Internal Medicine

Internal Medicine · E-10

血糖異常の原因と診断

Causes and diagnosis of blood glucose disorders

前提:病態
1型糖尿病の発症機序2型糖尿病の発症機序糖尿病
前提:正常
インスリン分泌とその調節。インスリンの中間代謝への作用
疾患
2型糖尿病肩甲難産単一遺伝子糖尿病(MODY・新生児糖尿病)糖尿病
検査値
CペプチドHbA1cZnT8抗体グルカゴン負荷試験プロインスリン血糖

🧠 全体像:糖尿病は「高血糖を確認する」「別日に確証する」「病型を決める」の3段階で診断する。血糖値だけで1型・2型を決めず、、自己抗体、Cペプチド、家族歴、膵疾患・薬剤を統合する。

糖尿病の分類

糖尿病は慢性高血糖を共通所見とする代謝である。病型は治療と家族評価に直結する。

病型 代表的な手がかり
1型糖尿病(type 1 diabetes:T1D) 多くは自己免疫性βによる 急速な体重減少、/DKA、、低Cペプチド。年齢・体格だけでは除外できない
2型糖尿病(type 2 diabetes:T2D) インスリン抵抗性と進行性 緩徐発症、家族歴、。ただし痩せ型・若年にも起こる
妊娠中に初めて診断された、妊娠前に明らかでなかった異常 多くは無症候。、妊娠高血圧症候群のリスク
その他の特定病型 単一遺伝子、外分泌膵疾患、内分泌疾患、薬剤など な年齢・体格・家族歴、、原因薬剤・基礎疾患

は、成人で緩徐にインスリン依存へ進む自己免疫性T1Dの表現型である。「1.5型」を独立した標準分類名として扱わない。

糖尿病の診断基準

非妊娠者では次のいずれかで診断する。

検査 糖尿病域 (ADA基準)
HbA1c ≥6.5%(≥48 mmol/mol) 5.7~6.4%
≥7.0 mmol/L(≥126 mg/dL) 5.6~6.9 mmol/L(100~125 mg/dL)
75 g(oral glucose tolerance test:OGTT)2時間値 ≥11.1 mmol/L(≥200 mg/dL) 7.8~11.0 mmol/L(140~199 mg/dL)
≥11.1 mmol/L(≥200 mg/dL)に典型症状またはを伴う スクリーニングの連続閾値としては用いない

WHOではの下限を6.1 mmol/Lとするため、採用する基準を明記する。OGTTの「空腹時値」と「2時間値」を混同せず、2時間値8 mmol/L前後をIFGと呼ばない。

近年はIDFが75 g OGTTの1時間血糖値をとして提案しており、複数コホートで高い診断性能が示されている。1

確認の原則

flowchart TD
    A["高血糖を疑う症状・リスク<br>またはスクリーニング異常"] --> B["HbA1c・FPG・75 g OGTTから選択"]
    B --> C["典型症状/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperglycemic crisis'>高血糖クリーゼ</span><br>かつ随時ブドウ糖 ≥11.1 mmol/L"]
    C -->|"あり"| D["糖尿病と診断し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='timing'>緊急度</span>を評価"]
    C -->|"なし"| E["同じ検査を再検<br>または別の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diagnostic testing'>診断検査</span>で確証"]
    E --> F["2つの異常結果"]
    F --> G["糖尿病と診断"]
    G --> H["病型分類へ"]

明白な高血糖がなければ、同一検体または別日に2つの異常結果が必要である。結果が不一致なら、閾値を超えた検査を速やかに再検する。毛細血管自己測定値は緊急判断には有用だが、無症候者の確定診断は標準化された静脈血漿検査で行う。

検査の読み方

HbA1c

HbA1cを通じた過去約2~3か月の平均血糖を反映する。診断にはNGSP/DCCT標準化法を用いるが、HbA1c単独では糖尿病やを見逃すことがある。2

⚠️ 妊娠、・輸血、溶血、透析、、G6PD欠損、特定のなどではHbA1cと実血糖が乖離する。この場合は基準を優先し、高リスク例やHbA1cと血糖が乖離する例では75 g OGTTを検討する。2 腎不全や鉄欠乏でも解釈に注意する。

Cペプチド

はインスリンとCペプチドへに切断されるため、Cペプチドは内因性の指標になる。血糖値、食事、腎機能、発症からの期間を同時に考える。

  • 著しい低値はを支持する。
  • 正常~高値はT2Dのインスリン抵抗性でみられるが、進行したT2Dでは低下し得る。
  • 注射インスリンにはCペプチドがないため、低血糖時のと内因性高インスリンを区別する助けになる。

膵島自己抗体

グルタミン酸抗体(glutamic acid decarboxylase antibody:GAD antibody)、、ZnT8抗体、などを用いる。複数陽性ほど自己免疫性T1Dを強く支持する。はインスリン治療開始前に採取しないと解釈しにくい。

