眼科学

眼科学 · ML-24

角膜ジストロフィーと角膜変性

Corneal dystrophies and degenerations

前提:正常
感覚器:眼
症状
Kayser-Fleischer輪老人環

🧠 全体像:角膜のを見たら、まず「生まれつきの設計図の誤り(ジストロフィー)か、使い込んだ結果の傷み(変性)か」を分ける。ジストロフィーは遺伝子の変異で起こり、両眼に左右対称に、角膜の中央から、炎症ももなくゆっくり進む。変性は加齢・炎症・全身の病気・薬の影響で起こり、片眼のことも、周辺部から始まることも、血管を伴うこともある。ジストロフィーは IC3D 分類で「どの層に、どの遺伝子の変異で」を軸に整理し、治療は病変の深さで決まる(表層は PTK、実質は層状または全層の、内皮は DSAEK・DMEK)。

ジストロフィーと変性の違い

特徴 ー
原因 遺伝子の変異(遺伝性) 加齢、炎症・外傷の後、、薬剤
左右 両眼・ほぼ対称 片眼のことも多い。非対称
場所 中央から始まることが多い 周辺部から始まるものが多い
炎症・血管 炎症を伴わない。はない 炎症やを伴うことがある
経過 慢性・ゆっくり進行 さまざま。原因が続く限り進む
発症年齢 小児〜若年が多い(Fuchs ーは中年以降) 中高年が多い
全身との関係 通常は ・・薬剤など全身の手がかりになることがある

💡 「対称・中央・無炎症」はジストロフィーを疑う3点セットである。反対に「片眼・周辺・血管あり」は変性や炎症の後の変化を疑う。ただし例外がある。ーは多くで遺伝が確かめられず、IC3D も変性や外傷後の変化と考えられることが多いとしている1。

角膜ジストロフィー

定義と IC3D 分類

ーは、両眼性・慢性・進行性で、炎症によらない角膜のである。

古い病名はが発明される前の1890年代から積み重なったもので、同じ病気に複数の名前がついたり、名前が所見と合わなかったりした。そこで2005年に国際委員会(IC3D)が作られ、・病理・遺伝子の情報を合わせた分類を2008年に初版、2015年に第2版、2024年に第3版として発表した1。の結果を分類に取り入れるようになったのが IC3D の最大の特徴である。遺伝子の情報をの軸に据えることは初版から掲げられ、第2版(2015年)では上皮-実質 TGFBI ジストロフィーという遺伝子で定義した群が初めて設けられた1。「2011年からの結果を尊重する」と年を区切る整理もあるが、IC3D の改訂の年は上のとおりである。ただし、実際の診療ではができないことも多いので、は今も主に表現型(所見)に基づいている1。

IC3D は、ジストロフィーを病変のある層で4群に分け、それぞれに根拠の強さをカテゴリーで付ける1。

カテゴリー 意味
1 遺伝子が同定され、特定の変異が分かっている
2 染色体上の位置(遺伝子座)は分かっているが、遺伝子は未同定
3 遺伝子座もまだ分かっていない
4 独立した病気としての根拠がまだ不十分

知識が増えるとカテゴリーは4→1へ進む。根拠が得られなかったものは「削除されたジストロフィー」へ移され、第2版ではのーが分類から外された1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal dystrophy'>角膜ジストロフィ</span>ー<br>IC3D 分類"] --> B["上皮・上皮下の<br>ジストロフィー"]
    A --> C["上皮-実質の<br>TGFBI ジストロフィー"]
    A --> D["実質の<br>ジストロフィー"]
    A --> E["内皮の<br>ジストロフィー"]
    B --> B1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epithelial basement membrane dystrophy'>上皮基底膜ジストロフィ</span>ー<br>Meesmann など"]
    C --> C1["Reis-Bücklers・Thiel-Behnke<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='grating'>格子</span>状・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granular'>顆粒状</span>1型・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granular'>顆粒状</span>2型"]
    D --> D1["斑状・Schnyder など"]
    E --> E1["Fuchs・後部<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pleomorphism'>多形性</span><br>先天性遺伝性内皮"]

