 末梢性
末梢性
ノルアドレナリン前駆体
点眼液(舌下に)、
素 A型、B型
その他 疲労 、

表を読むときの要点を、機序と危険から押さえる。

  • がに効く理由:やは末梢のドパミン受容体を介して血管を拡張させ、悪心も起こす。血液脳関門を通りにくいは、中枢の効果を邪魔せずに末梢の作用だけを打ち消す。ただしQT延長の危険があるため用量と期間を限る。
  • の順序:まず(利尿薬を含む)・ドパミン補充薬・・抗うつ薬を見直す。薬を足すなら(を監視)、使えなければ(心臓への危険と相互作用に注意)の順である1。
  • :は血液脳関門を通りにくい4級アンモニウムなので認知面の副作用が少ない。ほかのは認知面の危険が小さいときだけ、できれば局所用()で使う。Aは専門施設で唾液腺に注射する1。
  • レム睡眠:かを、原因となる薬を見直してから使う1。高齢者やのある人では、転倒とへの影響が少ないを選びやすい。
  • :可逆的な薬剤性・身体的原因を除外してからを考慮し、少なくとも12か月ごとに見直す1。
  • 抑うつ:はで便秘・・を悪化させうる。と阻害薬の併用はに注意する。

認知症とアルツハイマー病

認知症は「傘」の用語

認知症は、記憶やその他の思考能力が日常生活に支障をきたすほど失われた状態をまとめて呼ぶ用語で、その下に複数の原因疾患がある。

原因疾患 認知症に占める割合 臨床薬理での要点
60〜80% との主な対象
5〜10% がよく効く。抗精神病薬への重篤な過敏反応
5〜10% は、などの併存が疑われる場合に限る
5〜10% ・は使わない
その他(パーキンソン病、など) — には
混合型認知症 複数の原因による 最も多い組み合わせはと血管病変

とパーキンソン病による認知症は、このノートの前半と直接つながる。どちらもが蓄積するで、パーキンソン症状・・レム睡眠を共有する。病型の詳細はを参照。

⚠️ と抗精神病薬。 とでは、抗精神病薬が運動症状を悪化させ、ときに重篤な過敏反応を起こす。認知症の人への抗精神病薬は、の危険があるか、・・が強い苦痛を生んでいる場合に限る3。

アルツハイマー病の治療薬

薬 機序 主な副作用・注意
を可逆的に阻害。半減期が長く1日1回 悪心・下痢・食欲低下、徐脈・失神、(夕方投与で)
に加え、の 悪心・嘔吐、徐脈
とを阻害。がある 経口では消化器症状が強い。で軽減するが皮膚反応
NMDA受容体の(にチャネルをふさぐ) めまい・頭痛・便秘。なので腎機能低下で減量

💡 の副作用は「」で予測できる。 消化管の運動亢進(悪心・下痢)、迷走神経の緊張(徐脈・房室ブロック・失神)、の増加が起こる。このためや失神の既往がある人では心電図を確認し、β遮断薬との併用に注意する。少量から始めて漸増するのは消化器症状を慣らすためである。

治療の流れ図(Grossbergら、2019年)

軽度〜中等度の:開始

薬と剤形 開始量 目標量
5 mg 1日1回 10 mg 1日1回
(錠・内用液) 4 mg 1日2回 8 mg 1日2回
() 8 mg 1日1回 16 mg 1日1回
(経口) 1.5 mg 1日2回 6 mg 1日2回
() 4.6 mg 1日1回 9.5 mg/日

