眼科学

眼科学 · ML-25

自己免疫疾患と眼表面

The ocular surface in autoimmune diseases

前提:正常
感覚器:眼
症状
デスメ膜瘤瞼々癒着瞼球癒着

🧠 全体像:眼表面(・角膜・)は、全身の自己免疫疾患が最初に、ときには唯一姿を現す場所である。病変は大きく2つの型に分かれる。が主に侵される型(、、慢性)は「慢性炎症 → 瘢痕 → の枯渇と眼瞼の変形 → 角膜の障害」とじわじわ進む。角膜が主に侵される型(、、)は、角膜の周辺部や実質が溶け・濁る。治療は局所の保湿と抗炎症を土台に、瘢痕や融解が進む病型では全身の免疫抑制が欠かせず、内科と組んで長期に行う。手術は炎症を鎮めてから、眼表面を立て直すために行う。

一般(定義・検査・治療の正本)は、と強膜炎はと強膜炎で扱う。ここでは自己免疫疾患ごとの眼表面の病変と、その治療の組み立てを扱う。

眼表面の免疫の特徴

眼表面の3つの組織は、免疫に対する性質がそれぞれ違う。どこが侵されやすいかは、この違いで説明できる。

組織 免疫の性質 自己免疫疾患との関係
関連リンパ組織をもつ。眼表面の抗原を感知し、局所の免疫反応を始動し調節する能動的な免疫の境界面 免疫反応の舞台そのもの。慢性炎症が続くとする
角膜 さまざまな炎症性の免疫疾患で傷つきやすい。中央部は周辺部に比べて侵されにくい 病変は輪部に接する周辺部に出やすい()
炎症細胞はわずかしかない。のコラーゲンが自己免疫疾患の標的になりやすい 強膜炎、とくには全身の・血管炎のになる

💡 なぜ角膜は周辺部から侵されるのか。 角膜の中央には血管もリンパ組織もないが、周辺部は輪部の血管に近く、免疫複合体・補体・炎症細胞が届きやすい。輪部の血管から出た免疫複合体が周辺部の角膜に沈着し、そこに集まった好中球の酵素が実質を溶かす。中央部が「免疫学的に静か」なのは、血管から遠いからである。

💡 の病変が治りにくい理由。 は細胞が少なく血管も乏しいので、いったん壊れると修復されにくい。コラーゲンを標的とする自己免疫疾患(関節リウマチ・血管炎)でが溶けると、薄いまま戻らない。

疾患の全体像

主に侵される部位 疾患 背景
(の) 基底膜に対する自己抗体。高齢者に多い
・唾液腺への
慢性 骨髄(造血幹細胞)移植後、提供者のが宿主を攻撃
角膜 半数は致死率の高いに伴う
角膜 AIRE 遺伝子の変異によるの破綻
角膜 と内耳の障害
・強膜炎 と強膜炎で扱う

結膜が主に侵される疾患

眼類天疱瘡

定義と特徴

は、の一つであるの眼の病変である。口腔・・喉頭・食道・性器などの全身のの一部として起こることも、眼だけに起こることもある。

  • 慢性の炎症と進行性のが本質である。
  • 両眼性。
  • 主に高齢者に起こる。

💡 上皮と結合組織をつなぐ基底膜の成分に自己抗体ができ、の下で炎症が続く。水疱はではほとんど見えず、目立つのは上皮下の線維化である。炎症が見た目に乏しくても線維化が進むことがあり、「赤みが引いたから治った」とは言えない1。

自覚症状

時期 症状
初期 充血(赤目)、、灼熱感、
後期

⚠️ 初期の症状はありふれた慢性結膜炎やと区別がつかない。高齢者の治らない両眼の慢性結膜炎では、下眼瞼を引き下げてが浅くなっていないかを必ず見る。

所見の進み方

の所見は、の慢性炎症から始まる一本の因果の流れで理解できる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>の持続する炎症"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scarring'>瘢痕化</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='symblepharon'>瞼球癒着</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ankyloblepharon'>瞼々癒着</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='entropion'>眼瞼内反</span>・睫毛乱生・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lagophthalmos'>兎眼</span>"]
    B --> E["きわめて重い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dry eye'>ドライアイ</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='goblet cell'>杯細胞</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal duct'>涙腺導管</span>の破壊)"]
    B --> F["角膜の障害"]
    D --> F
    E --> F
    F --> G["角膜の瘢痕・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal neovascularization'>血管侵入</span>・角化"]
    G --> H["視力の喪失"]
用語 定義
瞼とが癒着すること。が浅くなり、下眼瞼を引くと眼球との間にの帯が張る
上眼瞼と下眼瞼が癒着すること。進むとが狭くなる
部位 所見
常に炎症を起こしている。瞼に白い状の、円蓋の短縮
眼瞼 、睫毛乱生、
きわめて重い
角膜 瘢痕、、角化