主なジストロフィーの一覧

群 病名 カテゴリー 遺伝子(変異) 遺伝形式 沈着物・病理 所見
上皮・上皮下 ー(・点状・状) 特定されない 3 多くは遺伝が確認されない 上皮と Bowman 層の間に基底膜が過剰にでき、上皮内へ折り込まれる の灰色の斑、上皮内の点状の小嚢胞、状の線
上皮・上皮下 Meesmann ー 1 KRT3・KRT12 上皮内の小嚢胞 輪部まで広がる無数の微小な上皮内小胞
上皮-実質 TGFBI Reis-Bücklers ー 1 TGFBI の R124L 変異 Bowman 層の破壊と沈着物(Masson 三色染色で赤) Bowman 層の高さのの粗い
上皮-実質 TGFBI Thiel-Behnke ー 1 TGFBI の R555Q 変異 上皮下の(のこぎり状) 上皮下の蜂のの。周辺は保たれる
上皮-実質 TGFBI 古典的状ー 1 TGFBI の R124C 変異 (Congo red 陽性) 実質に枝分かれして交差する細い屈折性の線。でよく見える
上皮-実質 TGFBI ー1型 1 TGFBI の変異(典型的には R555W) (Masson 三色染色で赤) 境界明瞭な灰白色の顆粒。顆粒の間の実質は透明。輪部には及ばない
上皮-実質 TGFBI ー2型(旧称 Avellino) 1 TGFBI の R124H 変異 との両方 中心が抜けた円形・輪状のと、星形・つらら状の
実質 ー 1 CHST6 (酸性)が実質全層と内皮に蓄積 境界不明瞭なと、斑の間の実質も濁るびまん性の。輪部とまで及ぶ
実質 Schnyder ー 1 UBIAD1 コレステロールなどの脂質 中央の円板状、年齢とともに様の変化と実質のかすみ。結晶は約半数にしかない
内皮 Fuchs ー 1・2・3(病型による) COL8A2、晩発型では TCF4 の CTG18.1 の3塩基反復など の例が多いが、遺伝が明らかでない例が最多 の肥厚と滴状の突起(グッタータ)、内皮細胞の減少 角膜後面の滴状の凹凸、進むと・上皮の水疱
内皮 ー 1 OVOL2・ZEB1・GRHL2 内皮が上皮のような性質を帯びる の、平行な(線路状)
内皮 ー 1または3 SLC4A11 生まれつき内皮細胞が同年齢の約10% 両眼のすりのと実質の高度の肥厚(正常の2〜3倍)

各病名のカテゴリー・遺伝子・遺伝形式・所見は IC3D 第3版による1。ーはカテゴリー3で、IC3D 自身が「おそらく変性で遺伝性ではない」と注記している。第3版では、古典的状(R124C)以外の TGFBI 変異による80以上の状の亜型を「状ー+変異名」で呼ぶも提案された1。

⭐ 覚えどころは「TGFBI の5兄弟」と「斑状だけが潜性」である。Reis-Bücklers・Thiel-Behnke・状・1型・2型は、すべて染色体5q31の TGFBI 遺伝子の変異で起こるの病気で、変異の場所(R124 か R555 か、どのアミノ酸に置き換わったか)で病型が決まる1。実質の3大ジストロフィー(・状・斑状)の中で、斑状だけが別の遺伝子(CHST6)のである。

⚠️ TGFBI という遺伝子記号は「TGF-β で誘導される遺伝子」の意味で、サイトカインの TGF-β1 の遺伝子(TGFB1)とは別物である。TGFBI の産物はで作られるタンパク質で、以前はケラトエピセリンと呼ばれた1。

実質の3大ジストロフィーの見分け方

項目 (1型) 状(古典的) 斑状
沈着物 (酸性)
染色 Masson 三色染色で赤 Congo red 陽性 アルシアンブルー・で青
の形 境界のはっきりした顆粒 枝分かれし交差する線 境界のぼやけた斑
の間の実質 透明 早くからすりガラス状にかすむ 濁る(びまん性)
範囲 中央〜中間周辺。輪部に及ばない 中央から周辺へ。最周辺は保たれる 輪部と()まで
内皮 侵されない 侵されない 侵される
遺伝
移植後の再発 多く、早い 起こる 少ない