中等度〜重度の:開始

薬と剤形 開始量 目標量
5 mg 1日1回 10 mg 1日1回
() 4.6 mg 1日1回 9.5 mg/日
5 mg 1日1回 10 mg 1日2回
徐放製剤 7 mg 1日1回 28 mg 1日1回
+併用 7 mg 1日2回、または徐放製剤10 mg 1日1回 10 mg 1日2回、または徐放製剤28 mg 1日1回
flowchart TD
  A["軽度〜中等度<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cholinesterase inhibitors'>コリンエステラーゼ阻害薬</span>を1剤開始"] --> B{"経過"}
  B -->|"有害事象"| C["別の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cholinesterase inhibitors'>コリンエステラーゼ阻害薬</span>へ変更"]
  B -->|"病気の進行"| D["増量するか<br>別の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cholinesterase inhibitors'>コリンエステラーゼ阻害薬</span>へ"]
  D --> E["中等度〜重度<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='donepezil'>ドネペジル</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rivastigmine'>リバスチグミン</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='transdermal patch'>貼付剤</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='memantine'>メマンチン</span>、または併用"]
  E --> F["3〜4か月ごとに監視・再評価<br>必要に応じて<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dose adjustment'>用量調整</span>"]
  F -->|"有害事象"| G["別の治療へ変更"]
  F -->|"病気の進行"| H["増量するか別の治療へ"]
  H --> I["終末期に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cognitive function'>認知機能</span>と生活機能が<br>すべて失われたら中止"]

流れ図と現行の英国ガイドラインの違い

論点 流れ図(2019年) NG97
軽度〜中等度 ・・のいずれか 3剤の単剤がいずれも選択肢。通常は最も安価な薬から始め、副作用・・併存症・相互作用・用法で別の薬を選んでもよい3
単剤 中等度〜重度で開始 中等度でが・禁忌の人、または重度の人3
併用 中等度〜重度で併用 すでにを使っている人に、中等度では追加を考慮、重度では追加を勧める3
中止 終末期にと生活機能がすべて失われたら 重症度だけを理由に中止しない3

⚠️ 用量は国と製剤で異なる。米国では23 mg錠や13.3 mgもあり、のも12 mg 1日2回まで幅がある。実際の処方は各国の添付文書に従う。

💡 は流れ図の後に登場した。 やは、病変を確認した早期(〜軽度認知症)のが対象で、の監視が必要になる。適応と監視の詳細はを参照。

レビー小体型認知症とパーキンソン病認知症

病型 推奨
(軽度〜中等度) かを勧める。両剤とものときに限り3
(重度) かを考慮3
(が使えない) を考慮3
(軽度〜中等度) を勧める1
(重度) を考慮1
(が使えない) を考慮1

💡 でがよく効く理由。 ではの神経の脱落がより早く強く、やにもアセチルコリン不足が関わる。そのためは認知症だけでなくの治療薬としても表に挙がる。逆に、はまれに振戦を悪化させるので、運動症状も観察する。

⚠️ のある薬は認知症を悪化させる。 の、、、のは、と正反対の作用をもつ。認知症のある人では、処方薬全体のを見直す。

まとめ

  • パーキンソン病は運動症状(振戦・・など)と非運動症状(・便秘・睡眠障害・抑うつ・など)からなり、非運動症状の一部は診断の10〜20年前に始まる。
  • Braak仮説では病変は・→黒質→大脳皮質と広がる。診断時にはドパミン神経が大きく失われており、今の薬はすべて対症療法である。
  • (併用)が最も効くがが多い。は2番目に効き、・眠気・浮腫・が多い。阻害薬は早期にも追加にも使え、阻害薬は追加専用、は用。とは避ける。
  • は、運動症状が生活の質を損なう早期例にを、損なわない例には・・阻害薬から選ぶとする。は急に止めない。
  • オンオフ現象は治療域の狭まりで起こる。谷(オフ)は・阻害薬・阻害薬で埋め、山()はで削る。
  • はで多く、・・衝動的な性格では避ける。出現したらをする。
  • では誘因を治療し、・・・/阻害薬を減らしては残す。薬物治療は、無効なら。とは使わない。
  • 認知症の60〜80%は。軽度〜中等度には(・・)、中等度〜重度にはや併用。副作用は(悪心・徐脈・失神)。は重症度だけで中止しないとする。
  • とにはがよく効き、抗精神病薬には重篤な過敏反応を示しうる。
  • 臨床面の詳細はパーキンソン病の治療と原発性性認知症を参照。