典型例では、瞼に白い線維化を伴う充血した、下方の円蓋が浅くなり瞼と眼球をつなぐ帯状の、強い充血と眼瞼縁の変形を認める。末期には角膜全体が灰白色に濁って角化し、も狭くなって、眼表面は皮膚のような組織に置き換わる。

💡 なぜ重いになるのか。 の瘢痕は、のを作るを失わせ、上外側の円蓋に開くの導管も閉ざす。水も粘液も失われるので、だけでは追いつかないほどの乾燥になる。さらにした睫毛が角膜をこすり、閉じない眼瞼()で角膜が露出し、角膜は三重のを受ける。

診断の要点

欧州のガイドラインでは、眼の病変を疑ったら炎症の少ないを両眼から採り、口腔粘膜か皮膚からも同時に採ってで調べる。基底膜に沿った免疫グロブリンや補体のが診断の根拠になる。の生検はもう1か所から通常の病理用にも採り、の腫瘍とを除く1。眼だけの病変ではが陰性のこともあり、その場合はの他の原因を除外して診断する。

の鑑別 手がかり
眼の 眼瞼縁の、顔面の紅斑。重症例は区別が難しい
ウイルス・細菌の感染 急性の経過、
、若年
外傷(を含む) 受傷歴
腫瘍 片眼性、生検
・SLE・ 全身所見、自己抗体
・・ 薬剤などを契機とする急性の皮膚の既往

上の鑑別は欧州のガイドラインが挙げるもの1。💡 ・は、急性期にの・上皮欠損を起こし、治ったあとにとよく似た・睫毛乱生・重い・を残す。がゆっくり進み続けるのに対し、こちらは急性の発症と、その後のというで見分ける。

Sjögren症候群

は、と唾液腺にリンパ球が浸潤して、減少型の重いとを起こす自己免疫疾患である。他の(関節リウマチなど)に合併することもある。としての病態・検査・治療はで扱う。

分類基準(ACR/EULAR 2016)

⭐ 眼科の検査が分類基準に直接入っている。を示唆する徴候・症状のある人で、次の5項目の合計が4点以上なら一次性と分類する2。

項目 基準 点数
の生検 で、1以上/4 mm² 3
陽性 3
眼表面の染色 少なくとも片眼で5以上(または4以上) 1
少なくとも片眼で5 mm/5分以下 1
無刺激唾液流量 0.1 mL/分以下 1

検証コホートでの感度は96%、特異度は95%だった2。この基準は眼か口のがある人に当てはめ、頭頸部の放射線治療歴、活動性C型肝炎、AIDS、、、、があれば除外する2。💡 がに入っているのは、次の節で見るように、同じ減少型のとを起こし、検査の結果が重なるからである。

💡 眼の項目は2つで合わせても2点にしかならない。眼の検査だけでは4点に届かないので、生検かのどちらかが陽性であることが実質的に必要になる。眼科医の役割は、重いの患者で Schirmer 試験と眼表面の染色を記録し、や状を聞いて、を疑ったら内科へ送ることである。

⚠️ これはの対象を揃えるための分類基準で、ではない。基準を満たさなくても、臨床的に として扱う患者はいる。

慢性移植片対宿主病

病態

は、骨髄(造血幹細胞)移植で移植された提供者のが、宿主の組織を攻撃する病態である。

  • 皮膚、粘膜、肺、肝臓が侵される。
  • ⭐ 眼の病変が唯一の症状のこともある。
  • が侵されるのでになる。
  • 眼表面に不可逆な障害を残し、視力を失うことがある。

眼の診断の目安

眼科の実地では、次の3つがそろえば眼の慢性を考える。

要素 内容
新たに生じた重い 移植前にはなかった乾燥
Schirmer 試験の値の低下 分泌の減少
悪化する眼の症状 刺激感、、痛み、充血、かすみ

NIH 基準(2014年改訂)も、この考え方とほぼ重なる。整理すると次のようになる3。

NIH 2014 の扱い 内容
(それだけで慢性GVHDと診断できる所見) 眼にはない
新規発症の乾燥・・疼痛、、、融合性の
その他の所見 、眼周囲の色素沈着、眼瞼炎(眼瞼の発赤・腫脹、眼瞼縁の)
眼の慢性GVHDと診断してよい条件 新たな眼の乾燥で Schirmer 試験が平均5 mm/5分以下、またはで新たながあり Schirmer 試験が平均6〜10 mm で、他の原因がないもの(治療と、眼に特化したの目的)
慢性GVHD全般のに入れる条件 上に加えて、別のが必要