病理標本で比べると違いがよく分かる。ジストロフィーでは、-染色で実質の中に赤く染まるの塊が散らばり、Masson 三色染色では上皮下から実質の浅い層に赤い沈着物が帯状に並び、下の実質は青く染まる。斑状ジストロフィーでは、上皮の下と実質の細胞の間に青く染まる酸性が層全体に散らばる。

💡 斑状だけ内皮まで侵されるので、移植の術式選びに直結する。IC3D は、斑状ジストロフィーでは内皮も病変を持つため、内皮を残す DALK よりのほうがよい選択になりうるとしている1。

上皮基底膜ジストロフィー

最も多いーで、・点状・状ジストロフィーとも呼ばれる。成人に多く、小児ではまれである1。

所見 での見え方
中央〜傍中央に、ほたて貝の縁のような輪郭をもつ灰色のかすんだ上皮の島。ので淡い地図の模様として浮かぶ
点状 上皮内の白い小さな点(小嚢胞)。に白い点や短い線が散らばる
状 の渦のような細い平行な曲線。で赤い反射を背景にすると、茶色の細い線の束としてはっきり見える

基底膜が上皮の中へ折り込まれて上皮がしっかり接着しないので、を起こしやすい。朝、眼を開けた瞬間に上皮がはがれて激痛が走る。

状況 治療1
無症状 治療は不要
再発性びらん 日中の潤滑点眼・ゲル・高張剤、就寝時の。急性期はや
治りにくいびらん テトラサイクリン系の内服とステロイド点眼を考える
の外の持続するびらん 前部の穿刺
の上の重いびらん・ ゆるんだ上皮の除去(ダイヤモンドバーでの研磨を併用)、または PTK

⚠️ ーの眼に LASIK を行うと、上皮がはがれたり、フラップの下に上皮が入り込んだりする危険が高い。LASIK は避けることを考える1。

TGFBI ジストロフィーの所見

  • 1型:を中心に、パン屑のような灰白色の小さな顆粒が多数散らばる。顆粒は年齢とともに増えて大きくなり、雪片状にくっつく。小児では細かい褐色の顆粒がき状に並ぶことがある1。
  • 2型:実質の浅い層に、境界のはっきりした円形のが多数散らばる。は中心がに抜けて輪状・円板状に見え、その奥に星形・つらら状のが加わる1。
  • 状:で赤い反射を背景にすると、実質に枝分かれして交差する細い線がのように浮かぶ。

⚠️ ジストロフィー2型の眼に LASIK などで角膜を傷つけると、の沈着が加速するため禁忌である1。の前ので、実質の小さな白点を見逃さない。

ジストロフィーの治療:深さで選ぶ

治療の原則は「がどの深さにあるか」である2。

flowchart TD
    A["視力を妨げる角膜の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='opacity (turbidity)'>混濁</span>"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='opacity (turbidity)'>混濁</span>は<br>どの深さにあるか"}
    B -->|"上皮のみ"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epithelial debridement'>上皮除去</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epithelial basement membrane dystrophy'>上皮基底膜ジストロフィ</span>ー・再発性びらん)"]
    B -->|"上皮下・Bowman 層・実質の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='superficial'>浅層</span>"| D["PTK<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granular'>顆粒状</span>・Reis-Bücklers・Salzmann 結節)"]
    B -->|"実質の前部〜中部"| E["層状<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratectomy'>角膜切除</span>・DALK"]
    B -->|"実質全層・内皮まで"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penetrating keratoplasty'>全層角膜移植</span><br>(斑状ジストロフィー)"]
    B -->|"内皮"| G["DSAEK・DMEK<br>(Fuchs <span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal endothelial dystrophy'>角膜内皮ジストロフィ</span>ー)"]
方法 使いどころと注意
PTK 表層のをエキシマレーザーで削る。・状ジストロフィーでは、DALK やを先延ばしにする妥当な手段だが、術後にヘイズが出ることがある。削りすぎて残る実質床が250 µm 未満になると角膜拡張の危険がある2
・DALK 実質の病変を替え、健全な内皮を残すので内皮のが起こらない。実質の深くまで広がった TGFBI ジストロフィーではより先に選ばれ、は DALK がうまくいかなかった例に回されうる1
実質全層と内皮まで侵される斑状ジストロフィーなど
(DSAEK・DMEK) Fuchs ーの標準的な1