出典

  1. 1.Parkinson's disease in adults (NICE guideline NG71)(National Institute for Health and Care Excellence・2017)推奨本文(2017年7月19日公開)で、抗パーキンソン病薬を急に中止したり吸収不良で途切れさせたりしない(急性無動・悪性症候群の危険、1.3.2)、休薬期間を設けない(1.3.3)、運動症状が生活の質を損なう早期例にはレボドパを勧め(1.3.5)、損なわない早期例にはドパミン作動薬・レボドパ・MAO-B阻害薬から選ぶ(1.3.6)、麦角系ドパミン作動薬を第一選択にしない(1.3.7)、表1でレボドパは運動症状と日常生活動作の改善が大きいが運動合併症が多く、ドパミン作動薬は過眠・幻覚・衝動制御障害が多いこと、ジスキネジアや運動変動が出たらレボドパへの追加としてドパミン作動薬・MAO-B阻害薬・COMT阻害薬から選ぶ(1.3.10、表2でドパミン作動薬は幻覚の危険が高い)、ジスキネジアにアマンタジンを考慮し(1.3.13)、ジスキネジアや運動変動のある患者に抗コリン薬を使わない(1.3.14)こと、衝動制御障害の危険因子がドパミン作動薬・衝動的行動の既往・飲酒や喫煙歴で、管理はまずドパミン作動薬を漸減すること(1.4.2、1.4.8、1.4.9)、日中の過眠にモダフィニル(1.5.2)、レム睡眠行動障害にクロナゼパムかメラトニン(1.5.5)、起立性低血圧では原因薬を見直したうえでミドドリン、次にフルドロコルチゾン(1.5.8〜1.5.10)、幻覚・妄想では誘因の評価と原因薬の減量ののち認知障害のない人にクエチアピン、無効ならクロザピン(監視登録が必要)、オランザピンは使わず、フェノチアジン系・ブチロフェノン系は運動症状を悪化させうること(1.5.12〜1.5.20)、パーキンソン病認知症の軽度〜中等度にコリンエステラーゼ阻害薬を勧め、重度では考慮し、不耐容・禁忌ならメマンチンを考慮すること(1.5.22〜1.5.24)、流涎にグリコピロニウム、ボツリヌス毒素A、認知面の危険が小さい場合に限り局所用のアトロピンなど(1.5.27〜1.5.29)、ドパミン作動薬とMAO-B阻害薬を神経保護療法として使うのは臨床試験の中に限ること(1.6.3〜1.6.4)を確認した。閲覧 2026-09-26
  2. 2.International Parkinson and movement disorder society evidence-based medicine review: Update on treatments for the motor symptoms of Parkinson's disease(Movement Disorders(Fox SH ほか、MDS Evidence-Based Medicine Committee)・2018)抄録(PMID 29570866)で、運動変動にはほとんどの非麦角系ドパミン作動薬・レボドパ徐放製剤・レボドパ腸内持続注入・エンタカポン・オピカポン・ラサギリン・ゾニサミド・サフィナミド・両側視床下核または淡蒼球内節の脳深部刺激が臨床的に有用で、ジスキネジアにはアマンタジン・クロザピン・両側の脳深部刺激が臨床的に有用と結論していることを確認した。閲覧 2026-09-26
  3. 3.Dementia: assessment, management and support for people living with dementia and their carers (NICE guideline NG97)(National Institute for Health and Care Excellence(英国)・2018)推奨1.5.2〜1.5.6で、軽度〜中等度のアルツハイマー病にドネペジル・ガランタミン・リバスチグミンの単剤が選択肢であること、メマンチン単剤は中等度でコリンエステラーゼ阻害薬が不耐容・禁忌の人と重度の人に選択肢であること、すでにコリンエステラーゼ阻害薬を服用中の人には中等度でメマンチンの追加を考慮し、重度では追加を勧めること、重症度だけを理由にコリンエステラーゼ阻害薬を中止しないこと、通常は最も安価な薬から始めることを確認した。1.5.10〜1.5.13でレビー小体型認知症の軽度〜中等度にドネペジルまたはリバスチグミンを勧め、両剤が不耐容のときに限りガランタミンを考慮すること、1.5.15で前頭側頭型認知症には両者を勧めないこと、1.7.3〜1.7.4で抗精神病薬は自傷他害の危険か重い苦痛を伴う場合に限ること、レビー小体型認知症とパーキンソン病認知症では抗精神病薬が運動症状を悪化させ重篤な過敏反応を起こしうることを確認した。閲覧 2026-09-26