慢性GVHDの診断では、いずれの臓器でも感染などの他の原因を除外する3。

💡 Schirmer 試験は診断には役立つが、経過観察には向かない。値が症状の変化とよく相関しないため、2014年改訂で重症度のスコア用紙から除かれ、重症度は症状と潤滑点眼の使用回数などで採点する3。臓器ごとの採点は慢性GVHDので扱う。

所見

部位 所見
充血、の形成、の瘢痕
角膜 上皮欠損、潰瘍、瘢痕、穿孔

典型例では、強いとともに、角膜の周辺寄りに灰白色の病変を認める。

⚠️ 移植後の患者は全身の免疫抑制下にあるので、角膜の上皮欠損はの入口にもなる。潰瘍を見たら感染の除外(して塗抹・培養)を忘れない。

角膜が主に侵される疾患

周辺部潰瘍性角膜炎

背景疾患

の半数は、致死率の高いに伴って起こる。

背景疾患 分類
関節リウマチ
(旧称 ) ANCA 関連血管炎
軟骨の自己免疫疾患
ANCA 関連血管炎
(旧称 ) ANCA 関連血管炎

⚠️ は、全身の血管炎が活動している徴候でありうる。関節リウマチの患者にが出たら、関節の病気が「全身の血管炎」に移ったことを疑う。眼の治療と同時に、内科で血管炎の検索(ANCA、腎・肺の評価)を急ぐ。

所見

  • 輪部に沿ったの潰瘍を伴う炎症。
  • 周囲に強膜炎・を伴うことも、伴わないこともある。

典型例では、角膜の周辺部に輪部に沿った灰白色のの浸潤と、実質の菲薄化を認め、周りの・上強膜の血管は強く拡張している。潰瘍が中央側へ進むと、その縁が掘れ込んだとして見える。

💡 が強膜炎を伴うのは、どちらも輪部の血管炎という同じ根から出た病変だからである。とが並んで出たら、背景のはとくに重い。

鑑別 見分け方
のない特発性の周辺部潰瘍。強い痛み、強膜炎を伴わない
(カタル性角膜潰瘍) ブドウ球菌への過敏反応。輪部との間にがあり、上皮欠損は小さい
して塗抹・培養。免疫抑制下では必ず除外する

自己免疫性多内分泌腺症候群1型

は、自己免疫性多症・カンジダ症・外胚葉ジストロフィーの頭文字でも呼ばれる症候群である。

要素 内容
三つの柱 +の自己免疫的な破壊+外胚葉ジストロフィー
原因 AIRE 遺伝子の変異 → 自分の抗原に対するが成立しない
眼の病変 、、、角膜への

💡 AIRE は胸腺で体中の臓器の抗原をT細胞に「見せ」、自分を攻撃するT細胞を除く働きをもつ。これが壊れると、だけでなくの幹細胞も攻撃される。

典型例では、強い充血とともに、角膜の周辺から血管が入り込み、角膜全体に斑状の灰白色のを認める。が失われると角膜の表面がの上皮に覆われ、透明性を失う()。

Cogan症候群

は、と内耳の障害が組み合わさる症候群である。

要素 内容
眼 (の炎症と)
耳 急性に発作的に起こる感音難聴、めまいなどの
全身 患者の3分の1に重い全身症状(血管炎、、筋骨格症状、神経症状など)

典型例では、に斑状の灰白色のと、角膜内へ入り込む血管を認める。は上皮の潰瘍ではなく、実質の中の炎症とである点がと違う。

⚠️ 若年者のに難聴・めまいが加わったら を考える。難聴は治療が遅れると残りやすく、は命にかかわるので、と内科へ急いでつなぐ。

上強膜炎と強膜炎

の炎症も自己免疫疾患の代表的な眼表面の病変である。分類・診断・段階的な治療はと強膜炎で扱う。治療の位置づけは次の節の表に含めた。

保存的治療

局所の治療

目的 方法
保湿 を含まない。必要なら
眼瞼炎の治療 眼瞼の衛生(と清拭)、ドキシサイクリン
抗炎症の点眼 ステロイド点眼、点眼、の点眼()