ジストロフィーの PTK では、術前にを埋めていた無数の灰白色の顆粒が、術後には消えてが黒く澄んで見える。斑状ジストロフィーのでは、術前に角膜全体に散らばっていた境界不明瞭なが、術後は透明なに置き換わり、の縁に沿っての糸がジグザグに見える。

⚠️ TGFBI ジストロフィーはの中に再発する。宿主の上皮がを覆い、その上皮が異常なタンパク質を作り続けるからである。再発は1型で古典的状より多く早く、斑状では少ない。PTK の後も上皮下に再発し、DALK の後はと宿主の境界や縫合糸の跡に沿って再発する1。PTK は繰り返せるので、まず PTK で時間を稼ぎ、移植を遅らせる考え方が成り立つ。

手術の手技の詳細(PTK の方法、DALK・DSAEK・DMEK の違い)は角膜の手術で扱う。

Fuchs 角膜内皮ジストロフィー

内皮細胞が減ってが落ち、角膜がむくむ病気である。40代以降に始まることが多く、晩発型は女性に2.5〜3.5倍多い。喫煙と紫外線への曝露との関連が報告されている1。

所見 見え方
グッタータ で、赤い反射の中に角膜後面の細かい凹凸がびっしりと並ぶ(金属を叩いたような模様)
角膜が厚く灰色にかすむ
上皮の水疱 進行すると上皮に水疱ができ、破れると痛む()
末期 上皮下の線維化、の充血、角膜全体の

💡 朝に見えにくく、昼に向かって見えやすくなるのが特徴である。眠っている間はまぶたが閉じて涙がせず、角膜に水がたまるからである。

段階 治療1
無症状 経過観察
軽い浮腫 の点眼、(一時的な対症療法)
視力障害のある浮腫 (DSAEK・DMEK)が標準的な
実質の深い瘢痕を伴う末期

DSAEK の直後には、にを後面へ押しつけるための空気の泡が見え、切開創には1針の縫合がある。落ち着くと角膜は透明になり、角膜後面にの縁が淡い円として見える。 OCT の水平断では、宿主の角膜の後面に薄いが全面にぴったり接着している。では、の縁に沿って2本のがジグザグに走る。

角膜変性

定義と一覧

は、角膜の組織が変化し、あるいは徐々に傷んでいく状態で、角膜の働きを損なうことがある。遺伝ではなく、加齢・炎症・・薬剤などが原因となる。

変性 部位 原因・背景 所見 治療・意味
周辺部の実質 加齢による脂質の沈着 輪部に沿った灰白色の輪。輪部との間に透明な帯が残る 治療不要。若年者ではを疑う
Bowman 層・ カルシウム()の沈着。慢性炎症・局所の障害・2 部に沿った横長の白い帯。周辺から中央へ進み、穴のあいた石灰の板に見える 症状があれば除去(EDTA・PTK)と原因の治療
Salzmann 結節変性 上皮下(Bowman 層の前) 慢性の炎症・刺激の後の上皮下の線維化 灰白色〜青白色の隆起した結節 ・PTK
脂質角膜症 実質 角膜のから脂質がしみ出す(続発性が多い) 血管の先に黄白色の濃いが扇状に広がる の治療、視力を妨げれば移植
渦状角膜(状) 上皮 薬剤(・・など)、 の下方で渦を巻き、猫のひげのように広がる褐色の細い線 視力障害はまれ。全身の手がかりとして重要
Terrien 辺縁変性 周辺部の実質 原因不明。炎症は乏しい 周辺部(上方に多い)の実質がゆっくり薄くなり、表面の上皮は保たれる。先端に黄白色の脂質の線、表層の 経過観察、の矯正。穿孔しそうなら移植
ペルーシド角膜辺縁変性 下方周辺部の実質 非炎症性の角膜拡張症 下方の輪部から1〜2 mm 離れた帯状の菲薄化と、その上の突出3 に準じる

