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Cペプチド

C-peptide

別名
Cペプチド免疫活性血中Cペプチド尿中Cペプチド
臓器系
内分泌・代謝
科目
Internal MedicinePathophysiology
トピック
内科学 E-10:血糖異常の原因と診断内科学 E-07:神経内分泌腫瘍病態生理学 1-8:1型糖尿病の発症機序
関連疾患
単一遺伝子糖尿病(MODY・新生児糖尿病)低血糖(非糖尿病性)

🧠 全体像:Cペプチドが答えるのは「膵臓は今どれだけインスリンを作っているか」であって、「血糖がきちんとコントロールされているか」ではない。からで切り出されながら、インスリンと違ってほとんど肝を素通りするため、末梢血中の値は膵からの分泌量をより忠実に映す。もう一つの顔は、にはCペプチドが含まれないという性質を利用した鑑別役——と並べて測ることで、か外因性投与かを見分けられる。ただしCペプチドは主に腎で代謝されるため、腎機能が落ちているだけで分泌能とはに値が上がる。この一点を忘れると解釈を丸ごと誤る。

何を測っているか

では、がインスリンとCペプチドへに切断されてに蓄えられ、刺激に応じて同時に血中へ放出される。この内科学 E-10:の原因と診断でも扱われるが、Cペプチドの臨床的な価値は「で出る」ことより先の代謝過程の違いにある。

  • インスリンは肝で受容体に結合して作用したのち5〜10分程度で代謝されるのに対し、Cペプチドはをほとんど受けず、主に腎で代謝される1。そのため末梢血のインスリン値は門脈からの分泌量より低く出るが、Cペプチドは膵からの分泌量をより忠実に反映する。
  • 半減期もCペプチドの方が長く(約30〜35分)、インスリンより緩やかに変動するため、単発の採血でも分泌能の目安になりやすい1
  • 外因性に投与するにはCペプチドが含まれない。この性質が、と外因性投与を区別する鍵になる(後述)。
  • がインスリンそのものの血中濃度を測るのに対し、Cペプチドはだけを選択的に映す指標という役割分担になる。IRI側の測定手技・干渉の詳細はそちらを参照。

基準値と単位

空腹時血清Cペプチドはng/mL(またはnmol/L;1 ng/mL ≒ 0.33 nmol/L)で報告され、24時間尿中Cペプチドはμg/日で評価する。施設・測定法による差があり、単一の正解値はない。

内因性能の簡便な指標として、空腹時Cペプチド値をで補正した(CPI)が使われる。

CPI = 空腹時血清Cペプチド(ng/mL)× 100 ÷ 値(mg/dL)

CPIが0.8〜1.0以下になるとインスリン療法を要することが多いと報告されている2

高値の意味

低血糖のCペプチドが0.6 ng/mL(0.2 nmol/L)以上であれば、インスリン・などとあわせて基準を満たす所見の一つになる3。代表がで、内科学 E-07:が扱うの局在診断へつながる。

機序 代表的な原因 解釈のポイント
の腫瘍性亢進 低血糖時にもが抑制されない。・インスリンとともに高値を示す
薬剤による分泌刺激 等の等の を閉鎖しインスリン・Cペプチドをともに刺激する。腎機能低下・過量で作用が遷延しやすい
インスリン抵抗性 肥満、2型糖尿病早期 代償性の過分泌。進行するとCペプチドは低下に転じる
排泄障害 ・腎不全 ⚠️ 分泌能とはに蓄積する。解釈上最大の落とし穴(測定上の注意を参照)
見かけ上の高値 がインスリンと結合・解離を繰り返し、での値が不安定に高くなる

低値の意味

機序 代表的な原因 解釈のポイント
1型糖尿病 自己免疫性βの進行度を映す
外分泌膵の破壊 を伴う 膵切除後・後は内分泌・外分泌がともに障害される
進行した2型糖尿病 長期経過の2型糖尿病 発症早期は正常〜高値だが、β細胞機能低下とともに低下する
の過剰 の自己投与( が正常でも抑制され低値になる。IRIとの解離が鑑別の要(下表)

病態生理 1-8:1型糖尿病のでも強調されるとおり、糖尿病の診断そのものにCペプチドは使わない。 糖尿病は血糖値・HbA1cで確定し、Cペプチドはそのあとの病型分類・インスリン依存状態の判定に用いる。糖尿病患者でインスリン依存状態かどうかを判断する目安には、空腹時Cペプチド0.6 ng/mL未満、24時間尿中Cペプチド20 μg/日以下、グルカゴン負荷後血清Cペプチド1.0 ng/mL未満(増加量0.5 ng/mL未満)が使われる2CPI 0.8〜1.0以下はこの一覧に含めない——CPIが指すのは「インスリン療法を要することが多い」であって、インスリン依存状態そのものの判定基準ではない(インスリン療法中の患者が必ずしも依存状態にあるとは限らない)。ただし腎機能低下があるとこれらの目安は成立しない(次項)。