💡 を含まないものを選ぶ理由。 1日に何度も点眼する重いでは、そのものが上皮を傷つける。欧州のガイドラインものはを含まないものが望ましいとしている1。

💡 ドキシサイクリンなどのテトラサイクリン系は、より、を抑えてコラーゲンの分解と炎症を抑える作用を期待して使う。

⚠️ ステロイド点眼は炎症を速く抑えるが、長く使うと・・感染を招き、融解しかけた角膜・では穿孔を早めることがある。やで局所のステロイドだけに頼らない。

全身の免疫抑制療法の原則

原則 意味
通常、長期間必要 数か月〜数年。早くやめるとする
しばしば併用療法が必要 ステロイドで速く抑え、で維持する
免疫内科医と協力する の評価と副作用の管理

病型ごとの全身治療の適応

全身治療 適応
全身の免疫抑制療法が必要 、、、より重い強膜炎
の内服 軽い強膜炎

⭐ ・・は、点眼だけでは止まらない。瘢痕や融解が進んで失明する前に、全身治療を始める。

ステロイド

特徴 内容
効果が速い 活動性が高く、急速に進む病態で使う
初回量 通常、体重1 kg あたり1 mg(換算)
毒性 必要な量では毒性があり、長期(3か月を超えて)使ってはならない

💡 ステロイドは「火を消す」薬で、「火を起こさせない」薬ではない。数週〜数か月で効き始めるへの橋渡しとして使い、が効いてきたら減らしていく。欧州のガイドラインも、では0.5〜1 mg/kg/日から始めて8〜12週でし、ステロイドを減らせると併用するとしている1。

免疫抑制薬の段階

重症度が上がるほど、下の段の薬を使う。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dapsone'>ダプソン</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='azathioprine'>アザチオプリン</span>"]
    B --> C["メトトレキサート"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mycophenolate mofetil'>ミコフェノール酸モフェチル</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclophosphamide'>シクロホスファミド</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravenous immunoglobulin, IVIG'>免疫グロブリン静注療法</span>"]
    F --> G["生物学的製剤"]
    A -.- H["軽い"]
    G -.- I["重い"]
薬 位置づけ
軽症〜中等症の第一選択。重症ではステロイドやと併用する。開始前に G6PD を確認する(欠損で溶血性貧血)
軽症〜中等症の
メトトレキサート 週1回投与。軽症〜中等症の第一選択の一つで、では単剤で全身治療の第一選択として考慮される
軽症〜中等症の
重症(の急速な進行、・を伴う血管炎)
従来の治療に反応しない重症例、従来の治療の副作用の危険が高い例
生物学的製剤 リツキシマブ、TNF阻害薬など。難治例

眼類天疱瘡の現行の治療の組み立て

欧州のガイドライン(2021年)は、眼の病変があれば重症に分類し、治療を次のように段階づけている1。

重症度 第一段階 難治のとき
軽症〜中等症(口腔粘膜のみ、または口腔粘膜と皮膚) 1〜1.5 mg/kg/日、メトトレキサート7〜15 mg/週(眼の病変にも第一選択として考慮しうる)、テトラサイクリン系 ステロイド内服、、を追加
重症(眼・性器・・食道・喉頭のいずれか) (経口2 mg/kg/日、または月1回500 mg の静注パルス)をステロイドまたはと併用 リツキシマブ → → TNF阻害薬の順に追加

同じガイドラインは、では局所治療がを変えないこと、局所のステロイドは短期の補助であること、を使えない軽症例では局所治療とテトラサイクリン系の内服の組み合わせが代わりになりうることを示している1。

💡 教育上の段階(から生物学的製剤へ)は、欧州のガイドラインの「副作用の少ない薬から始める段階的な選び方」と同じ考え方である。ただしの急速な進行や・では、段階を一つずつ上がる時間はなく、最初から強い薬(とステロイドの併用など)を選ぶ。欧州のガイドラインでもリツキシマブは、重症例の第一段階が効かないときの次の一手に位置づけられている1。

手術

手術が必要になる場面

部位 適応
角膜 治らない上皮欠損、潰瘍(融解・穿孔)
(菲薄化・穿孔の危険)
眼表面全体 眼表面の再建(リハビリテーション)