💡 変性の多くは、所見そのものより「その背景に何があるか」が大事である。若い人のは、はや(小児では)、渦状角膜はや Fabry 病の手がかりになる。

老人環

輪部に沿って、角膜の周辺部に灰白色〜青白色の輪ができる。輪の外側の縁と輪部の間には、透明な角膜の細い帯が残る。高齢者ではごく普通の所見で、治療は要らない。輪が太くなると、周辺部の角膜全体が輪状に白く濁って見える。

⚠️ 40〜50歳より若い人にがあれば、(など)を疑って血清脂質を調べる。片眼だけのは、反対側の頸動脈の狭窄で血流が減った側に脂質が沈着しないことによる、と説明される。

帯状角膜症

()が、Bowman 層の前面とに沈着する2。(まぶたの開いている部分)に沿って、3時と9時の周辺部から始まり、中央へ横長の帯として広がる。

  • 初期:部の角膜に、ごく淡いかすみが横長に見える程度で、見落としやすい。
  • 進行例:を横切る白い石灰の板になり、その中に小さな透明な穴が多数あいて見える(神経が通る部分に沈着しないため)。
項目 内容
原因 眼の慢性炎症(など)、局所の障害、全身の2(、、など)
症状 多くは無症状。まぶしさ、視力障害、上皮がはがれると痛み
治療の適応 まぶしさ・視力障害・上皮障害による痛みがある例に限る2
治療 厚い沈着は鑷子で取り、細かい沈着は上皮を除去してから EDTA でして溶かす。EDTA の後は上皮の治りが遅れる(同じ大きさのが2〜3日で治るのに対し5〜7日)。PTK も使えるが、石灰は周りより速く削れるので表面が凸凹になりやすい2

Salzmann 結節変性

慢性の角膜炎・・コンタクトレンズなど、長く続いた刺激の後に、上皮の下に線維性の結節ができる。結節は灰白色〜青白色で、角膜の表面から盛り上がり、の周りに1個から数個並ぶ。にかかるとやを起こす。

PTK による治療は次の順で進める。

flowchart TD
    A["上皮の下に Salzmann 結節<br>(Bowman 層の上に盛り上がる)"] --> B["上皮をはがす"]
    B --> C["結節を手技で削ぎ取る<br>(ホッケー形の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scalpel'>メス</span>など)"]
    C --> D["残った凹凸をエキシマレーザーで<br>薄く一層削って平滑にする"]
    D --> E["滑らかな面の上に上皮が張り直す"]

だけで表面が凸凹になるときや結節が強く付着しているときは、角膜バーや PTK で表面を整え、再発しやすい例では C を併用する2。術前にの周りを取り囲んでいた青白い結節が、術後はなくなって角膜が澄む。PTK の原理と適応は角膜の手術も参照。

脂質角膜症

角膜にが入り込むと、血管から脂質がしみ出して実質に沈着する。多くは角膜炎(とくにヘルペス性)や外傷の後の続発性である。周辺から伸びた血管の先に、黄白色の濃いが扇状・円板状に広がり、ときに角膜のかなりの範囲を覆う。治療はを抑えることで、にかかればを考える。ヘルペス角膜炎の後の変化はヘルペス角膜炎を参照。

渦状角膜

に、き(猫のひげ)状に並ぶ細い褐色〜灰色の線が現れる。線はの下方の1点から放射状に広がる。上皮細胞が輪部から中央へ渦を描いて移動する道すじに沿って物質が沈着するためである。

原因 手がかり
薬剤 、、、など。を確かめる
Fabry 病 X 連鎖性の。若年者の渦状角膜は、腎機能・心臓・四肢の痛みを確かめる手がかりになる

視力を損なうことはまれで、薬剤性は中止で消えることが多い。

Terrien 辺縁変性

周辺部のがゆっくり薄くなる、原因不明のまれな変性である。上方に多く、両眼性のことが多い。

  • 周辺部の実質が溝のように薄くなるが、上皮は保たれ、で染まらない(潰瘍ではない)。
  • 菲薄化した部分には表層の血管が入り込み、その先端(中央側)に黄白色の脂質の線が縁取るように並ぶ。
  • 菲薄化が進むと、その部分の角膜が突出して強い(が多い)を生む。
区別する病気 違い
Mooren 潰瘍・ 痛みと炎症が強く、上皮欠損がある(潰瘍)
ペルーシド角膜辺縁変性 下方、血管と脂質沈着がない