IRIとの解離パターン(鑑別の要)

flowchart TD
    A["低血糖時にIRI・Cペプチドを同時測定"] --> B{"IRIは高値か"}
    B -->|"いいえ"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='insulin-independent'>インスリン非依存</span>性の低血糖<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='counterregulatory hormone'>対抗調節ホルモン</span>不足・重症疾患など)を検索"]
    B -->|"はい"| D{"Cペプチドも高値か"}
    D -->|"いいえ(Cペプチド低値)"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endogenous secretion'>内因性分泌</span>はないのに<br>インスリンだけが高い。<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='exogenous insulin'>外因性インスリン</span>の自己投与を疑う"]
    D -->|"はい"| F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulfonylurea and glinide screening'>SU/グリニドスクリーニング</span>陽性か"}
    F -->|"陽性"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulfonylurea'>スルホニル尿素薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='meglitinide'>グリニド薬</span>による低血糖"]
    F -->|"陰性"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='insulinoma'>インスリノーマ</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hirata disease'>平田病</span>など<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='endogenous hyperinsulinemia'>内因性高インスリン血症</span>の原因を検索"]
状況 IRI Cペプチド 解釈
の自己投与( 高値 低値 はないのにインスリンだけが高い。にCペプチドが含まれないことを利用した鑑別
高値 高値 そのものが刺激されている
高値 高値 内因性の腫瘍性分泌、または見かけ上の高値

⚠️ な低血糖はの自己投与だけでなく、内因性を促すの摂取でも起こりうる3。この場合はIRI・Cペプチドとも高値になるため、を併せて行わないととの鑑別がつかない。

⚠️ 測定上の注意

  • ⚠️ 腎機能が最大の落とし穴。 Cペプチドは主に腎で代謝されるため、・腎不全があると能とはに血中Cペプチドが蓄積して高値になり、逆に尿中Cペプチドは排泄が滞って低値になる2。腎機能低下例ではCペプチド単独での分泌能評価は成り立たないと考え、eGFR・クレアチニンを必ず併記して解釈する。
  • 投与中でも測定できる。 にはCペプチドが含まれないため、インスリン治療中の患者でもの残存を評価できる。この点は、治療開始後は解釈不能になるとは対照的である。
  • 空腹時1点で判断がつかない場合は負荷をかける。 グルカゴンや食後()Cペプチドは、空腹時の1点測定より分泌を鋭敏に検出する。グルカゴン負荷後血清Cペプチドが1.0 ng/mL未満かつ増加量が0.5 ng/mL未満であればインスリン依存状態の目安とされる2

経時変化とモニタリング

1型糖尿病では、発症後もCペプチドが緩徐に低下し続ける経過そのものがの診断に組み込まれており、ZnT8抗体陽性例のdefinite診断確定には空腹時Cペプチド0.6 ng/mL未満という高度な分泌低下の確認が必要になる。2型糖尿病では、CPIやCペプチド値のな低下がインスリン療法への切り替え時期を判断する材料になる。切除後は、Cペプチドの正常化が治療効果の確認になり、は腫瘍遺残・再発を示唆する。

位置づけ/次に進むべき検査

まとめ

  • Cペプチドはからで切断され、をほとんど受けないため内因性をIRIより素直に反映する。半減期もインスリンより長い。
  • 主に腎で代謝されるため、腎機能低下があると分泌能とに高値へ蓄積する——解釈上最大の落とし穴。
  • 高値は、SU薬・による低血糖、インスリン抵抗性、腎不全、の見かけ上の高値で起こる。
  • 低値は1型糖尿病・・進行した2型糖尿病のインスリン依存状態、およびの自己投与()で起こる。
  • ではIRI高値・Cペプチド低値に解離するのに対し、SU薬・中毒ではIRI・Cペプチドとも高値になる。
  • 投与中でも測定可能な点はと対照的で、空腹時1点で判断がつかなければグルカゴン・食後Cペプチドを追加する。

出典

  1. 1.糖尿病診療ガイドライン2024 1章 糖尿病診断の指針(日本糖尿病学会・2024)インスリン依存状態の判定目安として、空腹時血中Cペプチド値0.6 ng/mL未満、24時間尿中Cペプチド値20 μg/日以下、グルカゴン負荷後血清CPR 1.0 ng/mL未満かつ増加量(ΔCPR)0.5 ng/mL未満という基準を確認した。CPRインデックス(空腹時血清Cペプチド[ng/mL]×100÷空腹時血糖値[mg/dL])0.8〜1.0以下については、依存状態の判定基準ではなく「インスリン療法を要することが多い」との報告として別に記載されていることを確認した。また腎機能低下に伴いCペプチドの排泄が遅延して血中Cペプチドは上昇し尿中Cペプチドは低下するため、この場合はCペプチド値を用いた内因性インスリン分泌能の評価が困難になることを確認した。閲覧 2026-08-04
  2. 2.Evaluation and Management of Adult Hypoglycemic Disorders: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism(Cryer PE, Axelrod L, Grossman AB, et al.; Endocrine Society)・2009)内因性高インスリン血症の生化学的診断基準として、低血糖時(血漿グルコース55 mg/dL未満)にインスリン3 μU/mL以上・Cペプチド0.6 ng/mL(0.2 nmol/L)以上・プロインスリン5.0 pmol/L以上・βヒドロキシ酪酸2.7 mmol/L以下・グルカゴン静注後の血糖上昇25 mg/dL以上をすべて満たすことを確認した。また意図的な低血糖はインスリン製剤の投与だけでなくインスリン分泌促進薬の投与でも起こりうる(malicious hypoglycemia can be accomplished by administration of insulin or an insulin secretagogue)ことを確認した。閲覧 2026-08-04
  3. 3.Biochemistry, C Peptide(StatPearls Publishing(NCBI Bookshelf)(Venugopal SK, Mowery ML, Jialal I)・2023)インスリンは肝で受容体に結合して作用したのち5〜10分以内に代謝される一方、Cペプチドは肝でほとんど代謝されず主に腎で代謝されること、Cペプチドの半減期が約30〜35分とインスリンより長いこと、正常腎機能下では分泌された総Cペプチドのうち尿中に排泄されるのは一部にとどまることを確認した。閲覧 2026-08-04