角膜潰瘍の手術

角膜潰瘍の手術では、溶けた部分を覆う・埋める・置き換える。治療後の眼では、次のような所見を認める。

  • 角膜全体がし、周辺のに出血を伴う術後早期の眼で、角膜の上に細い縫合糸が見える。
  • 輪部に近い周辺部の潰瘍の上に、の組織を縫い付けた眼(血管に富む赤い組織が角膜の一部を覆う)。
  • 角膜の周辺寄りに多数のを認め、にを固定した眼。
  • 角膜の中央に円形のを放射状ので固定したの眼。周囲のには強い充血が残る。
手術 目的
治らない上皮欠損や浅い潰瘍を覆い、上皮化を助け炎症を抑える
被覆 周辺部の潰瘍を血管のある組織で覆い、融解を止める
部分的な() 穿孔・の部分だけを埋める
大きな穿孔、視力を戻すための置き換え

術式の詳細は角膜の手術で扱う。

⚠️ 自己免疫疾患のに移植をすると、の縁がまた溶け、も起こりやすい。全身の免疫抑制で炎症を抑えることが、手術の成否を決める。欧州のガイドラインは、瘢痕や狭窄を解除する手術は炎症が数か月完全に抑えられてから行うとしている1。

眼表面の再建

重い瘢痕性のの末期では、一つの眼に多くの問題が重なる。

問題 所見 再建の方向
上方の輪部から角膜へ血管とが侵入する 輪部・培養上皮の移植
睫毛乱生 睫毛が内側を向いて角膜に触れる 睫毛の処置、眼瞼の手術
眼瞼が閉じきらず、角膜が露出する 眼瞼の手術
眼瞼縁の内側の角化 下眼瞼縁の側が皮膚のように角化し、のたびに角膜をこする 粘膜の移植
下方でが角膜の縁まで引き込まれる 癒着のと、羊膜・粘膜の移植
角膜の(ヘイズ) 角膜の中央を含む全体のくもり 条件が整ってから

💡 再建の順序が大事である。 角膜だけを移植しても、眼瞼・睫毛・・幹細胞の問題が残っていれば、はすぐに傷つき溶ける。まず炎症を抑え、次に眼瞼と睫毛、、を整え、は最後に行う。

眼科以外の診療科との連携

状況 連携先 目的
、、消化器内科 口腔・喉頭・食道の病変の検索、免疫抑制療法
を疑う 内科 ・唾液腺生検、全身の合併症
移植後の 血液内科 全身のの評価と治療
・ 内科・腎臓内科 血管炎の検索と
、循環器内科 難聴の治療、の評価

まとめ

  • は能動的な免疫の境界面、角膜は中央より周辺部が侵されやすく、はコラーゲンが自己免疫の標的になる。
  • が主に侵される疾患:、、慢性。角膜が主に侵される疾患:、、。
  • :の一部または単独、両眼性、高齢者。慢性炎症 → 瘢痕 → ・ → ・睫毛乱生・、きわめて重い、角膜の瘢痕・・角化 → 。
  • は ACR/EULAR 2016 で、生検とが各3点、眼表面染色・Schirmer 試験・唾液流量が各1点、合計4点以上。
  • 慢性:眼が唯一の症状のことがある。新たな重い+Schirmer 値の低下+悪化する症状。の充血・・瘢痕、角膜の上皮欠損・潰瘍・穿孔。NIH 2014 では眼にはなく4つはだが、新たな乾燥+Schirmer 値の低下(他の原因なし)はでは眼の慢性GVHDの診断に足りる。Schirmer 値は経過観察には使わない。
  • :半数は致死率の高い(関節リウマチ、血管炎、、SLE)に伴う。輪部のの潰瘍、強膜炎を伴うことがある。全身の血管炎の。
  • は AIRE 遺伝子変異で、・・・角膜の。は+感音難聴+で、3分の1に血管炎・など。
  • 局所治療はを含まない・、眼瞼の衛生とドキシサイクリン、ステロイド・・の点眼。
  • 全身の免疫抑制は・・・重い強膜炎に必要で、長期・併用・免疫内科と協力。軽い強膜炎にはの内服。
  • ステロイドはで初回1 mg/kg、3か月を超えて使わない。は → → メトトレキサート → → → → 生物学的製剤の順に重症度が上がる。は欧州のガイドラインで重症に分類される。
  • 手術は治らない上皮欠損・潰瘍、、眼表面の再建に行い、炎症を抑えてから、眼瞼・・幹細胞を整えたうえで角膜へ進む。