治療は経過観察との矯正(・コンタクトレンズ)で、穿孔の危険があれば周辺部のを行う。進行を止める目的でクロスリンキングが試みられることもある()。

ペルーシド角膜辺縁変性

下方の周辺部角膜が、輪部から1〜2 mm 離れた位置で帯状に薄くなり、その上方が突出する非炎症性の角膜拡張症である。30〜50代に発症する3。で横から見ると、角膜の下方が薄くなってその上がせり出すため、細い光の帯が下方で急に細くなり、その上で前へ張り出す。

  • では、下方で強くになり、上下にが生じる。
  • Placido 輪の形状解析は角膜の約60%しか測れないので、周辺の病変を見落としやすい。トモグラフィーで厚さの分布を見る3。
  • 治療はに準じ(ハードレンズ・、進行すればクロスリンキング)、移植が必要ならのを行う3。詳しくは。

ジストロフィー・変性とまぎらわしい病気

病気 見分けるポイント
鼻側のから血管を伴う三角形の組織が角膜へ侵入する。の増殖であり、角膜自体の変性ではない
角膜炎の後の瘢痕 片眼、既往があり、血管を伴うことが多い
代謝疾患による ・・Fabry 病など。全身の症状を伴う2
Kayser-Fleischer 輪 の周辺部にが沈着する金褐色の輪。の手がかり

まとめ

  • ジストロフィーは遺伝性で「両眼・対称・中央・無炎症・血管なし」、変性は加齢・炎症・・薬剤による二次的な変化で「片眼のことも・周辺から・血管を伴うことも」。
  • IC3D 分類は2005年に発足した国際委員会の分類(初版2008年・第2版2015年・第3版2024年)。遺伝子の情報を取り入れ、層(上皮・上皮下/上皮-実質 TGFBI/実質/内皮)で4群に分け、根拠の強さをカテゴリー1〜4で示す。
  • 5q31 の TGFBI 遺伝子によるの5病型:Reis-Bücklers(R124L)、Thiel-Behnke(R555Q)、古典的状(R124C、)、1型(R555W、)、2型(R124H、と)。
  • 斑状ジストロフィーは CHST6 ので、が実質全層と内皮に沈着し、が輪部とまで広がる。が選ばれやすく、移植後の再発は少ない。
  • ー(・点状・状)はの原因。潤滑・・・PTK。LASIK は避ける。2型の LASIK は禁忌。
  • ジストロフィーの治療は深さで選ぶ:上皮は、表層は PTK、実質は層状移植・DALK、全層は全層移植、内皮は DSAEK・DMEK。TGFBI ジストロフィーはに再発する。
  • Fuchs ーは40代以降・女性に多く、グッタータから浮腫・水疱へ進む。朝に見えにくい。は。
  • 変性:(若年なら脂質を調べる)、(カルシウム、・慢性炎症、EDTA)、Salzmann 結節変性(、PTK)、脂質角膜症(から)、渦状角膜(・・)、Terrien 辺縁変性(上方周辺の菲薄化・脂質線・血管、上皮は保たれる)、ペルーシド角膜辺縁変性(下方の帯状菲薄化の上が突出)。