は腎障害の指標であり、腎機能そのものはeGFRと併せて評価する。「」という旧称より、(UACR 30~299 mg/g)を用いる。

1型糖尿病

を中心とするβでインスリンがに欠乏する。HLA-DR3・DR4との関連があるが、としてHLAだけを用いない。セリアック病を合併し得る。

所見 内容
典型症状 口渇、、多尿・、体重減少、感、
急性発症 腹痛、嘔吐、、意識障害を伴うDKA
検査 、低Cペプチド、ケトン体。発症早期はCペプチドが残ることもある
注意 肥満でもT1Dはあり、成人でも急性発症する。DKAを全例の初発所見とはしない

成人でT2Dとして治療していても、痩せ型、自己免疫疾患、急速な薬効低下、、低CペプチドがあればLADAを含む自己免疫性T1Dを再評価する。が進めばだけで引き延ばさずインスリンを開始する。

2型糖尿病

、睡眠、薬剤・社会環境などがインスリン抵抗性を高め、β細胞がを維持できなくなると高血糖になる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic predisposition'>遺伝素因</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visceral fat'>内臓脂肪</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoactive'>低活動</span>"] --> B["肝・筋・脂肪組織のインスリン抵抗性"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='compensatory hyperinsulinemia'>代償性高インスリン血症</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucotoxicity'>糖毒性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lipotoxicity'>脂肪毒性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxidative stress'>酸化ストレス</span>"]
    D --> E["β細胞<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dedifferentiation'>脱分化</span>・アポトーシス・分泌低下"]
    E --> F["持続性高血糖"]

多くは無症候でスクリーニングにより発見されるが、口渇・多尿、感染、創傷治癒遅延、、体重減少を来し得る。が典型的クリーゼだが、T2DでもDKAは起こる。

単一遺伝子糖尿病

は、β細胞機能に関わるの臨床群で、多くはを示す。発症年齢を25歳未満に固定せず、連続する世代の糖尿病、肥満・自己抗体の欠如、保たれたCペプチドから疑い遺伝学的に確定する。

主な病型 特徴 治療への影響
GCK-MODY 出生時から軽度で安定した 通常は妊娠時を除き薬物不要
HNF1A-MODY/HNF4A-MODY 進行性高血糖、リスク 少量への感受性が高い
HNF1B関連 腎形成異常、低Mg血症、性器・肝膵異常 インスリンを要しやすく、腎・全身評価が必要

正確な遺伝診断は治療、腎外病変のスクリーニング、家族の検査を変える。

二次性糖尿病

原因群
外分泌膵疾患 、膵切除、嚢胞性線維症
、甲状腺機能亢進症、
薬剤 グルココルチコイド、、移植関連薬、一部の

ではグルカゴンも不足し低血糖が重くなりやすく、欠乏も同時に扱う。グルココルチコイドでは食後・午後高血糖が目立つことがある。

妊娠糖尿病

  • 妊娠初診時にリスクに応じて既存のを評価し、既存糖尿病でなければ通常24~28週にスクリーニングする。
  • 75 g OGTTを用いる1段階法では、空腹時5.1、1時間10.0、2時間8.5 mmol/Lのいずれか1つ以上を満たせばGDMとする。地域により50 gスクリーニング後100 g OGTTを行う2段階法もあり、採用基準を混在させない。
  • 食事・・自己測定で目標を達成できなければインスリンが標準である。薬剤選択は妊娠・と地域指針を踏まえる。
  • 母体では、帝王切開、将来のT2D、児では過成長、などのリスクが上がる。
  • 分娩4~12週後に75 g OGTTを行い、その後も1~3年ごとに糖尿病スクリーニングを続ける。

まとめ

  • 非妊娠者の糖尿病域はHbA1c ≥6.5%、FPG ≥7.0 mmol/L、75 g OGTT 2時間値 ≥11.1 mmol/Lである。
  • 明白な高血糖がなければ2つ目の異常結果で確証し、その後に病型分類を行う。
  • 1型・2型の判別は年齢・体格だけでなく、自己抗体としたCペプチドを用いる。
  • 非典型例ではMODY、膵疾患、内分泌疾患、薬剤を見逃さない。

出典

  1. 1.Superiority of 1 h plasma glucose vs fasting plasma glucose, 2 h plasma glucose and HbA1c for the diagnosis of type 2 diabetes(Diabetologia・2026)IDFが提案した75 g OGTTの1時間血糖値は、複数コホートで従来の血糖指標より高い2型糖尿病診断性能を示した。閲覧 2026-08-09
  2. 2.Pitfalls of HbA1c in the Diagnosis of Diabetes(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism・2020)HbA1c単独では糖代謝異常を過小・過大診断し得るため、高リスク例や血糖との乖離例ではOGTTが重要である。閲覧 2026-08-09