出典

  1. 1.European Guidelines (S3) on diagnosis and management of mucous membrane pemphigoid, initiated by the European Academy of Dermatology and Venereology - Part II(European Academy of Dermatology and Venereology(Schmidt E, et al.)・2021)著者稿の全文(バーミンガム大学リポジトリ)で、治療の目標は炎症を止めて結膜などの瘢痕の進行を止めることで、瘢痕の手術は炎症が数か月完全に抑えられてから行うこと、軽症は口腔粘膜のみか口腔粘膜と皮膚、重症は眼・性器・鼻咽頭・食道・喉頭のいずれかの病変と定義し眼の病変があれば重症に分類すること、眼の粘膜類天疱瘡では局所治療は自然経過を変えず、局所ステロイドは短期の補助、防腐剤を含まない潤滑剤で外傷を減らし、免疫抑制薬が使えない軽症例では局所治療とテトラサイクリン系内服を組み合わせうること、軽症〜中等症ではダプソン1〜1.5 mg/kg/日やメトトレキサート7〜15 mg/週(眼の病変に第一選択として考慮しうる)、重症ではシクロホスファミド(経口2 mg/kg/日または月1回500 mgの静注パルス)をステロイドまたはダプソンと併用し、難治例にはリツキシマブ(第一段階)、免疫グロブリン静注(第二段階)、TNF阻害薬(第三段階)を加えること、プレドニゾン0.5〜1 mg/kg/日を8〜12週かけて漸減し免疫抑制薬と併用すること、眼の粘膜類天疱瘡の鑑別に酒皶・感染・アトピー性角結膜炎・外傷・腫瘍・Sjögren症候群・SLE・サルコイドーシスがあり、全体の鑑別に多形紅斑・Stevens-Johnson症候群・中毒性表皮壊死症があることを確認した。閲覧 2026-09-29
  2. 2.2016 American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism classification criteria for primary Sjögren's syndrome: A consensus and data-driven methodology involving three international patient cohorts(Annals of the Rheumatic Diseases(International Sjögren's Syndrome Criteria Working Group)・2017)抄録(Europe PMC、PMID 27789466)で、Sjögren症候群を示唆する徴候・症状のある人を対象に、抗SSA/Ro抗体陽性と口唇小唾液腺の巣状リンパ球性唾液腺炎(フォーカススコア1以上/4 mm²)をそれぞれ3点、眼表面染色スコア5以上(またはvan Bijsterveldスコア4以上)・Schirmer試験5 mm/5分以下・無刺激唾液流量0.1 mL/分以下をそれぞれ1点とし、合計4点以上を一次性Sjögren症候群と分類すること、検証コホートでの感度96%・特異度95%、臨床試験の組入れ基準に適することを確認した。同時掲載の Arthritis Rheumatol 版の全文(PMC5650478)で、眼の2項目は少なくとも片眼で満たせばよいこと、眼または口の乾燥症状があることが適用の前提であること、頭頸部の放射線治療歴・活動性C型肝炎・AIDS・サルコイドーシス・アミロイドーシス・移植片対宿主病・IgG4関連疾患が除外基準であることを確認した。閲覧 2026-09-29
  3. 3.National Institutes of Health Consensus Development Project on Criteria for Clinical Trials in Chronic Graft-versus-Host Disease: I. The 2014 Diagnosis and Staging Working Group Report(NIH Consensus Development Project(Biology of Blood and Marrow Transplantation誌)・2015)PMC全文のTable 1で、眼には慢性GVHDの診断的所見がなく、新規発症の乾燥・異物感・疼痛、瘢痕性結膜炎、乾燥性角結膜炎、融合性の点状角膜症の4つが特徴的所見であること、羞明・眼周囲の色素沈着・眼瞼炎はその他の所見であることを確認した。本文で、慢性GVHDの診断には診断的所見1つ、または特徴的所見に同じか別の臓器の検査・専門医の評価による裏づけが必要で、感染などの他の原因を除外すること、新たな眼の乾燥が Schirmer 試験の平均5 mm/5分以下、または細隙灯で新たな乾燥性角結膜炎があり平均6〜10 mm で他の原因がなければ、治療と眼に特化した臨床試験の目的では眼の慢性GVHDと診断してよく、慢性GVHD全般の臨床試験には別の特徴的所見が要ること、Schirmer 試験は診断には役立つが値は症状の変化との相関が乏しく経過観察に向かないため2014年改訂で重症度のスコア用紙から除かれ、眼の採点には潤滑点眼の1日の使用回数が含まれることを確認した。閲覧 2026-09-29