出典

  1. 1.IC3D Classification of Corneal Dystrophies-Edition 3(Cornea (International Committee for Classification of Corneal Dystrophies)・2024)PMC全文(PMC10906208)で、IC3Dが2005年に発足し初版2008年・第2版2015年・第3版2024年と改訂されたこと、分類が上皮・上皮下、上皮-実質TGFBI、実質、内皮の4群に分かれ、根拠の強さをカテゴリー1(遺伝子と変異が判明)〜4(独立疾患としての根拠が不十分)で示すこと、命名は今も主に表現型に基づくこと、上皮基底膜ジストロフィーは多くで遺伝が確認されず変性または外傷に続発すると考えられ成人に多く、地図状・点状・指紋状の所見を示すこと、Reis-Bücklers(R124L)・Thiel-Behnke(R555Q)・古典的格子状(R124C、アミロイドでCongo red陽性)・顆粒状1型(典型的にはR555W、小児期発症、境界明瞭な灰白色の顆粒で間の実質は透明、輪部には及ばない)・顆粒状2型(R124H、旧称Avellino、アミロイドとヒアリンが沈着し、LASIKなどの角膜損傷で混濁が加速するため禁忌)がいずれもTGFBI(5q31)の常染色体顕性であること、斑状ジストロフィーはCHST6(16q22.1)の常染色体潜性で、輪部とデスメ膜まで及ぶ不整な白斑とびまん性の混濁を示し、グリコサミノグリカンが実質全層と内皮に蓄積するため全層角膜移植がDALKより適しうること、移植後の再発は顆粒状1型で古典的格子状より多く早く、斑状では少ないこと、Schnyder角膜ジストロフィーはUBIAD1で結晶は半数にしかないこと、Fuchs角膜内皮ジストロフィーの遺伝子(早発型COL8A2、晩発型TCF4のCTG18.1反復など)と40代以降の発症・女性優位、後部多形性(OVOL2・ZEB1・GRHL2)・先天性遺伝性内皮(SLC4A11、常染色体潜性)、管理表(上皮基底膜ジストロフィーの再発性びらんの治療とLASIKを避けること、TGFBIジストロフィーのPTK・層状移植・DALK・全層移植と移植片内の再発、Fuchsでは無症状は経過観察・高張食塩水と治療用コンタクトレンズは一時的・DSAEKとDMEKが標準的な根治治療で進行例は全層移植)を確認した。監査で追加確認:表1のカテゴリー(上皮基底膜ジストロフィーC3、Meesmann・TGFBIの5病型・斑状・Schnyder・後部多形性はC1、FuchsはC1〜C3、先天性遺伝性内皮はC1またはC3)、上皮基底膜ジストロフィーは「おそらく変性で遺伝性ではない」とされること、第2版で上皮-実質TGFBIジストロフィーの群が新設され常染色体顕性の先天性遺伝性内皮ジストロフィーが削除されたこと、第3版で古典的格子状以外の80以上のTGFBI変異による格子状の亜型に変異名を付す命名が提案されたこと、DALKは健全な内皮を残して内皮の拒絶反応をなくせる利点があり全層移植はDALK不成功例に回されうること閲覧 2026-09-29
  2. 2.Corneal Edema and Opacification Preferred Practice Pattern®(American Academy of Ophthalmology・2024)AAO配布のPDF本体で、角膜混濁の原因として変性(石灰化帯状角膜症・Salzmann結節変性・翼状片など)とジストロフィーと浸潤性病変(脂質角膜症・薬剤など)と代謝疾患(Fabry病など)が列挙されること、帯状角膜症はBowman層前面と上皮基底膜へのヒドロキシアパタイトの沈着で原因が炎症・局所の障害・全身の高カルシウム血症であり、多くは無症状なので処置はまぶしさ・視力障害・上皮障害による痛みがある例に限ること、厚い沈着は鑷子で除去し細かい沈着は上皮除去後にEDTAでキレートすること、EDTA後の上皮化は同じ大きさのびらんより遅れること(5〜7日対2〜3日)、PTKでは石灰が周囲より速く削れて凹凸を生じうること、PTKも使えること、Salzmann結節変性は上皮下の線維化で上皮除去・角膜バー・PTKで表面を平滑にし再発予防にマイトマイシンCを併用しうること、深さ別の治療(上皮は上皮除去、上皮下とBowman層はPTK、実質前部〜中部は層状角膜切除やDALK、深部は全層移植)、顆粒状・格子状ジストロフィーでPTKはDALKや全層移植を先延ばしにする妥当な手段だがヘイズを起こしうること、PTKで残存実質床が250 µm未満になると角膜拡張の危険があることを確認した閲覧 2026-09-29
  3. 3.Corneal Ectasia Preferred Practice Pattern®(American Academy of Ophthalmology・2024)AAO配布のPDF本体(2024年6月版)で、ペルーシド角膜辺縁変性は30〜50代に発症し、下方の輪部から1〜2 mm離れた帯状の菲薄化があり最大の突出はその上方にあること、Placido型の曲率マップは角膜の約60%しか測れずペルーシド角膜辺縁変性を見落としやすいこと、ペルーシド角膜辺縁変性では三日月状の層状角膜移植が用いられることを確認した閲覧 2026-09-29